転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「な、何だ!?なんでトリニティとゲヘナが!?」
「きゃああああ!!」
「先輩!どうしたらいいんですか、先輩!!」
「戦線を放棄!全員逃げなさい!!逃げることを優先しなさい!!」
「くそっ、どうやってカタコンベを!!」
バシリカの外では更なる異変が起こっていた。なんと、アリウス自治区に正義実現委員会やシスターフッド、風紀委員会といった混成軍が現れたのだ。背後を攻撃されたアリウス生達は大混乱に陥り、たまらずスバルが戦線の放棄を指示し、生徒達は次々と逃げ出していく。
「今こそ救護の時!アリウス生達に然るべき救護を!」
アリウス生の目の前に現れたミネがライオットシールドで殴りつけて意識を刈り取る。同じように気絶していったアリウスの生徒達を次々と確保していきながら殲滅を進めるトリニティの生徒達。その後方ではゲヘナ、ミレニアム、アビドスの生徒達が前線をトリニティに任せる形で前線から救護されてくるアリウスの生徒達の保護を請け負いながら、前線のサポートをしていた。
「凄いわねトリニティの勢いは……」
『セイアさんの件もあって特に色々思うところはあるんだろうね……』
そんな様子を見ながら、セリカとアヤネが少し驚く。その近くで、遠くを狙っていたイオリがこちらに近づいてくるアリウス生を撃ち抜く。
「ま……こっちもこっちでやることはあるけど。それにしても、随分と覇気がないな?」
「それだけ調印式での敗北が尾を引いている、ということでしょうか。見たところあまり体調も回復できている様子はありませんし」
「だとしても……本陣を攻められているんだぞ?さすがに抵抗してもおかしくないと思うが」
アリウスの生徒達がちょっとやられるとすぐに逃げを選択する姿を見て、思わずカリンも疑問を口にする。アカネの言う通り、負けが込んでいるということもあるが、アリウス分校自治区にここまで攻め込まれているのに抵抗する意思が弱すぎる。疑問に思ってしまうのも無理もないのだろう。
「確かに、カタコンベが内部を変えて侵入者を惑わすということであればそれだけで厄介な防衛設備にはなるはず。そこは疑問だな」
『……それを普通に突破するミレニアムの技術力が私は恐ろしいですよ』
ミレニアムから訪れていたのはC&Cとゲーム開発部だけではない。なんとそこにはエンジニア部、そしてヴェリタスのコタマの姿があった。彼女達はカタコンベの攻略をするためにミレニアムから呼ばれ、その力を遺憾なく発揮してカタコンベを突破してみせたのだ。しかし、アコが言うようにとんでもない方法を使ったわけではない。
「行政官、これはそんな超技術とかじゃないですよ。音波を用いた地形把握ですから」
「つまりマッピングですね!マップを完成させるのは大事です!」
アリスの言葉に頷くコタマ。エンジニア部は音響を用いた装置を用意し、コタマが中心となって的確な操作を行い、カタコンベ内の地形を把握することに成功したのだ。
「この方法ならば、地形が変わった後は再度のマッピングが必要になるけど、突破が可能になる」
「やっぱりエンジニア部って凄いね……」
「うん、早くここをどうにかしてモルフォちゃんや先生の所に行きたいところだけど……」
『皆さん、聞こえますか!?』
と、ハナコの声が全員の耳に届く。切羽詰まったような声に全員が戦闘を行いながらも意識を向けていると、ハナコから吉報が届く。
『セイアさんが目を覚ましました!先生達はやり遂げたんです!!』
「「「!!」」」
セイアが目を覚ました。その情報を聞き、全員の顔に明るさが戻る。
「……これで後は……」
「ええ、いきますよ皆さん!ミカ様と先生達の下へ向かいます!」
ツルギとハスミの号令と共に正義実現委員会がさらに士気を上げる。それに呼応するように他の面々も士気を上げていく。当然、
「これでもう大丈夫そうだね!私達もリーダーとモルフォちゃんの所に急ごうっか!」
