転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「散開!!」
「っ!!」
サオリ達が同時に三方向へと跳ぶ。直後、ベアトリーチェの両手から放たれた赤黒い光弾が着弾し、爆発を引き起こす。
「何、今の攻撃……出鱈目すぎる」
「今の爆弾でも弾でもありませんよね……!?」
「二人とも気を付けろ!」
地面を抉った爆発に冷や汗を流しながら、ベアトリーチェの狙いにならないように走る。その間も銃撃は止めないが、その身に銃弾を受けるベアトリーチェの身体には僅かな傷がつくだけで致命傷にはとてもなり得ない。
「これが、ベアトリーチェの力なのか……っ!皆、大きいのがくる!!」
「「「!!」」」
眠りに入ったモルフォを背負い、戦闘の影響を受けないように遠くへと避難し、瓦礫を遮蔽物にした先生は、ベアトリーチェが両手を掲げ、巨大な光弾を生み出している様子を目の当たりにする。それをベアトリーチェが地面へとぶつけると、激しい衝撃波が生み出され、それが遠くにいるはずのサオリ達を巻き込んでしまう。
「ぐっ!?」
「うわ!?」
「ひぃい!?」
「サオリ!!急いでその場から逃げて!!」
勢いよく柱や壁に叩きつけられてしまう三人。しかし、すぐに危険な気配を感じ取ったサオリが本能に突き動かされるように痛む体に鞭を打って無理矢理横へと転がった直後、ベアトリーチェの頭部から放たれた赤黒い光のレーザーがサオリがいた場所を攻撃し、大爆発を引き起こす。
「ぐあああああ!!」
「サオリ!?」
「サオリ姉さん!?」
レーザーの直撃こそ避けたもの、爆発を完全に防ぐことはできず、巻き込まれてしまう。そこに追撃をしようとベアトリーチェが両手を向けると、ミサキとヒヨリがサオリを助けようと駆け寄り出す。それを見たベアトリーチェが二人に狙いを変更、光弾が二人に放たれ、それが直撃した二人の体が吹き飛ばされてしまう。
「うぐっ!?」
「あぅ!!」
「皆!」
「ははははは!これが私の力!これが大人の力だ!!バルバラやユスティナ聖徒会は全て聖園ミカ達の方に差し向けてしまったが、それでも十分だ!」
高らかに笑いながら、光弾を放ち続けるベアトリーチェ。爆発と光弾のダメージに呻きながらも、体を動かさなければ死ぬことを察した三人が無理矢理体を動かして回避しながらも、攻撃を続けていく。先生は三人がこれ以上ダメージを受けないように指示を出しながらも、攻略の糸口を辿っていると、しぶとい三人を薙ぎ払おうと再びベアトリーチェがレーザーのチャージを開始する。
「……あれだ!ミサキ、ヒヨリ!!」
「「!!」」
「!?ギャアアア!?」
先生の指示を理解し、ヒヨリがベアトリーチェの頭部を攻撃する。瞬間、チャージされたエネルギーが爆発し、ベアトリーチェが悲鳴を上げる。さらに頭部にミサキがロケットランチャーからクラスター爆弾を発射し、それがベアトリーチェの頭部を含めて全身を攻撃する。
「ガアアアアア!?」
どうやら、自爆した頭部の防御力は弱くなっているようで、そこの部分へのダメージが大きくなっているようだ。たまらずベアトリーチェは両手に光弾を生成して攻撃しようとするが、
「サオリ!」
先生がそれを攻撃するようにサオリへと指示。サオリが即座に光弾を撃ち抜くと、それが爆発し、ベアトリーチェの両手が巻き込まれてしまう。
「ウアアアアア!?お、おのれえええええ!!」
あまりの痛みに呼吸を荒くしながら、ベアトリーチェが四人を睨みつける。だが、地面に張られた彼女の下半身は、ベアトリーチェの移動を許さない。
「……よし、見えたね。皆、勝つよ!!」
その声に三人は強く頷く。ベアトリーチェの姿が生み出す致命的な欠点と、攻撃に対する対抗策。それを見つけた先生とアリウススクワッドは、勝利へ向け反撃を開始するのだった。
★
「……ここ、は?」
セイアが目を覚ました時、目の前に広がっていたのは和に彩られた景色の一室であった。襖の外から見える和やかな光景は、トリニティやそれらのとは毛色が異なっており、どちらかというと、
