転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……これで良かったの?先生」
「うん。まずアリウスの子達は、ベアトリーチェから解放しないといけないと思うんだ。これから、どう進むにしてもね」
ネル達と合流し、さらに他の生徒達と合流した先生は、エンジニア部らから機材を借り、マエストロから受け取った音声データをアリウス中に放送していた。ベアトリーチェの真意を聞かされた、拘束されたアリウスの生徒達は完全に俯いてしまっており、中には涙を流す者までいる始末だ。
「……酷い大人だね」
「カイザーもカイザーでしたが……世の中には上、いえ下がいるんですね……全く喜ばしいことではないんですが……」
「全くよ」
『ゾっとしますね……』
「まあ、ゲマトリアだからねぇ……いやほんと黒服ですら理知的に見えるとは思わなかったよ」
その様子を見て、カイザーを超える逸材がいたという事実に険しい表情を浮かべる対策委員会の面々。他の面々も苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたり、悲痛な面持ちになって言葉を失っている中、再びの手当てを受けていたアリウススクワッドの中からサオリが先生に話しかける。
「……先生、これからどうすればいいんだ?」
「サッちゃん……」
「……マダムがいなくなったとしても、私達のやったことは消えない。トリニティにミサイルを撃ち込み、ユスティナ聖徒会を復活させ、皆を苦しめた。その事実は消えない……これから、私達は、アリウスはどうすればいいんだ?」
「まずは、色んな事を知るべきだと思う。サオリ達がベアトリーチェの下から逃げ出して、外を知ろうとした時のようにね」
サオリ達に、そしてその場にいるアリウスの生徒達に優しく語り掛ける。サオリ達が逃げ出した時はまだベアトリーチェが存在していた。しかし、今はその支配者がいない。状況が変わり、支配者無き今、アリウスは新たな道を模索する必要が出てきていた。だからこそ、先生は語り掛ける。
「その上で、判断してほしいんだ。自分達はどう進むべきなのかどうか。もし困ったら、助けが必要ならいつでも私を、シャーレを呼んでほしい。君達も私の生徒だから、手を差し伸べるからね」
「……先生」
アリウスの生徒達が先生を見上げる。先生からすれば偶然でしかないが、ベアトリーチェを喪失した今の彼女達の心の隙間に、先生の言葉が差し込んだような形になったのだろう、その言葉は彼女たちの心に強く響いていたようだ。その様子を遠くで見つめながら、アリスがふと呟く。
「……やはり、テイルズ・サガ・クロニクルを皆さんにやってもらうべきでは……?」
『やめなさい、アリス……!』
「あ、アリスちゃん……真面目に言ってるとは思うんだけど……」
「経験則で言ってるとは思うけどやめておこう、ね?」
「ほ、他に色々知らないといけないこととかあるだろうから……」
あくまで小さい声で呟いていたこともあって慌てて他のゲーム開発部員がアリスの口を塞いだりしながら止める。その様子を見ながら、無事だった姿を見て抱き着いてきたコトリを安心させるように背中を軽く撫でながら、モルフォはただ苦笑を漏らすことしかできなかった。
「……ま、あたしらがこれ以上口出す事じゃねえだろ」
「まあ、どうにかなりそう?」
「……やれやれ、やっと終わりそうだな」
「ええ、おそらくは過去一番でしたね……」
「大きな怪我をした人が出なかったのは幸いでしたね」
ネル達もやっと一息吐けると安心した様子を見せていた。ちなみにエンジニア部やコタマはさっき合流したばかりで又聞きレベルでしか事情を知らないのでノーコメントを貫くようだ。
「……これでいいんですか?」
「少なくともゲヘナとして関わることはもうないわ。それに……ゲヘナもトリニティもあまり深入りしたくはないんじゃないかしら?アコ」
『そうですね……明言はしませんが、正直クロだと思います……はぁ』
「な、何があったんだアコちゃん?」
「……ほとぼりが冷めるまでは知らない方がいいわ」
風紀委員会の方はというと、アリウスについては先生やトリニティに任せることにし、必要最低限以外の深入りはしないようにと方針を決めていた。イオリとチナツはまだ理解が及んでいないようだが、通話越しに額を押さえているであろうアコと、どこか遠い目をしているヒナは何かを悟っているようだった。おそらくは、トリニティのミカと同様の弱み。マコトとアリウスが内通していたであろうという可能性をほぼ確信していた。