「はい、そうですね。リーダーは問題なさそうですがモルフォは心配ですので」
「私達も委員長の所に!」
「……私達が後ろにいることは忘れないでくれたまえよ?さて、ここからならGPSの位置も確認できるな。場所は―――」
他の面々もそれは同様だ。この戦いに決着をつけるため、彼女たちは最後の戦いに今一度臨むのだった。
★
「ふははははは!終わりです!!バルバラとユスティナ聖徒会が全てここに集えば、お前たちは……!?」
高らかに笑うベアトリーチェ。だが、その動きが止まってしまう。奇妙だ。至聖所に繋がる扉が開かれない。今の一声で、全ての戦力はここに来るはずだ。だというのに、何故そんな気配がしないのか。
「……バルバラ、というのが何なのかはわからないが、ユスティナ聖徒会はこないな……」
「と、すれば考えられるのは……」
サオリとミサキが警戒した様子でベアトリーチェと至聖所の扉を交互に見ながら呟く。その現象に答え合わせをするかのように、先生のスマホに着信が入る。その相手はミカ。先生がスマホを手に取る。
『先生!無事!?』
「ミカ、こっちは大丈夫。セイアも目を覚ますはずだよ」
『本当に!?うん、ユスティナ聖徒会は全滅させたよ。もう大丈夫!それに外でも大騒ぎになってるし、ツルギちゃん達が来たっぽい!私達もそっちに向かうね!』
「……な」
まさかの報告が彼女の耳にも聞こえてきたのだろう、ベアトリーチェも完全に言葉を失ってしまっていた。
「……万策尽きたようだな、マダム」
「っ、サオリ……!何故です、あれほどの戦力を、何故たった四人で……!?」
「ネル先輩達が負けるわけないでしょ」
ベアトリーチェからすれば、信じられない現象。ユスティナ聖徒会だけでなく、バルバラという強力な個体までも取り揃えているはずなのだ。しかし、ネルやホシノは勿論、ヒナやミカの戦いぶりを見たことのあるモルフォや先生からすれば、唯一の懸念事項がバルバラ、というだけでそれ以外は負ける要素がまるでなかった。いやむしろ、アリウスの生徒が参戦していない分、ヘイローを壊す爆弾を考慮せずに済んでいるだけに寧ろ戦いは楽になっていると言ってもいいだろう。
「何……何故、モルペウスの権能や、ホルスがその神秘を露わとし人智を超えた力を発揮したならまだしも、ただの生徒風情に……!生徒など虐げられる存在でなければならないというのに!!」
「それは違う」
「!!」
「大人は、子供を導く者だよ。ベアトリーチェ、アリウスの生徒会長であったのなら、大人としてだけじゃない、生徒会長としてアリウスの皆を正しく導くべきだったんだ。生徒達が協力し合い、互いに手を取り合えるように」
ベアトリーチェの発言を、先生は否定する。そして、生徒達に彼女がどう向き合うべきだったのかを説く。生徒会長として、アリウス分校を、アリウスの生徒達を想うこと。大人として、アリウスの生徒達を正しく導くこと。彼女はそうするべきであったのだと。だがベアトリーチェは苛立ちながら声を荒げる。
「いいえ、そんなことはあってはなりません!生徒は憎悪を、軽蔑を、呪いを謳わなければならないのです!お互いを騙し傷つけ合う地獄の中で、私達に搾取される存在であるべきなのです!!」
「……黙れ」
「何!?」
それでも、ベアトリーチェの意見は変わらない。そればかりか、生徒をただの道具としてだけではなく、徹底的にその身を、心を傷つけ、摩耗させた上でその尊厳すらも搾取するという想像を絶する真意に、遂に先生も堪忍袋の尾が切れたようだ。とても、普段の彼とは思えない程静かで、そして冷たい声がベアトリーチェに向けられ、その場にいた全員が言葉を失ってしまう。
「先生……?」
「アリウスの内戦を止めた瞬間のあなたは確かに英雄だったはずだ。なのにあなたは偽りの教えで子供達を奈落へと落とした。自分の愚かな欲望に子供達を利用するためだけに……そんなあなたを、私は絶対に許せない」
