転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
晄輪大祭も終わり、まだ盛り上がりの余韻も残しながらそれぞれの生活へと戻っていった生徒達。それは、実行委員会に立候補したマリーも同様で、シスターフッドに所属する彼女は日課である祈りを捧げていた。
「マリー。よろしいですか?」
「はい。どうされました?サクラコ様」
祈りが終わったところで、サクラコから声をかけられる。サクラコは室内を見渡し、他の団員たちがいるのを確認すると、
「ええ、こちらに……内密にしておきたいので」
「?はい、わかりました」
マリーを連れて個室へと移動していく。そして扉を閉め、鍵をかけると、マリーを椅子へと座らせる。
「まずは……先日の晄輪大祭、お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「……さて、マリー。あなたに少し聞きたいことがあります」
「私に……ですか?」
「ええ、ミレニアムの生徒に、夢見モルフォという方がいるのですが」
サクラコが口にした少女の名前は確かに聞き覚えがある。しかし、どこだったか。
「セイア様を先生らと共に助けに向かった人物といった方が伝わるでしょうか?或いは……ミカ様に勝ってみせた少女とも」
「あ、知っています……話をしたことはありませんが……」
サクラコの説明で思い出す。あの時の景色は今もマリーの脳裏に焼き付いている。何せあの瞬間は、実行委員会の本部にいた全員が驚いたようにそれに釘付けになっていたからだ。
『はぁ!?あ、あんなのありなんですか!?』
『あ、あの速さ、まさか、まさか……!?いや、ヒナ委員長が負けるわけが……!』
『い、いける!?いけるの!?モルフォ、やってみせるの!?』
『抜いた!ヒナ委員長が抜いた!!』
『負けていません!負けるわけがありません!ミカ様が負けるわけがありません!!』
『やったあああああああああ!!!』
『うああああああああああああ!!!』
『ふぅー……危ない所でしたね……ふふふふふふ……いやぁトリニティ総合学院三位入賞おめでとうございます!!』
『この破廉恥行政官があああああああ!!』
『落ち着いてくださいハスミさん!アコさんも煽らないで!!』
(……大変でしたね……)
「マリー。大丈夫ですか?」
マリーは当時の事を思い出していたが、ここでサクラコの声がかかり現実へと引き戻される。慌てて気持ちを引き締め直してサクラコへと向き直る。
「あ、はい!大丈夫です!」
「ならばよいのですが。さてマリー、私が確認したいのは、彼女……というより、セイア様のお力についてです」
「セイア様の……?」
「……これはまだ、公にはなっていませんが。セイア様は予知夢の力を失っています。本人曰く、予知夢を手放したことで体調の回復が始まった、とのことですが……」
「そ、そうですか……しかし、セイア様の体調が回復したのであればよいことだと思うのですが……」
「そうですね。その点は確かに素晴らしいことだと言えます。しかし……どうにも気になるのです」
「あ、あの……?」
ここでマリーは首を傾げてしまう。セイアとモルフォの関係は、トリニティでも上層部を含めた一部の面々しかまだ知らないのだ。だからこそ、何故ここでセイアに流れ弾が飛んでいくのかがわからなくなってしまう。サクラコは思わせぶりに二人の関係を匂わせていくと、ここで一気に踏み込んでいく。
「セイア様の夢に先生が辿り着いたという話もありました。先生であればまだ理解は及びます。では……彼女は一体なんだというのでしょうか?」
「そ、それは……」
「マリー、彼女について、いえミレニアムについて何か知っていることはあるでしょうか?」
サクラコとしては晄輪大祭で彼女と話をしたりしたか。それぐらいのニュアンスであり、関連付けてセイアの事を話すのだから大っぴらにやるのもまずいと個室に移動しただけである。しかし、その不穏な雰囲気と行動のせいで、思わずマリーは息を呑んでしまう。
「ごめんなさい、サクラコ様……何も……いや?」
「?」
(そういえば、コユキさんは友達だったはず……)