「……百鬼夜行?」
百鬼夜行でよく見れそうな和風の景色であった。しかし、そうだと考えると何故自分は百鬼夜行にいるのかという疑問が湧く。
「……確か私は、ベアトリーチェに……」
直前までの、自分の記憶を手繰り寄せる。バシリカの至聖所、祭壇にて捕らえられた自分は、先生とモルフォを呼び寄せるための餌として使われた。その後、アリウスの生徒達が運んできたアツコを用いて、ベアトリーチェは儀式を開始。キヴォトス外へ繋がる通路を作られ、そこへ自分は用済みとばかりに放り込まれたのだ。ベアトリーチェが得意げに流暢に語っていたのでよく覚えている。その儀式によって外へ繋がる窓が開けられた時、ものすごく嫌な予感は感じ取っていた。奇妙な感覚で、自分の中の何かを無理矢理暴かれそうになる感覚は今も残っている。今は大分マシにはなったが、あの感覚は二度と味わいたくないものだ。
「……いや、だとしたらここがキヴォトスの外なのか?だがとても……」
「ふぅむ、お客様かの?」
「!」
セイアが考え込んでいたところに突如として聞こえてきた声。その声に思わず跳ね上がってセイアが振り向くと、そこにはキセルを持つ、狐の耳と尻尾を伸ばした白髪の少女がいた。腰まで髪を長くのばし、髪の色と同じかと見間違う程に白く綺麗な肌を見せるその少女は、興味を持ったかのようにセイアへと語り掛ける。
「ここに妾以外が足を踏み入れるとは……初めてじゃのう。如何してこのような白昼夢に見えたのじゃ?」
「貴女は……いや、貴女も私を認識できるのか?」
「妾の名はクズノハ……百鬼夜行の預言者。しかし……ふむ?其方の身体……色彩と遭遇したか」
「……色彩……?」
そして、セイアの身体を見ていたクズノハと名乗った少女はセイアの身に起こった異変に気付く。彼女の口にした色彩、という聞きなれないワードにセイアが首を傾げているが、クズノハの方も疑問そうにセイアを観察していた。
「しかし妙じゃのう……色彩と遭遇した者が、これほど意識を保てているとは」
「……その色彩というのは」
「キヴォトス外から到来する曠古の災禍を引き起こす存在じゃ。其れそのものが人格や意志を持っているのかは分からぬ。肝要なのは、このキヴォトスの民にとって、あれは致死の毒足り得るという点じゃな。色彩に露出された者の肉体は捻じれ、精神をも蝕まれていく……」
「……」
色彩という存在と接触させられて感じた奇妙な感覚を思い出す。体は捻じれ、精神は蝕まれる。確かに、そう表現してもよい感覚だったと言えるだろう。そういえばベアトリーチェの説明には神秘は恐怖に反転する、という内容も含まれていたと思い出す。しかし、セイアがこうしてはっきりと意識を保っていることは、色彩の存在を知っているクズノハにとっては予想外のことらしい。
「キヴォトスの民であれば、その過程で死に至ることはない……じゃが、個が捻じ曲げられ、異物と成り果てるじゃろう。果たして、それが同一存在と呼べるかは別の話じゃがな……とはいえ、色彩がキヴォトスを見つけることは不可能に等しい」
「不可能?」
「そう。砂漠で一粒の砂を見つけると同義……触れてしまったのであれば、まこと数奇な巡り合わせとも言える」
つまり、生きていて色彩と遭遇する可能性はまず存在しない。それこそ天文学的確率のようなものなのだろう。だからこそ、クズノハは気になったようだ。何故セイアが色彩と接触することになったのか。
「体を見るに色彩と直に接触したわけではなさそうじゃが。何があった?申してみよ」
「……それは」
セイアは祭壇で行われていた出来事をクズノハに話す。それを聞き終えたクズノハは溜息を吐いてしまった。
「……愚かな。色彩を利用して身体を変化させようとするとは……しかも、色彩を呼び寄せる儀式を行っているとは」
「……色彩を呼び寄せる……そうなれば、どうなるんだ?」
「言うまでもないじゃろう。じゃが……儀式を途絶しようと足掻く者達もおるようじゃな」
「!先生……」