「……サクラコ様」
「はい。戻ったらすぐに、トリニティに現存しているアリウスに関するすべての資料を洗い出しましょう。そして、ウイさんにも地図の復元を急がせるように……」
「現在の医療器具の備蓄の方はどうなっていますか?」
「えっと……まだそこそこあると思いますが……」
「念のために補充をしておきましょう。特に栄養食品などについても手厚くした方がよさそうですね。救護したアリウスの皆さんを連れ帰った後は色々なものが必要になるでしょうから」
シスターフッドと救護騎士団は既に後始末について考え始め、その様子も横目に見つつ、ツルギとハスミはあたりを警戒していたが、周囲から完全に敵意がなくなったのを感じ取り、やっと矛を収めることにする。
「……これから、トリニティとアリウスはどうなるんだろうか」
「全くわかりませんね……少なくとも、今回の事件のほとぼりが冷めてからになりそうです」
『そうなるだろうね』
「!?セイアちゃん!?セイアちゃんなの!?」
その会話に割り込んできたのは、なんとセイアだった。モルフォがセイアと共にクズノハの下から帰還し、少しして意識を取り戻したセイアに気付き、彼女を見ていた人員がナギサに報告。そこから無事については全員に共有されたものの、こうして会話に参加できるほどに回復したとは思わず、ミカが驚きの声を上げてしまう。
『ああ。何故か知らないが以前より調子がいいんだ。まあ体が重いのは相変わらずだがね……とはいえ、こうやって言葉を届けるぐらいの気力は今はあるよ』
本質の一部を捨て去ったおかげで調子が良い、とはさすがにこの場では口が裂けても言えなかったため、原因不明と誤魔化してミカや他の生徒達に言葉を届ける。その言葉を聞いたミカやトリニティの生徒達の顔に安堵の色が広がっていく。
『それで、ナギサ。これから君はどうするつもりなのかな?』
『まずは今回の一件の後始末を最優先にします。その後は……また、同じことを繰り返さないように様々な配慮や行動をする必要がありそうですが……』
「ナギちゃん。やらなきゃいけないことが色々あるのはわかるけどさ……」
ここでミカがちらと、項垂れるアリウスの生徒達を見つめる。そして、
「やっぱり、今は落ち着ける時間が必要だと思うんだ」
『……そのようですね』
ミカの呟いた言葉を受け、ナギサも同意の言葉を零す。まだ各々、思うところはあるだろうし、これからも大変ではあるが、だからこそアリウスのため、トリニティのため、そして今回協力してくれた他の学園の皆のためにもできることを頑張っていこうと先生は改めて誓いながら、声を出すのだった。
「それじゃあ皆、戻ろうか!」
★
『……というわけですので、セイアさんの件についてはまた後日、リオ会長が知っている事も含めて話し合わせていただきたいのです』
「……ええ、わかったわ。ただ……」
『無論、理解しています。そちらが政治的に、そして該当生徒とセイアさんの安全面に配慮してくださった結果だということも。そして、それについては感謝しかありません。その上、今回の調印式における、結果的に救援となった行動についても』
「……」
『お伝えしたいことは以上となります。それではリオ会長、次に会える日を楽しみにさせていただきますね』
戦いが終わり、数日後のセミナー室。ナギサからの電話を終えたリオは、受話器を机の上に置き、溜息を零す。後輩達を助けるためにやった行動、それ自体に後悔はないが、その後始末の大変さはトリニティを越えてミレニアムにも届いていた。とはいえ、これに関してはセイアの事をひた隠しにしてきたことによる時限爆弾の起動のような側面もあるため、仕方ないと割り切ることにしていた。
「会長、今の電話は?」
「桐藤ナギサよ。後日、話をしたいと……とはいえ、トリニティと問題事が起こるというわけではないわ」
「そうですか……はぁ、やっと落ち着ける……」
背もたれに身を預け、項垂れるユウカ。その疲れようは尋常ではない。ちなみにユウカの横ではコユキが完全にグロッキーになって机の上に頭を置いており、そんな二人を見てノアが笑みを零しながら、コユキに毛布をかけていた。
