転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
アリウススクワッドと機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
アリウス自治区での戦いも終わってから一週間。エンジニア部を訪れていたモルフォは、失われた盾は勿論、銃だけでなくヘッドフォンも身に着けてはいなかった。それら全てが今、エンジニア部に置かれており、メンテナンスと改造を行われている真っ最中であった。
「おはようございます」
「おはようございます!モルフォ!!」
「うん、ちょうどいいタイミングだね。バッチリできてるよ」
エンジニア部の部室に顔を出すと、コトリ達が笑顔でモルフォを出迎える。そしてモルフォがヒビキを見ると、彼女が見慣れた待機状態のシールドを持っているのが見えた。
「ヒビキ、それが?」
「うん、新しいシールドだよ。前のよりもバッチリ強化してある」
ヒビキからシールドを受け取ると、軽くそれを動かしてみる。重さや使用感は以前のものと全く変わっていない。続けてシールドを展開してみると、緑色の半透明のプラスチックのような板が展開されていき、盾へと変形する。
「おお」
エネルギーシールドのようにも見えなくもない、それでいてちゃんと盾自体に丸みがあり、受け流しもしやすくなっている洗練されたデザインは心躍るものがある。それに、半透明で向こう側が透けるというのは利点も大きくなる。
「次世代の装備に換装するのはやっぱりロマンだよ」
「まあ、言ってることはわかるけどさ。でも、変わったのって見た目だけじゃないよね?」
「その通りです!」
だが、変わったのはそれだけではないはずだとモルフォが聞くと、待っていましたと言わんばかりにコトリが声を上げる。うずうずした様子でモルフォに顔を近づけながら説明をどんどん始めていく。
「今回使用している素材は新素材開発部から奪……提供してもらった新素材を採用しています!それにより、シールド自体の耐久度は勿論ですが、耐火、対爆、耐衝撃性あらゆる面において以前使用していたシールドを上回っています!そして、この盾には勿論―――」
「自爆装置も採用してあるよ。とはいえ今回は反省点として、爆発した時の威力が相手の方に向けられて、逆に使用者の方にはできるだけ威力が飛ばないようにしてる。そしてもちろんBluetoothも採用してある」
ここだけは譲れないとコトリの説明を引き継ぎ、自爆装置とBluetooth機能を採用したと語るヒビキ。左右から二人の説明を聞きながら、シールドの使用感を確かめていく。そして一通りの説明を聞き終えると今度はコトリがモルフォの首にヘッドフォンをかける。
「そしてこちらも改良しました!まずはGPS機能の強化!外からはカタコンベの途中から反応が追えなくなってしまっていたので……まあ、それも込みであの方法を採用したわけですが。そしてインカムとしても使用できるようにしています!他にも小型カメラとメモリーカードも採用したので、映像の記録を始め、ある程度の容量は確保できるようになっています!また、こちらもBluetoothを採用しています!この機能はGPSと同じくモルフォの手で手動でオンオフができるようになってますね!」
「カメラ……正直使うシチュエーションが思いつかないけど助かるよ、コトリ」
ヘッドフォンも無事に強化されたようだ。カメラ機能はともかくとして、GPSの強化についてはシンプルに嬉しいものだ。そして、モルフォがエンジニア部に見てもらっていたのは、もう一つある。
「じゃあ、最後はこれだね」
そう言い、ウタハがショットガンハンマーを手渡す。それは持ち手の部分がより握りやすいグリップに変化しており、ミレニアムの校章が刻まれている。さらに銃身にはⅢのステッカーが貼られているが、これはショットガンハンマーが三回目の改造を受けた証なのだろう。
「これは……」
「名付けてショットガンハンマーmkⅢだ」
「おお……名前は凄そうです。何か変わったんですか?」
「ふっ、聞いて驚くといい……まあ、引き金を引いてみるといい。あ、上の方の引き金だ」
言われるがまま、上の方の引き金を引く。すると、銃口から弾は発射されず、代わりに鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「……これって」
