転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
虚妄のサンクトゥムが出現したのはD.U.地区、アビドス砂漠、廃墟、廃墟化した遊園地、カタコンベ内のバシリカ、そしてエリドゥの近郊となっている。今はサンクトゥムから敵が現れることはないものの、それは他の地域の話。残念ながらエリドゥに関しては虚妄のサンクトゥムに一番近い場所にあるといってよく、しかもそこを守護するホドは出現して最初にエリドゥの地下に潜り込もうとしてきたのだ。幸い、地下から追い出した後は鎮座したまま動かないものの、定期的に襲撃が起こる激戦区となっていた。だが、その襲撃でミレニアム側の戦力低下は起こっていない。その理由は、
「……まあ、こんなものですか」
「……無名の守護者が味方になるとこんなに心強いとは思わなかったわ」
エリドゥで作業を行うリオの隣で鎮座するケイが全体的に丸みを帯びたり、イカつい雰囲気などがなく、どことなく敵らしさが減ったようなデザインになった無名の守護者達に指示を出していたからだ。D.U.地区にてプレナパテスの支配下におかれた無名の守護者との戦闘、そして絶えず出現する敵対勢力の存在から、アリスとケイは無名の守護者を使うことをリオに打診したのである。なお、このリデザインは敵と味方を混合しないようにという意図の下で行われた。
「……ただ、やっぱりあの手順は必要なのかしら」
「アリスはそれを望んでいます」
「……そう……まあ、一時の感情や不用意に使用されないようにするセーフティとしては合理的だけれど」
「……まあ、そうですね」
リオとしても、AMASなどである程度戦うことはできたとしても、それがいつまで持つかはわからない。であれば、疲れ知らずの無名の守護者を使う方が明らかに手っ取り早い。とはいえその決め手となったのは、無名の守護者を敵に使われる事、そして今の無名の守護者がアリスを、そして他の人々を襲う存在であると誤解されたくないとケイが憤ったことにあった。
「演算処理の方は問題ないかしら?」
「ええ、エリドゥのセキュリティも含めて現在は異常なし。とはいえホドは鎮座したままとはいえエリドゥのセキュリティを破ろうとしているようですが」
「以前あなたが調整したものをさらに強化したセキュリティ、非正規のやり方ではコユキにしか破れないものよ。いくら相手がデカグラマトンであったとしてもそう容易いことではないわ」
ケイのボディはスペアボディの方に移動しているが、名も無き神々の王女の力の使用が可能となった今、無名の守護者達を生み出し、操作するだけならケイでも可能となっている。唯一の問題はこの身体のスペックがアリスよりも低いことだが、そこはエリドゥという巨大な演算装置を使うことでカバーしているのだ。
「……アトラ・ハシースの箱舟を作ることができれば、虚妄のサンクトゥム諸共処理も視野に入るのですが……」
名も無き神々の王女が行使する最終兵器、アトラ・ハシースの箱舟。本来はキヴォトスをアーカイブ化するという未曽有の兵器だが、指向性を持たせれば虚妄のサンクトゥムだけを仕留めることも可能だろう。しかし、それは机上の空論でしかない。ケイから見ても未知の塊であり解析もしきれていない虚妄のサンクトゥムに干渉し、その結果アトラ・ハシースを奪われるという最悪の結果になる可能性も否定できない。
「さすがにそれはリスクが大きすぎるわ。プレナパテスはこのキヴォトスに存在していた無名の守護者、ユスティナ聖徒会、そればかりかヒマリとエイミが調査を続けていたデカグラマトンさえも手中に収めてしまってる。ヴェリタスやエンジニア部も虚妄のサンクトゥムの上辺だけしか調べられていないけど、あれにはまだ私達の知らない領域があるのは間違いないわ」
エリドゥには、ミレニアムから移動してきたセミナーやヴェリタスといった面々が訪れている。C&Cは作戦開始直前までミレニアムの方の防衛に入り、作戦時には廃墟にて正義実現委員会との共同作戦を開始することとなっている。そしてケイ以外のゲーム開発部はエンジニア部と共に戦力バランスの兼ね合いもあって遊園地の方へ向かうことになっており、現地で他の学校の生徒と合流することになっていた。
