転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
(……セイアさんを探しに来たら蝶になってて、何故か先生がいた……)
モルフォが意識を取り戻したことを受け、ゲーム開発部の皆が見舞いに来てくれた後。モモイ達も疲れている事もあり、別室に移動して休息をそれぞれ取る中、モルフォもここで寝たらセイアに会いに行って無事に助かったことを伝えようと思って眠りについたのだが。何故かモルフォは蝶になっていた。
(元に……いいや、今は私が話す内容よりセイアさんが話すことの方が先生には大事そうだし……振られたら頑張って話そう。というか戻れる……戻れるよねこれ?夢の中だし……)
少しだけ嫌な予感がしてきた。こんな体では夢の中でセイアと遊ぶこともできないではないかと。あまりの自分の体の変化も相まって状況にそぐわない考えすら浮かぶが、セイアと先生の話が始まったことで一旦その考えを打ち切って二人の会話に耳を傾けるように、セイアに差し出された手の甲の上に乗る。
そしてセイアが語り出したのは、過去に自分の身に起こったこと。自分が夢の中の住人となるに至った経緯と、モルフォに出会った後の話。そしてモルフォを通じ、ミカに生きている事を伝えることを始め、モルフォの身に危険が及ばないようにセイアなりに注意を払いながら干渉を続けていたこと。だがその中にモルフォと遊んでいたことは一切含めず、あくまで話に付き合ってもらったで押し通している様子を見るに、この事実だけはモルフォとの秘密にして墓に持っていくつもりのようだ。
「……だが、今のままでは駄目だと気付いた。気付いたから目を覚ますことにしたんだ。私も……私にできる範囲で戦おうと思ってね。まあ……ミカやナギサには負担をかけてしまったが」
「……そうだね。セイアもきっと、セイアなりに苦労していたんだね。そしてモルフォもありがとう。セイアと一緒にいてくれていたんだね」
セイアの話を聞いた先生は優しく話し始める。セイア達の事情はわかった。その上で、こうして夢で彼女と出会ったのは、これからに必要なことなのだろう。
「かつての私なら、大人しく滅びを待ち、諦めていたのだろう。だが、今は違う……いいかな?アリウスが作り出した条約は……まだ不完全だ。先生、君も知っている通り、書き換えられる余地がある。トリニティとゲヘナ、エデン条約の締結に必要な面々を集め、新たな……いや、もう一つのエデン条約を締結させるんだ。そうすることで……奴らは致命的な矛盾を引き起こすだろう。その時……どちらが優先されるかはわからないが……」
アリウスが締結した、アリウスを守り、アリウスにとって滅ぼすべき敵であるトリニティとゲヘナを葬るためのエデン条約。トリニティとゲヘナが締結する、トリニティとゲヘナを守るために結ばれるエデン条約。この二つのエデン条約が存在することで、ユスティナ聖徒会はトリニティとゲヘナ、この二つを滅ぼすエデン条約と守るエデン条約の二つの中に存在することになるのだ。
「でも、やっぱりそれが必要なことなんだね?」
ミカやハナコとも話した通り、やはり条約を書き換えることが事態の解決に必要なようだ。そしてそのためには、古聖堂へ向かう必要があるようだ。
「やるつもりかい?本当に成功するかもわからない。それに、そこに向かうべき正義実現委員会も、風紀委員会も被害が大きい。ナギサだってまだ眠り続けているだろう?」
「何とかしてみせるよ。私は先生だからね。それに……戦争なんて起こしちゃいけないんだ。絶対に止めなきゃいけない……トリニティとゲヘナだけじゃない、他の学園の生徒達も守らないといけないんだ。もちろん、アリウスもね」
「先生だから、か……ふふ、面白いね。それにアリウスも、ときたか。確かにミカも気に入るわけだ。自然と、安心できる」