「お、おのれ……ぐがっ!!」
弾丸が、モルフォの方から放たれる。額に弾がめり込み、ベアトリーチェの意識が刈り取られてしまう。先生がまさかモルフォが銃を撃ったのかと驚いた様子でモルフォを見ると、その弾丸を撃っていたのはモルフォではなく、モルフォの腕の中で目を覚ましてすぐ、ショットガンをひったくってベアトリーチェを撃ったアツコの姿であった。
「姫……アツコ……!」
「姫……」
「姫ちゃん……!気が付いたんですね!!」
「うん……皆、おはよう。そして……モルフォって言ったっけ。ありがとう、先生と一緒に助けてくれて……」
今の一撃で完全に沈黙してしまったベアトリーチェが目を覚ますことはないことを確認し、サオリ達はアツコに駆け寄る。モルフォがアツコをサオリに差し出すと、サオリはアツコの身体を強く抱きしめる。
「……サッちゃん……?」
「よかった……本当に、よかった……!」
「……うん」
「……くっ、うう……」
「泣かないで。私は大丈夫だから」
感極まってしまったのか、泣き出してしまうサオリ。その両隣でミサキも若干目を潤ませながらも安堵した表情を見せており、ヒヨリに至っては大号泣していた。
「うわぁぁぁん!姫ちゃんも無事ですぅううう!!」
たまらず、ヒヨリも二人に抱き着いてしまう。その様子をミサキは見つめていたが、ここでモルフォと先生の視線が自分に向けられていることに気付く。
「……え、何、その視線」
いや私はやらないから、気持ちは同じだからと返そうとしたその時だった。その視線が何かを待ち侘びるようなアツコの視線を捉えてしまう。
「……はぁ、わかった」
一番大変な目に遭っていたアツコが求めるなら仕方ないと、ミサキも一緒になって抱き着く。その顔が若干緩んでいた様子を見て、先生もつい微笑みが零れてしまう。
「もう、これで大丈夫なんだな……」
「うん、大丈夫だよ、サッちゃん。きっと全部、終わったよ。そうなんだよね?」
「セイアさんも助かった、バルバラもユスティナ聖徒会も全滅した。ベアトリーチェも気絶している……完全勝利だね」
「……だ、まだ……です……」
だが、その和やかな雰囲気に水を差すかのように、ベアトリーチェが重い体を起こそうとする。どうやら意識を取り戻したようだ。この時ばかりは低品質なスラグ弾を入れていることを後悔しつつ、モルフォはアツコを守るように立ち上がったサオリ達と共に武器を構える。
「……終わりだよ、ベアトリーチェ」
もう決着はついたと、先生が静かに宣告する。しかし、ベアトリーチェは今だ敗北を認めていないのか声を張り上げる。
「たかだか儀式を妨害した程度で図に乗らないでください!まだ、まだ私には無限の兵力を生み出す複製能力がある……時間さえかければユスティナ聖徒会だって、バルバラだっていくらでも補充できる!いずれ、モルペウスの権能さえ取り込めれば、複製能力だってさらに高度の次元に……!一度の勝利ごときで、終わりになど……!ここにいるすべてのアリウスの生徒を捨ててでも生き延びて、今度こそ……今度こそ崇高に辿り着いてみせる!それ以外は……」
「見苦しいぞ、マダム。これ以上、私の見出した芸術を穢すのは止めてもらおう」
「このお話はこれで終わりですよ、マダム」
「!!」
直後、声が響く。その声に先生とベアトリーチェが顔を動かすと、そこには二人の男性がいた。
「マエストロ、ゴルコンダ……!!」
「まさか、ゲマトリア……」
「お初にお目にかかりますね先生。お察しの通り、私はゲマトリアのゴルコンダ……時間はあまりないようなので挨拶は省略させてもらいましょう。私達は戦いに来たのではありません。マダムを連れ戻しに来たのです」
「私を……!?」
ベアトリーチェを連れ戻しに来たと語るゴルコンダ。その異形の姿に全員が警戒する中、マエストロは不本意と言った様子で頷き、マダムは驚愕の声を上げる。