「避難の方は終わりました!ケイ、調子はどうですか?」
「アリス……はい、今は問題ありません。廃墟、ミレニアム、そしてエリドゥ……その全てが防衛されています。守護者であるデカグラマトンが動けばその限りではありませんが、雑兵程度でやられる程、私達の無名の守護者達は柔じゃない」
と、ここでアリス達が入ってくる。アリス達はミレニアムの自治区にいる人たちをシェルターへ避難誘導する作業を行っていたのだ。その作業も終わり、敵との戦闘などもなく無事にエリドゥまで戻ってきてくれた姿を見て、ケイも安堵したようにモニターに戦闘の様子を映し出す。そこには、ミレニアムの校章と青い光のレンズが特徴的な無名の守護者達が敵の猛攻を食い止めている光景があった。
「これで私達は遊園地の方に……だね」
「ウタハ先輩達と合流してから遊園地に行くんだよね?」
「うん、それであってるはずだよ。ただ、ユズちゃんがカギになるって言っていたけど……って、何でリオ会長が頭を抱えているんですか?」
「……いえ、なんでもないわ。あれも……一つの形なのでしょうし」
これでゲーム開発部がここでやることはもうない。後は出発するだけだと思ったところで、ミドリが何故か頭を抱えるリオの姿を見てしまう。この様子から見て、エンジニア部が何を用意しているのか知っているのだろう。一体何を作ったのか気になるところだが、それは実際に見て確かめるしかないだろう。モルフォ達は顔を見合わせると、エンジニア部と合流しにエリドゥの中の設備を使って最終調整を進めているウタハ達の所に向かうのだった。
★
「……廃墟の遊園地って、雰囲気出るね……」
「た、確かに……今は空も空だから余計にね……」
「……はい、こちらは到着しました、ノア先輩」
遊園地スランピアに辿り着いた分厚い装甲で守られたトラック。そのトラックの荷台には布をかぶせられた大きな何かがあり、敵の襲撃に備えて荷台に乗っていたゲーム開発部とヒビキ、コトリはやっと一息つく。ウタハがトラックを止めて既に先に来ている他の面々を確かめるように周囲を見渡している中、後方で六ヶ所全部からの連絡などを取りまとめているノアに報告を入れる。
『わかりました。廃墟の方でもC&Cと正義実現委員会の準備は整っています。まあ問題が一つありましたが……』
「問題?」
『ああ、モルフォちゃんは気にしないでください。もう解決したことですので』
ノアから、他のミレニアムの生徒が担当しているサンクトゥムの状況について知らされる。ケセド攻略にはデカグラマトンとの交戦経験のあるエイミも入っており、正義実現委員会とエイミがケセドが生み出す雑兵の相手を、本体をC&Cが叩くという形になったようだ。
「無名の守護者達は使えないのが痛いですね……」
『一応デザインは結構分かりやすくしているつもりですが、戦闘中にぱっと見せられてはどちらが敵か他の学園の方にはわからず誤射する可能性自体はありますからね……正義実現委員会の皆さんが混乱してしまいます』
「……というか名前が悪いんじゃない?どっちも無名の守護者なのがあれっていうか。こっちのはいっそミレニアムの守護者とか……あ、そうだ!千年王国の兵士とか!」
正義実現委員会の役回りを無名の守護者が賄えればツルギ達もケセドを叩く側に回れるのだが、そううまくはいかない。ミレニアムの攻略作戦に参加する面々はそこの識別が容易にできる程度には見慣れてきたが、他の学園にこれは味方ですよ、ロゴと光で見分けてくださいねと言われても急には無理な話であるので致し方ないところだろう。
『うーん……モモイちゃんの言っていることもわかるのですが、なんていうか語呂が……』
『ですがそれはいい案ですね。では以後、ケイが操る守護者達の名称は
『勝手に決めないで貰えませんか?……まあ、ネーミングは悪くありませんが……』
