転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

125 / 209
ゲーム開発部達と227号温泉郷

「……ん?」

 

それは、カスミから突然送られてきたモモトークから始まった。

 

『やあモルフォ、最近中々忙しいようじゃないか。そんな君やゲーム開発部の皆に朗報があってな!この度、レッドウィンターで温泉を発掘したのさ!ロスト・パラダイス・リゾートでは残念ながら海洋深層水温泉を発掘することができず、君達を入れられなかったのが心残りだったからね、温泉が出なくなる前に行ってみるといい!ハーッハッハ!私達は次の温泉とその時が来たら後始末をする準備をしておこう!』

 

いつものノリでカスミから告げられたのは温泉を掘り当てたというもの。しかも送られてきた住所はレッドウィンターの僻地であった。が、レッドウィンターの僻地と言うことは他の自治区との境目にもそこそこ近い方。レッドウィンターそのものが過酷な雪原や雪山が広がる地帯ということもあって普通は足を踏み入れる人も中々いないのだが、カスミのこの話を聞いてSNSを調べてみると、レッドウィンターにできた秘境温泉宿と密かな話題になっているようであった。

 

「……皆に聞いてみるかぁ」

 

ミレニアムに戻って休んだとはいえ直近のトリニティとアリウスでの戦いという大きな出来事を考えれば、もっと本格的に休んでもいいはずだ。一回皆にも聞いてみるとして、誘える人がいたら誘ってみるのも悪くない、そうぼんやりと考えながらモルフォは部室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後。レッドウィンターにミレニアム生達の姿があった。面子はゲーム開発部にC&C、リオを除くセミナーの面々という豪華な面子であった。これらの組織は全員先日の事件で色々頑張っていた組織であり、リオの方から休息を取ってくるようにというお達しが来たのだ。ちなみにリオも誘ったのだが、

 

『……誘ってくれたのは嬉しいのだけれど、その日は桐藤ナギサとの会談があるから……』

 

と断られてしまった。まあそういうことなら仕方ないということでこの面子でレッドウィンターに足を踏み入れていた。エンジニア部等も誘ったのだが、それぞれの用事もあって残念ながら断られてしまった。ちなみにネル達が同行した理由の一つには、

 

「レッドウィンターっていうとクーデターの温床みたいに聞いていたが静かなもんだな」

「それならそれで問題ないのでは?」

「まあ、ここは人も少ないですからね」

 

レッドウィンターが一週間で生徒会長が変わる程のある意味治安の極地であることに由来する。もしクーデターにゲーム開発部やセミナーが巻き込まれたら色々面倒くさいことを予測し、休息と護衛も兼ねてC&Cが同行したのだ。とはいえ表向きにはC&Cではなくオフで来ているため全員制服の上から防寒着という恰好である。

 

「しっかし一面全部真っ白ですねー」

「ええ、来るのは初めてだけど凄い雪原ね」

「ふふ、本当ですね。それにしてもリオ会長も本当は皆と遊びに来たかったでしょうに残念ですね」

 

雪原にコユキがはしゃいでいる様子をユウカとノアも微笑ましい目で見ていた。と、その時だった。ユウカの顔面に雪玉が投げつけられる。

 

「ぶっ!?こ、コユキ!」

「にはは!油断していたのが悪いんですよー!」

「やったわね!この!」

「うわっ!?にははは、こんなの当たりませ―――へぶっ!?」

 

それに怒ったユウカも雪玉を作って投げ始める。コユキはそれを軽々と避けようとするのだが、雪に足を取られてしまいそのまま倒れ込んでしまう。

 

「全く、はしゃぐからよ」

「なーにやってんだお前ら……」

「元気な証拠ではありますね」

「元気すぎるとも言うが……」

「コユキちゃん大丈夫?」

「か、体が冷たい……」

 

倒れたコユキに近づいたアスナが彼女の腰を掴んで引き抜く。体が冷たいと聞いたモルフォが襟元を持ち上げると、雪が溜まっており、体の中に入り込んでいることがわかった。

 

「こんなところで倒れたから雪が服の中に入っちゃったんだ」

「さ、寒そう……」

「手榴弾ならありますがどうしますか?」

「いや服が吹き飛ぶじゃないですかぁ!?しかも痛いですよ!!」

「はあ、コユキのためにもさっさとその温泉宿に向かうことにしましょう。というか日帰りの予定なんだからあんまり悠長にしていられないわよ?」

 