とはいえ、サクラコも大した話が聞けるとも思っていない。晄輪大祭で一緒に出たとはいえ、それは他の学園も同じことだから。が、マリーはここで立ち上がると、
「失礼します。サクラコ様、後は任せてください!」
「?は、はぁ……」
やる気を漲らせてマリーは個室を出ていく。その様子を見ながらサクラコは首を傾げていたが、
「……まあ、やる気があるのはいいことでしょうね……でも、何を任せてとおっしゃっていたのでしょうか……?」
そう呟くのだった。
★
「……ふう。実行委員会でモモトークを交換しておいてよかったです。そのおかげでコユキさんと連絡を取ることができましたし……」
数日後。ミレニアムの自治区に訪れていたマリーは、コユキと待ち合わせをしていた。待ち合わせ場所のカフェに少し早く到着して待っていると、そこにコユキがモルフォを連れて現れる。
「マリーさん!彼女がモルフォさんですよー!」
「えーと、コユキから一緒に来てほしいって言われたんだけど……君が?」
「あ、はい。伊落マリーと言います。今日は忙しい所、申し訳ありません」
「ああ、気にしないでよ。私は夢見モルフォ、ゲーム開発部だよ」
マリーに一礼されながら、彼女と同席する。遠慮なくジュースやらケーキを頼もうとするコユキに「別にいいけど自腹だよ」と釘を刺しながらマリーに向き直る。
「えっと、実はセイア様との関係についてお聞きしたくて……」
「あー、そういう?まあ大した話はないよ?春ぐらいの時にセイアさんの力で一緒になったってだけで。先生も似たような感じじゃないかな?」
「……そ、そうですよね」
しかし、返ってきた言葉にマリーも納得したように頷き、肩を竦めてしまう。彼女とて薄々と察していたことでモルフォ自身に特別なことはない、そう思っていた。実際は色々と違うのだが、これに関しては問題が大きくなりすぎるとまずいし、都合よく予知夢がなくなって追及のしようがなくなったからそういうことにしようというセイアの計らいに乗っかった形だ。とはいえ、どうにかして真実を聞こうとこの場までやってきたマリーをこのまま追い返す、というのも憚られる。
「しかしどうしましょうか……折角サクラコ様に頼まれたのに……」
「サクラコさん……確かシスターフッドの。マリーもシスターフッドなんだよね?」
「?はい、そうですが……どうされました?」
シスターフッドと言えば天使とかそういう系だろう。それに、サクラコはあの場にいたのでモルフォとセイアの関係も知っている人物。その人物がどういう意図でマリーを送ってきたかはわからないが、まあ特別な意図はないのだろう。ベアトリーチェみたいに碌な事を考えてないならこんな人畜無害そのものなマリーを寄越さないだろうし。ならばもてなしてやろうと。そう考えたモルフォは、マリーを誘惑することにするのだった。
「まあ、詳しいことはさすがに私の口からは言えないからセイアさんに聞いてほしいけどさ。折角来てもらってあれだし……ちょっと、家に来ない?遊ぼうよ」
「行きますよ!」
「コユキはさぁ……」
そして、マリーではなくコユキの方が即断したのを聞いて呆れたように、コユキの頭をわしゃわしゃと掻き毟るのだった。
★
「……こ、ここが、モルフォさんの、お部屋ですか……?」
「うん、まあごちゃごちゃしてるから落ち着かないかもしれないけどさ」
「にはは、そういえばモルフォさんの部屋に来るのは初めてですねぇ!」
マリーとコユキを自室へと連れ込んだモルフォ。そこにはカーテンなどがかかっており、棚の中など、色々作ったものなどが見えないようになっている。
「ふふふ、モルフォさんの部屋にはきっとあんなものやこんなものが……これは楽しみですよ……」
「あ、あの……あんまりそういうことは……」
「コユキ……」
マリーもコユキを止めようとする。モルフォは溜息を吐くと、コユキの耳元に近づいて囁く。
「マリーがいる時に見せたら色々面倒臭くなるかもしれないから。後で見るならそういう心配もないからその時にしようっか」
「はーい」
面倒臭くなるから後で。その言葉を聞いて大人しく引き下がるコユキ。それに、ここまで連れてきたということは当然、モルフォには見せたいものがあるのだろう。ならばそれを楽しんでからでも全然いい、という気持ちもあったのかもしれない。
