転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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夢見モルフォ達とRABBIT小隊

 

「……えっと、四人とも大丈夫?」

「大丈夫なように見えますかこれが……!」

 

数日前。子ウサギ公園を占拠し、デモを行っていた四人の少女達。彼女達は今は廃校となっているSRT特殊学園に所属していたRABBIT小隊と呼ばれる四人組だ。SRTの廃校退けを訴えるため、子ウサギ公園に立て籠もった彼女達を取り押さえるべくヴァルキューレが出動し、取り押さえようとするのだが、遂には彼女達ではどうすることもできず、話を聞きつけた先生が連邦生徒会から駆けつけてきたのだ。が、そこからが彼女たちの最大の不幸。先生の救援に現れたのはなんと、シャーレの当番であったヒナ。さらに彼女を追って同じく当番のミカ、たまたまシャーレに遊びに来ていたネルとホシノという最強の小隊に呆気なく蹴散らされてしまったのだ。

 

そのままヴァルキューレ警察学校に連行された彼女達。そのあまりの惨状ぶりには、狂犬とまで称される公安局局長、尾刃カンナですら少しだが同情するレベルであった。その後は先生が事情聴取に当たり、紆余曲折あって出所。その後は一応手続き上の問題、押収した荷物が多いのもあってその場で引き渡しがすぐにはできないこともあってシャーレのオフィスへとやってきたのだが。

 

「さ、散々な目に遭った……」

「こ、怖かった……ちゃんと急所を狙ったのに……肩で受けたと思ったら「そこね……」って位置を割り出してくるのは……ちょっと……」

 

物静かな少女、RABBIT小隊のスナイパーを務める彼女の名は霞沢ミユ。かなり気弱な性分なのか、ヒナと交戦した時の事を覚えているようだ。ちなみにその時、ヒナはヒナで(あんな遠くから正確に急所を狙うなんて大したものね……)などと感心していたのだが。

 

「いやー焦ったよね?さすがに色々覚悟したし……大分まずかったかもね。いやーストップかけてくれた先生にはむしろ感謝するべき?」

 

うんうんとその時のことを思い出して頻りに頷く眼鏡の少女、彼女の名は風倉モエ。彼女たち二人を見ながら、ショートボブの少女、空井サキは溜息を吐く。

 

「はあ……全く、これからどうすればいいんだ……私達のデモが……」

「えーと……君達はSRT特殊学園の廃校を取り下げたいんだよね?」

「ええ、そうです」

 

白髪の少女、月雪ミヤコに確認を取りながら、先生は思い出す。RABBIT小隊が連行された後、そもそも彼女達の学園は何故閉鎖されることになったのかを。

 

『SRT特殊学園が閉鎖になった理由、ですか?元々SRTは連邦生徒会長直属の学園として創設されました。連邦生徒会長の権限、命令であらゆる自治区へ介入することができます。加えて装備面も優秀なものを取り揃えている上に所属している生徒達も厳しい試験や訓練を経ているために練度、士気も高いんです。まあこの前のは色々例外というか不運が重なりすぎていたというか……なんでキヴォトス最強小隊が来ちゃったんでしょうね?……これも、そういうことなんですかね?』

 

少し前にそう伝えたアロナのあの苦笑いは記憶に新しい。まあ、字面だけ見せられれば連邦生徒会自慢のSRTの小隊が、他三人が完璧に合わせていたとはいえ他校の生徒実質一人にぼこぼこにされているという状態なのである意味仕方ないかもしれないが。とはいえ、それを誰がやったか知ればほとんどの人物が掌を返すことだろう。

 

『しかし、連邦生徒会長が失踪したことで、その直属であったSRT特殊学園は身動きが取れなくなり……その後はSRTの高い武力を扱いかねて協議の末に閉鎖することが決定、廃校になってしまったようですね……それに対する補填としてヴァルキューレを始め、生徒達が希望する学園への編入をサポートをしていたようですが……それに反発した生徒達がこういった行動に出てしまったのはある意味皮肉ですね……』

 