手袋を外し、コユキの襟に手を突っ込んで雪を掻き出せるだけ掻き出していく。手と雪が触れたことで表面が冷たくなっていき、それが背中に触れたことでコユキから「冷たい!冷たい!」と抗議の声が上がるが無視して雪を掻き出していく。それが終わって手袋をはめ直すと、

 

「じゃあそろそろ行きますか」

「オッケー!」

「いやせめて降ろしてくれません!?私は米俵じゃないんですよ!?」

「所謂お姫様抱っこならぬお米様抱っこだねー!」

 

そのままコユキはアスナの肩に担がれて目的地である227温泉郷へと辿り着く。そこでは噂に聞いたようにトリニティやゲヘナを始めとして様々な学園から生徒が訪れている光景があった。

 

「うわっ、本当にいろんなところから来てるんだ。しかもトリニティとゲヘナが一緒に……」

「この前の事を考えると良い意味で色々思うところはあるよねお姉ちゃん」

「温泉開発部からの誘いってんで一応調べたとはいえ警戒はしてたが……その心配もないのか?」

「まあ害を与えないならいいでしょう」

「……ですが、この繁盛ぶりならここに来るまでの道がちゃんと踏み固められていたのは納得ですね……」

「でも、確かにこんな寒い場所ならそりゃ人気も出るよね……温泉。うう、寒い……」

 

あまりの繁盛ぶりに驚く一行。ここまで、移動が苦にならなかったのも、ここまで続く道が多くの来客によって踏み固められていたからだ。その理由を改めて目の当たりにしてノアも感心したように頷いていた。一方、ここまで歩いてきただけでユズは寒さに耐えかね始めていた様子でしきりに手を擦り合わせたりしていた。そろそろ外で寒さの中にいるのもあれだろうと考え、一行が宿の中に入ると、

 

「いらっしゃいませ!227号温泉郷へようこそ!」

 

女将だろうか。薄橙色の髪に赤い目の少女が現れ、礼儀正しくお辞儀をする。その様子を見るに、彼女はレッドウィンターの生徒なのだろうと理解しながら、ユウカが口を開く。

 

「13人で日帰り温泉なんだけど……大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ!券売機を使ってください!タオルのレンタルはどうしますか?」

「ええ、使わせてもらうわ。券を買うから人数分用意してもらえるかしら?」

「わかりました!」

 

ちゃんと券売機もあるのかとユウカが驚きながらもタオルのレンタルや入浴券を購入していく。と、ここで思い出したのだろう、皆の方を振り向くと、

 

「あくまで日帰りだし浴衣は無しでいいのよね?」

「いいんじゃねえの?泊まり込みならともかくその日帰るのにわざわざ着替え直すのも面倒だし」

「そんなことより早く入浴しましょうよ!」

「コユキは濡れてるから脱ぎたいだけでしょ」

「お客様、お持ちしました!こちらをどうぞ!」

「ありがとう、券はこれで大丈夫かしら?」

「はい!大丈夫ですよ!」

 

券を受け取った少女はその枚数を確認すると、笑顔でタオルをユウカに渡す。大量に積まれたタオルを皆に差し出し、それぞれ上から取っていくと、一行は温泉へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……あったかーい……」

「雪が綺麗だね……」

「……溶けちゃう……」

「温泉って凄くぽかぽかして気持ちがいいです……」

『あ、アリス……その、そろそろ……』

「も、もうちょっと……だけ……」

 

露天風呂に入った一行は完全に寛いでいた。目の前に広がる圧巻の雪景色を見ながら、温泉の温かさに存分に癒されていると、モルフォの隣に浸かった薄い黄緑色の髪のオコジョの耳と尻尾を持つ少女がジュースの入ったおちょこを差し出してくる。

 

「堪能しているみたいだね。これ、モルス。サービスするよ」

「あ、そうですか?ありがとうござ……いやなんか変な匂いが……?」

「ふふ、冗談だよ。はいこっち。こっちはノンアルコールのモルス」

「え?それって」

 

モルフォの反応を見て楽しんだのか、その少女は自分で変な匂いがするモルスを飲み干すと、お盆に乗せていた別のおちょこを差し出す。こちらはちゃんとしたモルスのようであり、ラズベリーのいい匂いがしてきたのでそれを飲むと、甘さが全身に染み渡っていくのを感じる。となると、あのモルスから感じた匂いは少女の口ぶりからして……といったところでそれ以上の追及は止めることにする。

 