ベアトリーチェの行動を愚かだと吐き捨てると同時に、儀式を止めるために戦う先生達の存在を指摘する。確かに先生ならば、アツコを助けようとするだろう。今の自分を先生がどうこうするのは困難だと思うが、アツコを助けることで儀式を止めることができれば、その色彩を呼ぶことを回避することだってできるはずだ。
「……成程。其方は色彩と直接遭遇したわけではないのじゃな。白昼夢を通し、儀式という窓から色彩を垣間見たのじゃろう、だからこうして無事でいられたのじゃな」
「……と、するとここは厳密にはキヴォトスの外とは違うのかい?」
「さて、それはどうかの?」
セイアの質問をのらりくらりと躱すクズノハ。しかし、セイアもそれ以上追及はしない。ここがどこか、よりもどうすれば戻れるか、が大事なことなのだから。が、クズノハの懸念は違うようで。
「しかし、長くは保たぬじゃろう。其方の精神は此処にあるが、肉体は崩壊の一途をたどっておる」
肉体と精神が完全に剥離しているのじゃから当然じゃな、と語るクズノハにセイアの表情が歪む。これまでは自分の精神と肉体が紐づいていたからこそ、身体の方は長い睡眠の影響による身体能力の低下だけで済んでいたが、今の自分はそれよりも酷い状態になっていることに気付かされてしまったのだ。
「どうにか留める方法はないのか?」
「ない。加えて今は儀式の最中じゃろう。つまり、キヴォトスから外へ向かって一方通行に開かれた入り口に其方は放り込まれた。戻ろうとすれば逆、愚者が外から引き入れようとする通路に其方を放り込むことになる。じゃが……」
「……色彩の中に飛び込むと」
「うむ」
戻る方法はないと断言するクズノハ。厳密には方法だけはあるが、その方法は確実に失敗するというものだった。
「色彩は我らの本質を歪曲する。より正確に言うのであれば、根源を反転させると言うべきかのう。いずれにせよ、今の自分でなくなることに変わりはない。故に代償を一つ払ってもらう必要がある」
「代償?」
「其方を構成する本質の一つを手放すということじゃ。此の場合、未来視がそれにあたるかの」
「?……未来を視る力を捨てれば、色彩から逃れられるということじゃないのかい?」
クズノハの説明を聞いて、セイアは疑問そうに首を傾げる。ここだけ聞いてみれば、自分の力を手放せばすぐにでもキヴォトスに戻れるということではないのかと。だが、クズノハはここが本題ではないのだと首を横に振る。
「勘違いしてはいけないのは、今の其方の身体に起こっている侵食からは解放される、ということじゃ。そこから元に戻すために色彩が通ろうとしている道を通過すれば再びお主は色彩に侵食されるだけじゃよ」
「……」
クズノハが言う本質を捨てることによる回復とは、言うなれば病巣と化した臓器の一部を切除する、といったものなのだろうとセイアは解釈する。しかし、セイアの精神を回復はできても、今のままではキヴォトスに戻るために再び色彩にその身を侵す必要があるのだ。肝心の道が用意されていない。その言葉にセイアは思わず黙り込んでしまう。と、クズノハが訝し気に首を傾げ始める。
「しかし、うーむ……少し失礼」
「?」
「……うむ、何故こうも様々な出来事が短時間に同時に起こっておるんじゃ?」
「何?」
「エデン条約、じゃったか。そこから間を置かずに愚者が色彩を呼び込む儀式を開始するとは……加えて夢の蝶を得ようと画策、先生の抹殺、そして其方の追放、いやこの場合は始末のつもりじゃったのじゃろうが……そこに多くの学園が、勢力が入り乱れ面白い様相となっておる。おかげで愚者は焦って先生に対抗しながらも儀式を強引に進めようとしておるようじゃ」
セイアの目を見て、その奥から現世の出来事を読み取ったのだろう、クズノハは調印式から始まるベアトリーチェの行動や状況の変化をそう表現する。同時に、何故セイアを送り返せないのかという理由に補足を付け加える。
「焦った愚者は色彩を呼んですぐに儀式を終了させようとしているのじゃろう。儀式が中断されれば完全に窓を、道は閉ざされてしまう。そうなればお主は永劫彷徨い続けることになるじゃろう」
「……道……」
