転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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C&Cとアリウススクワッド

時は巻き戻る。調印式に巡航ミサイルが放たれ、調印式会場とその周辺が火の海になってすぐ。C&Cの五人はエリドゥへと赴いていた。そこではエンジニア部がヘリを改造している姿と、その近くでパソコンを操作しているヒマリの姿があった。それを、少し離れた所でリオがスマホを片手に連絡を取っている姿があったが、それが終わるとネル達が来ていることに気付く。

 

「おい、来たぞリオ」

「トリニティの方で何があったんでしょうか?」

「……はっきり言えば分からないことの方が多いわ。ただ一つ言えるのは……」

「ゲーム開発部がミサイルの攻撃に巻き込まれた、ということですね」

 

リオの言葉を引き継いだのは、ヒマリだった。エイミと共にエリドゥへ訪れていたヒマリがネル達にあるデータを見せると、そこには光の点のようなものがトリニティの地図上に現れていた。

 

「これは……」

「モルフォのヘッドフォンに仕込んであったGPSですよ。彼女のヘッドフォンを作った時にコトリが仕込んでくれていたようで。ミサイルが着弾して少ししてからそれが起動したようです」

「普段切っているものが点けられたってことは……」

 

モルフォ達の位置を示すように光る点。これさえあれば、現地がどうなってるかはわからないがこちらから救助に向かうことが可能になる。しかし、モルフォがこれを使用しているということや現地の状況を考えれば、

 

「攻撃に巻き込まれたのは間違いないでしょう……誰がやったのか、そもそもどうやってミサイルなんてものをトリニティの中に用意して撃ち込めたのか……」

「すぐに向かいましょう、リオ様」

「落ち着いてトキ。気持ちはわかるけど、そのための準備をしているところよ」

 

エンジニア部を見ながら、リオが言う。ウタハ達の作業が終わらないと、出発することができないようだ。チヒロ達もその手伝いをしているようである。

 

「会長は何を?」

「ティーパーティーの方に、ミレニアムの生徒が巻き込まれたから救助にC&Cを派遣すると連絡したのだけど……反応がなくて」

「メールも電話もか?偉い混乱してるじゃねえか……いやまぁそりゃそうか」

「あーそっか、ミサイルに巻き込まれちゃってるから」

「そんな状態で行っても大丈夫なのか……?」

 

溜息を吐きながら、スマホを見る。先程、ミレニアムから出る前にメールは送ったようだが、現場にいるナギサが動けるとはとても思えない。ティーパーティーには他にも生徒がいることは知っているが、現在トリニティで事に当たっているミカにそれを確認する余裕などないのだ。ゲヘナ以外の他の学園の生徒が巻き込まれているかどうかなんて知る由もないし、電話をしようにも、おそらく他にも多くの連絡が届いていて、とてもミレニアムからのそれに当たることなどできないのだろう。

 

「後輩の安否を確認できない以上仕方ないでしょう?それに、こちらはちゃんと連絡はしました。メールも出しましたし通話だって行ったのに無視されたとなれば、連絡網すら麻痺する程の惨状と考える方が自然ですね。何がどうしてこうなったのかについても気になりますし」

 

だから気にせずに行ってこいと言われ、ネル達も快く頷く。と、

 

「よし、できたぞ!」

 

エンジニア部が遂に作業を終える。一体どうやってここからトリニティに向かうのか、その手段は一体何なのか。ネル達がそれを見て、アスナ以外は即座に表情を引き攣らせる。アスナも、苦笑している様子ではあるが、さすがにこれは……と彼女自身も思っているのだろう。何せそれには、大量のアバンギャルド君の顔がついていたのだから。

 

「名付けて……トリニティまで行ける君だ。とはいえ間に合わせ品ではあるんだが……」

「まず、ヘリをベースにしたことで見た目から敵意を感じさせないようにしています!ミサイルに人を詰めて飛ばせたら最短でしたが今のトリニティにそんなことやったら私達が犯人扱いされますからね!」

「すみませんなんか凄く不穏なことが聞こえたのですが」

 

コトリの口から飛び出した物騒な言葉に、うんうんと頷くウタハとヒビキ。それ本気で考えていたのかとトキがさらに困惑を強める中、コトリの説明は続いていく。

 

「ですがヘリでは当然時間がかかりすぎます。一分一秒が惜しい状況、やはり必要なのはミサイル並みの速度!そこで、急ごしらえですがミサイルからばらしたエンジンを取り付けました!」