「甘くて美味しい……!」

「ふふ、脱衣場に売ってるから買っていってね。温泉に浸かりながら飲むモルスは最高だよ~?」

「ありがとうございます。えっと……」

「シグレ。間宵シグレって言うんだ。一応この227号特別クラスの人間だった……のかな?今はすっかり温泉宿になっちゃったけど。受付で女将やってたのが天見ノドカだよ」

「なっちゃったって……夢見モルフォです。ミレニアムから皆で来ました」

「楽しんでいってね。私はそろそろ上がるからさ」

 

モルスを勧めて風呂を上がっていったシグレ。もう少ししたら皆に聞いてみてモルスを買ってくるのもいいかとぼんやり考えていると、モルフォの隣にトキが移動してくる。

 

「?どうしたの、トキ」

「いえ……温泉って気持ちがいいですね」

「うん、そうだね。雪を見ながらってのも楽しいよね。それに皆と一緒に来る機会なんて中々ないし、ここはカスミさん達に感謝した方がいいんだろうね」

「……」

「いやどうしたの?」

「あれを見てください」

 

トキが指差した方角を見てみる。そこでは、手で水鉄砲を撃ちながらはしゃぐコユキとそれを鎮めるユウカ、そしてそれを見ながら微笑むノアの姿があった。

 

「またコユキが変な事してる」

「いえそっちではなく」

「ん?」

 

視線を少し横にずらすと、そこでは温泉を満喫している他のゲーム開発部の姿があった。うつらうつらと体を揺らすユズや、やっとアリスから変われてご満悦のケイに対し、モモイとミドリが互いに寄りかかり合いながら湯船に浸かっていた。そういえば先程から妙な視線を感じる気がするのは気のせいなのだろうか。

 

「モルフォもああいうのが好きなのですか?」

「あい?」

「いえ、モルフォは普段からアリスに抱き着かれてたりしますし、コユキが結構雑に近づいてきても普段通りですし、私がこんな感じで近づいても気にしませんし……以前読んだ本で、女の子の裸同士の付き合いというのはお互いに恥じらいを持つものだと」

「いやどこ情報なのさそれ」

「この前、休みを頂いた際に皆さんへの差し入れを探しに散策に出たところ、フリーマーケットで売られていた本にそういう内容のものがありまして……そういえばあれ、誰かに似ていたような……」

「そんな不健全なものさっさと捨てなさい。後私はそっち系は全く気にしなくなったから」

「?それってどういう……」

「あー、それはねー、多分私のせい?」

 

いつの間にか二人の後ろに回り込んでいたアスナがモルフォとトキを同時に抱きしめながら、囁いてくる、直後、離れたところから何かが呻くような声が聞こえてきたような気がしたが、気にせずアスナが言葉を続けていく。

 

「モルフォちゃんと出会った時にさ、私がぎゅーってしてた時がすっごい恥ずかしがっててさ。でもいつからだろ?なんか段々慣れていっちゃって今だとこういうことしても全く気にしなくなっちゃったんだよね。部長だって抱きしめたら怒りながら離そうとするのに」

「……まあ、アスナ先輩に動じなくなればこうなるのも納得ですね」

 

ジト目になりながらある一点を見つつ、トキが溜息を漏らす。別にそういう問題じゃなかったんだけどなぁと内心呟くも、これ以上は中々説明しにくいしそもそも今の自分には関係ない話だからどうでもいいかとすっぱり投げ捨てることにする。

 

「……ところでよー、ずっと変な視線を感じるんだがあたしだけか?」

「……うーん、視線と言われても、温泉自体はいくつかあるようですし……確かに言われれば感じはするんですが、敵意があるとかそういうのとはちょっと違いますし」

「他の客がこっちをたまたま見ているだけ、ってのもあり得るから……」

 

そんな後輩達が騒いでいる光景を横目に見つつも、じーっと湯煙の向こうを見るネル。彼女の言葉に同意はしつつも、そこまで深刻に考えていないアカネとカリンの言葉に考え込みつつも、まあ問題ないかと結論付ける。

 

「……あっ、やば」

 

と、アスナにトキごと抱きしめられていたモルフォだったがある光景を見て慌ててアスナの腕から抜けると、ユズの下へ急ぐ。そこには完全に眠りについていたユズが湯船に浮いている光景があり、慌てて彼女を起こす。

 

「おーい、ユズー、起きなさーい」

「うぅ……ロッカーから出たくない……」

「ここロッカーじゃなくて温泉」

「……え?あ、あれ……モルフォ……?あ……そういえば温泉に来てたんだっけ……」

「気持ちよくなるのはわかるけど寝たら駄目だよ」

「うう、ごめん……でも、気持ちよすぎて……」

「……しょうがないなぁ」

「……うぅーん……モルフォ……」

 