意地悪そうに質問してきたセイアに、確信をもって答える先生。既にピースは揃っている。だからこそ、それに対する答えが先生にはある、ということなのだろう。
「実際に話ができてよかったよ、先生。時間を取らせてすまなかったね。いずれ、時間が取れたら先生とも話をしたいものだ。まあ、その前に話をしなければならない人たちがいるが……」
「私はいつでも大丈夫だよ、だから、その時が来るようにするね……?」
と、ここで先生が自分の手が透けていることに気付く。その姿は、セイアとモルフォには見慣れた、夢から覚めるいつもの姿である。
「体が……」
「気にしなくていい。夢から覚める者に共通する現象だ。では、次は……現実で会おうじゃないか」
「うん、わかったよ。それじゃあ、またね」
セイアの説明に安心し、そう語り掛けると先生の姿が消えていく。それを見届けたセイアがモルフォを見つめていると、モルフォがセイアの手の甲を離れる。と、その体が光に包まれて大きくなっていき、元の人の姿へと戻っていく。
「……あ、戻れた」
「夢ではあるからね。夢の中では自分は人以外の何かになるのは珍しいものでもないだろう?」
「それもそっか……でも、人に戻れなかったらどうしようと思ってました」
「遊べなくなるからかい?」
「それもあります」
人の姿に戻ったモルフォが何かおかしな部分が体にないか確認していく。一通り確認が終わったと思いきや、モルフォの体もまた消え始めていく。どうやらこちらも、現実の方で何かが起こって目を覚まそうとしているらしい。そしてモルフォが消え、一人でテラスに残ったセイアはやれやれと肩を竦めると、
「ふふ、いつもの光景だね。いや、いつもの光景になってしまったのか……やれやれ、名残惜しいね。だが夢は見るものであり、同時に醒めるものだ。もう少しすれば、私も戻るとしよう」
そう呟いて紅茶を口に含むのだった。
★
「……?」
「すみません、目を覚ましてしまいましたか」
体の方に何かあったのかモルフォが目を覚ますと、傍にトキの姿があった。
「……あれ?トキ、どうしたの?」
「モルフォに何かあった時、すぐに対応できるようにこちらで待機しています。モルフォの方も無事で何よりです」
部屋にある時計を確認すると、深夜に目を覚ましたようだ。一人で眠っていたはずの部屋にトキが来た理由は、モルフォを心配してのことらしい。
「そっか、心配してくれてありがとう。一応、このまま安静にしてれば大丈夫だって」
「ならばよいのですが……ああ、そうです。目を覚ましてから伝えようと思っていたのですが……先生が先程仮眠から目を覚ましまして。作戦は夜明けにやると」
「夜明け……」
礼を言われ、照れながらも話題を切り替えるように先ほどまであったことを伝えるトキ。セイアと話をしていた先生も短い眠りから目を覚まし、古聖堂へ再び向かうために色々手を打っているようだ。作戦開始時期は夜明け、しかし。
「トリニティの人達と風紀委員会は大丈夫なの?」
「早朝には動けるようになる人がほとんどですね。そこに私達と、アビドスの対策委員会もシャーレの指揮下に入って行動する予定です」
「そっか……」
「救助に向かう時に万が一戦力が足りない時を考えてネル先輩からリオ様に進言がありまして。そこからアビドスに連絡し、その後、先生と連絡が取れたことで先生から正式にアビドスに依頼を申し出てアビドスから救援として対策委員会が赴いてくれることになりました。対策委員会が到着したことで先生が直接対応したようですね」
対策委員会は確か軍用ヘリを所有していたはずだ。それを使って空中からトリニティの方に駆けつけてきたのだろう。そして先生が起きたのはもしかしたらホシノ達が到着したことでその対応をする必要があったのかもしれない。
「ユスティナ聖徒会を相手にするにはトリニティとゲヘナだけでは不十分ですから。他校から戦力を用意するのはシャーレの視点で見れば合理的な判断だと言えるでしょう」
