転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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虚妄(フォルスサンクトゥム)

緋色の空がサンクトゥムタワーに突き刺さった塔を中心に広がっていく。シャーレの屋上に上がり、それを見ようとしていた先生だったが、そこには先客がいた。

 

「……黒服。その姿は……」

「お見苦しい姿で失礼します、先生」

 

それはなんと、黒服であった。しかし、その体はヒビが無数に入っており、着ているスーツもボロボロだ。

 

「……さっき、フランシスに会った。ゴルコンダはもういないと言っていたけど」

「……ええ、フランシスが目覚めてしまいましたか……まあこうなっては仕方ありません。それよりも先生が聞きたい情報はこれでしょう―――ゲマトリアは壊滅しました」

 

フランシスの出現と、その言葉からゲマトリアで何かがあったのだろうということは予想していた。しかし、ゲマトリアが壊滅したという報せまでは予想していなかったのか、先生も驚きの表情を浮かべる。

 

「色彩が遂に到来してしまったのです―――いえ、この表現は適切ではないかもしれませんね。正しくは侵略してきた、と申しましょうか」

「……黒服、知っていることを教えてほしい」

「色彩が到来し、狼の神がソレと接触したのです」

「……狼?」

 

狼。それを聞いて先生の脳裏にシロコの姿が浮かぶ。といっても、彼女の苗字が砂狼であるという点で連想してきたようなものだが。

 

「恐怖の領域へと反転した彼女は、命ある全てのものを、あの世へと導く死の神アヌビスとなり、自身の本質が赴くままにこの世界に終焉をもたらすことでしょう……色彩はそれを理解していた。故にこの地に辿り着いて、まず最初に彼女の崇高を確保したのです」

 

だが、黒服の告げた次なる言葉は、先生が思い浮かんだ少女への関連性を裏付けるような物言いであった。さらにそれを強調するように、アロナからシロコが行方不明になってしまったという連絡が入り、先生の額を冷や汗が流れる。

 

「色彩は意志も欲望も目的もない不可解な観念であると、そう解釈していたのですが……この行動においては、明確な意志と計画性を感じます」

 

黒服が言っているのは、アヌビスと呼ぶ少女によって壊滅に追い込まれたゲマトリアのことだろう。それは間違いなく、彼女の意志によるものであった。その背後にいる色彩にこのキヴォトスを滅ぼすという明確な意志があり、そのための計画をするためにシロコを確保し、アヌビスへ変貌させたのだと。

 

「まさか、自ら行動に出るとは……色彩は、キヴォトスのありとあらゆる神秘と恐怖、そして崇高の概念を吸収し、自らのものにしようとしています」

 

そう告げると、サンクトゥムタワーに天から突き刺さった塔を見る。そして周囲に視線を向けると、遠目ではあるがうっすらと同じように天へと伸びる、いや降ってきた塔が見える。

 

「キヴォトスに出現した六つの塔は、サンクトゥムタワーの一種といえるでしょう。それも反転した」

「反転」

 

アヌビスを目覚めさせた反転。それによってもたらされる行動がキヴォトスを滅ぼすことだとするならば、反転したサンクトゥムタワーの行動原理もまた、それを助長するものなのだろう。

 

「アレは太古の昔、まだこの世界に記録が残されるよりも前。当時存在していた原始的な神秘、名もなき神が築き上げた技術の一つ。アレは色彩の光を世界中に伝播させ、全ての神秘を恐怖へと反転させることでしょう。アヌビスのように」

「……なら、私達はそれを食い止めるだけだよ」

「……そうですか」

 

先生がこう答えることはわかっていた。そう言わんばかりに、どこか満足げに頷く黒服。実際、先生のやるべきことは変わらない。シロコを、生徒達を、そして世界を守り、救うためにできることをする。ただ、それだけだと。

 

「終焉をもたらす神を使って色彩がゲマトリアを襲撃した理由は、我々が所持している秘儀と検証結果を奪うためでしょう。それら全てを手にした色彩の嚮導者(プレナパテス)は、色彩の意志を代弁し、計画を実行するでしょう」

 

プレナパテス。それが、止めるべき敵の名なのだろう。それを知った先生は、シッテムの箱を取り出す。

 

