転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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橘姉妹とマリオカートパロディ

 

「あっつ……」

「さすがにこっちまで戻ると暑いね」

 

待機状態のシールドから取り出した、折り畳んだ袋を広げて脱いだ全員の防寒着をしまい込みながら、モルフォがその寒暖の差に思わず溜息を漏らす。先ほどまでレッドウィンターの自治区にいたが、そちらは防寒着が必要なレベルだというのに、D.U.地区を走るこの鉄道が扉を開いた時に中に流れ込む空気は夏の暑さを感じさせる。

 

「鉄道の中は涼しいのに外は暑いです……」

「あー、なんか外出たくなくなってきた……」

「そういうわけにもいかないでしょお姉ちゃん……」

「まあ、モノレールに乗り換えたりする必要はあるし……」

 

この暑さに参っているのはモルフォだけではなくモモイ達も同様な様子で、外には出たくないと思っている様子であった。しかし、外に出なければミレニアムに帰れないのだ。その時が来たら覚悟を決めて外に出よう、だけど今はと冷房の効いた車内を堪能しようとしていると。

 

「……あー!お客様!困ります!!無賃乗車は困ります!!」

「あぁん!私達は客だぞ!文句あんのか!?え!?」

 

突然声が聞こえてくる。そちらの方を見ると、ある生徒が、不良の女子達に詰められててんてこ舞いになってしまっていた。

 

「!不良が現れました!……でも、あちらは誰でしょう?」

「ハイランダー鉄道学園の生徒だね……ハイランダーは鉄道とかを運行してるんだけど……こういうクレーマーとかの対応もしてるんだよね……」

「うわーしんどそう。助ける?」

「まあ、無賃乗車は……ぶちのめしていいでしょ」

 

ここで列車を止められたらたまったものではない。折角次の駅なのにと思って呟いたモルフォの言葉にアリス達は顔を見合わせて頷いていると、さらに異変が起こる。先ほどまでハイランダーの生徒を問い詰めていたのは一人の不良だったのが、周囲に座っていた十人近くの不良が立ち上がり、その生徒を取り囲み始めたのだ。

 

「おいおい、人聞きの悪いことを言っちゃいけねえよ」

「大体、金なんてケチくせえこと言ってんじゃねえよ馬鹿が」

「これだからハイランダーは……大人しく運転だけやってりゃいいんだよ」

「なあ?わかってんのか?ああ?」

「ひぃいい……」

 

ここでハイランダーの生徒の心を完全にへし折って無賃乗車をごり押そうとしているようだ。見れば全員各々の銃まで握っている始末で、いつ実力行使に出てもおかしくない様子だ。とくれば、

 

「ほれ、一発撃ち込んでわからせてやっても―――」

「アリス!」

「―――光になれ!」

 

瞬間。レールガンが着弾し、不良達が次々と吹き飛んでいく。

 

「……え、え?」

「な、なななんだあっ」

「はいおやすみ」

 

不良達が慌てて後ろを振り向こうとする。ハイランダーの生徒が困惑し続けるその前の前で、不良の頭部がライフル弾の命中によって壁に叩きつけられ、腹部や胸などにまばらにアサルトライフルの弾を連続で叩き込まれ、ハンマーのような形状をしたショットガンで地面に頭部を叩きつけられたりして、次々と不良が制圧されていく。

 

「な、なななんだこいつら!?」

「くそぉ!てめえだけはー!!」

「わ、わわ!?」

「アリスに近づかないでください」

「ぐほぉ!?」

 

レールガンで吹き飛ばされたが喰らったのが余波だったおかげで意識を失わずにいた不良が、最初に不意打ちを決めたアリスに襲い掛かろうとする。次の瞬間、アリスの目が赤色に切り替わり、スーパーノヴァを近接武器のように叩きつけて不良を吹き飛ばしてしまう。そのまま壁に背中を叩きつけられた不良はダメージからか意識を失ってしまう。

 

「……えっと、大丈夫ですか?」

「……!」

 

瞬く間に不良達を鎮圧してみせたモルフォ達の姿を前に、ハイランダーの生徒はブンブンと、様々な感情が入り混じったような顔で首を縦に振る。気付けば戦闘が始まったからか伸びている不良とゲーム開発部とハイランダーの生徒だけになっていた中、列車の扉が開かれ、黒っぽい制服に身を包んだ腰まで黄緑色の髪を伸ばした、尻尾を生やしたハイランダーの生徒が現れる。

 

「無賃乗車はでていけー……おー?なにこれ?」

「ひ、ヒカリさん!こいつら縛るの手伝ってください!」

 