クズノハが口にした道、という言葉を受け、セイアの脳裏に、一人の少女の姿が浮かぶ。瞬間、まるでそれが合図となったかのように、そよ風が部屋の中に入ってくる。
「……風?」
「……ほう?新しい風じゃな……小さく優しい、じゃが……いずれ大きい嵐へと変わるかもしれぬ、そんな心地の良い風じゃ。ふふ、驚いたぞ。其方だけでも初めてじゃというのに、よもや二人目とはな」
「二人目?……まさか!」
セイアがはっとなって顔を上げる。そこには、見覚えのある一匹の蝶が舞っていた。
「モルフォ!?どうしてここに……まさか、ベアトリーチェに!」
「……違いますよ、セイアさん」
セイアの前に降り立った蝶がモルフォの姿へと戻る。そしてクズノハの方を見ると、クズノハは楽しそうな表情を浮かべながらモルフォを見つめる。
「お主もよく来たものじゃ。百鬼夜行の預言者、クズノハの居るこの地に」
「クズノハ……さん?予言者って……」
「彼女には不思議な力があるらしい。だがモルフォ、君に何があったんだ?心は大丈夫なのか?」
「お、落ち着いてください。私はピンピンしていますから!」
心配そうにモルフォの身体を擦ったりしてくるセイアに苦笑しながらも、安心させるようにセイアを抱きしめる。そして、どうやってここに来たのかをモルフォは説明し始める。
「ベアトリーチェのいるバシリカの至聖所まで、先生やサオリ達アリウススクワッド、ネル先輩やミカさん達と一緒に向かったんです。ネル先輩達はユスティナ聖徒会を食い止めてるので別行動中ですが……それでベアトリーチェがセイアさんをキヴォトスの外に放り出したと言っていたので、こうして眠りについて探しに来たんです」
「探しに?だが、どうやって外にいる私を、それに外に行くということは色彩が……」
「色彩?えっと何の事を言ってるのかはわからないんですが……探すのは難しくありませんよ。だって、私とセイアさんは道で繋がってるじゃないですか」
「……あ」
モルフォの指摘に、過去の自分の発言を思い出す。自分の予知夢に由来する夢に関する力と、モルフォの夢を形にする能力。その二つが結びついたことでお互いの夢が繋がっていることを。
「ふむ、どうやら愚者の儀式でキヴォトス内外の境目が曖昧になっていたようじゃのう。二つの夢に関係する力によって新たな道が拓かれたと……」
「じゃあ、これで帰れるのかい?」
「うむ。しかし……其方、モルフォと言うたか。何故ここまでやってきた?危険なのは承知じゃろう?」
まさかの方法で帰り道が確保され、安堵するセイア。クズノハはモルフォを見つめながら、質問を投げかける。それを聞いたモルフォは笑い、自分の答えを返す。
「危険なのはわかってましたけど、セイアさんを助けるためですから。皆がここまで頑張ってきたんです、私だって自分にできることはやりたいって、そう思っただけですよ。皆が助かるために頑張るのは当然のことでしょう?」
「……ほう、迷いなく断じるか。それも友のためと……お見事。して、其方はどうする?戻るために、己が本質を捨て去るか?」
「それしか方法がないのなら。それに……未来を視なければ足掻けない程、人は弱くないからね」
「こちらもお見事」
そしてセイアもまた、クズノハの質問にはっきりとした強い口調で返答を返す。二人の答えにクズノハは気持ちのいい笑みを返す。
「嗚呼、セイア。最後に、本質を喪う過程で最後の予知が発動するかもしれぬ。其れは必要な痛みじゃ……我慢せいよ」
「……!?」
「……セイアさん!」
そして別れの挨拶をした直後、セイアが苦しそうに呻く。予知夢の力を捨て去ろうとしている影響なのだろう。その手を握り、セイアが耐えるのを待っていると、痛みに耐えるように目を閉じていたセイアが虚ろな目を開いてモルフォを見る。
「……?」
一瞬、セイアにはモルフォの姿が奇妙に見えた。光で作られた青い蝶の羽を生やし、頭部には青と黒を基調とした髪飾り。ジャケットは消えておりその下の白いYシャツに青いネクタイ、そして両腕に蝶の羽をモチーフとした袖という恰好になっている。下は長ズボンではなくスカートという服装で、髪は首元ではなく腰まで伸ばしている。そんな、普段の彼女とは異なる格好に。