「それに戦闘で勝てる自信もありません。ゲマトリアが皆、マダムのように怪物に変われるわけではないですからね……ええ、マダム。これで明らかになりました。先生はあなたの敵対者ではありません。これはあなたの物語ではないのです」
「……!!」
「あなたが起こした事件、葛藤、過程の数々……それらは、「知らずとも良いもの」に格下げされました。あなたは主人公どころか……先生の敵対者でもなく、ただの舞台装置だったのですよ」
「むしろ、舞台装置にすらなり得るかどうかという疑問も残る、というのが私の見解だ。芸術の真の価値を理解しようとしない者にそれが務まるとはとても思わんが……だからこそ、こうなっているともいえるが」
「マエストロ……!!」
ゴルコンダの淡々とした指摘自体はベアトリーチェも思うところがあるのだろう、悔しそうな反応を示す。が、マエストロは完全に腹に据えかねていたようであからさまな不満を隠そうとしない。
「こほん。先生……あなたが介入してしまうと、全ての概念が変わってしまいます。元々、この物語の結末はこうではなかったはずなのです。友情や絆、繋がりが苦難を乗り越え、努力で打ち勝つ物語になるとは……成程。これは先生の介入だけの問題、なのでしょうかね?」
「ゴルコンダ」
「わかっていますとも。マダムもこれ以上はマエストロの気分を損ねないようにすることですね。それでは、我々はマダムを連れて帰ります」
「待って」
マエストロに窘められ、ゴルコンダはこれ以上の発言を止めてベアトリーチェを無理やり起こす。その様子を見て、先生が制止の声をかける。
「もしかして我々の邪魔をするつもりでしょうか?どうか、そのような決断はなさらないでください、先生。例えば……私は様々な道具を生産できます。彼女の命を奪いかけたヘイローを破壊する爆弾も私の作品ですので」
「「!!」」
「もちろん、ここで爆発させたりするつもりはありません。先生、あなたには効果もない上に、彼女を殺すわけにはいきませんから。尤も、爆弾が実際にヘイローを破壊できるかどうかを一度も確認できなかった以上は破棄するしかないでしょう。私の計画は断じてそうではなかったのですが……これもまた一興かと」
その発言を聞き、モルフォが反射的にアツコを背にするように移動してライオットシールドを構え直す。先生もゴルコンダを険しい表情で見ながらも、ヘイローを壊す爆弾を破棄するという発言を受け、まだ対話の余地はあると判断し口を開く。
「ベアトリーチェには責任を取ってもらう必要がある。アリウスの生徒会長として、大人としてね」
「……ふむ。それは確かに道理。舞台装置ではあれど、いや、舞台装置であるからこそ幕引きは大事です」
「であれば、これを持っていくといい。先生、あなたの望む通りの成果を得られるだろう」
先生の物言いに、ゴルコンダとマエストロが納得するように頷く。そしてマエストロが先生に一本のUSBメモリを投げる。それを先生が受け取ったのを確認し、ゴルコンダが会釈をする。
「それでは、また」
「モルペウス、私は君と会わない方がいいだろう、だが、今のまま、君の赴くままにその力を使うといい。様々な娯楽、それもまた、一つの芸術なのだから」
そう告げ、ゴルコンダとマエストロはベアトリーチェを連れて消えてしまう。これもゲマトリアの技術力なのだろうか、ワープのような行為ができるようであった。
「……モルフォ、お前は一体……」
「さあ?私としてはあの厄介ファンみたいな人の方が気になるけど」
静かになった至聖所の中で投げかけられたサオリの言葉にモルフォが肩を竦めたのと、至聖所にネル達が飛び込んできたのは同時であった。
★
「……皆さん、無事ですか?」
「私達は……だけど、多くの仲間たちが……」
「仕方ありません、一旦カタコンベに逃げて奴らがいなくなるのを……」
「あの、マダムはいいんですか!?ここで逃げたことを知ったら、マダムは……」
「私達をお仕置きするでしょうね……その時はその時です。まあ私がどうにかしますよ」
