転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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桐藤ナギサとサブノーティカ

 

「……ふう」

 

ナギサが保有するセーフハウス。そこで書類仕事を終えたナギサが、溜息を吐く。セイアが暗殺されたという誤情報が流れ、自分がティーパーティーのホストとなり、エデン条約の調印を推し進めるために様々な仕事をこなし、ミカとアリウスの内通も処理したり、途中で物理的に一度ダウンしたとはいえ、復帰後は調印式に由来する一連の事件解決に尽力、それが終わった後もマコトを丸め込んだり、後始末をしたり、中々うまくいっていないがアリウスとの交渉をシャーレのサポートも受けつつ進め始めたり、セイアやミカに定期的にロールケーキをぶちこんだり、また色々騒がしくなってきたトリニティの内情にも対応したりしていたのだが。

 

「……っ」

 

さすがにナギサにも疲れが見えていた。特に、やっとエデン条約に関しては終わったのもあって気が抜けてしまったのかもしれない。眩暈がしてしまい、思わずこめかみに手を当てて痛みが軟化するのを待ち、紅茶を飲み干す。

 

「さて、やっと落ち着けたことですし……アリウスとの事に本格的に打ち込めそうですね……ミカさんの願いもありますし、どうにか軟着陸させたいところですが……!?」

 

ふと、室内に音が鳴る。その音に跳ね起きたナギサがタブレットを手にして画面を映すと、そこにはセーフハウスの周囲をうろつくミネの姿があった。

 

「……み、ミネさん……!?」

 

ミネの表情はかなり険しいものとなっていた。あれはまずい、あれは救護の目だ。先の一件でミレニアムとのパイプが良くも悪くもできたことで性能の高い監視カメラを始めとするセキュリティを購入できてよかった。もしそれがなければ一直線にここに近づくミネに気付くことはできなかったかもしれない。

 

「……今ミネさんに捕まるわけには……まだ、まだ止まるわけにはいかないんです……!」

 

だが気付いたとなれば話は別だ。すぐに部屋の明かりを消して隠れるスペースとして作ってある隠し壁の中に潜り込む。直後、扉が吹き飛ばされミネが中にずかずかと入りこむ。

 

「ナギサ様!!ここにいるのはわかっています!今のあなたは睡眠不足、紅茶の過剰摂取、精神的な疲労、その他諸々……今のあなたは救護を受けなければなりません!!お覚悟を!!」

(うう……この時間すら惜しいのですが……)

「……外れ、でしょうか」

『机の上を見るんだミネ。そこにある書類はつい最近まで作業していたものじゃないかい?』

「?確かにこれは……それに、椅子もまだ温かい……!」

(い、今の声はセイアさん!?まさか、セイアさんがミネさんをここに!?)

 

セイアからの通信の声が聞こえ、ナギサは冷や汗を流す。ナギサがここにいることを確信したミネが明かりを点け、建物の中を隅々までチェックし始めていく。大体十分ぐらいだろうか。一通り探したものの、ナギサを終ぞ発見することができず、さすがのミネも溜息を吐いてしまう。

 

「……どこかにいるのは確実なのですが……これだけ探しても見つからないとは」

『……壁はどうだい?どこかに隠れるための壁があるのかもしれない』

(セイアさん!!?)

「……ふむ」

 

セイアのアドバイスに従い、壁をコンコンと叩き始める。最初は遠かった壁を叩く音も、徐々にその音が近づいてくる。音が近づき、大きくなっていくに従ってナギサの頬を流れる汗が増えていく。さながらホラー系で怪異が徐々に近づいてくるあの感覚がして、思わず恐怖感を煽られてしまう。

 

「……!」

 

そして音が、ナギサの隠れる壁の隣で鳴る。もう終わりだ。ナギサも遂に覚悟して目を瞑ったのだが、その瞬間はこない。一体どうしたのかと思っていると、その場から遠ざかる足音が聞こえてくる。

 

(た、助かった……?ふ、ふふ……セイアさん。推測は見事でしたが、私を見つけるには一歩足りませんでしたね……化かし合いは……私の、勝ちのようですね……)

 

勝った。そう確信し、勝利の笑みを浮かべた直後だった。

 

「―――救護ッ!!」

「ごはっ!?」

 