「―――アロナ。クロノスにメッセージを」

『はい!サンクトゥムタワー……いえ、塔の付近に近寄らず、避難してほしいとメッセージを送りました!すぐに放送されるはずです!……って、た、大変です!D.U.地区各地に正体不明の兵隊が……って、これは!?ユスティナ聖徒会……無名の守護者……暴走したオートマタ達が、暴れています!』

「!」

 

まずは、戦う力を持たない生徒達を避難させる。これで最低限の準備は整ったと言わんばかりに先生は大人のカードを取り出す。すると、黒服が強い声音でそれを制止してくる。

 

「……先生。忠告しておきましょう。それを乱用すれば―――あなたはいずれ、私達と同じ結末を迎えることになる」

「……かもしれないね。だけど私は迷わないよ。皆を守るためにね」

 

しかし、黒服の制止を振り切り、カードを使用しようとする。出現した敵は三ヶ所。それらの敵を殲滅するため、力をカードに込めようとした、その時だった。

 

『先生!無名の守護者の所に到着しました!』

「っ!?モルフォ!?」

『こちらRABBIT小隊!謎のシスター達の出現地域に到着!これより戦闘を開始します!』

「ミヤコ!?」

『先生、この不可解なオートマタ達はヴァルキューレに任せてください。先生はシャーレから指示を!』

「カンナ!?」

 

三人の声が通信から聞こえてくる。避難を誘導してもらっていたはずだが、この異変を察知し、すぐに移動してそこに向かってくれていたようだ。ヘリを使い、ユスティナ聖徒会の下へと向かったRABBIT小隊。ヴァルキューレの装甲車を使い、無名の守護者とオートマタの下へそれぞれ向かったゲーム開発部とヴァルキューレ。彼女達の迅速な行動によって、先生は大人のカードを使う機会を逃すことになる。

 

「……クックックッ、どうやら先生はそのカードに嫌われているようですね」

「……かもしれないね」

「或いはそれがよろしいのでしょう。この事態を解決する気があるのなら、そのカードには極力頼らないことを進言しますよ……どこまでいけるかはわかりませんがね」

 

これには肩を竦め、苦笑しながら黒服に言葉を返すしかない。しかし、これで腹は決まった。

 

「よし……皆!D.U.地区に現れた敵達を迎撃してほしい!」

『『『はい!!』』』

 

先生の号令と共に、それぞれの戦場で戦いが始まり、生徒達が一斉に動き出す。ゲーム開発部が向かった先では、敵の攻撃を受け止めながら後続に指示を出していく。その後ろでは車両を操縦し、一緒についてきてくれたヴァルキューレの生徒が逃げ遅れた市民の避難誘導を行っていたのだが。

 

『……無名の守護者達が敵対するなんて』

「見たことのない姿の個体もいます。あれも無名の守護者なんですか?どうにかできないんでしょうか……」

『ええ、あれも無名の守護者の一種です。私の時はわざと作らなかったわけですが……それに、指揮系統を取り返すのは今は無理でしょう。アリスも理解しているはずです。私達が名も無き神々の王女の力を使うには……』

「はい。承認してもらわなければなりません」

『……なんでこんなシステムにしたのかいまだに疑問ですが……』

「アリス!」

「はい!」

 

モルフォの声に反応するようにアリスがチャージしたスーパーノヴァの一撃を六足歩行を行う無名の守護者に叩き込み破壊する。他にも、球体形のボディから触手のようなコードを伸ばす、ゲーム開発部もよく知る無名の守護者達に混ざって、触手ではなく四本の鋭い爪のような足で素早く移動する個体もいる。その突進をシールドで受け止めて弾きながら、

 

「ミドリ、足の速い奴を優先して処理して!」

「オッケー!」

 

ミドリがそれらの個体を潰していく。特徴のない触手の無名の守護者相手ならばモモイのアサルトライフルでも十分な火力を発揮する。ユズのグレネードで無名の守護者を仕留めつつ爆発で周囲の個体も吹き飛ばして足止めをし続けていた。そして、

 

「これで―――最後です!」

 

アリスが放った一撃が、最後の無名の守護者を撃破する。その様子を、ケイが複雑な表情で見つめる中、モルフォが戦闘が終了したことを先生に報告する。すると、先生の方からカンナとミヤコ達の方でも戦闘が終了したことが伝えられ、ほっとしていると今度はリオから連絡が入ってくる。

 

『―――聞こえるかしら、皆』

「!リオ会長!そっちは無事だったんですね!」

『ええ。今、私はシャーレに向かっているわ。おそらく他の学園の生徒達も呼ばれているはず。やっと話が進展しそうだし、あなた達もすぐに動くことになると思うわ。今は休んで』