加えて、シャーレが設立させられてしまったのもSRTにとっては向かい風であった。似たような行動であればシャーレも取ることが可能なうえ、SRTとは異なり他学園の生徒と協力して物事に対応に当たるという都合上、シャーレの部員として生徒達を在籍させてはいてもSRTのように常駐する戦力とはならない。それ故、SRTのように連邦生徒会に牙を剥く、という行為も起こしにくいのだ。そして、自分達で思いっきり首を絞めてしまったRABBIT小隊に先生は内心頭を抱えてしまう。

 

「えーと、例えばだけど、ヴァルキューレにSRTのようなことはできないの?」

「それができないからSRTとヴァルキューレはそれぞれ別に存在していたんだけどな……それに第一、ヴァルキューレは規律が緩すぎる。まあそれ以外にも理由はあるんだが……」

「まあでも先生が言いたいことはわかるよ?SRTの生徒をヴァルキューレにそのまま編入させてSRTがやってた業務をそのまま引き継がせればいい、ってことでしょ?実際拠点自体は色々な所にあるわけだしね……でも無理。まず金がないから装備が貧弱。これじゃ派手に武器が使えない」

「……モエの思惑はともかく、他の学園の自治事情の煽りをモロに受けるので……先生はおそらくシャーレがやってきたことをイメージしていると思いますが、それより遥かに自由はないと思ってもらっても構いません。本当に例外は連邦生徒会が管理しているこのD.U.地区ぐらいです」

 

SRTができたことを他でできればそもそもRABBIT小隊の抱える不安は……と考えたものの、そんなことができたら苦労はないと言わんばかりにミヤコ達からぼこぼこに言われてしまう。彼女達をヴァルキューレから釈放する前、カンナにもSRTの復興について触れたが、彼女からの答えも芳しくなかったことから、こういった方面ならどうかと考えるものの、ある程度予想はできていたが、やはり難しいようだ。

 

「だからこそ、SRTがSRTであるためには、その正義を示すためには廃校を取り下げてもらわなければいけないんです」

「まあ、私達を釈放してくれた事自体は礼を言うが、それとこれとは話は別だ。シャーレの存在がSRTに少なからず影響を受けていることは事実」

「ま、暫くはまたデモ生活じゃないかな?」

「それって、子ウサギ公園に戻るって事?」

「他に陣地が作れそうな場所がないからな」

 

そして、再びデモをすると言う彼女達は子ウサギ公園に戻るつもりのようだ。しかしそれではまたヴァルキューレと衝突、それに伴ってシャーレとも、そしてシャーレの当番の子が駆り出されることになるのだろう。かといって、先生が彼女たちの活動を容認したところで、連邦生徒会がその要求を受ける理由も現状存在しない。どうしたものかと考えていると、

 

「先生、おはようございます」

「おはよう、先生……客?」

「あ、おはようモルフォ、セリカ……ごめんね、ちょっと取り込んでて」

「何かあったんですか?」

「あー、えっとこの子達はSRT特殊学園の子なんだけど……」

 

当番が来る時間だったのか、モルフォとセリカがやってくる。シャーレの部員は先生が赴任してきてから増加の一途を辿っており、とてもシャーレに当番に来れない生徒もどうしても出てくるものの、当番として来たい生徒もまた割合としては増えてきていた。そんな中でもできるだけ学園の垣根を越えた交流をしてほしい、順番待ちで待つ生徒達をできるだけ作りたくないという先生の意図もあり、現在は午前と午後で当番を分ける形で回転率を上げるという方式で試験的に運用しているのだ。そのため、モルフォが当番として訪れる日も以前より増えていた。そのせいもあってか、こういう出会いもあるようだ。

 

「あー、ホシノ先輩から聞いてるわ。結構SRTのこと気にしてたみたいだし……廃校って他人事じゃないもの。けど、それでやることが公園を不法占拠してたっていう……」

「デモだ!不法占拠じゃない!」

「ええ……?」

「何となくはネル先輩から聞いてるけど……デモって……こうプラカード掲げて大人数でやるものじゃないの……?あれってやり方本当に合ってる?」

 

それぞれホシノとネルが関わってたのもあり、本人達も大した話と思っていなかったのか殆ど触りだけのようだが後輩達に伝えていたようだ。しかし、その評価は思ったより芳しくない。というか第三者から見ればセリカのような良くない反応が返ってくるのが当然だろう。

 

