転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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阿慈谷ヒフミとヨーヨー

 

(……異世界のゲームやおもちゃ……いえ、ホビー。夢で見たそれに形を与える異能……)

 

エイミに連れられ、学校へと戻っていったモルフォ。一人、セーフハウスの中に残ったヒマリの手には、モルフォからもらった時械神デッキが握られていた。

 

(……創作に、噂や伝承、神話といったものを落とし込むようなもの、でしょうか。と、すれば……創作用にある程度曲解、ぼかされた形で彼女を通じ、私達は知りたい情報を知ることができる可能性がある……ですが、これは同時に危うい力かもしれません。今は遊びやゲームだけで済んでいますが、もしその力が異世界の武器、兵器、技術となったら……)

 

究極時械神セフィロン。そう記されたカードを見ながら考えていたヒマリだったが、ここで頭を横に振る。これではまるで彼女みたいだなと。そんな不穏な考えを塗り替えるように、静かに笑みを浮かべるのだった。

 

(いえ、彼女は……一人で抱え込まず人に話せる人間です。きっと、大丈夫でしょう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う……」

 

翌朝。目を覚ましたモルフォは誰かに伸し掛かられていることに気付く。視線だけを動かしてみると、それは寝ているモモイだった。

 

「こ、こいつ……」

 

ゲーム開発部で雑魚寝していたことで寝返りしてきたであろうモモイの頭がこっちに来たらしい。こいつは……と思いながらも、モモイをどかすのも悪いと寝たままの状態で腕を伸ばしたりして体をほぐしにかかる。

 

「ん……もう朝……?」

「おはよう、ミドリ」

「あ……おはよう、モルフォちゃ……お姉ちゃん何やってるの……」

 

モルフォの次にミドリが起きる。そしてモルフォを見て、何故かモモイがモルフォを枕にしている光景に気付く。大方寝ぼけてやってたのだろう。

 

「まあ、寝ている間に殴られたりしてるわけじゃないし、起きるまで待ってあげようよ」

「モルフォちゃんがいいならいいけど……」

「んが……?あれ、なんか枕が変……?」

「人を枕にしないでもらって」

「……あ、ごめん」

 

そしてモモイも目を覚ましてすぐに、自分がモルフォを枕にしていることに気付き、寝ぼけながら謝る。意識を取り戻したモモイを引っぺがしながら起きたモルフォは、改めて体をほぐしていると起きてきたユズも含めて四人で朝食を食べ終え、部屋で過ごしていると部室の外が騒がしくなってくる。

 

「……なんか騒がしくない?」

「なんかあったのかな?ちょっと見てくる」

 

モルフォが部室から出て歩いてみると、廊下では生徒達が浮足立った様子になっていた。それも、不安といった感情とは異なり、嬉しそうな、そんな雰囲気だ。

 

「……皆どうしたんだろ?なんかお祭りみたいな感じだけど」

「ユウカちゃんから連絡があったんですよ。サンクトゥムタワーの制御権が連邦生徒会に戻って、各地の混乱も少しずつですが治まり始めているって。停止していた発電施設も復旧し始めているんですよ」

「ノア先輩?それ本当なんですか?」

 

たまたま通りがかっていた白い髪の少女がモルフォの疑問に答えてくれる。どうやら、連邦生徒会が遂にサンクトゥムタワーの制御権を奪い取って復旧することに成功したらしい。それで、気分転換も兼ねてこうやって休憩がてら部活棟の方まで足を運んでいるようだ。

 

「ええ、凄く嬉しそうに言ってましたよ。ユウカちゃんも数日向こうに滞在した甲斐があると言っていました」

「連邦生徒会も全然動かないなぁとは思ってましたけどちゃんと裏で解決しようとはしてたんですね」

(……そこは……まあ、ユウカちゃんが戻ってきてから改めて確認しましょう)

 