「モモイ達はどうするつもりなの?」
「それについては起きてから伝えることになると思います。ですが……今の皆さんならおそらく」
「……そっか。だとしたら気を付けてもらうしかないね。今の私は戦闘に参加できないし」
仮にゲーム開発部の面々がこの戦いに参加したとしても、モルフォの姿はそこにはない。とはいえ、満足に戦えない人が参加するよりはそっちの方が彼女達も安心するというものだろう。
「後ろで控えてるよ」
「そうか。そう聞いて安心したぜ」
ふと、部屋の扉が開いて、ネルが顔を出す。トキを迎えに来たのだろうか、いつの間にか眠りから覚めていたモルフォの言葉を聞いて、少し嬉しそうに笑みを浮かべるネルを見て、モルフォが手を振る。
「ネル先輩」
「おー、ここにいたんだねぇモルフォちゃん。凄い怪我したって聞いてたから心配しちゃったんだよ~」
「ホシノさんも一緒に来てくれたんですね」
ネルと一緒に入ってきたのはホシノであった。彼女もヘイローを壊す爆弾を喰らいかけたモルフォの身を案じていたのだろう。
「なんか……凄い爆弾を喰らったらしいじゃん?いやぁ即死する爆弾なんて怖いねぇ……」
「ええ、エンジニア部がシールドに自爆装置を入れてくれたおかげで助かりました」
「……え、それ本当だったんだ」
とはいえ、やはりシールドに自爆装置を仕込んでいたおかげで助かったという話は嘘だったのではないかと心のどこかで思っていたのかもしれない。まさかそれが真実であるとは思わず、困惑したようにネルを見ると、ネルも気まずそうに視線を逸らす。
「ほんと世の中何が役に立つかわかんねーな……あんなもんが役に立つんだから……」
「うへぇ~……」
「そういえばお二人はどうしてこちらに?」
気まずそうな雰囲気を察したのか、モルフォも話題を切り替える。それを受けて、思い出したようにネルが手を叩く。
「んあ?ああ……トキ、お前も休めって言いに来たんだよ。モルフォとは違ってお前は参加するだろ」
「それなら大丈夫です。安全が確保できれば仮眠を取らせてもらうので」
「えっと、ここで?」
「はい。私の事はお気になさらず」
「……まあ、トキがそれでいいなら私はいいけども……」
「お前ら……」
「仲が良いのは良いことだねぇ」
何か言いたげではあったが、ホシノの言っていることも事実ではあったのか、特に触れないでおくことにする。
「ったく、状況が状況だからしょうがねえってのはわかってるが、もうちょい自分の体を大事にしとけよ?お前がこんな目に遭って気になる奴は多いんだからな……言っとくがあたしらだってひやひやしたんだぞ?トキなんてあいつらを再起不能にしかねない勢いだったんだからな」
「まあネルちゃんもその一人だもんね~」
「うるせえよ……ま、普段のお前の戦い方見てりゃその心配はないだろうがな」
「わかってますよ」
ネルの言葉に頷くモルフォ。盾の方にガタが来ていたことと敵の未知の攻撃の威力が高すぎた事による交通事故のようなものだ。モルフォの対応自体は決して間違っているわけではないが、だからこそこれをきっかけに変な方向に突き進まないようにと釘を刺す。とはいえ、この様子を見るにモルフォの方は心配ないだろう。
「でも、ネル先輩とホシノさんも気を付けてくださいね。まだ、例の爆弾は他にあってもおかしくないんですから。もし二人が死んだら嫌ですから」
「わーってるよ、あんな奴らにヘイローを壊させねえっつうの」
「うへへ、モルフォちゃんに心配されちゃうなんておじさん嬉しいなぁ」
むしろ、逆にモルフォから心配までされる始末だ。実際に喰らった本人だからこそ出てくる言葉なのだろう。
「……本当に誰かが死んでしまったら、消えてしまったら知ってる人は皆悲しみますから。だから、皆が生き残らないと、そこにいないと駄目だと思っています。何があっても」
「「「……」」」