「リオ、おめーミサイルなんて最初何に使うつもりだったか言ってみろ」

「用意は大事よ……」

「あなたは馬鹿ですか。この状況でミサイルの存在がばれたら一発で犯人扱いされますよ」

「とはいえこの状況を予測しろってのも無理な話だと思うけど……それで?」

 

なんでエリドゥにミサイルがあんだよ!エリドゥはどうなってんだよエリドゥは!と内心頭を抱えるネルと呆れるヒマリ。とはいえ、こんな状況自体がイレギュラーだというエイミの指摘も尤もではあるが。

 

「なのでエリドゥにあるミサイルを全部ばらして処分するついでに使えそうな部分を取り付けてとにかく速度だけを確保しました!そのためのカモフラージュとして……」

「アバンギャルド君のヘッドをカバーに採用したわ。謂わばアバンギャルド君エンジンね」

「なんでそんなもんがこんなにあるんだよ!!」

「アバンギャルド君の素晴らしいデザインがミサイルと言う先入観を完全に打ち消してくれているわ。まさに合理的ね」

「ちょっと否定しにくいのやめろ!?」

 

ここだけは譲れなかったのかコトリの説明に割って入り引き継いだリオの説明を聞き、遂にネルは頭を抱えてしまう。ヘリに大量に取り付けられたアバンギャルド君ヘッドはそのためのものかと納得してしまったのが悔しい。確かにこんなものを飛ばしたところで誰もミサイルとは思わないだろう、リオが想定しているものとは異なり奇抜な見た目として見られることによってだが。

 

「……ただ問題はあるよ。短時間でトリニティに行くからGがかかる。そこはもう頑張って耐えて」

「あ、そこは平気平気!」

「それと、トリニティの上空でこいつは証拠隠滅のために自爆させるからちゃんと脱出して」

「……え、チヒロ先輩?」

「そもそもこいつに着地なんて無理だよ。下手に地面に落として変なことになるなら粉々に吹っ飛ばして、なんかあったらミレニアムが救助活動の為にヘリを出したら謎の敵に撃墜された、みたいな感じのカバーストーリーで誤魔化せばいい」

「……まあいいや。とにかく、すぐに出せるんだな?」

 

ヘリのスペックについての説明が終わったところで、チヒロが注意点を触れていく。一応は納得できる理由にアカネ達も頷くと、すぐに出発の準備を開始する。

 

「ええ、それと……現地に着いたらゲーム開発部の救出を最優先にしてほしいけれど、可能なら先生と合流を目指してもらえるかしら。事後承諾とはいえシャーレの指揮下に入れば動きやすさは変わるはずよ」

「……つーことはやっぱそっちも連絡とれねえか」

「残念ながら。何かあればユウカ達から連絡が来ると思うけれど……」

「こんな状況じゃデジタルは役に立ちにくいのは辛いね。校舎の方にコタマ達を残してはきたけど、まだ結果はよろしくない」

 

リオとチヒロの言葉を聞きながら、最終確認をしていく。同時に、必要なものも考えていき、それらの要素を頭の中でリストアップしていくと、ネルは口を開く。

 

「なら、一応ホシノ達にも声かけといてくれ。先生が動けないんじゃ連絡も取れねえだろうし、気にはなってるだろ。それに、トリニティとゲヘナで動ける奴どれくらいいるかもわかんねえし、向こうであいつら助けたら最低でも一日はトリニティで過ごすことになるだろうし……帰りだって足で帰れるかまだわからないからな」

「ええ、帰りについては基本的に空を考慮してヘリも用意しておくわ。アビドスと連携が取れればその護衛についてもらおうと考えてるけど……」

「こちらでやらなきゃいけないことは一旦考えなくてもよいでしょう」

「だな」

 

告げるべきことは告げたとばかりに、ヒマリの言葉に頷き、ヘリの中に乗り込む。五人がシートベルトとパラシュートを装備すると、準備ができたようにウタハ達に合図を送る。

 

「じゃあ―――行ってきたまえ」

「「「「「ッ!!!」」」」」

 

それと共にヘリが勢いよく天に打ち上げられる。その激しいGに耐えながら飛んでいく。あまりの速度を耐えることの方に集中するしかない、今どれくらい時間が経っているかすらわからない、そんな状況の最中、ウタハから通信が入る。