そのおかげでキヴォトス全体で起こっていた混乱が少しずつだが治まってきているのだそうだ。連邦生徒会が、という部分にノアは少しだけ引っかかりを覚えたみたいだが、それはモルフォには気付かれていないようだ。

 

「では、私はそろそろ戻りますね」

「はい、わかりました」

 

そしてノアと別れたモルフォはゲーム開発部へと戻ると、モモイ達にノアから聞いた話を報告するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、それ本当!?」

「あ、本当だ、見てよ。シャーレの先生っていう人が解決したんだってさ」

「先生?そんな人いたんだ」

「新しい組織っぽいよ?」

 

モルフォの話を聞いた三人はSNSを開いたりネットニュースを見たりしながら事の次第を把握していた。サンクトゥムタワーの最終制御権についてはどうやらシャーレという連邦生徒会の新組織と、それに所属する先生なる人物が取り戻したとのこと。そのこともあってかネット上ではシャーレに対する興味と、やっと治安が落ち着くという安心の声が広がっていた。

 

「あ、これ見てよ、正実の人のアカウント。やっと休めるーって言ってる、めっちゃ反響あるじゃん」

「ゲヘナっぽい人も反応してる……風紀委員かな?」

「まあ治安維持してる人にとっちゃ大変だっただろうね。ヴァルキューレとかデスマーチでしょ」

「でもヴァルキューレってヘルメット団にも舐められてなかった?」

「言っちゃ駄目だよモモイ……」

 

とはいえ明るい話題なのは間違いない。なんせ、これでやっと寮に帰れるのだから。今の生活もそれはそれでいつもと違う感じがして楽しかったが、やはり自分の城にはそこにしかない安心がある。

 

「うーん、折角めでたいわけだしなんかお祝いとかしたくない?」

「お祝いか……いいと思うけど、何をするの?」

「……なんか美味しい物でも食べに行く?」

「いいねモルフォ!それ採用!」

 

こういう時は美味しいものを食べるのがいい。モルフォの意見に全面的に賛成するモモイ。ミドリとユズも異論はないようで、四人は早速調べ始める。

 

「今すぐだと開いてる店も少ないだろうからある程度落ち着いて……一、二週間ぐらい後にしようか?場所は……」

「折角だしミレニアムの外がいいよね!いっそのこと、普段は絶対行かないような場所とか!」

「普段行かない……ゲヘナ?」

「百鬼夜行とか?」

「……あ、こことかどう?普段だったら絶対に行かない場所の名店……というか穴場?ユズはどう思う?」

「え、えっと……でも、皆とご飯を食べに行くだけなら……大丈夫かな……?」

 

そしてモルフォは、興味のあるお店を見つけると、その画像を三人に見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これは……」

 

数日後。偶然手に入れたチラシに載っていた商品を手に入れるために町に繰り出したモルフォが偶然立ち寄ったトイショップで見つけたのは、ヨーヨーだった。そのヨーヨーには、鳥がプリントされている。最初見た時は特徴的なデザインだと感じたそれは、ぺロロというキャラらしい。残り一個らしいそのヨーヨーを手に取ったモルフォは、面白そうにそれを見ていく。

 

「形状はノーマルかあ、そしてこれ……まさかバインド?ちょっと興味はあるけどまぁ……いいか……でも良いものは見れたな」

 

いいねぇ、と思いながらそのヨーヨーを見ていると。

 

「ああ……!」

 

後ろから声が聞こえてきた。モルフォが声の主を確認すると、トリニティの制服を着た、ぺロロのリュックサックが特徴的な少女が立っていた。しかし売り場を見てそこにヨーヨーがないことに気付いてしまい、項垂れてしまっているようだ。まあ、わざわざトリニティから足を運んできて空振りなのだからガッカリしてしまうのも無理もない。

 

