転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします


C&C達とサバイバルゲーム

「……各部の代表たちが集まったようね。ではこれから、晄輪大祭の競技についての打ち合わせを始めます」

 

セミナー室に集められた生徒達。エンジニア部、ヴェリタス、C&C、新素材開発部、トレーニング部など、今回の晄輪大祭に関係する団体がユウカによってセミナーに呼ばれていた。

 

「まず、今回の晄輪大祭の主催者としてミレニアムが選ばれたことは皆知っていますね?」

 

ユウカの言葉に頷く一行。

 

「今回の晄輪大祭、実行委員会としてはトリニティ、ゲヘナの代表者と共に行いますが、実質的な運営、競技や必要な備品の準備などは私達が行うことになります。会場の外では屋台なども出ますが、こちらは屋台を出店する予定のある学園にそれぞれ一任することになっており、私達はその総括をすることになります。なのでここでは競技についての協議を中心に行います」

「競技の協議……いや何でもない。すまない、続けてくれないか」

 

ウタハが呟くが、即座にユウカに睨まれて黙り込む。さすがにこれは不用意な発言だと思ったようだ。

 

「まず必要なのは、勝てる選手の選抜……C&Cやトレーニング部を中心に競技には出てもらうことになると思いますが……」

「いやちょっと待てよ」

「……ユウカさん。確かにトレーニング部としては日々の成果を出す機会は願ってもないことですが、貴重な機会を独占するわけにはいきません。もっと、多くの生徒達に出てもらうべきかと」

「で、でも……」

 

勝利に燃えるユウカだったが、ここでネルから制止の声がかかり、スミレも同様に苦言を呈する。二人の言っていることの意味も当然わかってはいる。これでホストがミレニアムではなくトリニティやゲヘナであればまた話は少し違うかもしれないが、ミレニアムが主催するとあれば、当然ミレニアムが優勝で有終の美を飾りたいという思いもあるのだろう。しかし、

 

「そんなんつまんねーだろ……二年前だって運動の得意下手関係なくもっといろんな奴が出てたぞ?」

「まあ、あれはミレニアムがホストじゃないからいい意味で希望する人だけみたいな感じだったのが大きいけどね……当日ボイコットして別の人が何回か出たりもしてたでしょ」

「そうだったかな?さすがに競技内容なんてほとんど覚えてないな……」

「興味ない人ばっかりだったろうしな……」

 

三年生組としてはそうは思わないようだ。何せ二年前の空気を知っている面子だ。基準は当然そこになるのだろう。いつの間にか思い出話に花を咲かせ始めるネル、ウタハ、チヒロら三年生達。ふと、その話を聞いてゲーム開発部の代表としてユズの代わりに出席していたモルフォが口を開く。

 

「あれ?じゃあ二年前は勝ちにいったわけじゃないんですか?」

「いやまあ、出た奴は出た奴なりに勝ちには行ったんじゃねえか?まあどっちかっていうと……いろんな学園が来るのにかこつけていろんなもん見せてた奴が大体だったような」

「あ、思い出したよ。その時は展覧会もどきをやっていたね。いやぁ、懐かしい記憶だ」

「むしろあっちが本番だった人の方が多かったんじゃない?」

「……って!お願いだから真面目にやってください!モルフォも三人に付き合わないでいいからね!!」

「まあまあユウカ先輩……こういうのは楽しんだもん勝ちって言うじゃないですか。ミレニアムらしく好き勝手やってもいいんじゃないですか?体育祭なんてそんなものじゃないですか?」

 

モルフォの言葉に全員の注目が集まっていく。ユウカも皆が楽しめるようにしたいという思いは確かにある。しかしそれを受け入れるのは。そう思った時だった。ウタハはポンと手を叩く。

 

「好き勝手って……」

「それだ!」

「え?」

「今回の主催者は我々だ!つまり、二年前にはできなかったこともできる!そう……競技すらも!」

「「「おおおおお!?」」」

「いやちょっと待って!?」

「我らの技術力だ!」

「ミレニアムサイエンススクールの魂!!」

「いやいやいや!?」

 

拳を突き上げ勝鬨を上げるウタハに呼応するように他の面々が立ち上がる。慌ててユウカが止めようとするが、それを制するようにウタハが右手を開いてユウカに突きつける。

 