そんな中、モモイの提案を受けて通信に割り込んできたヒマリが名前を決定する。その行動に思わずケイが苦言を呈するも、区別という意味では悪い名前ではないようだ。
『……こほん。とにかく、現状どのサンクトゥムも問題はないわ。モルフォ達も気を付けてね』
「はい、ユウカ先輩もエリドゥの方はお願いします」
そして通信を切ると、モルフォは謎の積み荷を降ろすヒビキとコトリ、アリスに手を貸していく。リオが思うところがあるというこの積み荷。その正体は結局、モルフォ達にもまだ明かされていない。
「……そういえば、デカグラマトンって何なの?」
「……あー、そういえば全然聞いたことないかも……今回になって初めて聞いたし」
『おっと、そういえば他の守護者たちと一緒くたにしていたせいでそこの説明はおざなりになっていましたね。それでは説明しましょう』
「ヒマリ先輩に私の台詞が取られた……!」
ぽつりと零したユズとミドリの言葉を聞き、ヒマリが説明を始める。デカグラマトンとはヒマリとエイミが追っていた存在であり、今回交戦するケセドやホド、そしてアビドス砂漠で対策委員会や便利屋68が相対するというビナーがそれに該当、彼らはデカグラマトンの預言者という存在である。そのデカグラマトンの正体自体は廃墟に存在するただの自販機であり、それも消滅してしまったそうだが、その最大の特徴は他のAIを感化させ、預言者へと変化させることにあるという。
『……デカグラマトンの預言者はセフィラに呼応する合計11のパスに属しています。今回対峙するのはその内の三機……いずれも高い戦闘力を発揮していたので注意が必要でしょう……と、これはそちらにいる皆さんには関係のない話でしたね』
「説明ありがとうございます。ちなみに遊園地にいるという守護者についてですが……」
『守護者は二人一組です。それ以上の情報は現在存在していませんね……今回初めて観測されたケースです』
デカグラマトンについての説明はそこそこに、この遊園地にいる守護者について問いかける。しかしそれを聞いたヒマリは肩を竦めてしまう。
「そうですか……」
「!モルフォ、RABBIT小隊の皆さんです!」
「あ、本当だ。すみませんヒマリ先輩、もう切りますね」
『あら、もう切ってしまうんですか?ふふ、仕方ありませんね』
と、そうしている間にも積み荷を降ろし、RABBIT小隊の面々もこちらに近づいてきた。それを受けて通信を切ると、モルフォはミヤコ達に駆け寄っていく。
「ミヤコ、そっちは大丈夫だった?」
「ええ、不気味なぐらい静かだったおかげで何も問題はありません。おそらく、遊園地の中に入ってからが勝負になるでしょう」
「うーん……迂闊にドローンとか突っ込んで調べて飛び出てくるのも困るし……うまくいかないものだね。とりあえず空中支援の準備は進めておくよ~」
「私も……狙撃ポイントにそろそろ移動するね……」
RABBIT小隊と合流し、それぞれ準備を進めていく。特に前線に出ないミユとモエの役割も重要なところだ。RABBIT小隊の戦闘力はモルフォ達もよく知るところであり、心強い。となると、残る増援にも期待がかかるところだが―――
「それで、後もう一人来るって事だけど……まだなのかな」
「……ごめんなさい、今着いたわ」
「「「「ゲヘナの風紀委員長!?」」」」
そこに現れたのはなんと、空崎ヒナであった。彼女ほどの戦闘力を持つ人物が加入するならば鬼に金棒だろう。が、彼女の姿を見たRABBIT小隊が急に冷や汗を掻きながら後ずさってしまう。
「……その、なんで距離を取られるのかしら……」
「あ、いえ……過去の記憶が……」
「まあ、叩かれる原因自体はこっちにあるって今ならわかっているがな……」
「いやーでも雰囲気洒落になってなかったしあの時」
「……怖かった。まるで人をゴミのように見るみたいに冷たくて……」
「……色々あって冷静じゃなかったの。とりあえず殴れば解決しそうなときは何も考えないでやるときも時折あるから。あの時平常心で事に当たってなかったことは謝らせてもらうわ」