「ぺ、ぺロロ様の限定ヨーヨーが売り切れてしまうとは……も、もう少し早く出れていたら……うぅ」

「……えっと、欲しいなら譲ろっか?」

「……えっ、い、いいんですか?でもそれはあなたが欲しいぺロロ様じゃ……」

「いや、限定のヨーヨーって言うから興味があって見に来ただけだからね……それに、ヨーヨー自体は他にも持ってるから、欲しい人がいるならその人が買ってくれた方がいいと思うんだ」

 

どうやら彼女が望んでいるのはこのぺロロのようだ。であるなら、買ってもこのヨーヨーを使うことがないであろうモルフォより彼女が買った方がいいはずだ。モルフォからヨーヨーを渡された少女は、感激の表情を浮かべる。

 

「あ、ありがとうございます……!!」

 

一礼すると、少女は早速ぺロロのヨーヨーを持ってレジへと向かう。そして会計を終えてモルフォの下へ戻ってくる。

 

「この御恩は絶対に忘れません!!」

「あ、はは……これで恩を貰っても困るんだけど……あ、そういえば……そのぺロロ?だっけ?そのキャラが好きなの?」

「はい!大好きです!!あなたもぺロロ様の事が!?」

「いや、悪いけどファンではないかな……ただ、ヨーヨーの方はやるのかなって」

 

ふと、少女の話を聞いて、彼女はヨーヨーの経験はあるのかと気になって声をかける。それを聞いた少女は、ヨーヨーの経験はあんまりないようで目を泳がせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、簡単にですが、やってみましょうかヒフミさん」

「は、はい……でも、ヨーヨーなんて私できますかね……?」

 

その後、近くの公園に移動してきたモルフォとぺロロが好きな少女、阿慈谷ヒフミの二人はヨーヨーで遊び始めていた。ある程度動かし方をレクチャーしてもらい、ヨーヨーを投げて手元に戻ってくる。そんな基本を何回かやってみる。

 

「……うわぁ、回ると光ってぺロロ様の輪郭が出るんですね!凄いです!」

「光るギミックあったんだこれ……」

 

楽しそうにヨーヨーを投げているヒフミ。それを見つつ、そろそろ大丈夫かなと、モルフォは持参していた赤いヨーヨーを取り出す。今日見に来たヨーヨーと比較してみて、面白そうだったら買おうかなと思って持ってきたものだった。

 

「……そのヨーヨーは?」

「ハイパーヨーヨーアクセルと呼ばれる商品ですね。その中でもアクセルラウンドというシリーズのクリムゾンウロボロスと言います」

「な、長いですね……」

「とりあえずこんな感じでロング・スリーパーからやってみましょうか」

「おお……!」

 

真っ赤なヨーヨーを放り投げると、ヨーヨーが空中で静止したまま空転し始める。それをじっと見ていたヒフミは面白そうにそれを見る。彼女ではヨーヨーを固定することがまだまだできていないのだ。

 

「では一回クリムゾンウロボロスを……」

「え?でも私にはぺロロ様がいますよ?」

「あー……このハイパーヨーヨーアクセルって、トリックがやりやすいシリーズなんですよ。確かにそのヨーヨーでも可能だとは思いますが、まずトリックの感覚をっていう意味だとこちらの方がいいかと」

「成程……」

 

ハイパーヨーヨーアクセルは、ストリング……すなわち糸を強く引っ張ることでヨーヨーの内部が回転する機能が搭載されている。それによって、ヨーヨーの入門者が習得する必要のあるロング・スリーパーというトリックの習得難易度を下げているのだ。ヒフミが持っているヨーヨーでも可能だとは思うが、ヨーヨーに触れたことのない人なら先にハイパーヨーヨーアクセルから触って覚えてからの方がいいのでは、というモルフォの気遣いだった。だが、

 

「お気持ちだけ受け取っておきます。ですが私は、このぺロロ様で覚えたいんです!」

「そうですか、それなら頑張って覚えましょう!」

「はい!」

 