「やり方って……種類があるとでも?」

「でもさ、ルールに則るとか……マナーとかさ……」

「デモにマナーなんてそんなの求める方が間違いでは?」

「そこは自覚してるのね……」

「うぐ……だが、こうでもしないと連邦生徒会は言うことを聞かないから仕方ないんだ!!」

 

セリカの指摘に図星を突かれたように表情を歪めるも、すぐに憤慨した様子で拳を震わせながら握りしめるサキ。そんな話を聞いていたモエが、冗談交じりで口を開く、

 

「いっそ、デモに一家言ある人がいるなら是非会ってみたいものだけどね~」

「あっ、じゃあ聞いてみますか」

「「「「は?」」」」

「いやいやそんな人いるの?」

「いるんだよねぇ……これまた意外なことに……えーと……ミノリさんのモモトークは……と。あ、もしもし!ミレニアムの夢見です、あ、はい!温泉の時以来ですね!」

 

ミノリの名前が出た瞬間に何かを察した先生が苦笑を浮かべ始める。その顔を見てミヤコ達は首を傾げることしかできないものの、セリカはモルフォとゲーム開発部の謎の人脈にはもう慣れた様子で机に着き、シャーレの手伝いを始めていく。

 

「あの、先生。彼女は誰に連絡を?」

「えーと……デモをよくやっている子だよ。確かに彼女なら、君達の力になってくれるかもしれないね」

 

ただ、色々と大丈夫かな、そんな事をぼんやりと考えながら先生は呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか!それ故にデモというのはだな……」

 

それから数時間後。時刻も昼前といったタイミングでミノリはシャーレにやってきていた。モルフォから突然連絡を受け、デモについて聞きたいことがあると言われた瞬間に目の色を変えたミノリは、そこから子ウサギ公園で行われたRABBIT小隊のデモの事を把握、ニュース等を見て情報を集めてすぐにすっ飛んできたのだ。そして彼女がやったことは説教、そしてデモの何たるかを叩き込むことであった。

 

「……なあ、私達何を教えられているんだ……?」

「デモでしょ」

「なんでデモ一つでこんな熱く語れるんでしょうかこの人は……」

「うう、膝が痺れてきた……」

「なんか言ったか!!」

「「「「いえ、何も」」」」

 

座布団などを先生に用意してもらったものの、その上に正座させられ、ミノリに小一時間デモについて熱弁される。最初の頃は言い返したりもしたものだが、その度にミノリに言論で叩き伏せられてしまい、今ではなんでこんなことをしているんだろう……という疑問を感じることしか四人にはできなくなってしまっていた。

 

「……えっと、ミノリ?デモも大事だとは思うけど……彼女達の目的はSRTの復興だから、もしいい考えがあるならそこも教えてくれると助かるんだけどな」

「……む、そういえばそうだったか。そうだったな、デモは意見、言葉を届けるための手段だ、目的であってはいけない。レッドウィンターの外ではな!」

「むしろレッドウィンターでは違うんですか……」

「まあ、あれだけクーデターが起こるんだからデモが目的でも問題あるまい」

「どんな学園だそれは!?」

 

さすがに見かねたのか先生が助け舟を出す。これでやっとデモについての講義が終わるとミヤコ達が安心したような視線を先生に向けている中、思いっきり話が脱線していたことに気付いたミノリが顎に手を当てながら考え始める。そして、

 

「まあそれはそれだ。で、まずSRTだったか?を復活させたいってことだが……まあ結論から言えば無理だろ?」

「なっ!?」

「ここまで散々好き勝手言っておいてそれか!?」

「無理も何も、聞けば聞くほど、ある程度違いがあるとはいえ、シャーレでいいじゃないか。お前たちがシャーレお抱えの戦力になってその権限を先生が引き継ぐならともかく、それもないんだろ?」

「当たり前です!!それはSRTではありません!それにそれは私達の正義じゃ……うぐ。私達の正義は学園間の関係や利害に関係されず、時や場所も選ばずに同じ基準で常に一つの正義を追求してきたんです!その正義を無くすことなど……」

 

バッサリと切り捨てる。たまらずミヤコとサキが立ち上がろうとするも、正座のせいで膝が痺れてしまったのか崩れ落ちてしまう。その様子を見ながら溜息を吐いたミノリは、呆れたように言葉を続ける。

