転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「えー、というわけでしばらくお世話になります」
きな臭くなっていくキヴォトスの情勢の中。モルフォはゲーム開発部の部室に来ていた。その手には大型のバッグが握られており、その中には着替えやらアナログゲームやらが詰め込まれている。
「いやー、災難だったねぇモルフォ」
「でも発電所が止まるなんて……もしかして想像以上に大変な事になってる?」
「寮の方は大丈夫なの?電気がストップするって……」
モルフォが寮から学校の部室に来た理由。それは寮の送電がストップするというとんでもない事態によるものだった。先日、ミレニアムが保有する発電所の一部が停止してしまい、再稼働は未定となってしまったのだ。それを受け、ミレニアムは一部施設の電力供給を停止することを発表。その煽りとして学生寮が被害を受けることとなってしまったのだ。
「もちろん大丈夫じゃないよ。ブレーカーは落としてきたし、冷凍庫の中身は全部持ってきたからちょっとゲーム開発部の冷凍庫使わせてもらうけど」
「あ、いいよいいよー、冷蔵庫の方エナドリばっかりだからあんま空いてないけど」
「……モモイ」
「べ、別にいいじゃん!美味しいし!」
寮の電力がストップしたことで、ミレニアムでは寮暮らしの生徒達が一時的に泊まり込みに来ているという状態に陥っていた。ミレニアムのこの対応は、ミレニアムの一般生徒達にも事態の深刻さを告げることとなっていた。キヴォトスの治安が悪化しているのは知っているし、他の学区では既に不良やスケバンなどの抗争に耐えかねてパンクしているのも聞いてはいるが、やはり対岸の火事だと思っていた者が多かったのだろう。今日の朝など、ユウカがまだ交通網が生きてる内に連邦生徒会に直接抗議してくると言って出て行ったところをすれ違ったばかりだ。
「そんなことよりさー、今日は何やる?」
「少しは真面目にやばいって考えなさいな」
「でも私達にできることないしー、むしろ電気が生きてるうちにゲームやろうよ」
そんな緊急事態の中、ゲーム開発部は何をしようとしているかというといつもと変わらないゲームであった。だが、こんな状況だからこそ普段通りでいられるモモイの様子を見ているとむしろ安心感すら覚えてくる。しょうがないなと、バッグとは別で持ってきていたクーラーボックスの中の冷凍食品を纏めて冷凍庫にぶち込み終えたモルフォはモモイの隣に座るのだった。
★
「やぁ、お邪魔しているよ」
「失礼しました」
バタァン!と大音量を鳴らしながら扉を勢いよく閉めるモルフォ。何故自分はここにいるのだろうか?顔に手を当てながら考える。そうだ、直前までゲーム開発部にいたはずだ。だが、夜も深まり、膨れ上がっていく眠気に耐えきれなかったのと、愛用している枕の誘惑に勝てずに眠ってしまったような記憶がある。そうだ、ここは夢なのだろう。だからこそ、この世界では見覚えのない、だが自分には見覚えのある家の通路に立っているのだ。
「……」
では、あの子は誰だ?ゆっくりと扉を開けて部屋の中を覗き込んでみる。ゲーム機、漫画、DVD、フィギュア。色々な私物が転がっている部屋の中央に、確かにその子はいた。
「ふふ、気にしないでくれたまえ。何も取って食おうというわけじゃないんだからね」
「ダレーーー!?」
そう、こちらに笑いかけながら、狐耳の少女、百合園セイアは言うのだった。
★
意を決して部屋の中に入ったモルフォは、互いに自己紹介をした後に話をすることとなった。その中で彼女は、自分は予知夢を見ることができると。今は訳あって長い眠りを見ている状態とのことだが、ある日突然この夢の中に現れた、いや、この夢と繋がったのだということを聞かされる。そしてモルフォもまた、セイアに自分の不思議な力について話していた。お互い、奇妙な力を持っているということを共有できたうえで、モルフォはあることに疑問を覚えて首を傾げる。
「えーと、なんで私の夢に?予知夢と他人の夢を見れるのは関係ないですよね?」
「ふむ……そうだな。確かにその二つに関連性がある、とはいえない。だが……」
セイアの目がモルフォに向けられる。少しだけ、自分の予想を見直すように間を空けると、その口を開く。
「君もまた、夢に関する不思議な力を持っているのではないかな?おそらく、その力が強まったことで、私と君の夢が結びついたのかもしれない」
「え?」
セイアの物言いにきょとんとなってしまうモルフォ。明らかに夢とモルフォの能力は結びついていないようにも思えるが、セイアはじっと、部屋の中にある小さな机の上に置かれているゲームソフトを手に取る。