「?」

「いいかいユウカ。君は今回が初めてだから晄輪大祭の深刻さを理解していない」

「し、深刻さ……?」

「そう。前回の晄輪大祭だが……我々は主催者じゃなかったから選手は希望制だったし、モチベーションも別にあったからなんだかんだで出る人も多かった。だが主催者となるからには、それでも出たくない生徒が無理矢理出る機会も増えてしまうということさ。当時より規模は大きくなったとはいえ、やっぱり抵抗感がある生徒も多いだろうね、ミレニアムだし」

「……」

 

ウタハの言葉を聞いて、否定しきれないといった様子でユウカも黙り込んでしまう。実際、ミレニアムで運動が嫌いな生徒は多いのだ。避けられぬとあれば銃撃戦を平気で行う野蛮性はキヴォトス共通の習性ではあるが、銃撃戦で身体を動かすのと運動で身体を動かすのはまるで違うのだ。ちなみにモルフォの感性から言わせてみれば「そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!」と言いたくなったりもするがそれはそれとして。

 

「つまりこれは、生徒達のモチベーションを上げる意味もあるんだよ」

「……まあ、ただウタハ達が色々作りたいだけなんだろうけど」

「チーちゃん、ユウカの前であまり変なことは言わないでくれないかな……」

「……ということですけど、会長はどう思います?」

「……」

 

が、やはりユウカの面持ちは暗い。このままでは平行線になりそうだと悟ったノアが鶴の一声をリオに求めることにする。その場にいた全員の視線を急に集められ、思わず肩を震わせたリオだったが、

 

「……私は良いと思うけれど」

「会長!?」

「今回の晄輪大祭は私達の技術力をキヴォトス中に見せつけるのが最大の目的。それ自体がアピールなのだから、競技に盛り込めるなら公平性を欠かない範囲であれば問題ないと思うわ」

「そんなこと言っていいんですか!?」

「といっても細かいルール変更や調整ならともかく、競技に関する大幅な変更については連邦生徒会の体育室長の許可をもらう必要があったはずだけれど」

「……わかりました。連邦生徒会との交渉は実行委員会の私から進めておきます」

 

この発言にユウカも大人しく引き下がる。連邦生徒会といえばシャーレに先生を送り届けようとした際に出会ったリンのように厳しい人物も多い。恒例行事でもある晄輪大祭ともあれば、彼女たちがわざわざ許可するわけもないだろう。熱意を持ってくれているところ悪いが、と内心勝ち誇りながらユウカは勝利を確信し盛り上がるウタハ達を見つめるのだった。

 

なおその後、体育室長であるハイネから「晄輪大祭の競技をミレニアムの技術力で大幅アレンジ!?うわめっちゃ面白そうじゃん!いいじゃんいいじゃん、好き勝手やってよ!あ、どうせやるならどの学園も必ず勝機があるようなやつがいいね!……それよりおにぎりない?」と言われ快諾されてしまい、落ち込むことになってしまうのだが、この時はまだそれを彼女は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、無事に我々の自由が認められたわけだ」

「なんか凄いことになってきちゃったな……」

 

そんなわけでミレニアムの生徒達のやる気は盛り上がっていた。どんな意向を盛り込めばいいかなど、多くの生徒達が部室や工房といったところに籠り作業を進めていく中、モルフォ達はエンジニア部に呼ばれてエリドゥを訪れていた。そこでは何か小道具を取り揃えて準備を進めている様子があり、モルフォ達に気付いたコトリ達が手を振ってくる。

 

「来ましたね、皆さん!」

「ちょっと人数が必要になったの」

「人数?何する気なのヒビキちゃん」

「みなさーん!動かしますよー!」

 

コタマの声が響き、地響きが鳴る。それと共にエリドゥの地形が一部変化していき、ある程度の遮蔽物を取り揃えていた広めの場所が出来上がる。

 

「おお、良い感じじゃない!?」

「うん、これぐらいなら丁度いいけど……」

「え、何々?何しようとしてるの?」

「ほー、随分と本格的じゃねえか」

「ね、ネル先輩?他の皆も……」

「アリス達を呼んで何をする気ですか?」

 