そのヒカリと呼ばれた少女は目の前で伸びている不良達を見て首を傾げる。と、彼女を見て復活したであろうハイランダーの生徒が起き上がり、縄を取り出して不良達を縛り始めていく。

 

「でも、もう大丈夫そうじゃなーい?」

「うぅ……もっと早く来てくださいよ……無関係な乗客に手伝ってもらってたんですよ!」

「ふーん?おー、ミレニアムの生徒かー」

「そうだけど……えっと。どちら様?」

 

不良達を縛るのを彼女に任せながら、ゲーム開発部の顔を見ていたヒカリは、ミレニアムのパーカーを見てその所属に思い至る。

 

「私、橘ヒカリー、この列車を運転してるのが妹のノゾミー」

「夢見モルフォです。ミレニアムのゲーム開発部の広報とかを一応やってますね」

「お?ゲーム開発部……あー、知ってるー。クソゲーの後に神ゲーを出してたところー」

(……この場にユズがいなくてよかった)

 

酷い言われようだけどクソゲーを作ったのは事実だからしょうがないと遠い目をしながらヒカリの言葉を聞く。後ろではモモイとミドリも気まずそうに視線を逸らしていた。

 

「ヒカリさん、縛り終えました……」

「よーし、次の駅でヴァルキューレに突き出しちゃえー」

「は、はい……」

「あ、ヒカリとノゾミもそこで休憩入っちゃうから後はよろしくー」

「あの、そうでしたけど引継ぎとか……!」

 

やっと不良達を縛り終えた生徒が慌てるも、それもお構いなしに列車は走り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「パヒャヒャ、いやーなんか頑張ってもらってたみたいじゃん、ありがと!」

「あ、どうも。二人は双子なんだね」

「そうー、ヒカリとノゾミは双子ー、君達といっしょー」

 

無事に目的の駅に着いた一行。不良達はハイランダーの生徒と通報を受けて駆けつけてきたヴァルキューレの生徒に任せ、当番も現地で待機してた別の生徒に引き継いだ少女、橘ヒカリと、彼女とは髪型こそツインテールで違えどそれ以外は見た目がそっくりな少女、橘ノゾミと共にモルフォ達は近くのファミレスで食事を取っていた。とはいえ、モルフォ達は既に昼食は取っていたため軽食という形ではあるが、二人は遅めの昼食だったからか結構ガッツリと食べていた。

 

「なんか、不思議な気分……」

「た、確かに……普段は別に双子って気にしないけど、目の前に別の双子がいると……」

「うんうん、わかるよー、なんか世間は狭いって感じ?」

「うんめいー」

 

そんな中、対面を果たした才羽姉妹と橘姉妹はキヴォトス広しと言えど、まさか双子同士が出会うとは思っていなかったのか、特にノリは変わっていないものの、モモイ達と同様に感じるものはあったようだ。と、ここで自己紹介し合った時に彼女達がゲーム開発部であることを聞いて思い出したのか、ノゾミは過去にやったあるゲームの記憶を引っ張り出す。

 

「で、ゲーム開発部だっけ?TSC2やったよ、意外と面白かった!」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「それでさ、ゲーム詳しいならちょっと聞きたいんだけどさ……UZQueenって誰か知ってたりする?後はButterflyって子」

『「「「?」」」』

「……」

 

そのついでと言わんばかりにノゾミが少し険しそうな表情を浮かべながら質問する。その名前にモルフォ以外のゲーム開発部が首を傾げるが、それは知らないからではない。両方とも心当たりしかない名前であったからか。

 

「えっと、どうしたんですか?」

「私さー、マリンカートやってるんだけど」

「あー、あのレースゲームの」

「面白いよね、私達も皆で通信プレイやってるけど、とにかくハチャメチャで」

「……私、一位取ってたんだよね、タイムアタックの」

「マジで!?」

 

モモイが驚愕の声を上げる中、モルフォはノゾミが何を言いたいか、何となく気付く。彼女としても、ノゾミが言っていることが何のことなのか気付いてしまったからだ。ちょうど先日、ユズと暴れた経験がある。

 

「……三位に落とされたんだよ!?あのタイム出すの結構リトライとかしてたのに!UZQueenとButterflyは許さん!」

「さ、さすがユズとモルフォですね」

『アリス!今言っては……』

「知ってるの!?というか……モルフォって」

 

アリスが呟いた言葉に食いついたノゾミ。その発言を受けてノゾミとヒカリがモルフォを見ると、モルフォは苦笑しながら口を開く。

 