「私はゲームといったものに明るいわけではないが……それでも、作ろうと思って作れるものではないということはわかる。それも、君が生み出しているのは、君の知る異世界のゲームそのもの。この世界にはそもそも存在すらしていないものなのだろう?」
「それはまあ……」
「そうだな……例えるならば、夢に形を与える……」
「夢に形を与える……」
セイアの説明を聞くも、いまいちピンと来ない。セイアもまだ憶測でしかないといった様子のようで、確証はないようだ。
「当然、無から有は生み出せない。だからこそ、形をどう与えるか、その術を君は知っているのではないかな?」
「……う、うーむ……?」
「そうなってしまうのも無理もない」
「……こう聞くと、自分の事を全く知りませんね私?」
「ふふ、案外そんなものさ。私だって、この力を持て余しているのかもしれないからね」
とはいえ、夢に形を与える、という解釈は個人的にはいい線をいっているのではないかと思う。よもやこんな形でトリニティの生徒と出会うとは思わなかったが、夢と能力に関して一家言ある人物の言葉はやはり違うものだ。
「素直に受け入れるんだね。もっと戸惑うものだと思っていたよ」
「まあ私の存在そのものがだいぶオカルトに片足突っ込んでいますし……」
「……言葉半分に聞いてくれたまえよ?」
オカルトと言えば特異現象捜査部だろう。マキも自分の能力の事を触れていたし、そこに相談してみるのも悪くないのかもしれない。そんなことを考えていると、
「……しかし、終わりを待つ身ではあったが、今の状態から面白い出会いもできるものだ」
「……終わり?」
「ああ……話しただろう?私は未来を視たと……簡潔に言おう。キヴォトスは滅ぶ」
セイアは一転して真剣な眼差しでそう告げる。それを聞いていたモルフォはぽかんと口を開けて、セイアの話について考え始める。
「それは、如何様にも変えられない……不変の結末なんだ」
「それって……太陽がでかくなりすぎて地球を呑み込むとかそういう」
「そういうわけじゃない」
「じゃあ未知の病原体が広がってそのせいで全人類が……」
「いや違うんだが?」
「あれです?戦争が起こって土壌も大気も全てが汚染されまくって生き物の住める大地じゃなくなって終末戦争みたいになるとか……」
「違うんだが!?なんて物騒なことを言うんだ!?」
どうしてそんな恐ろしいこと言うの……?と冷や汗を流しながらセイアがモルフォを見る。しかし、モルフォ当人としては至って大真面目に考えた結果である。避けようがないならそれはもうこれぐらいしかないのでは?と前世の知識を総動員して導き出したのだ。
「……ともかく……未来は変わらないものさ」
「……まあ、私の能力は未来予知じゃないんでセイアさんの苦労とかは全くわかりませんけど……」
未来に絶望するセイアから視線を逸らし、モルフォは右手を見る。セイアは言っていた。自分は夢に形を与える能力があると。その能力が事実だとするなら、形を与える必要があるのは現実世界の話であって、夢の段階では、材料も何もなしに、自分の望むゲームを生み出せるはずだと。そして実際に、彼女の手にそれは現れた。
「お客様はもてなさないといけませんよね」
「……それは?」
「地球防衛軍5―――未知なる存在から侵略を受けた地球で侵略者と戦うゲームですよ」
★
民間人だった主人公がプライマーという侵入者と戦う中で、EDFという組織に所属していくこととなる。そして、ミッションをこなしてプライマーが繰り出す侵略生物と戦っていき、地球防衛、侵略者撃退を目指していく。話だけ聞けば簡単なように思えるが、数時間程度こなした後に休憩に入ったセイアが零した言葉は。
「……随分とまぁ、丁寧に形勢が不利になっていく様子が描かれているな……」
途中で敵の侵略部隊を謎の新兵器で撃退した(実はただの大気汚染に侵略生物が耐えれなかっただけだが)だったり、敵の重要拠点をきっちり破壊してみせたりと、要所要所でしっかりと打撃を与えてはいるのだ。それに、撤退戦となるミッション以外はちゃんと主人公も勝利してみせているのだが……やはりシナリオが進めば進むごとに膨大な敵の質量を前にEDFは追い詰められ始めていた。
「しかし、5ということは他にもあるのかい?」
「ええ、といっても5は過去作と話が繋がってないのでそこまで気にしなくて大丈夫ですよ」
「そうか……しかし、強い個だけがいる、というのも考え物だな」
「そうですか?」
むろん、現実とゲームではまるで変わってはくるだろうが。そう告げた上でセイアが考えていたのは、個人がいくら強くて、その場にいる敵部隊を薙ぎ払えたところで、勝てるのは局地戦だけだという現実だった。異世界の人間たちは当然キヴォトスの事など知らないだろうが、このキヴォトスには圧倒的な個が所属する組織も存在している。無論、他の面々が弱いかというと全くそんなことはないのだが、このゲームをプレイしていると、そんなキヴォトスの一面を指摘しているような気分にもなってくる。