思い出すのは、ゲーム開発部やセイア、ヒフミ、アズサの姿だ。それに、モルフォ自身今となってはすっかり忘れているが一度死んでいる身である。だからこそ、命をそう軽々と扱ってはいけないと思っているし、今回の事件、そしてこれまでの一件を経て、決してなくなってはいけないものだと強く思っている。命があるならいくらでも再起できるとは思うが無くなったらそれまでだと。
「だから……今回の事件が終わったら、また皆でゲームしましょう!」
「……おいおい、折角真面目そうな雰囲気だったのに結局そこに行きつくのか?」
「うへ~、でもモルフォちゃんらしいねぇ……確かにゲームは誰でも一緒にやれるもんねぇ」
「そうですね」
この戦いが終わったら私、皆とまたゲームをするんだ……そんな、真面目な話の中に入れられたゲーム開発部らしい話のオチに思わず呆れるネル。ホシノは少し口角を釣り上げながら苦笑しており、トキは笑みを浮かべていた。
「じゃあ終わったら皆で何かやれたらいいねぇ、リゾート地に行った時みたいにね」
「ああ、あれか……」
「ネルちゃん知ってるの?」
「あ?一応顛末ぐらいは聞いてるぞ……つーかお前も前言ってたじゃねえか」
先程までの雰囲気はどこへやら。楽しい談笑をしていると、ふと扉に手がかかった音が鳴り、四人が視線をそちらに向ける。扉の外にいる人物は、自分の気配に気づかれて会話が中断してしまったことを察したのか、気まずそうに扉を開ける。すると、ひょっこりとヒナが顔を出してきていた。
「……久しぶりね。小鳥遊ホシノ……」
「えーと……確か……ゲヘナの風紀委員長ちゃんだっけ?」
「……」
瞬間、ヒナの動きが完全に固まった気がした。その様子を見て、なんかまずいことしちゃった?と冷や汗を流すホシノ。そんな彼女を見かねたのか脇腹を小突きながらネルが口を開く。
「空崎ヒナだろ確か。覚えといてやれよ」
「お、覚えてるし……あの時一緒に戦ってくれた子だって覚えてるし……」
「おう名前思い出せてなかったじゃねえかよ」
「ネルちゃんみたいに印象強くないし……」
「……そんなに私、印象ないのかしら……ゲヘナだと知らない人いないのに……」
「地元では知らない奴はいないと言われてもあまり参考にならないのでは?」
「……」
遠い目をしながら視線を逸らすホシノや、トキのストレートな言葉に落ち込み始めるヒナ。その様子を見ながら困ったように頭を抱えるネルと三者三様の反応を見せる様子を見て、モルフォとトキは無言のまま呆れた表情を浮かべてしまう。
「いや、だって……そりゃネルちゃんはよくゲームで遊ぶけど風紀委員長ちゃんそんな接点ないし」
「……なんで……?私もゲームはするのだけど……」
「え!?そうなの?」
「……おそらく空崎ヒナはホシノさんがネル先輩と仲が良いことに戸惑っていると思いますが」
「トキ!」
「お前よぉ……」
見かねて口を開いたトキをモルフォが慌てて制止する。一瞬トキを見たホシノとネルだったが、改めてヒナの顔を見ると、図星だったのか俯いてしまっていた。これにはあんまりな物言いをするトキに一言言う気力もすっかり消し飛んでしまう。
「うへ~な、なんで風紀委員長ちゃんが戸惑ってるのかわからないけど……まあ、その……そのうちいいことあるよ。ね?ネルちゃん?」
「おう、そ、そうだな」
「……本当に仲がいいのね……二人が初めて会ったの、あの時だと思うのだけれど……」
「それに関してはお前もほぼ同じじゃねーか……」
「……」
「お前、実はセンチになってんじゃねえか……?ちょっと休んだ方がいいぞ……?」
「……この後、先生やミカと話をしてから休むことにするわ……」
ネルの言葉に完全に打ちのめされたかのように黙り込んでしまうヒナ。もしかしたらエデン条約のために色々準備してきた結果の今日、もとい昨日ということもあって思った以上に精神的に弱っているのかもしれない。
「え、えっと……ところでヒナさんはどうしてこちらに……?」