ユズが溺死する未来を避けるため、モルフォはユズの身体を支えようとしているとユズがモルフォに寄りかかる。これならユズが沈むことはないだろうが、それでも少し不安だったため、ユズの腰に手を回して彼女の体を抱く形で引き寄せる。

 

「モルフォ……気持ちいい……」

「もっと気持ちよくなっていいよ……」

「アッ!!」

「温泉なんだか……ん?なんか聞こえたような……気のせい?」

 

遠くから何かが悶絶して忙しなく何かが書かれるような音が聞こえてくる。あまりにも変な音だったのでモルフォが近づこうと立ち上がろうとすると、それを察したのか不穏な視線もここから離れて消えてしまった。一体何だったのだろうか。

 

「ユズ、あなたさっき倒れてたけど大丈夫?はい、モルスっていう飲み物が売ってたから買ってきたわよ」

「あ、ありがとうございます……あ、甘い……」

 

ユズが沈みかけていた光景はユウカも見ていたのだろう、一旦浴場を出て風呂の中に持ち込めるのを確認して飲み物を買ってきてくれたようだ。気付けば顔こそ真っ赤なものの肌に生気が取り戻されたように見える。

 

「あぅう……」

 

それでも、羞恥心は消えないようで、もじもじとしながらユズは心地よさを感じながら身を竦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃあっ!ドライブ!!」

「うわっ!?なにこれ!?」

「た、縦の強い回転がかかってる……そのせいで早く落ちてくるんだね……」

 

温泉から出た一行はというと、空いているピンポン台を使って勝負に興じていた。相手をとっかえひっかえしながら対戦し合う中、互角だったり圧倒したりされたりしながら、対戦カードはモルフォとミドリという組み合わせを迎えていた。しかしモルフォの武器が思ったより凶悪であった。

 

「うう……なんかペースが掴みづらい……」

 

ピンポン玉を打つ時には回転をかけることで様々なショットや技を使うこともできる。縦回転の、所謂ドライブをかけることでボールは放物線を描くのだが、普通に打ち上げるよりも落下スピードが速くなり、相手の予想を狂わせることができるのだ。

 

「……」

「いや手前に落とすのダメー!」

 

そして横にかけるスライス回転というものもある。これは、ピンポン玉がバウンドした際に強く横回転をかけると奥ではなくそのまま横に向かって飛んでいく変化を加えることができるというもの。特にそれをネット付近に向かって横回転だけをかけて落とすというドロップも駆使してモルフォはミドリをじわりじわりと追い込んでいく。

 

「モルフォ、強いです!」

「随分小技が上手だな」

「そうですか?ピンポンぐらいなら軽くやればそれらしいのはできると思いますよ?まあ……プロとかガチ勢相手だと全然通用しなくなりますが」

「スマッシュで!!」

「うわっ」

「す、スマーッシュ!」

「あぶな」

「わー!!」

「っと!?」

「いい加減落ちてよぉ!!」

「まだ耐えれる……!」

 

ミドリの連続スマッシュもロブで高く打ち返して防ぐ。さすがにこれに回転をかけるようなことはできないが、それでも凌ぐだけなら可能と言わんばかりに打ち返される玉にミドリの方が追い込まれながら怒涛の連続攻撃を仕掛けていく。その様子を見ながら、ノアと共にマッサージチェアで肩を揉み解して気持ちよさそうにしていたユウカは、ふと隣を見て見覚えのある人物を発見してしまい思わず二度見してしまう。

 

「……あ、あれ?あなたって確かゲヘナの風紀委員会の……」

「ぁぁ……あ、あ!?ふ、フウカさん!?な、何でここに……」

「いや誰よそれ、ユウカよ」

「あっ……ご、ごめんなさい……」

 

そこにいたのは、なんと浴衣姿のチナツであった。マッサージチェアでだらしない顔をして寛いでいた彼女だったが、ユウカに声をかけられたことで慌てて表情を取り繕おうとする。

 

「なんでって、温泉ができたって聞いたから休息を取りに来たのよ。最近忙しかったからね……あなたもそんなところでしょ?」

「な、成程……わ、私は違いますよ!?これも温泉開発部が他の学園の自治区で活動しているという話を聞いて調査に来ただけで……」

「その割には浴衣まで着て堪能しているようだけれど……」

「……こ、これは違いますから……ちゃんと設備が安全かどうかとかも調べる必要がありますから……そ、それでは私は他の場所の調査に行きますから……ユウカさん達もゆっくり休んでくださいね。あ、そういえば先生も訪れているようですよ」