「ミレニアムにもいるんじゃないのかい?」
「いやぁ……あそこは全員強いですしそういうことはなさそうですが……ん?」
ふと、モルフォが違和感に気付く。自分の体が光に包まれて段々透明になっていくのだ。困惑した様子で自分の体を見ていたモルフォだったが、それを見てセイアは心配することはないと笑う。
「大丈夫だ。君は夢から覚めようとしているだけだよ。私と違って君の体はちゃんと起きれるようだからね」
「あ、そうですか?それじゃあ起きてきます……また夜に戻ってきますね……戻れたら」
「ふふ、待っているとも」
そして夢からモルフォが消え、その場にセイアだけが残される。夢の中ではお腹も空かないし喉も乾かない。当然、眠気もない以上、彼女がやれるものはこの地球防衛軍5しかない。
「……まあ、あんなやりかけの所で止める、というのはな……現実はバッドエンドでも、ゲームの中でぐらい、ハッピーエンドは求めてもいいだろう……」
そしてゲームを再開する。主人公はストームチームに所属するストーム1となり、プライマーの移動基地を他のメンバーと共に破壊してみせたり、バルガと呼ばれる重機を回収し、プライマーの巨大怪生物を撃破する戦果を打ち出したりと、反撃の兆しを見せることもあるものの、それでもやはりじり貧の戦況は続いていく。しまいには本部までも強襲され、やっていて精神的に気が滅入り始めてきていた。それでも、ミッション数100を超えたし、人類の状況を見てこれ以上戦えないだろうという悲しい予想から、セイアは終盤だと感じ取っていた。
「……中々、ハードだな……」
次のミッション内容は追い詰められているストーム4というウィングダイバー達によって構成される部隊の救出。戦況が悪化していく中、最後の頼みの綱であるストームチームが欠けるという事態は回避しなければならない。スラッガーとMLRAを撃ち込み、侵略生物を倒していきながら、どうにかストーム4を救出しつつミッションをクリアする。
「……よかった」
安堵の声がセイアの口から漏れる。ゲームとはいえ、仲間が死んでいくというのは決していい気持ちではない。ましてここまでプレイしていると、嫌でもストーム1に感情移入してくるのだ。そして次のミッションは、大量の侵略生物と敵兵器の群れを前にするストームチーム。しかし、そこでチームメンバーたちが、そしてオペレーターが零す台詞も死を意識したものとなっていた。正直きつい。
「死ぬ、なんて軽々しく言ってほしくないものだけどね……!」
どうにかミッションをクリアする。そして次のミッション。敵の母船、ナンバー11を追いかけるストームチームの前に集結してくる大量の敵。救援も望めない状態でストームチームは絶望的な戦いを強いられていた。それでも必死に抗い、ミッションをクリアしていく。そしてついに、次はないと言われたマザーシップ破壊ミッションが開始する。完全に死地へ向かうつもりのストームチームの台詞を聞きながら、間違いなくこれが最終決戦だと信じて、セイアはコントローラーを握り直す。
(……全く、とんでもないゲームをやらせてくれたな……)
マザーシップとの最終決戦と並行して行われる世界中の決戦。世界中に散らばるマザーシップが一ヶ所へと迫るという絶望的なオペレーターの声が聞こえてくるが、セイアは遂に目の前のマザーシップナンバー11の砲台を破壊することに成功する。それと共に流れる勇ましいBGMと共に、やっと終わったかと安堵する。だが―――
「……は?」
先程まで倒していたはずのマザーシップが突然分離して第二形態に。それを見て、あれこそが敵の司令船、コマンドシップだと言う司令部たち。それを撃墜してと叫ぶオペレーターと司令部。敵が集結する前にと言うのだが、
「む、無茶を……!というかこの少佐の部下の声聞いてると何故か彼女の姿がよぎるんだが!?似すぎじゃないか!?」
どうしろってんだ!そう叫びながらどうにかこうにかして戦いを進めていくセイア。阿鼻叫喚の通信にガリガリと精神を削られながらも必死で絶望に抗うセイア。死力を尽くして漸くコマンドシップを撃墜し、遂にプライマーとの戦いに決着がついた。喜びに湧き上がる通信。そしてついにコマンドシップが大爆発し―――
「……は?」
人型のラスボスがいた。そこでミッションは終わったが、セイアは暫く固まったままだった。
「あ、もうラスボスまで来たんですね」
「も、モルフォか!?待て待て待て!?まだ終わりじゃないのか!?」
そしていつの間にか、外は夜となっていたようで再びモルフォが夢の中に現れてきていた。そしてモルフォはぐっとサムズアップしながらセイアに告げるのだった。
「次で終わりですよ。頑張ってかの者を倒しましょう!」
まあ本番はEDF6ですけどね、という台詞を内心呟きながら。