「いや、ちょっと前にも大変な事があったのに今回もって何なんですかこれ……リオ会長はほとんどこっちにいないから私まで忙しくなるし……」
「ごめんなさい、エリドゥの方に殆ど籠っていたから……」
「いやまあ仕方ないってわかってるので……」
ミレニアムの空気は、調印式の事件など最初からなかったかのようにいつも通りの状態に戻っていた。そもそも、トリニティとゲヘナの首脳陣が巻き込まれたからこそ大事のように見えているというだけで実際の所はいつもの大爆発による建物倒壊事件のようなものだ。いざ事件が落ち着いてそれぞれ平時のテンションに戻ってみれば大した問題ではなくなっていた。
そして、今回の件に関わったC&Cも一日の休日を経てから再び任務に繰り出しているし、エンジニア部とヴェリタスも平常運転。当事者のゲーム開発部はというと現在進行形で新作ゲームの開発をしているところ。セミナーもそろそろ落ち着いてきて、普段通りになるだろう。そうなったらユウカ達にも休みを与えた方がいいだろうとぼんやりと考えながら、リオは先生から送られてきた書類データに目を通し始める。
(……アリウス分校、そしてゲマトリア)
それは、今回の一連の事件について、ナギサ達の許可を得た上でシャーレからミレニアムへと送られた調印式に関する一件についての文章だった。セミナー会長のリオだからこそ、アリウスの生徒達がベアトリーチェによってどのような教育を受けてきたか、そしてゲマトリアという存在について知っておいてほしいという意図があって送られたのだ。特にゲマトリアについては、リオにとっては他人事とは言えない相手ともなってしまっている。
(……モルフォに目を付け、利用しようとした大人の女、ベアトリーチェ。アリウス分校で彼女がやろうとしていた内容を踏まえると、やはり彼女のモルペウスと評される能力は……だからこそ、彼女の能力は悪用されないように気を付ける必要があるわね……今のままならば、より多くの人を楽しませることができるのだから。彼女がそれを望んでいる以上、方角を定めてあげなければならないわ。それに、ゲマトリアなる連中がそれ以外の生徒に目を向けないとは限らない。アリスとケイのこともあるし、異能という意味ではコユキも該当する。それ以外にも、過去にホシノが狙われたとするならこちらもネルやトキのような実力者が狙われる可能性も?いや、そもそもエリドゥを作り、過去の技術をリバースエンジニアリングしている以上、アバンギャルド君も興味の対象になることも……)
「会長?会長ー?」
(アバンギャルド君が興味を持たれるとなると、それは喜ばしいことなのかしら?いえ、あまり喜ばしいとは言えないわね……報告によれば生徒を平気で悪事に利用する集団、となればアバンギャルド君を奪われたが最後、どんな改造を施されて見るも無残な姿になるかわからない……他の子達の身代わりになってくれるならアバンギャルド君も本望だと思うのだけれど、やっぱり警備とかは厚くするべきね……ミレニアムのセキュリティの強化を検討しましょう、アバンギャルド君にも索敵系の新装備を……)
「あのう、会長!!」
「……?どうしたの?」
すっかり考え込んでいて周りの声が聞こえなくなっていたリオだったが、ここでやっとこちらを見つめるコユキの姿に気付く。
「いや、まだなんかあるのかと」
「いえ、もう何もない……はずよ。今のところはね」
「なんか不安なんですけど!?」
白目を剥いて嫌々という雰囲気を隠せないコユキ。ユウカやノアもやれやれと肩を竦めているが、三人ともリオが何故かゲマトリアにアバンギャルド君が狙われるというありえない状況を想定していることには気付くことはできないのだった。
★
「……ありがとうございます。それでは引き続きよろしくお願いしますね」
報告に来た生徒に幾つか指示を出し、指示を受けた生徒は頭を下げてテラスから出ていく。その様子を見届けながら、ナギサはティーカップに口をつける。
「アリウスの子達?」
「そうですね。今後の手当てや療養については救護騎士団に引き続きやってもらおうと思っています。とはいえ、今回の一件で色々思うところがある生徒も多いようで……今後詰めていくことにはなると思いますが、トリニティに転校したいという生徒がいるようでしたらそういう選択肢も与えようかと思っています。先生とも相談する必要がありそうですね……不幸中の幸いか、ベアトリーチェの支配下から抜けた結果もあると思いますが、皆さんからは悪意といった感情は今のところ見えません。実際、彼女の真意が明らかとなった後は明らかに気力が抜け、憑き物が落ちたような生徒達も多いですし……」