勢いよく突進してきたミネが叩きつけたシールドバッシュによって壁が一撃で砕け散り、その奥で立ち尽くしていたナギサの意識を刈り取ってきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、すまないねミネ。こんな役割をさせてしまって」

「気にしないでください、セイア様。これも救護騎士団団長である私の役目ですから。ナギサ様が今日まで尽力し続けてきたことは勿論把握していますが……だからこそ、彼女には然るべき救護が必要なのです」

「……なんか、すまないね」

「いえ、セイア様が悪いわけではありませんから……」

「まあ、後のことは一日二日はミカに投げてしまえばいいさ。最悪私も手伝うからね」

「セイア様はまだまだ病み上がりですし、まだ、あまりそういうことはしてほしくないのですが……」

「こちらもリハビリは必要さ。これでも私は元ホストだぞ?」

 

数時間後。気絶したナギサは別のセーフハウスへと移動させられ、そこで絶対安静となっていた。ちなみに今回の一件は、ミカやセイアから休むことを頻りに勧められたナギサが仕事場をセーフハウスの方へと移動し籠り始めたのが原因である。何となくこの時間に突撃すれば仕事も一段落付いて思いっきり休ませられるだろうと直感したセイアの主導によってミネが送り込まれ、こうやって確保されていた。

 

(……予知夢が消えた影響か?第六感……とでも言うのだろうか。それが妙に……まあ、そんなことよりもモルフォと夢で会えなくなったことの方がよろしくないんだが……うーむ、道が繋がってる感覚はあるんだがな……)

「さて、これでナギサ様を無事閉じ込めることに成功しました」

「しかしこのままではナギサは目を覚ましたら何としてでも抜け出そうとするだろうな。となれば……ふむ、少し思い付いたぞ」

「と、いいますと?」

 

ナギサは今は死んだように眠りについており、当然のように銃を取り上げられた上に迂闊に逃げられないように窓のない部屋に閉じ込められている。とはいえ、ここで目を覚ましたらナギサが抜け出そうとするのは目に見えている。そうならないように一計を講じる必要があったセイアは、ある策を打ち出すのだった。

 

「ミレニアムのゲーム開発部さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

ナギサが目を覚ますと、空に広がるのは白い天井であった。体を起こすのだが、部屋に置かれていたのはノートパソコンと一通の手紙であった。

 

「……?」

 

困惑しながら手紙を手に取り、中身を読み始める。

 

『やあナギサ。これを読んでいるということは無事に目を覚ましたようだね。状況は大体君も予想がついていると思うが、ミネだ。とはいえ、君も可能ならばすぐにでも戻りたいと思っているだろうし、私としてもそのために君とミネが対立するのは忍びない。そこでだ、ある条件をクリアしたらすぐにでもここから出てもいいことにさせてもらった』

(……えっと、多分セイアさんの字、ですよね?)

 

意識を失う直前にミネに意識を刈り取られたことは覚えている。その後、救護のためにここに閉じ込められたということは容易に想像がつく。しかし、ミネから条件を取り付けたとは。救護に関しては一切譲らない彼女が譲歩するとは、一体何の条件を取り付けたというのか。

 

「……」

 

思わず息を呑みながら二枚目に手を伸ばす。ミネが許可を出すということはまず生半可な条件ではないだろう。思わずびくびくとしながら読み始める。

 

『ちなみにその条件は目の前にあるパソコンに入れてもらったゲームをクリアしてもらうことだ。後これはミレニアムのゲーム開発部の協力を取り付けて提供してもらったもので世に出すものじゃないということは把握しておいてくれたまえ。ちなみにこの部屋はミネにも監視されているからそのつもりで頼むよ』

(……え?ゲーム?セイアさん?いや何言ってるんですか?)

 

その内容に困惑するナギサ。セイアが寝たままの時、夢の中でモルフォとゲームなりで交流していたという話は聞いている。その時に大分セイアがゲームにのめり込んでおり、目覚めてからは個人的な趣味でゲームを嗜み始めているというのも知っている。だが、まさかこんなことをしてくるとは。

 

「……まあ、いいでしょう……正直色々思うところはありますが、ゲームをクリアするだけならば……そういうのとは縁がないですが、まあセイアさんがやっているようなものならば……ふむ?サブノーティカ……?」

 