「空砲を鳴らせるようにしたよ。弾が出なくてもこれで引き金一つで弾を撃たずに音を鳴らせるようになった」
「な、成程……使えそうですね……」
確かに音を戦闘で活用することはあるし、それをどこかを叩いたりしなくてもできるようになるのはシンプルに強化だろう。まさかここまでしてもらえるとは思わなかったが。
「ヴェリタスにも協力してもらって色々な音のサンプルとかも入れてるから色々試してくれたまえ。さて、どうかな?気に入ってくれるといいんだが」
「はい、ありがとうございますウタハさん。コトリもヒビキも作ってくれてありがとう」
「いえいえ、これぐらいお安い御用ですよ!」
「また今度一緒に遊ぼう」
これらの装備があればまた戦える。いや好き好んで戦いたいとは思わないが、それぐらいのモチベーションが湧いてくる。まあ戦闘があったところでモルフォがやることは変わらないのだが。
「じゃあ、シャーレの当番に行ってきますね」
「ああ、行ってらっしゃい」
そう言うと、モルフォはシャーレへと向かうのだった。
★
「「「「「「……」」」」」」
この日、シャーレの当番としてモルフォとアズサが来ていた。だが、シャーレにやってきたモルフォ達は驚きの人物と会っていた。それは、
「……サオリ?」
「あ、アズサ?」
「アリウススクワッド……なんでシャーレに?」
「ああ、私を頼って数日前に来たんだよ。それで色々教えたりしていたんだけど……」
アリウススクワッドだった。聞けば数日前に先生の下に来たらしく、これからのことについて色々なことを教えてもらっていたようだった。そんな中、丁度今日がアズサが当番で来る日、ということもあり、折角なら会わせてあげようと先生は考えたのだろう。
「まさかサオリ達と会うことになるとは……元気にしていたか?」
「ああ……アズサは、元気そうだな」
「ひ、久しぶり……ってわけでもないですね」
サオリ達を見て、モルフォは数日前に出したばかりのあるBDを入れた袋へと視線を向ける。先生に新しいプラモと一緒にお勧めしにきたのだが、まさかアリウススクワッドがいるとは思わず、頬に冷や汗が流れてしまう。
「それで……モルフォが持ってるのは何なの?」
「……プラモと……アニメ、ですかね……」
「「「「……プラモとアニメ?」」」」
モルフォの言葉に、聞いたことがなかったのだろう、アリウススクワッドの四人は首を傾げてしまう。それを見た先生は、彼女達にそれを見せてあげることを決めるのだった。そして、
『こんな……ところじゃ終われねえ……!だろ……ミカァ!!』
「「「「「……」」」」」
そこでは、一人の少年が駆る機械の悪魔が、巨大なメイスを使って敵のロボットを叩き潰す姿があった。
『ねえ、次はどうすればいい?オルガ……』
『決まってんだろ……行くんだよ』
『どこに?』
『ここじゃないどっか……俺達の、本当の居場所に』
『……うん、行こう。俺達、皆で』
朝日の中、その悪魔に乗り込んでいた少年は血を流しながらも優しい笑みを浮かべていた。
「……これが、アニメなのか」
「絵が動いてますぅ……しかもなんか凄い感じで……」
「……なんていうか……色々思うところはあるね」
「……うん、凄い面白いね」
「……どこか、似ているな」
彼女たちが見ていたアニメ、それは機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズというアニメだ。火星を舞台とした作品であり、主人公の三日月・オーガスことミカは民間警備会社クリュセ・ガード・セキュリティことCGSに所属していた。そこには、ミカや昭弘を始めとする孤児やヒューマンデブリと呼ばれる安値で人身売買されてきた少年たちの姿があり、彼らは大人に日々虐げられ、搾取される毎日を送っていた。そんな中、CGSは火星独立運動を指揮する少女、クーデリア・藍那・バーンスタインからの依頼を受け、地球へ向かう彼女の護衛を引き受けることになる。
しかし、その準備の最中、ギャラルホルンと呼ばれる治安維持組織からの襲撃を受けてしまう。しかし、CGSの大人達は孤児達を囮として逃亡、その危機を前にミカ達を率いる隊長のオルガ・イツカはCGSの動力として使用されていたモビルスーツ、ガンダムバルバトスを起動させることを決定。阿頼耶識システムという非人道的な手術によって得た力によって凄まじい性能を発揮したバルバトスを駆ったミカは見事ギャラルホルンを退けることに成功するのだったが。