「そっか……アリウスに残った子達もいるんでしょ?サオリ達だって帰っちゃったし」
ナギサに話しかけたミカは、ナギサから保護したアリウスの生徒達の今後について聞かされていた。救護騎士団が中心となって救護を受けていた彼女達は、その過程で外の事を知っていく内にそれぞれ様々な方向を見るようになっていた。
「良くも悪くも、彼女たちはベアトリーチェから解放されて自由になったわけだからね。これから何をどうすればいいのか全くわからない状態なんだろう。何せ往来の場で殺人予告をかましてきたわけだからね……本人にそんなつもりはないだろうとはいえ最高のスケープゴートになったようだ」
「そこをどうにかしないとね……ところでその、さ。ナギちゃん……いいの?私の事、このままで……」
「……そうですね。確かにミカさんのやろうとしたことは正直……罰則を無しに、とはとてもしてはいけないことは重々承知しています」
そんな中、ミカが申し訳なさそうにナギサに問いかける。色々問題が積まれているとはいえ、ミカがアリウスと手を組んでセイアを暗殺しかけ、さらにナギサに対しクーデターをしようと計画をしていたことは事実。ナギサに対するクーデターの方は未遂で終わったとはいえ、セイアの方はアズサの心変わりで救われただけで襲撃そのものは成功しているとかなりとんでもないことをやらかしているのだ。なのに何のお咎めも無しでいいというのかと問われたナギサは溜息を吐くとミカの目を見る。
「ですが今回、アリウスの起こした行動はベアトリーチェ……姿を眩ましたアリウスの生徒会長である大人による洗脳教育による要因が大きいということになっています。ミカさんも強く反省しているようですし、アリウスと通じていたことも問わないことにしました。それに……そうした方が、ゲヘナを相手にするのには都合がいいでしょう」
「……あ、あー……万魔殿とアリウスが内通してたんだね……」
そしてナギサの語る言葉にミカは黙り込んでしまう。ナギサ個人の意思としてもミカを許したいと、学園内でその立場を危うくしたくないと思っていたのは確かに事実だ。しかし、やったことは消えないため、ベアトリーチェの罪を利用する形で減刑するのが限界か、と思われた中で、ナギサにとってはある意味都合のいい情報が出てくる。それはゲヘナの万魔殿議長、羽沼マコトがアリウスと内通していたという情報だ。それを利用し、「そちらがアリウスと関わっていた事を明かさないので、わかっていますね?」とマコトを無理矢理黙らせたのだ。マコト自身、政治は普通にできるし地頭自体は普通に良いため、ナギサの意図を理解させられてしまった結果となっていた。
「よくもまぁそんな強かなことをやれたものだ」
「こうでもしないとビッグシスターには太刀打ちできませんからね。あの時程肝を冷やしたことはありません」
「あ、はは……」
リオがそれを聞いたらただただ困惑するであろう台詞を口にするナギサ。その理由は色々あったが末の疑心暗鬼の末に墓穴を掘ったことが原因なのだが、それについてミカは敢えて触れないことにした。
「でも、セイアちゃんはいいの?」
「ふむ……まあ個人的に思うところがないというわけではないが。だがまあ……こうして無事に生きていて、そして大きく前に進むことができているんだ。なら、私達も未来に進むべきだと思うよ」
「……許すっていうのなら素直にそう言えばいいじゃんね」
「ふふ、これからは気を付けるとするさ」
いつも通り、だが今回はわざとらしく言うセイアにやれやれと言った様子で肩を竦めるミカ。まだまだ体は本調子ではないが、それでも精神的には元気そうなセイアを見ていると、ずっと気になっていたことがあったのを思い出す。
「そうだ、セイアちゃん。夢でミレニアムの……モルフォちゃんだっけ?その子と一緒にいたって話だけど」
「む?モルフォのことか……ああ、彼女には世話になったからね。その内夢ではなくこちら側で会いに行きたいものだ」
「それもいいけど……夢の中でどんなことしてたの?」
「確かにそれは気になりますね。正直その……セイアさんが身を隠す直前と今とでは、かなり変わっていますし……いえ、戻ったと言う方が正しいんですが」