パソコンを立ち上げると、一つのアイコンが入っているのを発見する。それを起動させると海面のタイトル画面が出現する。サブノーティカというゲームは、乗っていた宇宙船が墜落事故に遭い、脱出ポッドで海洋惑星4546Bに不時着した主人公が星からの脱出を目指すというサバイバルゲームである。とりあえず流れのままにサバイバルという通常難易度でゲームを開始、宇宙船が星に墜落しようとしている一枚絵と共に読み込みが始まり、それが終わると緊迫したアナウンスと共に脱出ポッドへと乗り込む主人公という様子が現れる。

 

「……結構、臨場感が凄いですね」

 

脱出ポッドに存在する天窓だろうか、そこから見える光景では脱出した宇宙船が爆発し、その衝撃で降下する脱出ポッドが揺れる。その衝撃で内部がどんどん破損していき、壁から外れた消火器が激突して主人公は意識を失ってしまう。そして意識を取り戻すと、脱出ポッド内が燃えており、そこで消火器を拾い、消火を開始するチュートリアルが始まる。

 

「え、えっと……こういうことですか?」

 

チュートリアルに従って消火を終えると、落ちていたパッドを拾う。PDAと呼ばれるそのパッドから音声とメニューが表示されていく。PDAには様々なデータを読み込め、後に手に入れるスキャナーと呼ばれる道具で解析したアイテムや生命体についての情報についても記載されたりする。そういったものを読みこむのもこのゲームの醍醐味である。

 

「……色々あるみたいですが……と、とりあえずどうすればいいんでしょうか。身に着けるものから作ればいいんですか?」

 

脱出ポッド内に備え付けられたファブリケーターという設備を使い、色々なアイテムを作る。それは材料だけでなく食料の加工すら可能であり、さらには主人公が身に着ける装備も作ることができる。これにより、食料、水分、体力ゲージを管理しながら脱出ポッドの外に広がる海を探索し、材料を収集、それを使って様々なものを作ったりしながら探索を進めていき、最終目的である星の脱出を目指すゲームなのだ。

 

「……水が綺麗ですね……そういえば海、今年の夏は行ってませんね……まあ行く暇なんてなかったわけですが」

 

脱出ポッドから出ると、辺り一面に綺麗な水面が広がる。遠くでは墜落した宇宙船が確認できるが、それよりもとりあえず移動しようとナギサは主人公を動かして水の中に入る。水の中も透き通った景色が広がっており、綺麗な海中植物などの景色を見るだけでも楽しくなってくる。と、画面中央にある照準に鉱石が合わさると、鉱石をマウスでクリックして砕くという指示が出る。

 

「えっと……こ、こういう感じでしょうか」

 

言われるがままに鉱石を砕くと、銅が鉱石の中から現れ、それをストレージに入れる。ストレージに入れたアイテムはPDAを開き、メニュー画面を出すことで確認でき、ナギサがメニュー画面を開いてこういうことかと確認していく。と、

 

「あ、あれ?画面が真っ暗に……え?」

 

突然画面が真っ暗になり、主人公が死んでしまう。気付けば脱出ポッドの中に戻されており、ナギサは呆然としてしまう。一体何事かと困惑しながらもまた海の中に戻ると、ここで酸素ゲージの存在に気付く。そういえば酸素が減っていることを警告するメッセージがあったことを思い出す。さっきは情報量が多すぎてそこまで気にすることができなかったが、海の中に潜っていて酸素が尽きるのは当たり前の話である。

 

「……そういうことですか。これからは気を付けなければ……は!?」

 

次からは気を付けようと、酸素について管理しながらアイテムを集めていく。すると何かが開く音と共に突然爆発に襲われ、画面にヒビが入っていく。それと共に体力が大きく削り取られていってしまう。

 

「え!?な、なななんですか!?」

 

困惑しながら慌ててその場から逃げ出そうとするナギサ。しかし、その結果海面とは程遠い、海の中の小さな、だが初心者から見れば十分入り組んでいる洞窟の奥へと突き進むことになってしまい、さらにそこで複数の何かが開く音と共に爆発に襲われてしまい、体力がゼロになってしまい、また死んでしまう。

 

「……さ、魚が……爆発した……」

 

だが、死ぬ直前に花のようなものから出現した一つ目の赤い膨らんだ魚が主人公に近づくと大爆発を起こして主人公を仕留めた光景が繰り広げられていたのを見てしまう。この魚はクラッシュフィッシュといい、この自爆攻撃が序盤は脅威となっているのだ。

 