「……しかし、酷い話だな」
「いきなり多くの命が……」
「それに、ミカって……う、うーん」
「別人ですよ、ミサキさん」
「それはわかってる。聖園ミカとは全然違うし」
「えっと、あくまでこれはアニメっていう創作で本当の話じゃないからね。あまり真には受けないでね」
「……だから、先生やモルフォは平気でいられるのか」
「そうだよ、サオリ。これはそういう作り話だってことは前提で受け取ってね」
その後ろでは場所をテレビのあるこの部屋に移してシャーレの仕事を進めるモルフォと先生の姿があった。ちなみに先生の目は先ほどからちらちらとテレビやバルバトスのガンプラのパッケージに向けられているのだが、そこは追及しないことにする。
「「「「「……」」」」」
テレビに食いついている五人の前で、次の話が始まる。ギャラルホルンを退けたはいいが、被害はあまりに大きい。死んだ子供達は多く、生き残った大人達は怒りのままに子供達を虐げていく。しかし、それで我慢の限界に達したのだろう、遂にオルガや、彼の補佐やサポートを主にすることになる人物、ビスケットを始めとする孤児達は大人への反逆を決意。
組織を乗っ取り、CGS改め鉄華団は、クーデリアの護衛任務をすることになる。その最中、ギャラルホルンとも衝突、監査局のマクギリス・ファリドやガエリオ・ボードウィンらも登場して様々な出会いと戦いを経験していく中、鉄華団はギャラルホルンすら敬遠する木星圏の大企業テイワズの後ろ盾を得ることに成功する。その中でタービンズのリーダーである名瀬と義兄弟の盃をオルガは交わし、タービンズの先導で地球を目指すことになるのだが。
「まるで、先生みたいだね」
「いや違うよ!?」
アツコの零した言葉にそれは誤解だと言う先生。アツコが言っていたそれは、名瀬がたくさんの女性に囲まれている光景、要するにハーレムであった。タービンズで囲っている女性は全員妻と言う名瀬の言葉は、女子生徒達に囲まれている先生に通ずる部分がある、とアツコは口にしてしまったのだ。
「つ、つまり私やミサキも先生と……?」
「ヒヨリ!?」
「わ、私やモルフォもそうなのか?先生」
「そんなことしないよ!!それに私は大人で、君達は子供なんだから!」
「……先生はそういうのには興味がないのか?そういえば、あの時アリウスに連れて行った面々は私達やミカを除けば……もしや小さい人が好みという人なのか……」
「誤解だよ!あの時は衣装の問題だったから……ね、ね?モルフォ、違うよね?」
「これは名瀬のアニキが色々やばいだけであって先生は無実だからね……サオリもそこはちゃんと誤解しないように」
「あ、ああ」
「……今更だけどなんでサオリだけ遠慮しないんだろこの子。一応アツコ以外全員二年生なんだけど……まあ、いいか」
しかし、鉄華団の女性観は完全にタービンズのせいでおかしくなってしまったが、それと引き換えにタービンズの女性たちによってモビルスーツの操縦技術や教育など、様々な事を教えてもらっていた。教育についてはクーデリアが一人でやってはいたのだが、そこも大きく改善したといえるだろう。激動の話が次々と続く中、少し落ち着いてきたところで、ふと気になったことを先生が聞く。
「そういえば、ロボットアニメなのにビームとかは出ないんだね?」
「ああ、ナノラミネートアーマーの影響ですね」
「そういえば整備シーンで出てきてたね」
「鉄血のオルフェンズに出てくる装甲ですね。まあ簡潔に言うとビームに強いんで物理で攻めるのが効率的なんです」
鉄血のオルフェンズに登場する武器は、一部の例外を除いて全て物理攻撃となっている。バルバトスで言えば基本的な武装は大型のメイスを用いており、銃を使う時も実弾がメインとなっている。
「じゃあモビルワーカーは何?モビルスーツよりも弱い……?ってのはわかるけど」
「モビルスーツよりもコストが安くて安価で揃えられる機体かな……まあ、色々違いはあるんだけど、基本的に裏方とかそういう役回りだって思ってもらえばいいかな」
「でもまあ……頼りになる大人も増えてきてよかったね」
「おやっさん以外悪い人か敵しかいませんでしたからね……」
「おやっさんも頼りにはなるけどこう……」
「人格面はカンストしてるレベルで良い人だけど整備士だから……」
