転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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日常編
才羽姉妹とラッシュデュエル


 

「うーん……面白い……いや面白い神ゲーだったけども……やっぱこう、私視点だとパロディゲームになっちゃうんだよな」

 

ミレニアムサイエンススクールの寮の一室。そこで、ジュースを片手にゲームをプレイし終えた一人の少女が、人をダメにするクッションにもたれかかりながら溜息を吐く。満足感は凄くあった。最初は異世界転生、しかもTS、加えて頭の上には謎の輪っか、ヘイローと来て銃撃戦が日常茶飯事な場所と色々呪ったりマジかよ、と思ったものだが、こんな世界で生き続けていれば多少は慣れてくるものだ。

 

「とすると、やっぱりここってゲームかアニメの世界、なのかな」

 

ぽつり、と呟きながら少女はゲームソフトのパッケージを並べている本棚に視線を移す。そこにはこの世界が誇る無数の神ゲーが積まれていた。そのどれも、彼女の心を揺さぶる素晴らしいものばかりだったのだが、その名前やゲームの内容を見てみると、残念ながら前世でプレイしたゲームの名前にどれもこれも似ているのだ。展開も要約してしまうと大体○○と言われても否定できないものなのもそこそこある。

 

そう来ると、やっぱり本物の名前が使えなかったからパロってこういう名前になっただけ、という線がだいぶ濃い。それが、この少女、夢見モルフォがこの世界がどういう世界なのか?という疑問に対して出した結論だった。だからといってこの世界に物語があったとして介入する方法もわからないし、そもそもどういう話かもわからないので自由気ままに生きていくことにしているが。

 

「……作るか」

 

そう言いながら、パソコンを立ち上げる。この世界もそれなりにエンジョイしているが、やはり転生してきた身としては前世で楽しんだものを楽しみたいのだ。どんなレトロゲームだって、時代を越えてやりたい。そんなものだ。

 

「今更だけど、私の頭ってどうなってるんだろうなぁ」

 

今ではすっかり慣れた一人称を使いながら、パソコンの中でプログラムを弄っていく。決まってこういう、前世でやったもの、楽しんだものを作ろう、とした時だけやたら頭の回転が速いのだ。作り方が分かると言うか、ここはこうすればいいとか、そういうレベル。ハードだったりホビーを作ったり、という形になるとさすがに時間はかかるが、プログラム系はかなり早くできる。唯一の欠点は、この頭は普段の勉強では全く働いてくれないと言うことだ。本人も赤点とかが嫌だからそれなりに真面目には取り組んでいるのだが。

 

「うーん……今の気分はー……」

 

何を作ろうか。それとも既に制作済みのソフトでもやるか?そんなことを考えながら、デスクトップ上にちりばめられた各種ゲームのアイコンを見る。美しい並びだ……前世の自分が見れば涙を流しそうなラインナップだろう。そんなことを考えながらも、アイコンを吟味していく。

 

「……対人戦とかマルチプレイもそのうちやりたいなぁ」

 

しかし、そのどれもが基本的に一人用、マルチプレイや対人戦もあるけど基本的に一人で完結できる、そんなゲームばかりだった。その理由は単純、このゲーム達を世に出せばきっと多くの人が楽しんでプレイできる、だろうがその賞賛は確実に自分へと向けられるだろう。だが、それでは意味はないのだ。

 

自分が作っているのはただのコピーであり……というかマジで盗作とかそういうレベルだ。そのゲーム達を作った開発者やスタッフ、企業に感謝するべきであり、自分がそれをもらうなんてことは絶対にあってはならないのだ。だからこれらのゲームを表に出すことはしない。とはいえ、こんなコピー能力があるのなら、複数人プレイできるゲームをやりたい、と考えてしまうのも当然事実なわけで。

 

「でもゲームとして出した時点で絶対ゲーム開発部に目をつけられるんだよな……ホビーとかは度々持っていって遊んでるんだけどさ」

 

部員が足りない!って常に騒いでる部活動だ。そこに一応はこの世界に神ゲーを産み落としたことになる人間が、しかも部活に無所属と来れば以前にもまして死ぬ気で勧誘してくるだろう。あの双子、とくに姉のモモイならばそれをやりかねない。絶対に嫌である。認知されるだけならばまだしも、あれを配布して、なんてことになったらいろんな人に申し訳なさすぎて退部どころか中退すら視野に入れるレベルである。

 