「あ、あの……もしかして、外ではできない話を……?」
「まあ、外ではできないかなこれは……」
「成程。確かにこれは室内じゃないとできませんねぇ」
テレビとテレビ台の中に置いてあるゲーム機を調整していく。そして準備が終わったところでモルフォは、コントローラーをマリーに渡す。
「え、えっとこれって?」
「ゲームだよ」
「ゲーム?ですか?え……もしかして、私を連れてきたのってこのゲームの?」
「?そうですよ?」
困惑するマリー。しかしモルフォとコユキからしたらこれはもう決定事項のようである。長方形のファミコンのコントローラーを手に持ったマリーは、なんでこんなことになってしまったのかを考え始めていた。
(い、いや……落ち着きましょう。これはきっと、ヒントなんです……モルフォさんも詳しくわからないからこそ、自分にできる手がかりを私に教えようと……サクラコ様ならこういう時、きっとこの僅かなヒントから真実を探り当てようとするはずです……)
もし今のマリーの思考を読めていたのなら、モルフォさんそこまで考えていませんよ、とコユキから突っ込まれることは間違いないだろう。そんなこんなで、ゲームにタイトル画面が表示されていく。
「……光神話パルテナの鏡?」
光神話パルテナの鏡。ファミコンで発売されたアクションゲームであり、主人公の飛べない天使ピットを操り、弓矢を使って敵を倒しながらステージクリアを目指すというシンプルなアクションゲームである。
「これは初めて見るゲームですね」
遥かな大昔、エンジェランドは光の女神パルテナと闇の女神メデューサが支配していた平和な世界であった。しかし、メデューサは人間を虐めていたため、パルテナの手によって冥府界と呼ばれる世界に追放されてしまう。だが、それに怒ったメデューサは冥府の怪物を従え、エンジェランドへと攻め込んでしまう。その結果、イカロスと呼ばれる兵士たちは石に変えられてしまい、パルテナもまた捕まってしまったのだ。それだけでなく、メデューサは三種の神器と呼ばれる装備さえも奪ってしまう。だが、パルテナは最後の力を振り絞り、冥府界の牢獄に囚われていたエンジェランドの親衛隊長であり、主人公であるピットを脱出させる。そして、脱出したピットは三種の神器の奪還、そしてパルテナの救出を目指し、メデューサ率いる冥府軍に単身立ち向かうというストーリーとなっている。
「とりあえずやってみなよ。まあ、初めてだとちょっと難しいかもしれないけど……」
「は、はい……!」
意気込みを見せながらプレイを開始するマリー。それから数分後。
「や……ヤラレチャッタ……?」
「このゲーム、ジャンプの挙動が独特ですね……」
見事なまでに体力が消し飛んでしまい、死亡してしまったピットの姿があった。序盤はまだその独特の挙動に苦戦しつつも、まだステージ自体が簡単なのもあってたどたどしくも問題なく歩みを進めていた。しかし、問題となったのはステージの途中に現れた、鎌を持つ青いキャラ、死神と遭遇したところからだ。死神は、小死神と呼ばれる小さな敵を四体呼び出してピットを攻撃するという行動を取り、さらにピットを見つけると騒ぎ立てて突進してくる。その最中は無敵となっており、弓矢のダメージを受けないというものになっている。それでも苦戦の末に体力の大半を失いながらもどうにか死神を倒すことに成功したのだが、その先。謎の小部屋に入ると、そこでメガネハナーンと呼ばれる鼻眼鏡のような姿の敵キャラの群れに襲われてヤラレチャッタのだ。
「……っていうか、あそこ、完全に罠では?」
「た、確かにあそこは外れの部屋ですね……入らない方が正解なんでしょうね……」
「まあ、慣れないと厳しいかも……とはいえ、倒せばハートが一体につき十個もらえるから攻略できるならだいぶ美味しいんだけどね」
記念すべき初ゲームオーバーを果たしたマリー、コユキと共に反省会をしていく。光神話パルテナの鏡というゲームはファミコン時代特有の挙動のクセがありそこそこに殺意も高く、位置によっては倒しにくくなる敵も相まってアクションゲームとしては難易度が高いのだ。それが顕著となるのがマリーがトドメを刺されたメガネハナーン達の巣であろう。が、そこで四方八方から襲い来るメガネハナーンを掻い潜り、全滅させればこのゲームにおける通貨、ハートを一気に稼ぐこともできるという旨味もある。