おそらく別件でいないであろうチヒロ以外のヴェリタス、そしてC&Cも集まり始め、ゲーム開発部は尚の事困惑してしまう。ここまでの面子を集めて何をしようというのか。

 

「いや……実はネルから何でも許されるなら戦いたいと言われてね……でも、競技としてやるなら色々必要になるだろうし、さすがに学園間で勝機がなくなるルールや競技は認められないからね」

「まあ、そうですね」

「そこでだ。普通の銃を使えないようにしたんだ。今回使うのはこいつさ」

 

そう言い、ウタハが見慣れないハンドガンを取り出す。しかし、その口径はあまりにも小さい。ウタハは手で銃口を抑えて軽い発砲音を鳴らすと、その手にBB弾が出現する。

 

「……BB弾?」

「ふっ、このBB弾には特殊なセンサーが入っていてね。肌は勿論、服や髪に当たっても命中判定を下してくれる優れものさ。もちろん、ちゃんと壁や床とかに当たった場合は区別してくれるよ」

「こ、高性能……」

「まあ他にもグレネードとかみたいにBB弾を撃ちようがないもの以外は一通りは用意しているけどね。そして一発でも掠ったら脱落。物理攻撃は勿論禁止。こんな感じで条件次第では皆でもネルに勝てるかもしれないバランスにしているよ。当然他の学園でも同じことは言えるけどね。これなら銃撃戦でものが壊れたりとかそういうこともないだろう?これで撃ち合いをするわけさ」

「へー、なんか面白そう!……だけどペイント弾じゃ駄目だったんですか?」

「体操服やジャージが色ついて汚れるのはね……あんまりいい気持ちにはならないだろう?すぐに洗い落とせるってわけでもあるまいし。ちょっと先生からも意見を聞いたんだが、キヴォトスの外ではこういうゲームをサバイバルゲームと言うらしいね?」

(まあキヴォトスにサバゲーなんてないもんね……)

 

どうやらネル達の要望を受け、企画しているのはサバゲーらしい。それが競技として通じるのかと思ったが、まあキヴォトスだしと流しながら、このキヴォトスにサバゲーなんてないよなぁとモルフォは納得する。無論当たり所にもよるが人によってはそれこそ普通の弾がBB弾レベルのダメージにしかならないのだから。それにBB弾ならモルフォだって遠慮なく撃ち込むことは可能である。改めて考えれば前世の感覚というのは思ったより引きずるものである。

 

「ゲーム開発部を呼んだのはルール調整とかは君達の得意分野になるだろうと思ってね。後はユウカも見学にくるはずだから、その後に軽く一戦やってみようと思ってね」

「チーム分けは?」

「ごちゃ混ぜでもいいんだが……まあ、部活毎でいいんじゃないかな?ただしエンジニア部とヴェリタスは合同だ。それとついでに試してみたいものもあってね……」

 

頭数としてはC&Cとゲーム開発部が一人少ないということになる。C&Cはともかくゲーム開発部の人数も五人で、ヴェリタスエンジニア部の合計六人を相手にするのは少々厳しそうだ。そう思っていたところでウタハが人一人が入れそうなコンテナを雷ちゃんに運ばせてくる。コンテナの扉が開かれると、そこにはアリス、いやケイの身体が入っていた。

 

「関節部を始め、動作系を大きく改善してね。シミュレーション上は銃撃戦もこなせるようになっているよ……まあ、耐久力は怖いから理論上は戦闘ができる、という程度のものでしかないが」

「ですが今回使われる弾は実弾よりもずっと弱いBB弾!これならば何の問題もありません!」

『わ、私もですか……?』

「ケイと一緒に戦闘ができるんですか!?」

「なんか凄そう!!」

「さっそくやってみようよケイちゃん!」

 

それを聞いたゲーム開発部は大興奮だ。ケイも普通の銃弾ならともかく、BB弾なら心配ないと早速エンジニア部が用意した新たなボディへと移動する。そして、ユズやヒビキがハンドガンを手に持ち、アリスがスナイパーライフル、ケイがミニガンを手に取っていく。他の面々も銃を手にし、ユズとヒビキ、アリスがそれぞれ銃の使い方について教えてもらっている間にユウカが到着する。