 

『聞こえるかい皆?いいか、よく聞いてくれ……モルフォの持っているシールドの自爆装置が作動した』

「「「「「?」」」」」

 

エンジニア部が自爆装置を取り付けること自体はいつものことのはずだ。当然、彼女たちが作った武器なのだからそれがあることについてはネル達も疑っているわけではない。だが、ウタハの深刻そうな声音には何かあるというのか。

 

『まず、あの自爆装置だが通常では発動しないようになってる。というかぶっちゃけると死に機能なんだ。唯一起動する条件があるが……それが、シールドが完全に破壊される事。つまり……既にゲーム開発部は戦闘に巻き込まれている。それも、かなり激しい規模の戦闘にね』

「「「「「!!」」」」」

 

モルフォのシールドはアビ・エシュフのレーザーすら耐える耐久力を誇っている。並大抵の攻撃で壊れるわけがないのだ。だからこそ安心して自爆装置を仕込んでいたわけだが、それが起動する程の異常事態。それを理解した瞬間、五人の表情が険しく、だが静かなものへと変わっていく。そして、遂に状況の変化を告げるようにアラームが鳴る。

 

『今だよ!』

 

チヒロの声が聞こえてくるのと同時に五人が強引に体を動かして空へと飛び出す。それからちょっとだけ飛んでいったヘリが大爆発を起こし、ヘリが消える中、その余波から姿勢を立て直してパラシュートを開いた五人はやっと外がどうなっているのかを確認しながら降下していくことになる。

 

「……おいおい、これは……」

 

映像では見ていたが、実際に見てみると予想以上に凄惨な状況だ。古聖堂周辺は完全に破壊されてしまっており、至る所で戦闘が行われているのか、激しい音が空にまで響いてくる。思わず声を失いながら現地を自分達の目で見ていると、

 

「……私、あっちの方に行ってくる!」

「アスナ先輩!?」

「皆はモルフォちゃん達をお願いー!」

「そっちにはモルフォ達はいませんが……!?」

 

突然、アスナがネル達から離れ、古聖堂の方へと降りていく。しかし、そちらにはモルフォ達がいないはずだ。だが、

 

「いや、アスナはあのままでいい。何かがあるはずだ……とにかく、あたしらはゲーム開発部の方に行くぞ」

「……わかりました……!?見てください、あれを」

「!」

 

ネルが追うなと言い、アスナの方はアスナに任せて合流を急ぐ。ある程度降下し、煙によって見えなくなっていた地上の細かい様子を確認できるようになると、そこで漸くネル達はゲーム開発部を取り巻く状況を理解することになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!この!!」

「!!」

 

サオリの意識が復活する。あの攻撃を受けてさっきまで気絶していたはず。予想以上のタフさに舌打ちしながらも同時にサブマシンガンを連射して攻撃し始めるも、サオリは意識を飛ばしそうになりながらも手榴弾を取り出し、それを爆発させる。

 

「ちぃ!」

 

自爆同然の攻撃に気付き、寸前にサオリから離れるネル。自爆のダメージに苦しそうに表情を歪ませ、モルフォとネルの強烈な攻撃を喰らってしまった腹部を抑えながらも強引に立ち上がると、

 

「トリニティを攻撃しろ!ユスティナ!!」

「しまっ……」

 

自身は下がりながらもユスティナ聖徒会にヒフミ達への攻撃を命じる。それを合図としたかのように攻撃が開始されていく中、その指示に違和感を持ちながらも、ネルもサオリを追うことはできず、ユスティナ聖徒会への迎撃を行うことになる。

 

「なっ!」

 

さらにサオリの離脱を合図としたかのように、アカネから大量の爆薬による大爆発を喰らい、ボロボロになった白装束のアツコが煙の中から現れる。その仮面は爆発の威力に耐えきれなかったのか完全に砕け散っており、その下から負傷した素顔が露わとなっていた。それを見て、驚愕したのはアカネだ。あの爆発は間違いなく人を気絶、いや大怪我とまでは言わないが行動不能にさせるだけの怪我をさせるだけの威力があったのだ。それをこの程度のダメージで済まされるとは思わなかった。

 

「っ!」

「ぐへっ、ごほっ!あ、ありがとっ、ございます!」

 

アツコがサブマシンガンでカリンとトキを攻撃する。それによって二人がヒヨリとミサキから離れたのを合図としたかのようにヒヨリは走り出し、ミサキも歯を食いしばりながら視界を揺らしてサオリの下へ駆ける。