「え、そうなの?」

「と言っても先生は専用風呂を用意されているらしく……現在二度風呂しているそうですよ」

「まあ、男性風呂はわける必要あるからね……」

 

そう言い、マッサージチェアから立ち上がるチナツ。だがその足は温泉に向かっており、どうやらもう一度温泉を味わうつもりのようだ。こういうのって風紀委員会だと経費で落ちたりするのかしら、なんて場違いな事も考えながら時計を確認する。

 

「帰りの時間を考えたら後30分ぐらいで出た方がいいわね」

「そうですね。先生と会えたら嬉しいですが、湯船に浸かっている邪魔をするのも悪いですし、無理そうならさっさと帰っちゃいましょう」

「あー楽しかった」

「うう、負けちゃった……」

「いやー、モルフォの攻めの多様性が凄すぎてミドリも全然追いついてなかったね」

「でも、こういうのも楽しいですね。これも温泉の楽しさというやつですか」

 

そうしている間にもモルフォとミドリの対戦が終わり、モルスを飲んだり饅頭を食べたりしながら次の試合を観戦し始めるゲーム開発部とコユキ。ネル対トキという対戦カードとなっていたが、ピンポン玉がハイスピードで飛び交うとんでもない打ち合いとなっていた。

 

「ネル先輩にしては随分と力を抑えているようですが、負けた時の言い訳作りですか?」

「ああ!?んなわけねえだろうが!」

「あはは、部長も辛そうだねー」

「部長が本気で打つとピンポン玉なんてすぐに粉々になりますからね……」

「そういえばモルフォも結構なパワーだった気がするが……ああ、だから回転ばっかりかけてたのか……」

 

煽ってネルの自爆を狙おうとするトキと、怒りながらもパワーコントロールだけはちゃんとしているネルの対戦はとにかく速く、長い。その様子を観戦しながら駄弁っているC&Cの面々と一緒になって観戦していたのだが、

 

「……ひっく」

「……ん?」

 

誰かのしゃっくりのような声が聞こえてくる。誰か湯冷めでもしたのだろうかと、ちょっとした興味でそちらを見てみると、顔を真っ赤にしながらフラフラな様子のミノリが歩いてきていた。浴衣姿なのを見るに先ほどまで温泉に浸かっていたのだろうが、千鳥足なのを見るにそれはのぼせたと言うよりはまるで、酔っているかのようだ。

 

「……あっ!」

 

瞬間、脳裏にシグレが飲んでいた奇妙な匂いのするモルスが蘇る。間違いない、やっぱりアルコールが入っているものがあってミノリはそれを飲んでしまったのだろう。慌ててミノリへと駆け寄ると、肩を貸す。

 

「大丈夫ですかミノリさん?凄いデロンデロンですよ」

「あ……?ひっく、ら、らいじょうぶ……ちょっともるす、のんだらけ……そのあとおんせんでもういち、にはいぐりゃい……」

「いやアウトじゃないですか!?アリス、ちょっと水持ってきて!」

「え、あ、はい!わかりました!」

 

すぐにアリスが水を持ってきてそれをミノリへと飲ませる。こういう時は水をどれだけ飲ませればいいかなんてわからないので二、三杯ぐらい飲ませればいいかと次々と水を飲ませながら彼女を椅子に座らせる。

 

「う……あ……ちょっと、マシになった……」

「まだ私達高校生なんですから酔うなんて洒落になりませんよ?」

「くそ、迂闊だった……間宵シグレ……あいつが227号室に送られたのは確か、酒が関係してたとかいう話だった気がしたのに……うう。確か……ゲーム開発部だったな……た、助かった……ありがとう」

「いえ、さすがにあのまま放っておいたら大変なことになると思ったので……」

 

介抱の甲斐もあり、多少は酔いも醒めてきたようだ。とはいえモルフォ達の名前がぱっと出てこないぐらいには本人は酔いがまだ残っているようだが。水をミノリに差し出す。

 

「とりあえず落ち着くまでこのままでいた方がいいと思います」

「ああ、そうさせてもらう……いずれ、何らかの形で礼は返す……しかし、これが、227号温泉郷……なんて恐ろしいんだ……!」

 

何があったかはわからないがとりあえず大変な目に遭ったミノリを見つつ、アリスと顔を見合わせる。その後、彼女が所属する工務部の部員がミノリの介抱を引き継いでくれたことと、帰る時間になったことでモルフォ達は温泉郷を後にする。

 

それから数時間後、温泉が枯れてしまうことが判明したメグらの手によって温泉郷が跡形もなく吹き飛ばされることになるのだがそれはまた別の話。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。