「わかりました」

 

昨日まともに行われなかった非常対策委員会。それが、先生の、シャーレの名において改めて行われようとしている。この紅い空を、そして六本の塔をどうにかするために。セイアがかつて告げた未曽有の大災害。それを乗り越えるために、モルフォ達もヴァルキューレの生徒達に連れられてシャーレに戻ることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後。シャーレの会議室には各地から呼ばれた生徒達が次々と集まってきていた。連邦生徒会が立場ある者を招集していたのに対し、先生は人数を絞って呼んでいた。それは上の立場の面々は緊急事態で舵取りなどを行う必要があったのも大きかったのもあるが、それ以上に話を進めやすくするための面々として、アヤネやアコ、カヨコにハナコ、そしてミレニアムから調査資料を携えてきたリオが訪れていた。また、今回の会議には百鬼夜行からニヤがリモートで参加することになっている。他にも、あくまで傍聴という形ではあるが多くの学園の生徒達がこの会議を聞いている。

 

「……なんか、凄いことになってるね……」

「うわー、いろんな学園の人達がいるよ」

「あの人、確か便利屋の……」

「誰ですか?」

「……そういえばアリスとケイはまだ会ったことなかったっけ」

 

ゲーム開発部はというとRABBIT小隊と共に別室に待機してこの対策会議を見守っていた。昨日の夜から先生の救出、シャーレの奪還、プレナパテスなる敵対勢力の先兵と化した無名の守護者との戦いと連戦だったこともあり、先生から休息をするようにと言われたのだ。同じようにカンナ達も今頃ヴァルキューレに戻って休息を取っているだろう。

 

「……しかし、先生を助けてシャーレを取り戻すだけだと思っていましたがとんでもないことになってしまいましたね」

「ああ。しかもミレニアムはあのサンクトゥムタワーが二本もあるんだろ?余計に大変じゃないか?」

「そうなんだよねぇ……」

 

そもそも連邦生徒会ではなくシャーレでこの会議が行われているのは、リンが権限を有しておらず、加えて元から存在していた方のサンクトゥムタワーも破壊、他の室長もまともな働きが期待できないという有様なのが大きい。それ故か会議も主に先生の主導で進行しており、リオだけでなく、各々が持っている情報のすり合わせなどが行われていた。

 

「……虚妄のサンクトゥム、か」

「世界を滅ぼす塔……ハノイの塔のようですね」

「あれとはちょっと色々違うと思うんだ……」

 

リオが持ち寄った資料は当然ゲーム開発部とRABBIT小隊にも共有されていた。六つの塔は虚妄のサンクトゥムと呼称されることが決まり、その期限は現段階で300時間。その間に攻略のための準備を整えた上で挑まなくてはならない。

 

『虚妄のサンクトゥム。空の色が変わったことや、兼ねてより観測されていた超高濃度エネルギー体の正体もこれとみて間違いないわ』

『ありがとうございます。そしてこれはセイアちゃん……いえ、ティーパーティーとシスターフッドが協力し、古書館から発見したデータです。セイアちゃんは言っていました。今起こっている出来事は、色彩と呼ばれる存在が我々の世界に足を踏み入れたが故に引き起こされた現象だと』

(色彩……)

 

ハナコが口にしたその言葉は、クズノハの下に向かった際にセイアから聞いたことがある。しかし、色彩について詳細を聞いていなかったモルフォは、ここで初めてそれが危険なものであることを知ることになる。

 

『シスターフッドにも、それについて記していた古書がありました。あれは人々を狂気に陥れる光であるとも』

「……狂気?なんとも抽象的な……」

「残念だけど事実よ。あれからは人の精神を錯乱させる信号が出ている。今はまだ塔の周囲で済んでいるけど……塔のエネルギーは約300時間後に臨界点に到達。そうなれば最終的にキヴォトス全域に虚妄のサンクトゥムが出現することになるでしょうね」

 

もう少しちゃんとした情報はないのかというアコの困惑気味な発言に対し、リオが明確な調査結果を提示して納得させる。あの光に触れた者は人格と意識に変化が起こってしまうのだという。

 

『……そんなこと、本当に起こるの?そんなのまるで終末の預言みたいな……』

『少なくとも……ミレニアムではそういう予測が出たわ』

 