鉄華団にとって頼りになる大人は一応存在していた。それがナディ・雪之丞・カッサパと呼ばれる褐色肌の男性だ。しかし、整備士としてはモビルワーカー専門で、モビルスーツは専門外もいい所。テイワズと提携し、モビルスーツの整備について学ぶまではギャラルホルンから鹵獲したモビルスーツを始め、それとは別物であるバルバトスの整備も満足にできていなかった。
「今度は海賊……海?」
「宇宙海賊ってやつだね……この手の話だとよくありがちだけど、これは……」
旅立った鉄華団とタービンズは宇宙海賊ブルワーズの襲撃を受ける。そこで、昭弘の弟がブルワーズにいることが判明。ブルワーズはヒューマンデブリ達を戦力としていた。そんな中、昭弘はというと、自分のせいで一緒に哨戒に出ていたタカキが重傷を負ってしまったと、自分はヒューマンデブリだから罰が当たったと、タカキが眠る横で落ち込んでおり、二人の様子を見に来たオルガとミカに口を開いていた。
『俺よ……楽しかったんだ。お前らと鉄華団を立ち上げて、一緒に戦って仲間のためにと言ってよ……姐さん達に扱かれるのも楽しかった。楽しかったから……俺がゴミだってことを忘れてた。ヒューマンデブリが楽しくっていいわけがねえ……だから……罰が当たったんだ』
『そっか、俺達のせいで昭弘に罰が当たっちゃったんだ』
『あ、いやそういうわけじゃ』
『鉄華団が楽しかったのが原因ってことは、団長の俺に責任があるな』
『違、俺が言いてえのは』
『責任は、全部俺が取ってやるよ』
それを聞いたオルガは、そう昭弘に告げると、昭弘の兄弟は鉄華団の兄弟も同然だと言うと、皆で一緒に助けにいこうと、裏で呼んでいた鉄華団の面々と一緒に、昭弘の弟を救うために決意を固める。そして、タカキが目を覚ましたことを受け、一行は喜ぶ。そして、鉄華団とタービンズは遂にブルワーズと激突することになる。
「……楽しい、か」
「……やっぱり、こういう環境にいると皆、そう思うようになっちゃうのかな」
「アツコ……」
「でも、こういうリーダーもいいんじゃない?サッちゃんはどう?」
「わ、私がか……?いや、私にオルガみたいなことは……無理だな……会社を立ち上げるとか、そういうのは……」
「うーん、そういうことじゃないんだけど」
「でもこれは危ういでしょ。サオリがこんな感じになったら私嫌だよ、ビスケットの役回り私じゃん」
「ミサキがビスケット……?美味しそうですね……」
「……ヒヨリ」
デブリが漂う区域で戦闘が開始される。昭弘の弟を救うため、総力を尽くす鉄華団とタービンズ。その中で、遂に昭弘は弟、昌弘と再会することに成功する。戦いの中、敵も味方も、多くの命が奪われていく中、昭弘は言葉を伝える。だが、絶望しきっていた昌弘は涙を流しながら昭弘を拒絶。しかし、兄弟としての絆は確かにあったのだろう、昭弘への攻撃を庇い、重傷を負ってしまう。
「うわ……」
「ひ、人がどんどん死んでいきますね……」
「中も外も地獄だな……」
昭弘達が最期の会話を終える中、ブルワーズの最大戦力であるガンダム・グシオンを駆る、ヒューマンデブリ達を使い捨て、虐げてきた大人、クダルに引導をミカが渡し、敵味方両方に大きな被害を出した戦いは終わる。死んでいった者達のため、彼らが生まれ変われることを祈るために葬儀を執り行う。
「「「「「……」」」」」
宇宙に死んでいった者達の遺品を放り出し、花火で弔砲を行う。葬儀自体がピンと来ていないのか、それとも初めて見る花火の方に喜んでいるが、すぐに仲間達が死んだことを悲しみ、耐え、乗り越えるように葬儀は進んでいく。そして、昭弘は昌弘との最期の思い出として、弟を手にかけたガンダムグシオンを乗騎とすることを決意するのだが。
「「「「「!?」」」」」
その回のエンディングで突然ミカとクーデリアのキスシーンが現れたことで別の意味で絶句。ここまでの話の流れなどが一気に頭から吹き飛んでしまっていた。
「……あ、はは……」
その様子には先生も苦笑するしかない。名瀬は一周回って逆にそういうものだと気にならなかったのだが、主人公とヒロインのキスシーンはいろんな意味でアリウスの生徒達には刺激が強かったようだ。
「そ、そうか……コハルが言っていたエッチなのは死刑とはこういう……」
「へえ……こういう感じなんだ……成程……」