ヒフミの意思は固い。ならば徹底的に付き合うことに決めたモルフォと一緒に、ヒフミはヨーヨーを投げ続ける。掌を上に向け、肘の高さを調整する。そして、まっすぐ、かつ力強くヨーヨーを投げ降ろしていく。最初は中々うまくいかないが、十分、一時間と投げ続けていくと、段々フォームも洗練されていく。

 

「……いきます!」

 

ヒフミが綺麗なモーションでヨーヨーを投下していく。ロング・スリーパーが成立し、下で止まったままぺロロは回転し続ける。大体三秒程留まっただろうか。掌をキャッチするため下に向け直すと、手首のスナップを利かせてヨーヨーに衝撃を与え、手元へと戻していく。そして、ヒフミの手にヨーヨーが収まる。

 

「……や……やった……!」

「凄いですよヒフミさん!ロング・スリーパー成功です!」

「モルフォちゃんのおかげですよ!」

 

遂にトリックを成功させ、はしゃぐヒフミと喜ぶモルフォ。そして一しきり喜び合った後、

 

「では次は犬の散歩とか……」

「……あ、気付けばもうこんな時間に……」

「……あー、そうですね」

 

既に時刻が夕方に差し掛かっていることに気付いてしまう。今から次のトリックはいくらなんでも時間的に厳しくなってしまうだろう。少々名残惜しくもヒフミと別れたモルフォは、その手に残ったままのヨーヨーを見る。そして、

 

「……ストリングプレイスパイダーベイビー!!……あっ」

「……何やってんだお前……」

 

何となくドヤ顔でトリックを決めていたところを、おそらく任務帰りであろうネルに見られていた。

 

「……ヨーヨー?」

「いやまぁそれは見りゃわかるが……」

 

いやー見られちゃったなーと誤魔化しながらヨーヨーをしまう。呆れた様子でこちらを見ていたネルだったが、これ以上は何か言うつもりもないのかその場を去ろうとして、ふと足を止める。

 

「……あ、そういや次の休みだが……」

「?ああ、決まったんですか?また何か用意しておきましょうか?」

「まあ、任せる……つってもちょっと先の予定だが」

 

そしてネルから、二週間程度先の日付を告げられたモルフォは困ったような表情を浮かべる。

 

「あー、すみませんその日は先約がいまして」

「あ?まぁそれならしょうがねえな……じゃあいつも通り……」

「それも厳しいですかね……ゲーム開発部の皆とアビドスに行くんで」

「……は?なんであんな辺鄙な所に行くんだよ」

 

プラモをゆっくり組もうと思っていたのだろうが、それが無理そうなら組手だけでも……と思ったがそれも難しいようだ。しかし、モルフォから突然飛び出してきたアビドスという地名にネルも驚いた表情を浮かべる。

 

「美味しいラーメン屋があるって出てたんで、落ち着いてきたのもあって折角なら遠出して一回ぱーっとやろうかなと」

「……それ、どこにあるんだ?」

「?」

 

ネルの表情が少しだけ険しくなる。その意味がわからず、モルフォたちが行こうとしていたラーメン屋、柴関ラーメンとその周辺の地図を確認する。アビドスに地図は存在せず、検索しても数年前のしか出てこないのだが、このラーメン屋に続く道だけは一部の熱心なリピーターでもいるのか開拓されており、そこのルートだけはネット検索で出てきたのだ。これを見て、ここって知る人ぞ知る名店なのでは?と皆で目を輝かせた結果選出されたのだが。

 

「……まぁ、行ってもいいが絶対問題起こすなよ?」

「なんでですか?」

「そこ、あのカイザーコーポレーションの土地だからな?」

 

それを聞いたネルは、そこが誰の土地なのかを告げた上でお前らが問題を起こすとそれを利用してミレニアムに変な事要求してきそうだから大人しく飯だけ食ってこいよ、と釘を刺してくるのだった。

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