 

「連邦生徒会に振り回されて何が正義だ?そもそもそのSRTの正義自体言うなれば連邦生徒会と連邦生徒会長に思いっきり左右されてる上に正義執行すらできてないじゃないか。こんなんじゃ不良に蹴散らされたり振り回されることが多いとはいえ出動自体はちゃんとしてるヴァルキューレの方がずっとましだぞ?」

「うぐっ!?」

『ミノリさん……!もう少し手心を……!』

 

思わずアロナが声を張り上げるが、残念ながら彼女の声は先生にしか聞こえない。つまり彼女にミノリを止めることは不可能である。

 

「そもそも撤回のためのデモをしていたと言っていたがな……なんで連邦生徒会が学籍も何もない浮浪者の言葉を聞く必要があるんだ?お前たち市民権すらないホームレスだろ。お前らがやってるのはデモでも何でもない」

「え?で、でも……さっきまで私達のデモはなってないって……」

「デモですらないからな。それでも仮にお前たちがそういう土俵に立っているという前提で駄目出しをしていただけだ。ツッコミどころはあまりに多いからな……あくまで学生としての性分を全うした上で権利を主張し、デモを行うからこそ支持を得やすくなるんだ。レッドウィンターを見ろ!我らがデモをすれば多くの生徒が便乗してくるぞ!」

「それクーデター中にデモをやってこれ幸いと大炎上させてるだけじゃないの……?」

「まあそれもある。要するに意味なくデモをやったところで何の効果もないわけだな。準備と運、状況、全部を把握しなければ完璧なデモはできん。まあそもそも連邦生徒会のような堅物が反応するかも怪しいわけだが……でだ。その上で聞きたいが、お前らが欲しいのは連邦生徒会長のSRTなのか?」

「……どういうことですか?」

 

はいはいデモデモと流しかけていたが、突然のミノリの意味深な発言を聞き逃さずミヤコがミノリを見上げる。

 

「学園なんて一から作り直せばいいだろう?」

「……それ、そんなうまくいくのかしら……」

「まあ、元になっている学園が残っているならそれを廃校にしてってなると自治区がフリーになるからあまりいい策ではないが。SRTはそもそも学園自体が消滅しているんだから何のデメリットもあるまい」

「……いやまぁアリかも……?確かにそれなら連邦生徒会相手にギャーギャーする必要もなくなるし……」

「確かに……?って待て待て待て!モエ、目を覚ませ!」

「はっ!確かに資金難がこれまで以上にとんでもないことに!」

「そうですよ!それはつまり、私達の活動範囲が基本自治区に絞られるということです!それではSRTとは名ばかりの別物!私達の正義を執行することができなくなります!」

「……じゃあ他の学園やそこの治安維持組織と連携を取って活動できるようにすればいいんじゃ」

「え?」

 

ミノリの提案にたまらず言葉を荒げるRABBIT小隊。と、そこで割って入ったのはモルフォであった。

 

「他の学園に許可を取れば大手を振ってその地区で治安維持活動をできるってことになるよね?他の自治区との境目を越えて取り締まりができるってだけで十分需要はあるはずだろうし。そういう輩を捕まえてくれるならセミナーも悪い顔はしないだろうし」

「これは先輩達に聞いてみないとわからないけどアビドスなら別にいくらでも自由にしていいわよ?不良とかヘルメット団はそこそこいるわけだし、仕事には困らないと思うけど」

「えっと……」

「というか私達工務部は依頼さえ受ければ他の自治区でも普通に活動するぞ?出版部だってたまに遠征とか勝手にやるし」

「……」

 

たまにセミナーからそういう愚痴が零れるのだ。事件を起こしたりした不良がミレニアムからの追撃を逃れるために他の自治区へと逃げ込むといった手段を取ることがあると。そしてそれは他の自治区でも同様だ。そういう意味では需要は確かにあると言える。

 

「ミヤコ達がそれを望むなら私の方でも他の学園に掛け合ってみるけど、どうかな?確かに、最初は不便も多いと思う。思った通りの事もきっとできないはずだ。だけど、少しずつできることを増やしていけば以前と同じように動けるようになるんじゃないかな?」