そして、テイワズから受けた輸送依頼を完了するべくドルトコロニー群へと向かうことになる。そこで労働者達の抗議活動とそれを鎮圧するギャラルホルンの騒動に巻き込まれながらも無事に切り抜け、地球へ目指すことになる一行。しかし、その騒動によってギャラルホルンに所在を掴まれてしまい、身動きが取れなくなってしまう。そこへ、仮面の男モンタークが現れるのだが。
「……この声は確か……」
「マクギリスでしょ」
モンタークに扮したマクギリス。すぐに鉄華団に正体がばれるも、ギャラルホルンの組織改革をするために協力し合うことになる。そして遂に、鉄華団とタービンズは地球降下を開始。カルタ・イシューが率い、ここまでに何度か交戦しているガエリオを迎えたギャラルホルンの地球外縁軌道統制統合艦隊がそれを阻もうとし、激しい戦闘が展開される。しかし、カルタを出し抜き、ガエリオ達を撃退し、遂にミカ達は地球への降下に成功する。
「……遂に地球に」
「ここまで長かったな……」
「でも、ここからどうするんでしょうね……」
クーデリアは、地球に向かう目的であった人物、蒔苗東護ノ介と会う。しかし、蒔苗をエドモントンという大都市で行われる全体会議に連れて行かなければならなくなり、そうしなければクーデリアの目的を達成できないという事態に陥ってしまう。しかし、それは鉄華団の依頼外の行動。ここで火星に戻るか、危険な道を進むか。オルガとビスケットはそれぞれ、鉄華団の事を、仲間たちの事を考えているからこそ、喧嘩を始めてしまう。ここで二人が衝突したのは、ドルトコロニーでの一件の中、そこに住んでいたビスケットの兄が死亡してしまい、彼からの遺した言葉を聞いたからだった。それぞれ頼りにし合い、まさに相棒と言うべき間柄の二人は、もう一度話をすることをおやっさん達から提案されるのだが、ここでギャラルホルンからの勧告を受けてしまい、地上戦が始まってしまう。こうなってしまったからにはとビスケットもオルガの判断に乗ることになり、準備を進めていく。落ち着いたら話をしようとオルガとビスケットは約束をして、戦いに臨むのだが。
『死にたく、ない……俺には、まだ、オルガとの、約束が……』
『ビスケット……!』
『俺達の……鉄華団を……』
襲撃してきたカルタ率いるギャラルホルンとの戦闘の末、ビスケットは指揮官のオルガを狙い攻撃してきたカルタの攻撃からオルガを救い、ビスケットは死亡してしまう。二人は遂に、話をすることなく死に別れてしまったのだ。
「……ミサキ」
「……ちょっと、変な目で見ないでくれない」
先程のヒヨリの発言が思い出されたのだろう、全員の目がミサキに向けられる。ビスケットが鉄華団の中で大きな役割を担っていて、皆からも慕われていたのだ。全員、特にオルガの塞ぎ込みようは大きかった。
『オルガ、次は俺どうすればいい?』
『勘弁してくれよミカ、俺は』
『駄目だよオルガ。俺はまだ止まれない』
『待てよ』
『教えてくれオルガ』
『待てって言ってるだろうが!』
『ここが俺達の場所なの』
『……!』
『そこに着くまで、俺は止まらない。止まれない。あの日に。決まったんだ。ねえ、何人殺せばいい?後何人殺せばそこへ着ける?教えてくれオルガ。オルガ・イツカ。連れて行ってくれるんだろう。俺は次、どうすればいいんだ『離しやがれ!』』
『ああ、わかったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りはできねえんだ!連れていきゃいいんだろ!!途中でどんな地獄が待っていようと、お前を、お前らを、俺が連れてってやるよ!!』
だが、ミカからの叱咤を受けて立ち直ったオルガは、今一度、獰猛な笑みを浮かべる。再び前に進むために。そして立ち直ったオルガは、立ち塞がる奴を全てぶっ潰してでも目的地へ辿り着くと。皆への弔い合戦だと言い、ギャラルホルンを潰さなければこちらが潰されるだけだと、徹底抗戦を鉄華団は決意する。
「……凄いね」
「……ああ。ここまで、いけるんだな……」
「……でも、かなり危ういね……」
確かにオルガ達の運命は過酷だ。それを、どうにか乗り越えていこうとする子供達の強い生き様は、とても眩しく、だが血と泥に塗れたものだ。どんどん、危うい方向へ向かっているのは間違いない。自ら死地へ飛び込もうとしている彼らが、そこに活路を見出すことができるのか。ぐっと、掌に力を入れながら先生は終盤に差し掛かってきた鉄華団の物語を見届けることを改めて決める。