 

「ごめんなさい、ちょっと遅くなったけど……それで、そのサバゲー?っていうのは?」

「ああ、丁度よかった。こっちも準備が終わったところだよ」

 

ユウカが到着したことを受け、改めてウタハが一通りのルールを説明していく。そして全員がその内容を理解すると、それぞれ規定位置へと移動していく。そこにはホログラムで作られた旗が立っており、それぞれの所属する部活のロゴが映し出される。

 

「えーと……制限時間は五分。BB弾が体に触れれば戦闘不能扱いとなり、時間内にメンバーが全員戦闘不能になるか、旗の根本にあるホログラム発生装置を停止させられたら敗北。時間内に決着がつかなかったら残り人数が多いチームが、それも一緒なら残ったチームの撃墜数で判定……まあ、いいんじゃないかしら……?ざっと見た所、そこまで穴があるようには見えないけど……これ、ウタハ先輩が考えたんですか?」

「いや、先生がこんな感じだった記憶がある、って言ってたね。とはいえ先生はサバゲーをやったことはないらしくて又聞きみたいな状態らしいが」

「まあ、問題はないように聞こえますけどね」

「とりあえず一回やってみようよユウカ!」

「アリス、楽しみです!頑張りましょう、ケイ!」

「ええ、そうですね!ふふ、ほとんど摸擬戦のようなものですが、よもやこのような機会が訪れるとは……」

 

俗にいうフラッグ戦というやつだ。モルフォも前世では流れてくる動画なりでちらと見る程度しかないため、初サバゲーということもあり、楽しみであった。

 

「じゃあユウカー!合図おねがーい!」

「はいはい……それじゃ……」

 

ユウカがフィールド全体を見渡す。そして全員が準備を完了したのを確認し、

 

「よーい、スタート!」

 

声を張り上げる。それと共に、メンバーたちが飛び出していく。だが旗を守る必要性も考えてアカネとユズがそれぞれ残っており、それ以外の生徒達が上がっていく。早速敵の姿を発見すると同時に交戦が開始。遮蔽物や盾を利用し、BB弾を撃ち合っていく。

 

「……意外と当たらないのね?」

「BB弾は圧倒的に遅いですからね。ネルやモルフォ達は当然として、ウタハ達でも避けやすい速さなんでしょう」

「あー、確かに遅いわね……って、ヒマリ先輩?どうしてエリドゥに?」

「ふふ、中々面白いことをやっているので見に来ました」

「なんかワチャワチャしてるね」

 

その様子を見ていたユウカの隣にヒマリとエイミが現れる。晄輪大祭の事を彼女も把握しているのだろう、どんなものが出来上がるのか楽しみな様子で居ても立ってもいられずこうして覗きにきたようだ。

 

「ヒマリ先輩は晄輪大祭は……その」

「ふふ、応援ですよ」

「や、やっぱりそうですよね……」

「私もいいかな……体操服暑いし……」

 

二人とも体の問題もあってか出場はしないようだ。まあ、それも仕方がないことかもしれない。そんな中、最初の方はそもそもBB弾はどんな挙動をするんだという違和感もあって、上がりつつも最初はそこの確認をするかのように様子見をしていた。そして一分後、ゲームは動き始め、ネル、トキ、アスナが一斉に切り込んでくる。

 

「よし、いくぞアスナ!」

「オッケー!」

「うげっ、攻めてきた!」

「……って、私達が先なんですか!?」

「……ネル先輩とアスナ先輩が来てるのはかなり無理ゲーでは……?」

「いや、こうなったらゲーム開発部と挟撃する形で……あれ?」

 

エンジニア部とヴェリタスはネルとアスナに強襲される中、ハレがゲーム開発部と協力できないかと視線を向けるのだが、そこではトキが遮蔽物をうまく利用し、モモイ達を動かさせないように立ち回っていた。迂闊に遮蔽物の外に出て一発でも掠ってしまえばアウトのルールではモモイもケイもうまく出ることはできない。アリスもスナイパーライフルのスコープを覗き込むのだが、やはり今日初めて握る銃で狙撃なんてうまくできるわけもなく。その役目はやはりミドリに譲られるのだが、