「どうって……どう思います?」

「……まあ……もし本当にそうなるなら悪い話じゃないんじゃないか……?これなら規律とかは私達で決められるし、事前準備は必要だがSRTとしていずれ遜色ない活動ができるようになるなら……」

「わ、私は皆が一緒なら……」

「確かに、本当に首を縦に振る保証があるかどうかわからない連邦生徒会に期待するよりはよっぽど現実的ですが……段々増えていく予定とはいえ四人の学園ってそれ認められるんでしょうか」

「それ去年生徒三人しかいないアビドスに喧嘩売ってる?」

「べ、別にそういうわけじゃ……」

「……問題は資金だね。学園を自分達でってなったら当然運営費も出てくるし、何よりSRT時代の装備を揃えるのはかなり骨だよ。そこの目処が付かないとどうしても……」

 

全部が全部悪いわけではない。今は皮算用ではあるが、三大校であるミレニアムから活動のお墨付きを得ることができれば活動実績に箔が付く。SRTの正義論をミノリに簡単に論破されてしまったせいか、現在進行形で連邦生徒会の影響を受けまくって大変なことになっている現状を打開することが大事だと感じたのか、ミヤコも提案内容そのものにはある程度意欲的だ。が、モエの指摘に再び三人は頭を抱えることになる。

 

「……金か……当時は気にしていなかったが……しかし、バイトをSRTが……いや、連邦生徒会から完全に独立するなら自力で金を稼ぐしかないのか……」

「サキ、こうなればそこは妥協するしかありません……傭兵稼業でもやるしかないでしょう」

「あーくそ……わかってる……はぁ、なんだろうなこの……私おかしくなってる気がする……」

「そりゃ、あんな天災に見舞われたら誰だって心折れるんだよね、やばくない?」

「一人にだって勝てる気しないのにそれが四人……しかも連携完璧で余裕の対処……うん……」

「……なんだ、金が欲しいのか?それならレッドウィンターに来ればいいんじゃないか?バイトならいつでも歓迎だ!」

「「「「え?」」」」

 

が、そこに助け舟を出したのはミノリであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そ、そうですか……そんなことに……」

「えっと……とりあえずこれで連邦生徒会から見ればRABBIT小隊のデモについては解決かな?」

「まあ、そうなりますかね?」

 

連邦生徒会、防衛室。そこの室長を務める桃色の髪の少女、不知火カヤに先生は事のあらましを報告していた。その報告を聞いたカヤは少し考え込んでいたが、やがて苦笑いを漏らしてしまう。

 

「しかしまあ……凄い事を決断したものですね……確かに、彼女たちが独立した形で新たにSRTを設立するということであれば我々も文句を言うことはありませんし」

 

SRTに由来する一連の事件は根深い。連邦生徒会長失踪後、身動きが取れなくなった彼女達の中で、SRTが消えることに危機感を感じたFOX小隊が先月、SRT閉鎖に賛成する連邦生徒会メンバーを襲撃、数人を病院送りにし、さらにサンクトゥムタワーの一部施設を全焼させるという事件をも起こしているのだ。そうなれば当然、カヤのように彼女達の身や学籍等を案じる閉鎖反対派もいるとはいえ、大多数は閉鎖は妥当であるという思考に流れていってしまう。そこにRABBIT小隊による子ウサギ公園の占拠、ヴァルキューレ相手の大立ち回りとくればそれは加速していってしまう。これはどうしたものかとカヤも頭を悩ませ始める時期であったのだ。

 

「……ひとまず、これからが大変な時期になると思いますが、私はRABBIT小隊の選択を尊重しましょう。元を辿ればSRT特殊学園を廃校にするのは我々連邦生徒会の都合でもありますし、その点においては可能な限りの便宜は図りましょう。ですが……これだけは忘れないように、と先生の方からも彼女達に念押ししておいてください」

「うん、ありがとう。それでカヤ、皆には何を伝えればいいのかな?」

 

糸目のように細めていた目が、すっと開かれる。真剣に先生を見据えながら、カヤは少し声音を厳しくしながら口を開く。

 

「まず、一つ目。新たに学園を設立するのは良いのですが、SRT特殊学園という名称はそのままでは使えないので、いい感じに改名してください。これがずっと昔にあった学園を復活させる、という形ならともかくSRT特殊学園自体は本当にちょっと前まであった学園なので……これに関してはどう足掻いても無理です」