「あ……ごめんなさい。ゲーム開発部に礼を言おうと思って。だけど、皆寝ていたから……それでもし起きてたらと思ってここに来たのだけど。夢見モルフォ、先生を助けてくれてありがとう」
「ああ……気にしないでください。それに、先生を助けられたのはヒナさんがあそこまで連れてきてくれたからじゃないですか。だから、私達も間に合ったんですから」
「そう……わかったわ」
たまらず、モルフォがヒナに用件を促す。それを聞いて、モルフォに礼を言いに来たのだと判明する。しかし、モルフォからしてみれば先生を助けられたのはいろんな人の力があってこそだ。それを聞いたヒナはどこか納得したように笑みを浮かべて頷くのだった。
★
翌朝。まだ雲が空を覆っており朝日も見えないその時間帯に、トリニティの校舎前には複数の学園の生徒達が待機していた。トリニティの正義実現委員会、ツルギやハスミを中心とした復帰できる面々で構築された戦力に、シスターフッドの面々。今回の作戦のために古聖堂へと赴くことになったミカ。ゲヘナからは風紀委員会。そして、補習授業部はシャーレの指揮下で動くことになる。他にはシャーレの部員としてミレニアムのC&Cとゲーム開発部。そしてアビドスからは廃校対策委員会が参加することになる今回の作戦。
「……で、ゲーム開発部も参加するの?」
「うん!モルフォの仇だよ!それにミドリだってやられたし!」
「いやモルフォは生きてるでしょ……」
カリンから投げかけられた問いに、目を覚まして今回の作戦の事を聞いたモモイ達ゲーム開発部もそれぞれの考えもあって参加することに決めていた。その理由の一つにモルフォやミドリが怪我したこともあるが、それ以上にここまで来たら行けるところまで、というところもあるようだ。
『……アリス、いいのですか?今回は私が……』
「いえ、大丈夫です。アリスは勇者なのに倒れてしまい、モルフォを守ることができませんでした。だからこそ、アリスは勇者として、これ以上戦いを広げるわけにはいきません。皆と力を合わせて、世界に平和を取り戻すんです」
「うん、頑張ろうねアリスちゃん」
「モルフォちゃんはいないけど……でも、先生も、他の皆もいるし、きっと大丈夫だよね。モルフォ……あなたがいなくても私達はきっと……」
『いやいるからね?』
「おいおい、コントでもやってんのかお前ら?」
「成程……こういうのもあるのですね」
ユズ達の耳にモルフォの声が届いていた。今、モルフォは装備が破壊されたことや未だ負傷から回復しきっていないこともあり、裏方の方に回っているのだ。そんな為か、妙な話の流れに行きかけて思わずネルが呆れたり、トキが謎の関心を見せたり。その様子をアカネが苦笑し、アスナが楽しそうに見つめていたりしている。
場所は打って変わってトリニティの中の一室。オペレータールームと化していた場所にモルフォはいた。そこにはアヤネ、ハナコ、アコを始めとし裏方を務める生徒達が集まっており、モルフォもミネから裏方であれば、と許可をもらってこちらに入っていた。
「モルフォ、オペレーターの方は大丈夫?」
『あ、はい。大丈夫です。とはいえ、そこらへんは慣れてる人達にメインを任せることになると思いますが……細かいところぐらいは手伝っていきますよ』
『よろしくね、モルフォちゃん』
『ふふ、こんな狭い部屋の中でモルフォちゃんと一緒に密着してあんなことやこんなことができるなんて……』
『何言ってるんですかあなたは!?場所に適した言動というものがあるでしょう!?全く……常識をちゃんと持ってください!』
オペレーター組の方もかなり騒がしくなっているようだ。しかし、いがみ合ってる、といった雰囲気ではなく、いい意味で騒いでいる。再び場所が校舎前の方へと戻り、聞こえてくる声からこちらの方は問題なさそうだと判断し、先生が別の所に視線を向けると。
「ん、これで準備はオッケーだね」