「とりあえず回数をこなしてゲームに慣れていこう」
「は、はい!」
そして二回目のトライ。メガネハナーンの群れをいきなり倒そう、というのはさすがに初心者には酷なので、とりあえず普通のステージの方をどんどん攻略させることにする。慣れてきて序盤からアイテムなどを揃えていく効率的なプレイができるようになってから触るようにした方がいいだろうという考えによるものだ。
「この部屋は……」
「宝物庫ですね」
「壺を壊せば中からアイテムが出てくるから、うまくやればアイテムを稼げるね。ただ、一回アイテムを取ったら他の壺は消えてなくなるからできる限り壊したいんだけど……貧乏神を引いたらその時点で終わりになるから気を付けて」
先程ヤラレた敵の巣をスルーし、その先にある宝の部屋に入る。そこには八つの壺があり、貧乏神を引かないようにうまくアイテムを稼ごうとするのだが。
「ひゃっ!?」
「い、一発で引いちゃった……」
「これは運がないですねぇ」
なんとマリーは一発で貧乏神を引いてしまう。特徴的な音楽と共に全くアイテムを稼ぐことができずに部屋から追い出されてしまったマリーは、気を取り直す形で再びステージの突破を目指していく。が、
「……お、落ちてしまいました……」
「……ここら辺、足場厳しくないです?」
「足場が一マスしかないから良い感じに跳ばないとすぐに落ちるんだよねぇ……」
ここで第二の鬼門。一マスしかない足場の乗り継ぎゾーンが入ってくる。このゲームには店売りアイテムとして落下してしまった際に空を飛んで復帰できる天使の羽があるのだが、冥府界の最初のステージであるここでは店が存在しないため購入自体が不可能となっている。そのため、最初のステージだけはアイテムに頼らず自力で攻略しなければならない。落下死してからさらに三回目のトライの末、遂に難所を越えたマリーは遂にステージをクリアする。
「や、やりました……!私、ゲームをクリアしました……!」
「いやまだ先がありますが」
「……え?」
パルテナの鏡では、通常のアクションステージが三つ、そして砦と呼ばれるダンジョン攻略要素も兼ねたボスステージが一つの四つから成り立つ冥府界、地上界、天空界の合計三面と、一番最後のメデューサとの決戦を行う、これまでと比べるとアクションよりもシューティングに近い最終ステージの合計13面があるのだ。
「今度は動く足場とかもあるんですね……」
「しゃがむとすり抜ける床が面倒ですね……そのせいで画面外に落下することも多いですし」
ステージもどんどん難易度が上がり、嫌らしくなっていく。とはいえ、第一面が初心者にとって難しすぎたという面が大きいのもあり、そこをクリアできる実力があれば道中という意味では苦戦はしてもクリアできない程ではない。敵の巣らしき場所は回避しつつ、クリアだけを目指していく。その結果、最初のアクションステージ三つを無事、クリアすることに成功し、砦へと向かっていく。
「ここは……他と雰囲気が違いますね」
それぞれの世界の最終ステージを飾る砦ステージ。そこでは道中で集めたり店で購入したりしたハンマーを使って石像にされているエンジェランドの兵士、イカロスを解放しながらダンジョンを攻略し、ボスの下へ向かうというステージになっている。これまで一方通行であったアクションステージと異なり、多くの部屋が連結して繋がっているようなステージのため、闇雲に進んでも中々ボスの下へ向かうことはできないという特徴がある。
「な、ななな……なんですかこれ?ナ……ナス?」
砦ステージにおける最大の脅威と言えばやはり、ナスビ使いと呼ばれる紫色の敵だろう。一つ目にナスが先端についた、いや、突き刺さったかのような杖を持つその敵は、名前だけならふざけているようにも見える。しかし、ナスビ使いはこのゲームにおいて唯一無二の力を持っている。
「……って、撃てません!?」
「しかしなんていうか変な格好ですねぇ、ナスに足が生えてる……」