「……私がButterflyだね……そういえばユズが一位に記録塗り替えたから走りを真似ながら改善して塗り替えてをやりあってた記憶が……」

「そのせいで記録とんでもないことになってるんだけど?何このUZQueenの記録、ほぼ理論値じゃん」

「モルフォちゃんレースゲームもうまいからね……」

「うまいというより自分に合ったマシンを選ぶことができているという感じではあるけども……まあ、あれはユズがたたき台用意してくれてたからどう走るかはわかってたしね」

 

あれを越えるとしたら新規テクニックや走行が開拓されない限りはもうTASとかそういうレベルではなかろうかと考えながら答えるモルフォ。あの時の自分はユズがいたのもあってゾーンに入っていた気がする。

 

「でも、知ってるなら丁度いいや。そのユズって子を呼んでよ」

「え?呼ぶって……ユズちゃんに何をするの?」

「パヒャヒャ、決まってんじゃん。そんなの……リベンジしかないでしょ!」

「マリンカートでしょうぶー」

 

そして、ノゾミとヒカリから叩きつけられた挑戦状に、モルフォ達は互いに顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ~君がUZQueenなんだ」

「よろしくー」

「は、はい……花岡ユズです……えっと、マリンカートで対戦したいって……」

 

マリンカート。ご存じの通り、マリオカートのようなゲームである。が、名前やキャラ、アイテムの見た目は違っていても、基本的にはマリオカートと似通っており、カートをカスタマイズしたり、アイテムを使ってレースを有利に進めたり、ドリフトやジャンプなどのテクニックも共通していたりする。

 

「パヒャヒャ、いやー負けっぱなしってのも嫌なんだよね」

「私達の力をみせてやるー」

「なんかごめんね、部屋でのんびりしてただろうに」

「ううん、大丈夫。でも、ミレニアム以外の人とローカル対戦するのは初めてだからちょっと楽しみかも」

 

全員でローカルで通信を繋げ、それぞれカートとキャラを設定していく。モルフォも最高速度こそ控えめなものの加速と曲がりやすさに優れたカートを準備する。ちらと横に座るユズのカートを見ると、逆に最高速度を伸ばしたものになっている。そして全員がキャラを選択し、コースをランダムで選択していく。

 

「このコースは……」

「直線とカーブが入り混じってるコースだったね」

「よーし……それじゃスタートダッシュだ!」

 

レースが始まり、タイミングよくアクセルを踏みスタートダッシュを全員が決める。まずは全員、入手することで最高速度が上がるコインを拾いながら、いつ勝負を仕掛けるか狙っていく。そんな中、ノゾミとヒカリの操作するキャラが段々突出し始める。

 

「あ、あれ?あのカート速くない?」

「……スリップストリームか」

 

スリップストリームは、他のカートの後ろについていることで、そのカートが空気の膜を纏い、一気に加速する現象だ。それによって前方のカートよりも前に出ることが可能となる。ヒカリのカートを使ってスリップストリームを発動させたノゾミは、トップになった状態でカーブに入る。どうやらノゾミとヒカリのマシンはユズが使用しているマシンにも似た、カーブに弱く直線に強いタイプの性能となっており、そのままドリフトとブレーキを駆使しながらカーブを曲がっていく。

 

「……あっ!?」

「あれは……」

 

そして、後ろから見ていたモモイ達は目撃する。前方のノゾミのカートが減速したのに合わせるように、早めにドリフトを開始してカーブに入ったことで減速タイミングが遅くなったことでヒカリがノゾミに追いつき、カーブを抜けて直線に入る頃には再び二人が直線に並ぶ形になる。すると、再びスリップストリームが発生し、減速ポイントを駆使しながら二人とも距離を離れないようにしつつ、順調にタイムを伸ばそうとする。

 

「いや何このフォーメーション走行もどき」

「えっ何それ」

「ごめん今適当に言った」

「パヒャヒャ、でもフォーメーション走行っていい感じの名前じゃん?採用しちゃおーっと」

「これがヒカリとノゾミのフォーメーション~」

「って、これ許されていいの!?完全にコンビで走ってるじゃん!」

 

前方のヒカリに向かって追尾する攻撃アイテムを投げるも、それを防御用のアイテムで防がれてしまい、思わずモモイが抗議の声を上げる。今やってるのは個人戦ではなかったのかと。

 