「……まあ、それ以外はいい子達だから普通に付き合ってるんだけど」

 

とはいえ、ゲームを愛しているのは間違いないわけで、部員ではないけどたまに彼女たちと遊ぶこと自体は多い。部活に入ることについては作るよりやりたい人間だから、ということで断っているが。

 

「……あ、そうだ。カードゲーム作ろう。ゲームじゃなくて現実のカード!これならいける!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ才羽姉妹、部長ちゃんいるかーい」

「あ、モルフォ!入部する気になった?後ユズは今部室にいないよー」

「プレイ専門だからパスするって言ったじゃん。それよりさ、遊びに付き合ってくんない?」

 

ゲーム開発部に入ると、そこでは金髪に桃色の瞳をした少女、モモイと緑の瞳をした少女、ミドリがゲームで対戦していた。ちょうど、モルフォが入ってきたタイミングで一戦に区切りがついたのか、二人は興味深そうにこちらを見てくる。

 

「今日は何持ってきたの?」

「前々から思ってたけどモルフォちゃんって絶対作るのも得意そうだよね……?お姉ちゃんみたいなことを言うわけじゃないけど、やっぱりその才能はゲーム作りに活かせるんじゃ……」

「うーん、私の気質の問題もあるので……」

 

ゲームを中断し、興味津々、と言った様子でモルフォの持つケースに視線を向ける二人。わくわくした様子でそれを見ている中、モルフォは、パカッと箱を開ける。そこにあったのは、

 

「……カード?」

「そう……その名も、ラッシュデュエル!」

「「ラッシュデュエル?」」

 

40枚のカードを束ねて作られた、二つのデッキだった。二人から見えるカードは連撃竜ドラギアスとセブンスロード・マジシャン。そう、どちらも遊戯王ラッシュデュエルというカードゲームが出た時に一番最初に出てきた構築済みのストラクチャーデッキである。

 

「うわー、これ恰好よさそう!対戦カードゲームなんだよね?じゃあ私こっちのドラギアスっていうの使いたい!」

「あ、ちょっとお姉ちゃん!……でも、魔法使いか……面白そうだね」

「どっちのデッキも良さはあるから一回やったら交換して使ってみるといいかもね」

 

ひとまず、それぞれのデッキの中のカードをミドリとモモイは確認していく。

 

「うわー!恰好いいカードが他にもいっぱいだー!」

「あ、このはぐれ使い魔ってカード、可愛い……」

「ねーねー、イラスト担当でいいから入ってみない?」

「お姉ちゃんそれ私の仕事……」

「いや、広告とかポスターとかをモルフォに任せてみるのもありじゃない?」

「あー、確かに……?」

「言っておくけどそれ、私の絵じゃないからね」

 

勘違いしないようにはっきりと釘を刺しておく。いやでも、カードのイラストは覚えてるのを描き起こしたとはいえなんで描けるのか……トレスの才能でもあるのか?と内心首を傾げながら、ラッシュデュエルのルールを説明していく。

 

「へー、結構単純だね」

「覚えやすくて楽しそうだね」

「じゃあ実際にやってみようか。先攻後攻はコイントスで」

 

そしてコイントスによって、先攻を手に入れたのはモモイだった。

 

「よーし、じゃあ最初は私のターンだね!えーと、星が4つ以下のモンスターなら何でも出せるから、とりあえず3体出して……で、星が5と6なら1枚を墓地へ送って出せる……と。手札は使い切った方がいいんだよね?」

「うん、毎ターン手札が5枚になるようにドローするからね。基本的に使い切った方が得かな」

「じゃあ手札全部使ってモンスターを揃えてターンエンド!」

 

まだまだ不慣れといった様子だが、モンスターを並べていくモモイ。

 

「じゃあ次は私のターンか……えーと、魔法カードは手札から使えて、罠カードは伏せて条件を満たしたら発動できるんだよね?」

「そうそう」

「えーと……じゃあこの3枚のモンスターを出して……1体を墓地……リリースだっけ。これで魔剣士アンサラーをアドバンス召喚して、手札を1枚伏せて……よし、アンサラーで暗黒の竜騎士を攻撃、と」

 

ミドリはモモイのやっていた行動を見たのもあってか、モルフォのルールもしっかり思い出しつつターンを進行していく。この感じならジャッジも楽かな。とモルフォは思いつつ、モモイのライフを4000から削っていく。元のルールでは8000なのでそれでいこうかとも思ったが、万が一グダグダになって泥仕合になったせいでつまらないと思われるのが怖かったので半分にした。