それが、このナスビ攻撃である。ポイポイとナスビを投げているようなこの攻撃、放物線を描くこの攻撃は今作では初めてとなる攻撃であるため、それだけでも回避しづらく、投げるナスビの数も普通に多い。そしてそのナスビに触れてしまったが最後、ピットはナスビに足が生えるという珍妙な恰好に変えられてしまい、攻撃すらできなくなってしまうのだ。
「こ、これじゃ……ど、どうすれば」
「病院に行くしかないかな」
「病院って……どこにそんなのが……あっ、そういえば赤十字の部屋が……」
そしてこの最大の問題であるのが、ナスビという状態異常は時間経過で治らないという点。このナスビ状態を回復するには、死亡するか、病院で回復するかのどちらかでしか回復できないのだ。そのため、砦の中にはナスビ状態を回復できる病院の部屋があるのだが、攻撃できないということは移動だけで敵を掻い潜って移動するわけで。
「……あ……」
いきなり被弾を減らす手段であった弓矢を取り上げられたマリーが猛攻を掻い潜ることはできず、被弾を重ねて再びヤラレてしまう。
「あちゃー」
「ここ、どうクリアすれば……」
「とりあえずナスビに当たらないようにしばくしかないね」
「それができたら苦労しないんですがねぇ……」
「……逆を言えば放物線を描くわけだから被弾覚悟で正面から突っ込んでいけば突破はできるかな」
「!な、成程……その手が。でも、体力が……」
「まあそこは……温泉を使えばどうにか」
「「温泉?」」
砦の中には温泉の部屋もある。ピットは温泉に浸かれば体力が回復するため、ナス部屋の強行突破で減った体力を温泉で回復していく。体力を回復し、体勢を立て直すもその先にはナスビ使いのいる部屋がもう一つ残っている。そこも強引に突破し、ようやく冥府界の砦のボスであるツインベロスの下へと辿り着く。
「ほ、他より大きいです……」
「首が二つありますね……あっ、解放したイカロスが一緒に戦ってくれま……一発で落ちてますけど?」
「イカロスはね……一発で乙るからね……正直解放してもそんなに……」
「そ、それ言っちゃっていいんですか……?」
「いれば無駄にはならないから」
ボス戦では石像から解放されたイカロスと呼ばれるエンジェランドの戦士たちも一緒に戦ってくれる。そう書けば心強いし、無いよりは確かにマシ、なのだが……残念ながら被弾一発で退場する儚い存在であるため、無理にハンマーで解放しにいくかどうかはプレイヤーによって分かれてしまうだろう。とはいえ、ツインベロスと呼ばれる二つ首の獣はそこまで殺意のある行動をしてこないのもあり、攻撃こそ避けづらいもののそれを除けば倒すのはそこまで難しくはない。というかステージの方が難しいのだ。
「……く、クリアしました……!」
「おめでとう、マリー。このゲーム結構難しいんだけど、よくクリアしたね。私が初クリアした時より早いよ」
「ほ、本当ですか?」
「いやー、私も結構やられそうですねぇこれは」
苦労の末にやっと砦を攻略し、喜びを分かち合う三人。一面をクリアし、次のステージである地上界へとピットは歩みを進めていく。
「これで……」
「じゃあ次は地上界……って、もうこんな時間か」
「あっ……さ、さすがにもうトリニティに戻らないと……ありがとうございます、モルフォさん、コユキさん。凄く楽しかったです」
まだこれでもほぼ三分の一。次のステージである地上界が始まるといったところで、スマホを確認すると既に夕方に差し掛かっていた。それを見て、慌てて立ち上がるマリー。しかし、まだゲームは終わってないということを思い出し、ゲーム画面を見る。
「……」
「まあまあ、続きは次の機会でってことでいいんじゃない?とはいえいつも私の部屋でっていうわけにはいかないだろうし、先生にも協力してもらってシャーレでやるとかね」
「い、いいんですか?」
「もちろん。今日は楽しかったからね、その続きなら喜んでやるよ」
「あ、ありがとうございます……」
「にはは、また遊びましょう!」
そして、二人と分かれてマリーがモルフォの部屋から出ていく。残ったコユキが別のデータで最初からやり始めて何回もコンティニューを繰り返していく中、トリニティに戻ったマリーからモルフォと一緒にゲームをして遊んだという話をサクラコにしたことでサクラコが困惑することになるのだった。