「モル……フォ?」
しかし、すぐに元の姿に変わる。そこでもセイアの目に光が戻り、本来のモルフォの姿を認識する。その様子を見たクズノハは、セイアの様子に見当をつける。
「予知夢を手放す方の痛みの方が強かったのじゃろう。予知の内容はいずれ、記憶という形で見れるようになるはずじゃ。では、此れにてさらばじゃ、セイア、モルフォ。現世に戻っても妾を探そうとするなよ?妾はもう、其処には居らぬからの」
「!それは……」
「クズノハさん、あなたは一体……いえ、セイアさんを助けてくれてありがとうございました」
だが、それについては触れずにモルフォが頭を下げる。クズノハが笑って手を振り、見送る様子を見ながら、モルフォとセイアは薄れゆく意識の中、至聖所とトリニティにそれぞれ帰還することになるのだった。
★
「お、おぉおおおお……!?」
「はぁ、はぁ……!」
「……やっと……!」
「倒れましたね……」
至聖所で目を覚ましたモルフォは、先生に背負われていた。先生の肩越しに戦況を確認すると、疲労困憊といった様子のサオリ、ミサキ、ヒヨリの三人の姿があった。攻略法を見つけたとはいえ、ベアトリーチェ自体はタフであったことや、三人も受けたダメージや疲労もあって、ギリギリだったように見える。しかし、死闘の末に遂に彼女を倒すことができたようで、ベアトリーチェはその場に膝をついてしまう。
「先生……」
「モルフォ、目が覚めたの?セイアは?」
「ええ、助けました!今頃トリニティの方で目が覚めているはずです!状況は!?」
「うん、ベアトリーチェを追い詰めた!今なら!」
「はい、アツコは私の方が何とかします!」
先生から状況を聞いたモルフォがすぐに走り出す。その様子に気付いたベアトリーチェが抵抗するかのように近くに遭った瓦礫を両手でつかむとアツコへ向かおうとするモルフォへと投げる。
「っ、しまった!」
「ヒヨリ!」
それに気付いたサオリ達が瓦礫が飛んだ先にいるモルフォを見る。先生がヒヨリに指示を出し、ヒヨリが瓦礫を撃ち抜くも、同時に投げられた瓦礫は二つ。片方を撃ち抜いたとはいえ、もう片方はそうはいかない。だが、モルフォは冷静に細かく砕けた方にライオットシールドを投げて受け止めると、両手で握った銃で大きな瓦礫を打ち返し、ベアトリーチェの頭部にクリーンヒットさせる。
「があああああ!!」
「今だ!」
「!これを使え!!」
それによってベアトリーチェが怯んだチャンスを狙い、モルフォがオブジェへと駆け寄る。それを見てサオリがナイフを放り投げると、それを受け取ったモルフォがホルスターからナイフを引き抜き、アツコをオブジェに縛り付けている縄を切り落としていく。そして彼女をオブジェから遂に解放することに成功する。
「よし……!」
「おのれ、ロイヤルブラッドを……!儀式が、儀式が中断されてしまう……窓が……!おのれ、モルペウス……!!」
「……よし。アツコは息があります!」
アツコを既定の位置から外したことでベアトリーチェの儀式は完全に中断されてしまったようだ。窓が閉じられ、色彩という力の供給がなくなったことでベアトリーチェの姿も元の姿へと戻ってしまう。一方モルフォはアツコの容態を確認し、彼女がちゃんと生きている事を確認する。それを知り、サオリ達の表情にも笑顔が浮かぶ。
「ぐっ、ああ……なりません……!私の権能が……!まだ、儀式が完遂していなかったのでしょうか……!?まだ、力が……ああ……!おのれ、たかが、たかが貴様ら如きに……!」
折角得た力も失い、ベアトリーチェが崩れ落ちる。怒りと憎しみに顔を歪ませながら先生を睨みつけると、最早なりふり構ってはいられないと言わんばかりに、声を張り上げる。
「バルバラ!いえ、バシリカに存在するすべての兵力をここに……!既に、聖園ミカや空崎ヒナらも始末し終えていることでしょう!!全てをこちらに戻し、お前たちを始末してやる!!」
全ての戦力をこの場に集結させ、アリウススクワッドを始末する。怒りのままに張り上げるベアトリーチェの声が、至聖所に響き渡るのだった。