 

「ついでに他のモンスターで守備表示のモンスターを攻撃、と」

「あわわ……私のフィールド、暗黒の竜騎士1体だけになったんだけど!?」

「5枚引けば何か来るよ!」

「そ、そうだった!よーし私のターン!えーと……」

 

5枚に増えた手札を見ながら、色々考え始めるモモイ。ミドリも、次の自分のターンもああなるんだろうなと考えながら、モモイの次の行動を待つ。やがて、あることを思い付いたのか、モモイはモルフォに耳打ちしてこれはできるのかと確認を取る。

 

「うん、できるよ」

「やった!えーとそれじゃあ……まずはこれとこれを出して……この2体をリリース!連撃竜ドラギアスの降臨だー!」

「えっ!?それ確かそのデッキの……」

「そうだよ切り札だよ!ふふふ、これで私の勝ちは決まったも同然!」

 

ドヤ顔でそのデッキのエースカードを見せつけるモモイ。その圧巻のステータスは、この二人のデッキに入っているモンスターの中でもダントツだ。しかもそれだけではない。

 

「まだまだ!モンスターを出して、今度は火口の番竜をアドバンス召喚!それで、えーと……ドラギアスの効果でデッキの上を墓地へ送って、2回攻撃!さあこれで全部倒してやるぞー!」

「むむ……」

 

三体のモンスターを揃え、四回の攻撃でミドリのモンスターを全滅。そのまま、ダイレクトアタックで大きくライフを削ろうとするモモイ。これで次のターンで勝てる!そう確信し、得意げに攻撃宣言する。

 

「ドラギアスでダイレクトアタックだー!」

「えーと、今墓地に魔法使い族のモンスターが4体いるから……うん、使えるね。この4枚をデッキに戻して、ダーク・リベレイションを発動するよ」

「えっ」

「この効果で、相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊するから……お姉ちゃんのモンスターが全滅だね」

「なんで!?」

(やっぱこのカード初期に出てきたにしては随分パワーあるよなー)

 

フィールドを更地にされてしまったモモイが唖然となってしまう。そんなモモイとは対照的に、ここで一気に攻め込みたいなーと呟きながらミドリが手札を補充する。

 

「えーと……うわ、カード固まってる……ちゃんとシャッフルできてなかったのかな……まあいいや。ダーク・ソーサラー3体出してダイレクトアタックするよ」

「うわーん!負けたー!!」

 

そして無情にもミドリの出した三体のモンスターが、モモイのライフを刈り取り、ミドリの勝利を決定する。

 

「あ、あそこは絶対いけると思ったのにぃ……」

「正直このダーク・リベレイションがなかったら私の方が危なかったから……デッキパワー自体はドラゴンデッキの方が高いの?」

「上級の質は確かにドラゴンデッキの方がステータスは高いのはあるかな。魔法使いの方は結構テクニカルというか」

 

成程……と納得したように頷くミドリ。そんな中、モルフォは崩れているモモイの背中を擦ってあげる。

 

「でも、1ターン毎に何回も逆転されちゃうから気が抜けないね。それに、この手のカードゲームって大体、1枚しか引けないから、いっぱい引いていっぱい使う、ってのは凄く新鮮だよね」

「でしょ?」

 

そんな中、ミドリもラッシュデュエルの面白さを実感し始めていた。これはさらに一押しが必要だと言わんばかりに、モモイのやる気にもう一度火を点けることにする。

 

「まあまあ、負けることもあるさ。次やったらわかんないよ?」

「そ、そうだよね!も、もう一回!ミドリ、今度は負けないんだから!」

 

モルフォの言葉にその通りと言わんばかりに立ち上がるモモイ。そんな立ち直りの早い姉の姿を見ながら、ミドリは再びデッキをシャッフルし始める。

 

「いいよ、私ももっとやってみたいし。そういえばモルフォちゃんはやらないの?」

「んー、とりあえず二人がルールを覚えきるところまではいいかな?それまでは審判やってるよ。それに見てても楽しいしね」

「オッケー!それじゃあ今度こそリベンジだー!」

 

そして、楽しそうに二人はまた、ラッシュデュエルに興じる。

 

(その内OCGもやりたいね!)

 

そんな二人を見つつ、新たな欲が浮かんできたモルフォの気持ちは、始まったラッシュデュエルの観戦の中、消えていくのだった。

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