RABBIT小隊がデモをするために子ウサギ公園を占領したところに突然カチコミをかけて蹂躙してきたヒナ。名目上はシャーレの先生がいてシャーレの部員としてきた、ということになっているがその実態は手痛い敗北をした憂さ晴らしの面も残念ながら存在していた。そしてその印象はバッチリRABBIT小隊に記憶されてしまったようである。特にミユの言葉が効いた様子のヒナを見ながら、モルフォが慌てて口を開く。
「ま、まあその時のことは上辺しか聞けていないのでどうこうってのはあんまり言えないんですけど、とりあえず今は作戦の方に集中しましょう!それにその時の事も結局、仕方がなかったって奴じゃないです?」
「まあ、それはそうですが……そうですね。あのゲヘナの風紀委員長も来てくれるのであれば百人力でしょう」
「私の方もあなた達の力、期待させてもらうわ」
「よし、ユズ!こっちに来てくれ!」
「え?あ、はい!」
ここでウタハ達からユズが呼ばれ、ユズが外れて積み荷の方へと行く。そこでウタハ達と話を進めていく中、他のサンクトゥムでも攻略準備が遂に整う。作戦内容は単純、サンクトゥムの攻略ルートを確保し、守護者をタイミングを合わせて撃破、五つのサンクトゥムを破壊することで残る最後のサンクトゥム、つまりD.U.地区に存在するものを全員で破壊する手筈となっている。
『虚妄のサンクトゥム攻略作戦―――開始だよ!』
作戦を総括する先生の指示と共にユズを除くゲーム開発部、ミヤコ、サキ、ヒナがスランピアの内部へと突入する。遅れて、
『システム、オールグリーン!いつでもいけますよ!』
『花岡ユズ……アバンギャルド君、いきます!!』
その背後から何かが疾走してスランピアの中へと突っ込んでいく。それを見たヒナ、サキ、ミヤコは思わず立ち止まり、唖然となってしまう。
「……何、あれ」
「あっ、アバンギャルド君!?」
『そう!これぞアバンギャルド君Mk.3!かつて無残にも頭部を破壊されたオリジナル、Mk.1をリオ会長が修復、改修したのがMk.2でしたが、そこからユズ専用機としてカスタマイズしたのがこのMk.3!最大の特徴はなんとフレーム単位で入力できるユズの動体視力に合わせたコントローラーで操縦できる点です!』
「なんと!これは最強のゲーマー、UZQueen専用機なんですね!」
「UZQueen……?うっ」
「サキ、この人は何にダメージを受けているんですか……?」
「私が知るわけないだろ……」
それは、なんとユズが搭乗するコクピットを取り付けたアバンギャルド君であった。コクピット内にはなんとアケコンのようなコントローラーが置いてあり、それを使うことでユズは完璧な操縦をこなしていた。
『コトリ!私は運転する必要があるから説明はその辺でデータ解析の方をやってくれ!皆、私達はこのままミレニアムに戻って解析作業に戻る!健闘を祈るよ!』
『私達が抜けてる間は設備でどうにか賄ってるけど、今大事なのはマンパワーだからね』
モルフォ達がスランピアに入ったことに反応するように虚妄のサンクトゥムから大量の青黒い着ぐるみたちが現れる。見た目こそ纏ってるモヤみたいなものさえ除けば愛くるしくも見えるが、その実態は抵抗しなければ一体でも危険な相手だ。手加減は不要とばかりにヒナがマシンガンで全て薙ぎ払っていく。
「うわぁ、強い……」
「もうあの人一人でいいんじゃないかな」
『おっと、どんどん敵が湧いてくるよ!』
ヒナの圧倒的な戦闘力で薙ぎ払われていく着ぐるみたち。その中には無名の守護者も混ざり始めるが、それもヒナの相手にはならない。アバンギャルド君がヒナを越える射程の広さを活かして遠くの個体を蹴散らし、数を減らしたところでヒナが仕留めるという戦略で殆ど消費なしでサンクトゥムの守護者が鎮座する場所に辿り着く。
「……まさかほとんど消耗せずに来れるとはな」
「ええ、彼女の力は身に染みて理解していたつもりですが、ミレニアムの技術力もやはり……」
「……見た目は割とあれだけど、随分と強いのね……」