虚妄のサンクトゥムがキヴォトス中に出現する様子が想像しきれないのだろう、カヨコも半信半疑といった様子でリオと資料を交互に見返す。しかし先生はそれは真実であることを受け止めつつ、会議の直前にセイアと確認した予知夢について思い出していた。

 

(あの不吉な塔は悲鳴を上げるように鳴動し、この世界を少しずつ削り取って、世界の破片を何かに被せていくと言っていた。削られた世界の欠片が嵐のように吹き荒れる中で黒い光が天から舞い降りて、世界が終焉に傾いていく。その果てにキヴォトスの全てが崩壊し、全てが消えてしまう……)

 

おそらくそれが、色彩の力によるものなのだろう。セイアも色彩の力に侵食されかけ、予知夢の力を手放すことでそれを回避するという一手を強いられたのだ。黒服の言っていたことが事実であるとしたら、おそらくはシロコも。それであれば、色彩に触れた人を元に戻す方法も探さなければならない。

 

『……色彩に触れた人を元に戻す方法、ですか』

『うん、ニヤ……クズノハって人のことを知らないかな?』

『にゃはは~、クズノハですか?いやぁ、ここでその名を聞くとは思いませんでしたが……成程。リモートでもいいから参加してほしいと言ったのはこれが理由ですかね?先生』

『話せないかな?』

『込み入った事情がありまして……とはいえ、重要なことのようですので……後で二人で話をするということにしましょう』

『わかった、ありがとうニヤ』

『いえいえ~』

 

百鬼夜行の預言者と自らを名乗った少女、クズノハ。彼女の事についてはこの場で詳しく語ることではない、ということもあるのだろう。とにかく後で教えてもらえることに感謝しつつ、先生はリンに本題に戻ってもいいことを伝える。

 

『纏めますと、虚妄のサンクトゥムが臨界点を迎える前に破壊します。とはいえ、タイムリミットギリギリで破壊というわけにはいきません』

『ええ、時間をかければかけるほど、虚妄のサンクトゥムはその力を十全に扱うためのエネルギーを蓄えることになるわ。準備を疎かにしては当然いけないけれど、だからといって余裕を取ることはできない。タイムリミットは300時間なんかじゃない、エネルギーが溜まることによる変化と状況の悪化を要すればもっと短くなると思ってほしいわ』

『虚妄のサンクトゥムは計六ヶ所……アビドス砂漠、D.U.郊外の遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市、そしてD.U.の中心地点に存在しています』

 

出現した虚妄のサンクトゥムの居場所を改めてリストアップしていく。この中で一番エネルギー体が大きいD.U.の中心地点を除く五つの地点を破壊する必要があるのだが。

 

『残念ですが、そう簡単にはいかないようですよ』

『……ヒマリ?何かわかったのかしら』

『ええ、面白いものが確認されました。虚妄のサンクトゥムの守護者とも言うべき存在でしょうか……過去にキヴォトスに出現した奇怪な現象の全てがそこに凝縮されているのですよ』

 

そこで突然割り込んできたのはヒマリだった。会議室にホログラムを出現させ、彼女は複数の映像を見せてくる。そこには、ヒエロニムスを始めとした、強力な敵が虚妄のサンクトゥムを守るように現れた姿が映っていた。

 

『……つまり、この守護者を倒せば虚妄のサンクトゥムを破壊できるってことだね』

『そうなりますね』

 

すぐに準備を行い、六つのエリアを同時攻撃する。各学園で協力して行う連合作戦として話を進める必要がありそうだ。と、ここでモモカが待ったをかけてくる。

 

『皆、一旦落ち着いてよ~。やる気があるのはわかるけどさ、この同時攻撃をするなら、各自治区の市民や生徒の避難先を確保したり、自治区の治安維持もやらなきゃいけなくなるんだよ。守護者だけじゃなくて、襲撃の報告は各地から届いているんだからね』

『そうだね。だけど大丈夫だと思う』

『え?』

『皆に任せようと思うんだ。虚妄のサンクトゥムを破壊しに行く人達と、自治区を守り、皆を避難させる人達。それぞれの場所で皆頑張ってきているからね』

 

先生がそう口にすると、それに反応するように各地から自分達の自治区は任せてほしいという報告が上がってくる。それらを受け、サンクトゥム攻略作戦と共に各自治区の避難や防衛作戦も詰めていくことになる。そして、それらがまとまってきたところで、リンが先生を見る。