「……といっても大したことはしてないんだがね……彼女と言葉を交わしただけだよ。何、モルフォにも迷惑になるだろう、あまり追及はしてもらわないと助かるんだがね?」
その疑問はナギサも気になっていたのだろう、二人係でセイアから詳細を聞き出そうとするが、気まずそうに顔を逸らして逃げようとする。それっぽい理由を掲げてはいるものの、ミカは既にある見当をつけており、今のセイアの誤魔化そうとする反応で確信を得てしまっていた。
「夢の中でアニメとか見てたんでしょ?ゲームとか楽しかった?」
「!?な、何故それを……」
「は?」
「あ、やっぱり本当なんだ」
「!?み、ミカ、君は……!」
アニメに関しては、知らなきゃあんなもの送らないよね?というところから。ゲームはモルフォがゲーム開発部だということは知っていたのでついでに付け加えて、違う場合は「いやゲームはやってないが?」という回答が引き出せればいいや程度の考えで仕込んだのだが、完璧な回答がセイアから飛び出してしまい、ミカはやれやれと呆れてしまう。
「私とナギちゃんが大変だったときにセイアちゃんは遊びまくってたんだねぇ」
「ぬぐっ……ひ、否定はしないが、だがそのおかげで色々気付くことができたのは事実だぞ!?」
「それが無駄だとは言ってないよ?言ってないけどさぁ……それとして遊びまくってた事実についてはナギちゃん、どう思う?」
「……そうですね」
ナギサの口から、底冷えするような声が漏れる。これはまずい、そう判断しセイアが席を立ち、逃走しようとする。しかしその両肩をミカが簡単に抑えてしまい、ナギサに向かって振り向かせる。
「……セイアさん」
「ま、待ちたまえミカ、ナギサ。話せばわかる!私達は行動ではなく言葉を交わすべきだ!そうだろう!」
「ケジメはケジメですよ」
「ナギサ!ミカ!うおおおおおお!私を助けてくれ!モルむぐぅ!?」
そして、ミカの腕の中で逃げられないまま、セイアはナギサから口にロールケーキを次々とぶち込まれることになるのだった。
★
「……」
カタコンベから出た先に広がる森林。そこに出たサオリは、木漏れ日に目を細める。治療も終わり、すっかり回復した四人は、ティーパーティーや先生らと話をした後に一度、アリウス分校へと戻っていた。その後、四人はこうして、再び外へと出てきていた。
「なんか、意外だったな」
「そ、そうですね……てっきりもう戻ってくるなって追い出されるかと思ってたんですけど」
「……それだけ、向こうもどうしたらいいかわかってないんでしょ」
「ふふ、そうだね。時々は戻った方が良さそうかも……まさか、あれだけのことをやって日の下を歩けるとは思わなかったけど。悪意と殺意があるかが焦点、だなんて随分と曖昧だね、外の法も」
マダムから、そして事実上アリウスを捨てて逃亡した身であった上に、シャーレらと手を組んでアリウスに攻め込んでベアトリーチェを倒しにきたのだ。文字通り、今のアリウスを破壊した自分たちに対して厳しい言葉を投げかけられるものだと思っていた。実際、スバルを始めとする一部の面々からは厳しい目を向けられつつあったものの、やはりこれからに対する期待や不安があるのだろう。特にベアトリーチェの真意を知ってしまったこともあり、アリウスの生徒達はアリウススクワッドにある意味で期待しているのだろう。
「後は当事者たちがそれを許すかどうか、でしたっけ……」
「まあ、あそこまであのモルフォって子がぶった切ってくるとは思わなかったけど」
「……なんていうか、凄い奴だったな……私が言うのもなんだが……死生観というのだろうか?それが違うような気がするな……」
「……まあ、私達が外に出たわけだし、他の皆もその内外に出ると思うけど」
「スバルもいるし、まとめ役の方は問題なさそうだけどね。私達は暫くは私達のやりたいようにやろうよ」
アツコの言葉に、サオリも頷く。
「そ、それならまずは……先生の所に行ってみるのはどうですか……?こういう時、先生なら何か、最初はこうしたらいいって教えてくれるかもしれませんし……」
「……そうだな、元々マダムから逃げた時に何をするかも決めてなかった身だ、今も決まってない……それなら、まずはちゃんと信用できる大人の下に行くのがいいかもしれないな……」
そして、ヒヨリの言葉に賛成し、四人はシャーレへ向かい出発することになるのだった。