ヒナは当然として、アバンギャルド君とユズの活躍に舌を巻くRABBIT小隊とヒナ。ここの守護者は屋内におり、サンクトゥムに向かうにはそこを通過するしかない。そこは木造の床をした建物となっており、スポーツか何かをするためのスタジアムとして作られていたという。かつてスランピアが経営されていた時に、スポーツもできる施設として運用されていたことが伺える。
「……はい、わかりました。皆、他のサンクトゥムでも守護者との交戦準備が整ったみたいだよ」
「わかりました!ここからはパーティを二つに分けてのレイドバトルですね!」
「片方はここで残って増援を食い止める。残りは守護者を撃破し、守護者を撃破した後に合流してサンクトゥムを破壊する……で、いいんだよね?」
「うん、そのはずだよ」
モルフォも通信で他の四ヶ所でも準備が終わったことを確認する。モルフォとアリスの言葉を受けて出てきたモモイの言葉にミドリが頷く。そして、
『皆、準備はいい?それじゃ……守護者、攻略作戦開始!』
再びの先生の指示と共にモルフォ、アリス、ミヤコ、サキ、ヒナの五人が建物の中へと突入する。それに伴い、モモイ、ミドリ、ユズはここに残り、ミユやモエのサポートを受ける形で増援を食い止めることになる。
「ボスステージに到着しました!ボスは……」
「……あれでしょうか?しかし、一体だけ?」
警戒した様子で内部を見渡していると、ミヤコが部屋の奥にいる守護者を発見する。それは、大きなボールのようなものの上に立つネズミをモチーフとした、シロと呼ばれる着ぐるみであった。
「どうやらあれで間違いないようね……もう一体が気にはなるけれど、まずはあれを対処するわ」
「よし……先制攻撃をしよう!」
「いきます!―――光よ!!」
先手必勝とばかりにアリスがスーパーノヴァをシロへと放つ。しかし、シロはボールの上でジャンプし、その反動でボールを浮かせてそれでスーパーノヴァを受けると、なんとスーパーノヴァの一撃が弾かれてしまう。
「!?」
「スーパーノヴァが弾かれました!?」
「来るぞ!!」
さらにシロはボールをこちらへ向かって蹴り込んでくる。蹴り込まれたボールから逃れるために五人が散開、距離を取り、回り込みながらヒナがシロを攻撃し始める。しかし、守護者と言われるが故なのか耐久力も高いようで明確にその効果が出るには時間がかかるようだ。
「っ、あれは……爆弾です!」
さらにシロは周囲に無差別に爆弾を投げて攻撃する。狙って放たれる攻撃であれば予測も立てやすいが、無差別に投げられてしまえば、自分の方へ向かってこないなら問題ないが運悪く自分の方に飛んでしまえば相手の動きを読んで回避することもできず、厄介な攻撃となる。
「だが爆弾なら撃ち落とすだけだ!」
「爆弾の処理は私達が行います!お二人は攻撃を!」
「冷たい環境で揉まれ続けた私達を舐めるなよ!!」
「アリス、チャージを!」
「はい!」
だがそれは、着弾すればの話。ミヤコとサキが次々と爆弾を空中で撃ち抜き処理していく。そのおかげでヒナも爆弾を気にすることなくシロを攻撃できるようになるが、さすがにシロも鬱陶しいと思ったのか、それともアリスがスーパーノヴァのチャージを開始したのを見て、危機感を感じたのか、ボールを二つ出現させると、それでアリスとヒナを攻撃する。
「っ!」
「アリス、隙は私が作るよ!」
「はい!」
ボールをぶち抜いて攻撃しようと数発当てて、あのボールを破壊することは不可能だと判断したヒナが横に跳んで回避する。一方、アリスに向かって放たれたボールはモルフォがシールドで受け止める。衝撃が全身を襲うが、正面からではなくシールドに角度をつけて受け止めたおかげでモルフォが受ける衝撃は大きく殺されている。そのまま後ろへとボールを受け流すと、モルフォの脇からアリスが出て、フルチャージのスーパーノヴァの一撃がシロへ向かって放たれる。
「―――光になれ!!」
瞬間、閃光がシロを襲う。右半身が抉れて吹き飛んだシロが光と共に霧散し消滅していく。