「……こ、これ、本当にクリアできるんですか……?」

 

短時間で二回も死んでしまったナギサは、唖然となりながら呟く。その光景を別室で見ながら、セイアはニヤニヤと笑っていた。

 

「いやぁ、苦しんでいるね」

「ゲーム……まあこの場合は娯楽ですか。精神的に疲弊していたナギサ様にはちょうどいいとは思いますが、さすがに簡単にクリアされてしまったら……と思ったのですが、この調子なら問題はなさそうですね……」

「ああ。何せちゃんと十時間以上は時間がかかるものを頼むと言っておいたからね。まあ、ゲーム慣れしているモルフォ達でそうなんだ、ナギサがやったら当然……こうもなるだろうね」

 

サブノーティカは事情を知ったモルフォがゲーム開発部として提供したものである。セイアならそこら辺の心配もないということはわかっていたために快く手渡してくれたものだ。要望としてはゆったり楽しめつつも刺激をそこそこに感じられるゲームを、と頼んだが、こうして見ているだけでもセイアとしてはかなり面白いサバイバルゲームだという風に感じていた。ナギサの件が終わったらモルフォに言って自分もやってみてもいいかもなと考える。

 

『え、えっと……これでナイフが……えっと、そこから』

「……ふむ、そろそろですね」

 

と、ここでミネが時計を見て立ち上がる。ずっと寝ていたせいでナギサは時間感覚が曖昧になってしまったのだろうが、ミネからすればそんなことは関係ない。立ち上がったミネがナギサの下へと向かうと、扉を一気に開け放つ。

 

『み、ミネさん!?』

『ナギサ様!そこまでです!食事の時間ですよ!!』

『え!?ちょっとまってください今何時なんですか!?』

『19時です!ナギサ様は身も心も休める時ですよ!ゲームを行う時間も徹底的に管理させていただきます!』

『そ、そんな!?そんなことしたらいつ戻れるか……』

『救護!!』

 

ミネによってナギサが救護されていく様子を見ながら、セイアはやれやれと肩を竦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふう、こんな感じですか……」

 

気付けばナギサはすっかりのめり込んでしまっていた。完全に手探りでどうすればいいのかとたどたどしいプレイだったのも昔の話。スキャナーを使い、ちょっと大きめの敵対生物に対してはステイシスライフルと呼ばれる、相手の動きを止める銃を使ってからナイフで切り倒していくのもすっかり慣れたものだ。

 

「……おっと、またストーカーを轢いてしまいましたか……」

 

ガァン!と鋼鉄の装甲にナニカがぶつかる音がするが、ナギサは気にせずに移動を続ける。現在ナギサが乗っているのはシーモスと呼ばれる小型潜水艦だ。この潜水艦は素早く、そして小回りも利く上に乗っている間は酸素が常に全開まで回復されるという便利な乗り物であり、作られてからずっとナギサの手によって乗り回されることとなっていた。

 

「……これでチタニウムは集まりましたし、そろそろ拠点も完成しそうですね……」

 

そんな中、ナギサが夢中になっていたのは建設である。このゲームではビルダーと呼ばれるツールを使い、必要な材料を消費することで拠点を作ることができる。拠点の中にはバイオリアクターを始めとする発電施設だけでなく、水槽などを置くことのできる部屋など様々な設備を用意でき、それらを作るために人によっては多くの物資が必要になるのだ。そして、そこに折角拠点として運用するならと欲を出したのが全てのきっかけ。一人では明らかに持て余しそうなほどに巨大な拠点を作り上げるのにナギサはまる一日を要していた。

 

「……ふっ、このゲームも結構楽しいですね……これはセイアさんが夢中になるのもわか…………私、早くクリアしないといけないのになんでこんな無駄な事を……?」

 

そして完成したのはいいが、クリアを目指さないといけないのになんで建設に無駄に本気になっているのかと思わず困惑してしまう。クリアするまでに自分はどれくらいの設備をこの中から使うというのだろうか。とはいえ、この光景をセイアが見ていれば、無駄を楽しめばいいんだよとすぐに返されたことだろうが。

 

「……次への導線がないんですよね……デガシ号の居住地を探索したのはいいんですが……こうなると、まだ調べてない所に行くしかないんですが。あの気持ち悪いイカとかワーパーとかが跋扈する所にはもう行きたくありませんし……」

 