「確かにそうだね、だから最後は私とヒカリで戦うかな?」

「でも今はその時じゃなーい」

「ぐ、ぐぬぬ……そっちがそのつもりならミドリ!こっちもスリップストリームで……」

「ちょっ、ここでやったらダメだよお姉ちゃん!?」

「あっ!?」

 

最終的に勝てばよかろうなのだと言わんばかりの橘姉妹の発言に、モモイもミドリと共に追いつこうと言う。そのためにちょっとだけ減速してミドリの後ろに入りスリップストリームを獲得したのだが、丁度目の前にカーブが入ったせいでうまく曲がれず、結果としてミドリと衝突。二人纏めてコースアウトしてしまう。

 

「お姉ちゃん!!」

「ご、ごめん!」

「これで二人脱落かなー?」

「こ、こうなったらアイテムで……」

「……よし、大体掴めたかな」

「うん、こっちも大丈夫」

 

その様子を見ながら、後ろから走っていたモルフォとユズが呟きを漏らす。所持するアイテムも選別し終えた。盗られる可能性はあるが、それはその時でいい。橘姉妹のフォーメーションを始めたあたりで、改めてコースの全容と、お互いのカートの性能を把握し終えた二人は頷くと二周目に入った段階で、

 

「ミレニアム式の走りを見せてやろう!」

「そんなのあるの!?」

「ないよ、でもまぁ、個人戦のチーム戦がありなら……こっちもやらせてもらおうかな」

『しかし、あの二人のカートは性能がほぼ同じ……だからこそ、あのような芸当ができていたのでしょうが……逆にモルフォのカートは直線に弱くカーブに強い、それに対してユズのカートは直線に強くカーブに弱い……とても組める組み合わせとは思えませんが』

 

モルフォの発言と共にユズが走り込む。直線ではケイの指摘した通り、ユズのマシンが前に出る。このままではモルフォが後ろに入ることもできない。しかし、カーブに入ったところでユズがカーブのために一瞬だけブレーキをかけたことで流れが変わる。モルフォがその曲がりやすさを活かしてインを突く。当然、ユズはカーブに弱いため、可能な限りスピードを維持しようとすると大回りにならざるを得ない。カーブではユズより速く動け、最短距離で抜けるモルフォが前に出る。すると、

 

「!ユズのカートが加速しています!」

 

ユズのカートがスリップストリームを獲得し、早くなっていく。そしてカーブの出口に差し掛かった時点でドリフトによって得たダッシュを解放。モルフォを抜いて前方に飛び出す。しかしその後ろから、ドリフト中に得た最大チャージを解放、スリップストリームで加速するユズのマシンに食らいついていく。

 

「いけぇ!」

 

それによって、直線でモルフォはユズの背後に取り付いたまま走り続けることが可能となる。そこでさらにモルフォはユズからスリップストリームを獲得してユズを追い抜き、カーブに入ると再びユズの前に出る。これにより、

 

「カーブと直線……その両方でスリップストリームが発動しています!」

「うげっ!?」

「わーはやいぞー?」

「凄い……カートの特性の違いを最大限に活かしてる!」

 

これにより、直線でしかスリップストリームを発動できないノゾミ、ヒカリに対してもタイム的にも速度的にも有利を取り、モルフォとユズが距離を詰めていく。

 

「く……」

 

画面に表示される、コースの全体図を見ながら、ノゾミの額に汗が流れる。全体図にはキャラのアイコンが表示されており、明らかに自分達より速く走る二人を食い止めるにはアイテムが必要だと考える。しかし、このゲームでは手に入れられるアイテムは順位によって違っており、トップになればなるほど出てくるアイテムの質は低くなる。それもあって、二人とも手持ちのアイテムは互いの走行を妨害せず、かつ後ろから来た攻撃を捌ける防御アイテムに固定されている。後方から上がってきたモルフォとユズのアイテムはわからないが、アイテムを使っての逆転は難しいだろう。

 

「これで三周目~」

「!三周目……」

 

そんな中、ヒカリの声にノゾミははっとなる。そう、確かに距離は詰められてはいるが、それはカーブでの話。直線に関してはこちらもスリップストリームで加速できているため、まだ距離は多少空いているのだ。で、あれば。

 

「……なら、勝てる」

 

ふっ、とノゾミが笑みを浮かべる。今のお互いのペースを考えていく。そして、ギリギリ、捲れないことを導く。アイテム交換をしていればまだわからないが、ここまでアイテムを使ったりしてこないあたり、向こうも下手にアイテムを使えばフォーメーションが崩れてしまうことをわかっているのだ。で、あれば後は純粋に性能勝負となる。一周目の時点でやられたら負けてはいたが、それを始めたのが二周目なのが運の尽きだ。そう、思っていた。