「……さすがにここまでのことはできるとは思わないが……でも、人は変われるっていうのはきっと、こういうことなんだろう」
エドモントンへ向かうため、最初は船で、そして鉄道で移動する一行は遂にエドモントンを目前にするが、ここでエドモントンへの侵入を阻むために立ちはだかるギャラルホルンと三日も戦闘を続けていた。多くの犠牲者を出しながらも戦いを続ける鉄華団。タイムリミットが迫る中、殆ど休むことなく戦い続ける鉄華団。それを圧倒的な軍勢で迎え撃つギャラルホルン。鉄華団の未来のため、全員が命をかけて戦いに臨む中、遂に最後の作戦を開始する。だがそこに、ガエリオ達が出現。体を機械化し阿頼耶識を会得したグレイズ・アインと呼ばれるモビルスーツの出現によって戦いはさらに過激化し、その隙を突いてオルガは蒔苗らを連れてエドモントン内部へと入り込む。だが、蒔苗らを追ってグレイズ・アインが街中に侵入し、それをミカが追ったことで戦いは市街地戦に発展してしまう。ガエリオとの戦いをミカから引き継いだマクギリスが行う中、激戦はさらに加速していく。
「……狂気、だな」
多くの血を流し、命を散らし戦う鉄華団とギャラルホルン。クーデリア、蒔苗、マクギリス、オルガ。全員の思惑と目的が交差する中、蒔苗を遂に議事堂に送り届ける鉄華団。その後、死ぬな、生きろとオルガからの指示が鉄華団全員に飛ぶ中、ミカが駆るバルバトスとグレイズ・アイン、マクギリスとガエリオの戦いは続いていた。マクギリスの手によってガエリオが葬られ、友人を弔ったことにマクギリスが悲痛な面持ちを見せる中、ミカはグレイズ・アインに追い込まれていた。ここまで頼りにしてきたメイスは完全に破壊され、スラスターの燃料も残りわずか、ガトリングの弾も殆ど残っていないという状況で、唯一残った刀だけという有様で、ミカはある手段に打って出る。
『おい、バルバトス……いいから寄越せ、お前の全部……!』
直後、バルバトスの目が光ったかと思うと、グレイズ・アインの反応を越えた攻撃が繰り出される。そのコクピットでは、震える手で操縦桿を握り、右目を赤く充血させ、鼻血が止まらない程に体に負荷をかけ、バルバトスのリミッターを外し、オルガの声援を受け遂にミカはアインを撃破。蒔苗が会議に出たことで、彼とクーデリアの目的も果たされ、ギャラルホルンも戦いを止めざるを得なくなり、戦いは遂に終結。クーデリアとの出会いから始まった鉄華団も最初の大仕事を遂に完遂、やっと戦いが終わり、数日後にはすっかり子供達も明るさを取り戻しつつある中、ミカは阿頼耶識の影響で右目の視力を大きく失い、右腕が不自由になってしまっていた。しかし、未来を掴んだ鉄華団は、希望を胸に火星へと帰るところで、鉄血のオルフェンズの話は一旦の区切りをつけるのだった。
「……これが鉄華団……」
「……アニメって面白いね。それになんか、逞しい人ばっかりだった」
「ああ……皆、心が強いな」
「私だったらすぐに音を上げそうですけど……格好いいですよね鉄華団……」
「オルガ・イツカ……か。凄い奴だった」
アニメを見終えたサオリ達も満足げな様子を見せていた。大人の悪意や思惑、世論や情勢に振り回され続ける中で、子供達が足掻き、多くの犠牲を出しながらも歩き続けたその姿は、いい意味で感銘を与えていたのだろう。そしてその中で子供達を支えていたのは、やはりおやっさんや名瀬を始めとするタービンズやテイワズの善良な大人達の姿もあったのだろう。そのおかげで、鉄華団は最後まで歩いてこれて、新たな未来へ進むことができたのだ。
「そうだね……よかったね。ちゃんと帰ってきてこれて」
先生の立場としては色々思うところはあったのだろう。しかし、それ以上にオルガ達がちゃんと帰れるということが先生としては嬉しかったようだ。
「そういえば先生、ガンプラの方はいいんですか?」
「あ、そういえばそうだった……後で組ませてもらうよ、ありがとうねモルフォ」
ここでガンプラのバルバトスの事を振られ、思い出したようにパッケージを見る先生。展開の重さを抜きにしても、激しく動き、敵を無慈悲に打ち倒す悪魔バルバトス。その姿は、ガンプラに先生をのめり込ませるには十分すぎるものだったらしい。鉄血のオルフェンズで盛り上がる面々を見ながら、いつの間にか終わってたシャーレの仕事の書類から目を離し、モルフォは時計を見るのだった。