「まあ……そうなるよね」

「続いて二つ目。学園として認めるには自治区が必要です。さすがにこれがなければいくらこちらの不手際も大きいとはいえ、自治区を用意せずとも名前だけ書けば学園が新たに作れるという前例が生まれかねませんからね。独立する形で学園を設立するということであれば例外は認められません」

「わかった、そこは……どうにかしてみるよ。ただカヤにも少し協力してもらう必要があるかもだけど……」

「ふむ……?まあ、先生の事ですからとりあえず任せてはおきます。余程のことでない限りは私個人としては協力させていただきますよ。ふふ、貸しとしておきましょうか」

「ありがとう。カヤが困ってるときがあったら是非力になるよ」

「ふふ、ありがとうございます。では三つ目ですが……今後の彼女たちの活動内容に関し、連邦生徒会から関与することはありません。無論、彼女たちが連邦生徒会を襲撃するとか、ヴァルキューレと対立するような形で我々が被害者になるのであればまた話は変わりますが……」

 

カヤから伝えられた三つの言葉。それを呑み込みながら、先生は頷く。そして連邦生徒会を後にしながら、考えていた内容を実行するためにどうすればいいかを煮詰め始めるのだった。一方その頃、カヤはカヤで(急に思い切りましたね……?)と少し困惑していた表情を漏らしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バイトー!!木材はこっちに運んできてくれー!」

「は、はい!!」

「それが終わったら次は倉庫に向かってくれないー?」

「わ、わかりました!!」

 

雪が降り積もるレッドウィンター。その敷地内を、防寒着を羽織り、兎の耳が生えたヘルメットを被って作業するRABBIT小隊が慌ただしく、だが雪に不慣れな様子で走っていく。その手に木材やら荷物やらを持つ彼女達は工務部の指示を受けて仕事を進めていた。

 

「……よし、これで午前中の分は終わりだ!お昼休憩入っていいぞ!」

「や、やっと暖まれる……」

 

ミユがほっとした様子で呟く。四人は建物の中に入り、悴む手を擦りながら、温かいスープを流し込む。

 

「あー、生き返る……」

「確かにそうですね……中々の重労働でお金も手に入って温かい食事もできるなんて―――」

「……他のバイトの相場ってやつを調べてみたがかなり実入りがいいんだよなここ……」

 

スープを飲んで出てきたモエの心の底から安堵した声に同意するようにミヤコも頷く。その言葉にサキも同じように内心同意しながらも口を開く。

 

「はあ、しかしあれだけやらないと決めていたバイトをすることになるとはな」

「そうですね。サキはそこら辺の抵抗が強いと思っていましたが……」

「SRTがバイトをする余裕はない……けど、これは学園の運営資金を賄うには必要だからな……私達のSRTを私達で作るにはこうしなければならないんだろう……はあ」

「す、すっかり落ち込んじゃった……」

「サキはとくに口答えをしてはミノリさんに黙らされてたからね……すっかり社会主義を叩き込まれちゃった」

 

と、そこに突然扉を開けてミノリが入ってくる。

 

「おいバイト小隊!」

「RABBIT小隊だ!!」

「クーデターだ!!クーデターが起こったぞ!!かの愚かな権力者を引きずり降ろす時がきた!!」

「またか!?」

「別にいつものことだ!準備をしろ!愚かな権力者を引きずり降ろせ!!報酬は非常に大きいぞ!!」

 

そうだった、このレッドウィンターでクーデターだの革命だのは常識であった。とりあえず四人は言われるがまま準備をし、そのままレッドウィンター事務局を落としにかかることになる。

 

「これは本当にSRTのやることなのか……?」

「やることなんでしょうかね……」

『まあ私達元の学園も捨てたからSRTじゃないからね』

「……まあ、それはそうなんだが……」

「割り切りましょう、今は下積みをする時です。下積みは大事だとミノリさんも言っていましたし……」

 

それでも、思うところは正直ある。自分達の思い描くSRTらしい活動をするのはいつになるのだろうとぼんやり考えながら、四人はクーデターに参加させられるのだった。

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