 

「今!」

「ブースターだ!」

 

ユズの言葉と共に持っていた、一時的に速度を跳ね上げる急加速アイテムを発動。終盤の、最後のアイテム確保ポイント手前の直線で二人は一気にアイテムを使用し、次のアイテムを確保しながら橘姉妹へと迫っていく。

 

「おー!?」

「ダッシュアイテムを持ってたの!?やばっ、腐ってたわけじゃない!?」

 

まずい、計算が崩された。それによって二人が一気に橘姉妹に迫り、横並びで最終カーブへと入っていく。

 

「……よーし、こうするー」

「ヒカリ!?」

「モルフォ!?」

 

外に膨らんだユズの前に入ろうとするモルフォだったが、その真横からヒカリが車体をぶつけて妨害する。曲がりやすさを活かしてモルフォはどうにか復帰するも、その衝突によってトップがノゾミになったまま、モルフォとユズはスリップストリームを確保できずにカーブを越えることになってしまう。

 

「いや、ここまで来れば十分!」

「!行って、モルフォ!」

 

モルフォの台詞を聞き、ユズが自分を捨ててモルフォに先に行けという。そのまま、モルフォはカーブの内側を通り、膨らんでしまったノゾミに迫り、横に付こうとする。

 

「っ……!」

 

ノゾミが自分が保有しているアイテムを確認する。それは、自分の後方に展開させ、前方か後方へと放つことで相手を攻撃したり、逆に相手からの攻撃を防ぐアイテム。しかし、モルフォのように横から付けられればそれもできない。が、

 

(大丈夫、カーブで負けても、前に出るならそこを狙い撃てる……このまま横に付く形で直線に出るならそれこそ私が有利。後ろについてスリップストリームを得ようとするならこいつの餌!勝った―――)

 

冷静に勝利プランを構築していく。直後。激しい音と共にノゾミのカートが吹き飛ばされ、宙を舞う。

 

「……は?」

「これは……ショックウェーブ?」

「よし!抜けた!」

「!ヒカリとノゾミが攻撃を喰らってます!」

 

ショックウェーブ。所謂クラクションに値するアイテムであり、使用者の周囲に衝撃波を流し、それによって障害物や他の相手を吹き飛ばすものだ。先程、入れ替えるように手に入れたアイテムこそがこれであり、これを使ってノゾミは勿論、内側についていたヒカリを衝突で吹き飛ばし、衝撃の範囲内に吹き飛ばしたユズの一手によって巻き込まれたヒカリが宙を舞い、そのままユズとモルフォは最後の直線へと飛び出す。そして、

 

「!モルフォがゴールしました!」

『二位はユズ……おそらくカーブで崩されたせいで、どうしてもモルフォが先に出る形になってしまったことでユズが詰め切れなかったようですね。まあほぼチーム戦みたいな状態になっていたのであまり関係なくなってしまいましたが……』

 

モルフォが一位、ユズが二位、遅れてヒカリとノゾミが三位、四位を取る形でレースが決着する。ゴールし終えたモルフォとユズは顔を見合わせて笑い合うとハイタッチをする。一方、対面で座ってたノゾミは悔しそうな顔をしながら頭を押さえる。

 

「うわー!悔しいー!」

「よしよしー」

 

そんなノゾミの頭をヒカリが撫でていたが、やがて落ち着いたノゾミは不満そうな表情を浮かべながらユズとモルフォを見る。だが、やがてその表情が笑みに変わっていく。

 

「これがUZQueenとButterfly……ふふ、まさかここまでやって負けちゃうなんてね……」

「でも、まだまだこれからー」

「パヒャヒャ、その通り。今回はしてやられたけど、まだまだ巻き返しは十分可能だからね」

「まあこのゲーム結構逆転要素も多いからねぇ」

 

すぐに切り替えて次のレースに情熱を燃やすノゾミと、彼女の背中を押すように盛り上げていくヒカリ。その様子を見ながら、先ほどのレースの動きを見てやはり油断ならない強いプレイヤー達だと、モルフォとユズは感じながら頷いていた。

 

「レースは後三戦あるからね……」

「次はチーム戦もどきとかそういうの無しでやらない……?それやっちゃうと誰かはぶられちゃうし……」

『……私も別で参加できれば……』

『け、ケイは悪くありませんよ!?』

 

そして、さすがにチーム戦でもないのにチーム戦をやられるとまずいと判断したモモイ達の進言により、次からは普通の個人戦をすることになるのだった。

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