「「……は?」」
「……恐ろしい威力ね」
「ボスを撃破しました!これで―――!?」
そのまさかの威力にミヤコとサキが唖然となり、ヒナも冷や汗を流しながら呟いていると、突然建物の天井が破壊され、その上からカラスのような嘴を生やした白髪の魔法少女が現れる。クロと呼ばれるそれは、黒い翼を腕のように扱って杖を持っており、着ぐるみのような姿が特徴的となっている。
『モルフォ、アリスちゃん、大丈夫!?なんか空からそっちに変なのが!』
「……成程、これで二体目ですか」
「第二フェーズという奴ですね!ユズ、安心してください!こちらは大丈夫です!」
続けて現れた守護者、クロに警戒していると、クロが杖を掲げる。すると、黒いカラスが次々と現れ五人を襲い始める。
「なっ!?」
「この!」
即座にそれの迎撃を行うミヤコとサキだったが、その速度が速く、数匹を取り逃してしまい、攻撃を喰らってしまう。その衝撃によって吹き飛ばされる二人。
「ミヤコ!サキ!」
「だ、大丈夫です……!」
「ぐっ……痛い一撃だが支障はない!」
モルフォとアリスもシールドとスーパーノヴァでそれぞれ受け止めているが、先ほどのボールほどじゃないにしてもかなりの衝撃がかかる。ヒナも何度も受け続けるのはまずいと判断したのかその攻撃を掻い潜るように走り回りながら確実にカラスを撃ち落としていく。
「ケイ程うまくは扱えませんが……今はこちらを使わせてもらいます!」
このままでは埒が明かないが、単発式の現在のスーパーノヴァではカラスに対してジリ貧だと判断し、アリスは普段ケイに使用を任せているガトリングモードに変更し、カラスたちを攻撃していく。狙いは甘くなるが、それでも弾をばら撒けばカラスの処理はある程度はうまくいく。個体さえ減れば、後はモルフォも叩き落とす余裕が出てくるため、一先ずカラスの方はどうにかなりそうだ。
「……くっ!?」
そんな中、クロはカラスを追加で召喚して四人を足止めすると、一番厄介なヒナに狙いを定め、高速の突進をお見舞いする。咄嗟に横っ飛びで転がってすれ違うように回避したヒナだったが、壁まで到達したクロはそのまま壁を蹴って反転し、再びヒナへと襲い掛かる。再び回避しすれ違いざまに攻撃しようとするも、カラスはヒナにも迫っているため、クロの猛攻を避ける隙を生み出すためにもそちらの対処に手を回さざるを得ない。
「これじゃ一手足りない!!」
「だったら……RABBIT4!」
『そういうと思って手は回してあるよ!RABBIT4!』
『―――!』
現状のままでは耐えるので精一杯。攻勢に出るための一押しを外部に要求する必要がある。そう判断し、モルフォが声を上げると、それを聞いたミヤコがすぐに指示を出す。直後、ミヤコの言葉から意図を理解したヒナがクロの突進を誘導、クロが自身が開けた穴の下を通過するように突進したその直後、一発の弾丸が空からクロに命中。
「!?」
その衝撃でバランスを崩したクロは壁に着地できず、そのまま突っ込んでしまい、壁に上半身が埋まってしまう。
「……成功した?」
『多分!』
屋根から顔を出したミユがクロの様子を確認しようとした直後、このチャンスを逃すまいと三人が銃をクロへと向けて、一斉射を開始する。次々と弾丸が無防備な下半身に叩きこまれ、ボロボロになっていく中、クロも必死に体を抜こうと暴れ始める。
「アリス!腕を破壊するよ!」
「はい!スーパーノヴァ、ハンマーモードです!!」
しかし、腕も兼ねている両羽の関節部分をモルフォとアリスがそれぞれ銃を振り上げて力づくで振り下ろして破壊してしまう。元々三人の攻撃で耐久性も減っていたおかげで無事、破壊することができ、それによって完全に抜けることが不可能となったこと、腕を失ったことでカラスを呼び出すこともできなくなったクロは、
「悪いけど、そろそろ時間が迫っているから終わりにさせてもらうわよ」
ヒナの強烈な弾幕を喰らい、そのまま消し飛んでしまう。直後、モルフォ達の耳に、各地で守護者達を撃退したという報告が次々と入ってくるのだった。