 

「……ち、近くないです?」

「……だってこれ、全然飛ばないし……」

 

そのミドリはカリンと撃ち合いを演じていた。しかし、それも膠着してしまっており、その最大の原因はやはりBB弾の射程距離の短さと弾速の遅さだろう。実弾を使っていた時と比べれば近距離で狙撃という歪な状況に逆に戸惑いながら撃ち合う二人。これでは決着はつかないだろうなと即座に判断したモルフォは、このままミドリにカリンを止めてもらいながら、自分達もトキを突破しながら攻めに転じようとしたその時だった。

 

「……あっ、旗が消えました……」

「……マキ達もう落ちたの!?」

「む、無念です……がくっ」

「さすがC&C……ふふ、負けたよ……ぐふっ」

「……いや別に今回はダメージねえだろお前ら……」

 

いかに弾は避けやすくともネルとアスナを前にすれば形無しだったのか、旗の根本でウタハとコタマが力尽きたように倒れる。旗が消滅したことで他の面々も空気を呼んだように倒れていき、ネルも呆れつつツッコミを入れ、その隣でアスナが笑っていた。

 

「……もう普段通りでいいや!」

「雑!!」

「まあこうなってしまえば確かにいつもと変わりませんが……」

「全員HP1でネル先輩がたたかうのコマンド禁止ならば勝機は全然あります!」

「全軍突撃ー!!」

 

その様子を見て打って出ることを宣言したモルフォに倣い、全員が突っ込んでくる。

 

「おいこれ盾を蹴るのも駄目なのか?」

「盾の強度もBB弾に合わせる形になるから普通に蹴ったら壊れるが……ちなみに無意識でもやったら反則になるよ」

「これ思った以上に面倒くさいな!?あー……トキ!お前がモルフォを抑えろ!」

「了解です、ではモルフォ、私と一緒に過ごしてもらいますよ」

「今回のルールだとネル先輩に手足を誘発させたかったんだけどな……」

「反則をして泣きながら退場するリーダーは正直見たかったのでそちらの方が面白いのですが、諦めてくださいね」

「おいトキ聞こえてんぞ」

 

相手が駄目でも盾ならワンチャンいけないかと思い倒れたままのウタハに聞くが、返ってきた答えに舌打ちしながらトキにその相手を任せる。モルフォは盾を使ってトキに近づいていき、可能な限り密着していく戦術を取っていく。そうなると困るのはトキだ。

 

「ケイはとにかく弾幕をばら撒いて牽制!アリスは隙を突いて狙って撃って!スナイパーライフルを使ってると思わないで普段通りスーパーノヴァを撃ってるイメージで!モモイはケイとアリスのフォローに回って!」

「「はい!」」

「わ、わかった!ミドリはこれそうなの?」

「ごめん無理!というかこれ決着する!?」

「……正直私もこっちは時間内は無理な気がしてきてるよ」

 

盾への物理攻撃が禁止されているのだから蹴って距離を取る、ということもできない。しかし、裏を返せばモルフォも普段のように銃身で殴りにいけないということ。であればと、素早く指示を出して仲間達を動かすモルフォの一瞬の隙を突くようにシールドをすり抜けるようにモルフォの背中へと回り込もうとする。

 

「っ!」

 

しかし、モルフォも素早く足を動かして位置と向きを変えていく。シールドの位置が常にトキの方を向くようにしながら回転するのだが、ここで地を蹴ってトキがモルフォの頭上を取りながら銃口を真下へ向け、弾を撃ち込んでいく、しかしトキが跳んだのに合わせるようにモルフォは素早く横に跳んで回避。縦に一回転するトキに対して身体を横向きにし一回転するような構図となったモルフォ。そして、

 

「っ!?」

 

トキの脇腹から何かが命中した感覚が広がっていく。思わずトキが脇腹に視線を向けると、そこにはBB弾がめり込んでいた。

 

「なんで……って、あれは!?」

 

一回転して着地したモルフォの右手。そこに握られていたのはなんとリボルバーであった。とはいえ、リボルバーといっても見た目だけで、実際はBB弾のマガジンを入れるタイプのハンドガンのようなものなのだが。