 

「逃げる気ですか!?逃がしは……!」

「トキ!!このよくわかんねえのをまず仕留めるのが先だ!隠れてろお前ら!!」

 

一先ずユスティナ聖徒会がヒフミ達を狙っているのは確か。彼女達を近くの瓦礫などの遮蔽物に移動させると、立ちはだかるユスティナ聖徒会に銃口を向ける。

 

「……どうなっているんだ?何故攻撃しない?」

 

だが、戦闘はすぐに終了した。ヒフミたちが隠れ、ネル達が相手をするようになってから、ユスティナ聖徒会は全く攻撃することもなく、一方的にC&Cに攻撃され、消滅してしまったのだ。その様子に困惑しつつも周囲を警戒するカリン。同じく警戒に当たっていたネルがモルフォ達の様子を確認すると、アカネとトキによって応急手当を受けているモルフォとミドリの姿があった。

 

「……アリウススクワッド。彼女たちの言葉が本当なら、あれはユスティナ聖徒会でしょう。まさか、当時の亡霊が蘇るなんて思いもしませんでしたが……」

「どういう原理で復活したかまでは定かではありませんが、おそらくあれはトリニティとゲヘナだけを攻撃目標に指定しているのでしょう。だから私達は攻撃されていない」

 

応急手当を受け、血も止まったことで何とかモルフォも危険な状況から生還することに成功する。これで後は、安全に休めるところまで移動するだけだ。とはいえすぐ移動するわけにもいかない。

 

「あの、助けてくれてありがとうございます!」

「あ?気にすんなって、あたしらは後輩が巻き込まれてたからきただけで、お前らはマジでたまたまここにいただけだからな……まあ、ある意味運が良かったってのはあるか。つーかアスナの奴遅いな……」

「……そういえば一人足りないな……」

「あいつだけ古聖堂の方に降りてったから何か必要なことだと思うんだが……」

 

ヒフミからお礼を言われるも、偶然だと手をひらひらと振りながら対応する。それよりも気になっていたのは古聖堂の方へ向かっていたアスナだ。こちらも良い時間なのだから、そろそろアスナが合流してきてもいいと思うのだが。そう思っていると、

 

「あーいたー!リーダー!皆ー!」

「やっときた……か……?」

 

アスナがネル達の所にやってくる。だが、その後ろにはツルギやハスミを始めとした正義実現委員会や風紀委員会の姿もあった。さらには、重傷で意識不明のまま、まだ動ける生徒に背負われているナギサの姿まであった。

 

「な、ナギサ様!?」

「ツルギ先輩!?ハスミ先輩!?無事だったんですね!!」

「こ、コハル!?なんでこんなところに……!?それに、他の皆もどうして……」

「……成程、そういうことか」

 

それを見て、ネルもアスナが何故古聖堂に行ったのかを理解する。おそらくそこには彼女達のように負傷者が多くいたのだろう。驚いたようにモモイ達が傷だらけで出血も酷いことになっている長身のツルギを見ている中、ハスミも少し安心したような声を出す。

 

「まさか、ミレニアムの方から救援を出してもらえるとは……助かりました。しかし、アスナさんに対してユスティナが一切攻撃をしようとしなかったことが気になりましたが……」

「そういうことですか……だから、アスナ先輩一人でもどうにでもなったんですね」

 

アスナ一人でこれだけの戦果を挙げられたのも、ユスティナ聖徒会の脆弱性が大きく影響していたのだろう。アリウスの生徒達も、ユスティナ聖徒会に入れ替わった方が効率的だと判断し撤退していたこと。サオリ達と同様に他のアリウス生もミレニアムの介入を予想していなかったことなど、様々な幸運が重なったといえる。結果として、ユスティナ聖徒会はアスナの手によって無抵抗のまま蹴散らされ、なんとか動ける面々が残りを連れて移動するといった形を取って、どうにか古聖堂からの脱出を果たしたのだ。

 

「学園の方に向かいましょう、そうすればナギサ様の手当てもできます。こんな状況です、そちらの方々も……」

 

ゲーム開発部、特に頭部に包帯を巻いたまま眠るモルフォの姿を見て、ハスミは一緒に連れていくことを選択。その後、複雑そうな表情で風紀委員会の面々を一目見てから言葉を続ける。