アリウス自治区も人の気配がない場所。そこに、スバルを始め十数人の生徒達は隠れていた。しかし、彼女たちは逃げるか戦いに殉ずるかを選ぶ瀬戸際まで追い込まれていた。
「……」
「あの……先輩」
「どうしました?マイア」
スバルが戦いの中で攻撃を受けてガスマスクが外れた薄灰色の髪に水色のヘイローを持つ少女がおずおずと言った様子で話しかける。
「こうなったら、私達も投降……した方がいいんじゃないでしょうか……あれだけやって、それでも勝てなかったのに……」
「……マイア、まだ私達は負けていない」
「そうよ、マダムなら、きっと……」
『大人は、子供を導く者だよ。ベアトリーチェ、アリウスの生徒会長であったのなら、大人としてだけじゃない、生徒会長としてアリウスの皆を正しく導くべきだったんだ。生徒達が協力し合い、互いに手を取り合えるように』
「「「!?」」」
瞬間、先生の声が自治区内に響き渡っていく。その声に、スバル達は天を見上げるが、どうやら聞こえてくるのは声ばかり。だが、それは先生とベアトリーチェが対面を果たしたことを示す声であった。
「この声は……確か」
「先生……?」
「まさか、マダムの下に!?」
「マダムが危ない……ここで助けに行かないと私達も!先輩、急ぎましょう!」
「っ……え、ええ―――」
『いいえ、そんなことはあってはなりません!生徒は憎悪を、軽蔑を、呪いを謳わなければならないのです!お互いを騙し傷つけ合う地獄の中で、私達に搾取される存在であるべきなのです!!』
「……は……?」
瞬間、アリウスの生徒達の足が止まる。足が止まったのは、スバル達の集団だけではない。アリウス内に点在するように散っていった生徒達。ここで助けに行かなければ後でどうなるかわからないという恐怖からベアトリーチェの下へ向かおうとした彼女たちの足は、他の誰でもない、ベアトリーチェ自身の声によって止められていた。
『アリウスの内戦を止めた瞬間のあなたは確かに英雄だったはずだ。なのにあなたは偽りの教えで子供達を奈落へと落とした。自分の愚かな欲望に子供達を利用するためだけに……そんなあなたを、私は絶対に許せない』
『たかだか儀式を妨害した程度で図に乗らないでください!まだ、まだ私には無限の兵力を生み出す複製能力がある……時間さえかければユスティナ聖徒会だって、バルバラだっていくらでも補充できる!』
『一度の勝利ごときで、終わりになど……!ここにいるすべてのアリウスの生徒を捨ててでも生き延びて、今度こそ……今度こそ崇高に辿り着いてみせる!それ以外は……』
最初に地面に膝を突いたのは誰だったのか。一人、二人と脱力したかのように座り込んだり、壁にもたれかかる。その言葉は、ベアトリーチェの本性をアリウスの生徒達に明らかにするのには十分であった。
「……は、はは……」
「先輩……」
「……今は、何も言わないでください……今は、皆、一人になりたいでしょうから」
「……ごめんなさい」
同じように壁に背を預け、後頭部を壁に軽く打ち付けながら天を見上げる。先生の言う通り、ベアトリーチェは確かに英雄だった。内戦で苦しんだ自分達をまとめ上げ、だからこそ皆が洗脳された。その憎しみで人を殺すため、戦うための教育を喜んで受けた。だというのに、
「……サオリ達が言っていたことは、真実だったと……ふ、ふふ、あはははははははは!」
「先輩……」
「ははははは……」
当のベアトリーチェからしたらどうでもよかった。アリウススクワッドが語ったことが、先生との出会いで悟ったことの方が真実だった。そしてベアトリーチェの切羽詰まった声や、負け惜しみの声から、既にベアトリーチェは敗北してしまったのだろう。
「……これから、どうすればいいんだろう」
「もう、トリニティがどうこうって話じゃないよね……」
「……スクワッドは、どうするつもりなんだろ」
「……さあ……どう、なるんでしょうね、私達は……」
仲間たちの不安や心配の声。それを聞きながら、自分でも驚く程気の抜けた声をスバルは零すのだった。