 

『全ての作戦は、シャーレの先生を中心に展開します。全自治区の防衛及び避難状況の把握。そしてサンクトゥムの攻略……全て先生の方で確認していただかなくてはなりませんが、大丈夫でしょうか?』

『うん、大丈夫。いけるよ』

 

そして、全員で時計をキヴォトスの標準時刻に合わせる。そして、タイムリミットが設定され―――

 

『それでは、これより……虚妄のサンクトゥム攻略作戦を始めます』

『「……」』

 

リンの一声と共に会議が終わり、作戦が始まることになる。それからすぐにリオと合流、そのままミレニアムへと戻る途中もじっと、作戦について考え込んでいたリオにアリスとケイは視線を向けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……クズノハさんが百鬼夜行に存在したことがない?」

『ああ。この話はクズノハに会った君にも伝えるべきことだと思ってね。先生から許可はもらってる』

 

ミレニアムに戻り、セイアから連絡を受けて他の誰かに聞かれることのない部屋に移動して話を聞いたモルフォ。そこでモルフォは、ニヤ達が先生と話していたクズノハについての内容を聞かされていた。

 

『クズノハは言ってみれば都市伝説のような生徒。彼女について残っている記録といえば、百鬼夜行連合学院が連合ではなく各々が自治区を持ち互いに憎しみ合っていた戦乱の時代に百花繚乱紛争調停委員会を設立し、百鬼夜行の紛争を調停したと言う逸話があるぐらいだ』

「百花繚乱……?」

『トリニティでいう正義実現委員会のような存在と思ってくれればいい。彼女に会えたのも百花繚乱の歴代委員長ぐらいらしくてな……そのせいか、ニヤ達も彼女達しか会うことができないのではないかとも言っていた』

「じゃあ今の委員長に聞けばいいのでは?」

 

色彩に触れた人たちを元に戻せるようにするためにクズノハと会いたい先生。だが、会える人間がいるのならその人物に取り次いでもらえばいいだけのはずだ。しかし、それを聞いたセイアは苦い表情を浮かべる。

 

『それができれば苦労はないんだがな……委員長の七稜アヤメと副委員長の御陵ナグサが行方知れず、委員会の活動も停止状態でかなりの時間が経っているときたものだ。そこでガス抜きの為に晄輪大祭に出させたようだが、そのせいで余計に辞める動きが加速しているとか……いや、今は関係ないな。それよりも、大事なのは現状クズノハを見つける手立てはないということだ……一応手がかりはある、とニヤは言っていたが……』

「待つしかないってことですか……シロコさんが色彩に攻撃されたのなら、どうにかする方法を見つけたいところですね……そのためにもまずは、虚妄のサンクトゥムをどうにかしましょう」

『ああ。それではまた後で』

 

クズノハに関連する人物として伝えられたとはいえ、残念ながら今のモルフォにできることはないようだ。ニヤの用意した策がどういうものかはわからないが、これが状況を好転させることを信じて今は待つしかない。窓の外の緋色の空を見上げながら、気合を入れ直すように拳を握りしめていると。

 

「……!?」

 

外壁を登ってきたかのように窓から、無名の守護者が顔を出す。咄嗟に銃を抜いたモルフォが無名の守護者を叩き落としてやろうと踏み込んだ瞬間、

 

「す、ストップ!ストップですモルフォ!!」

「よく見てください!それは奴らとは違います!!」

「!?」

 

部屋に飛び込んできたアリスとケイが声を張り上げる。無名の守護者に命中する寸前で止まったショットガンハンマーをゆっくりと引きながら、無名の守護者を見ると、D.U.で観測した個体とは異なり、その光が青色に灯っており、装甲には何故かミレニアムの校章が刻まれていた。そればかりか無名の守護者はモルフォを素通りして、数本の爪のような足で器用に歩いてアリスに近寄ると、アリスがそれを抱きかかえて安堵したように溜息を漏らす。

 

「……どうなってるの?」

「はい!アリスは召喚魔法を覚えました!!」

「……まさかアリス、ケイ……」

 

その様子を見てモルフォは確信する。アリスとケイは、リオと交渉して名も無き神々の王女の力、無名の守護者を使役する力を行使したのだと。それを証明するかのように、彼女達に抱えられた無名の守護者が、頭部を傾げながらモルフォを見つめるのだった。

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