「はい~☆じゃんじゃん撃っちゃいますよ~」
「……この前より随分人数増えたわね……」
「そうだね~」
対策委員会の皆がそれぞれ武器のチェックを行っていた。しかし、その雰囲気は戦いにいくものとは思えない程和気藹々としている。が、以前アビドスにいた時の事を考えればかなり余裕が出てきていることが伺える。きっと彼女達なら頼りになるだろうと判断し、再び視線を動かすと。
「……ごめんね、ツルギちゃん、こんなことになっちゃって」
「いや……こうなるとは誰も予想できなかった」
ツルギと話をするミカの姿があった。彼女の手には愛用のサブマシンガンが握られており、いざとなれば彼女もまた戦う覚悟が見て取れた。
「だが……あのユスティナ聖徒会を見て、一つだけ実感できたことはある」
「実感できたこと?」
「今回のアリウスに纏わる一連の流れ……その全てが、結局トリニティに帰結するのだと」
「……そうだね。ある意味、トリニティの罪、なのかもしれないね……私が言うべきことじゃないかもしれないけど」
自嘲するように笑うミカ。しかし、今の彼女はアリウスに、マダムにそそのかされるままに後戻りのできない道を進もうとした時とは違う。しかし今、アリウスの生徒がその後戻りのできない道を進みかけている。戦争という、戻れない道を。それぞれ、思うところは確かにあるのだろう。だが、その争いだけは止めなくてはいけない。それだけは、ここにいる全員が共通の思いとして抱いていた。
「ユスティナ聖徒会……まさか、私達シスターフッドがその相手をすることになるとは……」
「サクラコ様……」
「……わかっています。今、私達がすべきことは」
また、あるところではシスターフッドの黒い修道服を着た、灰色の髪の少女、歌住サクラコやオレンジ色の髪の猫の耳を持つ少女、伊落マリーらがいた。そして、
「くっそー……あいつら滅茶苦茶やってくれて……ほんと我慢できない!」
「落ち着いて、イオリ」
怒りを露わとするイオリや、彼女を宥めるチナツら風紀委員会の姿があった。ゲヘナの面々としては他に万魔殿もトリニティに来ていたはずだが、昨日のアリウスの襲撃の際に乗っていた飛行船が落とされ、その時に全員が負傷、そのままダウンしてしまい、未だに復帰できるメンバーは最年少の丹花イブキ以外いない状態となっており、お留守番になっていた。
「……」
そんな中、ヒナはツルギらと話をしているミカを見つめていた。こうして集まる前にヒナはミカに呼ばれ、今回の作戦について先生を交えて話をしていた。今回の作戦で一番の鍵を握るのは自分とミカにある。だが、不思議と心配はしていなかった。ミカ自身はゲヘナの人に歩み寄れる人物だと知っているからだろう。あの時は先生が意図した部分もあっただろうとはいえ偶然もあったものだと思っていたものだが、あの時の経験は無駄ではなかったらしい。と、ミカがこちらに気付いて手を振ってきたので、ヒナも軽く頷いて反応する。
「なんか……凄い大人数になっちゃいましたね」
「トリニティとゲヘナだけでもだけど、そこにミレニアムとアビドスまで加わると壮観ね……今なら何にでも勝てる気がするわ」
「……ああ。仲間というのは、こんなに心強いものなんだな」
補習授業部の三人はというと、ヒフミとコハルは規模に圧倒されており、アズサは楽しそうに呟く。その呟きを聞いたヒフミとコハルもまた、同意するように頷く。
「そうですね。きっと、これがエデン条約のあるべき姿なのかもしれません」
「トリニティとゲヘナが手を取り合って、なんて確かに考えられないわね……確かにこれがエデン条約なのはその通りかも」
『ふふ、だとしたらもうひと踏ん張りしないといけませんね』
「ああ、今度こそサオリ達を止めよう」
ハナコの声を聞き、頷く補習授業部。先生も一通り、今回参加する顔ぶれとコンディションを確認し終えると、号令をかけるのだった。
「……行こう!目的地は……古聖堂だ!」