若干鳥肌を立たせながらナギサはちょっと前に探索した場所を思い出す。このゲームには様々な敵対生物が存在しており、序盤で何回か爆死させられたクラッシュフィッシュもその一体だ。だが、それらを除くと基本的に敵対生物はワンパターンな攻撃、妨害方法をするだけなのだが、500m近くという深度に存在するクラブスクイドと呼ばれるイカとクラゲと蜘蛛を足して3で割ったかのような四つ目の奇怪な生命体との遭遇にはナギサもかなり恐怖感を叩き込まれたものだ。

 

何せクラブスクイドは明かりに反応して特殊な電磁波を放ち、機械類を全て一時的にシャットダウンさせるという凶悪な能力を持っている。そのせいで生命線であり、ナギサの精神安定剤となっていたシーモスが機能停止に陥るわその状態からクラブスクイドにタコ殴りされるわ、さらにそこに主人公をワープさせて高い攻撃力をぶつけるワーパーと呼ばれる敵に殴られて殺されるわと散々だった記憶しかない。ただでさえ暗い所に潜らされて、明かりで心の安定を図っているところにあんな心臓に悪いことはしないでほしい、それがナギサの率直な感想であった。

 

「……その点、こうやってのんびりするのはいいですね……凄く楽しくて……ふふ、何の使い道もない植物でしたが、プランターとかを使えばこうやって育てることも……どんどん拠点の景観が整っていきますね……」

 

嫌なことを思い出したことや、こっから未知のエリアを探索する以外にどう話を進めればいいかが見当がつかないこともあるのだろう、再び思考は拠点整備に没頭していく。その後、ミネが部屋に入ってくるまでナギサは拠点を弄るその手を止めることはなく。そして、

 

「……探索しないといけません。とりあえずまだ探索してないところで……深い所は止めておきましょう。そうですね、まだ行ったことがないはずですしオーロラ号の後ろに行きましょう。しかし、いつになったらサイクロプスという乗り物は作れるんでしょうか?」

 

ミネの介入によって無理矢理拠点弄り気分を終了できたことでやっと、探索する気持ちに切り替える。とはいえ、深い所に行きたくないという苦手意識のせいで浅い所を選択する。なお、話の本筋、という点では次の目的地は深度700m程もある、ナギサが必要最低限の探索だけやって逃げのびてきたクラブスクイド達が跋扈する海域の先にあるロストリバーに向かい、異星人の施設を調べる必要があるため、浅い所で話を進めようというナギサの思惑は完全に無駄である。強いて言うなら大型潜水艦であり、移動拠点ともなり得るサイクロプス完成に必要な設計図を集めるためにこの探索は無駄にならない、といったところか。

 

「オーロラ号も放射能汚染を止める時に来たきりでしたからね……」

 

オーロラ号は主人公が乗ってきた船であり、この星に不時着してからは放射能汚染を周囲に引き起こしていた。それを解決するためのイベントが序盤にあり、そのために一度訪れてはいたのだが、そういえば周囲は探索していないなと気付いたことでシーモスを駆りオーロラ号の周辺を探索していたのだが。

 

「うーん、やっぱりオーロラ号周辺にいくと水が濁ってしま……ひっ!?」

 

まだ調べていないオーロラ号後部を探索し始める。不穏な鳴き声のようなものが聞こえるがこのゲームだと日常茶飯事なのですっかり慣れてしまった。だが、突然シーモスに食らいついてくる異形の魚に思わずナギサの口から悲鳴が漏れる。直後、

 

「あっあっあっ、し、シーモスが一撃で……な、なんなんですかこれああああ!?」

 

それは、リーパーリヴァイアサンと呼ばれる赤と白を基調とした巨大な魚である。高い攻撃性を持ち、全長55メートルという恐ろしい巨体を持っている。その顔の周りからは四本のかぎ爪のような触腕が生えており、それでシーモスを一撃で粉砕、さらにシーモスがあるからと体力を回復せずにいた主人公にも勢いよく噛みついてしまい、一撃でその命を奪ってしまう。

 

「……今日はもう、拠点を広げていきましょうか……何もないってことは仕事はミカさんが何とかしてるでしょうし……焦ってここでこれを終わらせるのももったいないですし」

 

リーパーリヴァイアサンの襲撃に心が折れたナギサは、逃げるように拠点弄りを再開し、のんびり過ごすことにするのだった。

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