 

「なんで、リボルバーなんて……いえ、ハンドガンですが……」

「そりゃ、殴らずに撃たなきゃ勝てないからね!」

 

そう言い、トキに背を向けて走り出すとケイとモモイの弾幕の隙間を縫い、接近してくるネルの前にモルフォが立ちはだかり、シールドを構える。それを見てネルは舌打ちをしてアスナと視線を合わせると、縦横無尽に走り回りながら四人を翻弄し始める。

 

「うげっ、これじゃ狙いが中々……!」

「おっと!?モモイちゃんほんと狙いが鋭くなったよねー、今の惜しかったよ!でもまだまだー!」

「はっ、狙いが甘いぞアリス!普段火力で誤魔化してるんじゃねえのか!」

「うう、全然当たりません!」

「ならば当たるまで撃てばいい話です!」

「ネル先輩は私が止めるから、三人はアスナ先輩を!」

 

確かに二人は強敵だ。しかし、一対三という状況に持ち込めば話は大きく変わってくる。それにネルは今回まさに飛車角落ちも同然の状態だ。そこまで弱体化されれば十分勝機も見出せる。

 

「……ほう、これは面白いことになってきましたね?」

「あっ、アスナ先輩が落ちた……」

「……って、あれは……」

 

それを観戦していたヒマリ達も、モルフォが着実にゲーム開発部優勢で進んでいることに関心していた。が、ここでユウカがあることに気付く。拠点から飛び出してこそこそと動くアカネに視線を移していると、彼女は身を隠しながらゲーム開発部の旗に近づき、そこを守るユズの視線が一瞬切れた隙を狙って素早く遮蔽物から飛び出して走り出したのだ。

 

「しまっ!?あう……」

 

足音を聞いて反射的に振り返りながら引き金を引くユズ。だが発射されたBB弾はアカネの足元に命中してしまい、同時に発射された一発がユズのおでこに命中してしまう。

 

「完全に普段の癖が出てしまいましたね。これがグレネードだったらしっかり命中していましたが……残念ながら私達の勝ちですね」

「……あっ、旗が消えた!?」

「もうアカネの奴が動く時間になってたか。やっぱ弾が違うと慣れねえせいで時間かかっていけねえな」

 

落ち込み座り込んでしまったユズに苦笑しながら、アカネが旗を消す。それによってC&Cの勝利が決まり、今回は割といけそうな手応えを感じていただけにゲーム開発部は悔しがってしまう。

 

「く、悔しい!」

「うう、今回は勝てると思ったのに……!」

「ごめんね、アカネ先輩止められなかった……」

「うう、私も完全に足止めされてたよ……」

「人数で勝っているのに負けるなんて……!」

「途中まではいい感じだったんだけどねー」

「はっ、まだまだひよっこに抜かれてたまるかよ」

 

その様子を見ながら笑うネル。起き上がったウタハ達やトキ達も近づいていく中、その様子を見ていたユウカは大きくため息を吐く。

 

「……確かに、見ていて面白かったし、やってる方も普段と違って楽しそうではあるけど……競技としては向かないと思うんだけど……」

「ふむ。理由を聞いても?」

「……銃って皆色々種類があるわけだけど、それを用意しきれないのはやっぱりまずいと思います。公平性に欠けますし……」

「確かに、ユズやヒビキ、アリスは本来の武器を使えませんでしたからね」

「もしユズがグレネードを使えてたらまた話は変わってたからね」

「後は……その、これ。そもそも普通の銃を撃った方が早いってなる人が結構いそうで。それに、後でBB弾の片付けするのが滅茶苦茶大変ですよこれ……後始末が大変すぎる競技はさすがにちょっと……」

「おやおや……実行委員は大変そうですね。ですがまぁ、こちらで内々にやる催しとしてもそれはそれで面白いですしね」

 

面白さは認める。予想以上に奥深さがあるのも理解する。しかし、それはそれとしてこれはおそらく、キヴォトスの外の、銃弾一発で致命傷を負いかねない先生のような人たちがキヴォトスの人のように銃撃戦をするためのゲームなのだろう。そういう背景を踏まえると、競技として採用することについて、ユウカは首を縦に振れないのだった。

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