 

「……状況が状況です。見捨てるわけにもいきませんし、ゲヘナの方々も連れて行きましょう。ゲヘナの風紀委員長には先生を連れだしてもらった恩もありますし」

「……今、ゲヘナは敵じゃない。敵はアリウス……だが、今は撤退する方が先だ。すまないが……護衛の方を頼めるだろうか。この有様でな……私やハスミもこれ以上は戦えん」

「いいよー!」

「お前が答えるなって……ま、こんな状況だしな。それに、正義実現委員会のお墨付きがあった方があたしらも動きやすいからな」

 

トリニティ、そしてゲヘナの治安維持組織と合流でき、現場判断ではあるが行動の許可を出してもらえたのも大きいと口角を上げながら、ネルはツルギの言葉に改めて頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うわ、メールすっごい溜まってる……もうこんなの対応してる暇ないんだけど。これ、本当に大事な奴だけ対応して」

「わかりました!」

「み、ミカ様!い、色んな所から電話が……」

「今やられても困るんだけどねぇ……えっと、信用できるところ以外は一旦後回しにしておいて!」

「は、はい!」

 

ティーパーティーのテラスでは、尚もミカが忙しそうに対応を続けていた。情報が次から次へと入ってくる。生徒達の混乱も、最初と比べれば多少は落ち着いてきた方であり、学園の方に避難してきた、意識がはっきりしたり軽傷で済んでいる生徒から事情を聞いたこともあって、ある程度情報も真偽の判断ができるようになってきたのだが、

 

「ミカ様!救護騎士団からベッドが足りないと!」

「うぇ、マジで……ミネちゃんいないと私医療の方さっぱりなんだけど。えっと、教室とか使っちゃ駄目?外部の病院とかは?」

「ど、どうなんでしょうか……後、外部の病院は主に大人の方々が押しかけたりしていて、生徒の方までは対応できないと……」

「……ふー……とりあえず教室を使えるようにしておいて……」

「わ、わかりました!」

 

怪我人が来るようになるにつれて、怪我人を寝かせる場所が不足し始めるという更なる問題が露わとなる。どうにかできる範囲で対応を進めていくのだが、どうしてもミカの知識量では医療には限界が出てきてしまう。報告に来た生徒を下がらせて紅茶を一息に飲み干すと、そのまま机に突っ伏してしまう。

 

「はー……ミネちゃん戻ってきてくれないかな……こんなやばい状況で怪我人いっぱいなんだから今こそ救護しに来てほしいよ……」

「呼びましたか?」

「うんうん呼んでる呼んでる、今すぐ現場に……って、え?」

 

久しぶりに聞いたような少女の声に、ミカが顔を上げる。そこにいたのは、水色の髪を腰まで伸ばし、大きな二枚の羽を広げる緑の瞳の少女。蒼森ミネ本人であった。

 

「……み、ミネちゃ……団長!?なんでここに!?え、セイアちゃんはいいの!?」

「はい、セイアさんも無事に目を覚ましました。彼女から、こちらの方を優先してほしいと言われたので戻ってきたんです」

「そ、そうなん……待って?セイアちゃんが目を覚ましたって」

「それについても説明したいところですが……今は優先順位がありますので。これより、救護騎士団団長として、怪我人たちへの救護を行います!」

「あ、待って―――」

 

必要なことは告げたとばかりにミネがテラスを飛び出していく。その後ろ姿に手を伸ばそうとするも、既にミネの姿は見えなくなっており、ミカは思わず脱力したように座り込んでしまう。

 

「……もー頭ん中パンクしちゃいそうだよー……」

「ミカ様!!」

「今度は何ー?まあこれ以上驚くようなこともないだろうけど……」

「先生が古聖堂から戻ってきました!ゲヘナの風紀委員長も一緒なのですが……」

「先生が!よかった……とりあえずどっちも受け入れてあげて。先生もあんなところにいたんだから怪我とかしてるかもしれないし、ミネ団長に伝えといて!」

「わかりました!」

「ナギサ様、ツルギ様を始め古聖堂にいた人たちが救出されたと情報が!ミレニアムからC&Cが派遣されて彼女たちが救助活動を―――」

「ねえ待って?待って?なんでミレニアム?」

 

しかし、直後に届けられた情報に喜んだのも束の間、いきなりミレニアムの名前が飛び出したことに再びミカは頭を抱えることになるのだった。

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