転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
モルフォ達がスランピアの守護者であるシロ&クロの攻略を完了し、他の四ヶ所のサンクトゥムの攻略も終わる。これで後はD.U.地区に存在する最後のサンクトゥムを破壊するだけとなっていた。
「……まさかエリドゥがここまでやられるなんて」
サンクトゥムの攻略が開始され、千年の守護者、AMASを中心とした部隊が編成され、セミナー、ヴェリタスが出陣。雑兵達を倒した後にホドを撃破するためにホドを吊り出し、エリドゥのバックアップも受けるために一旦退くことで優位に戦闘を進めていた。しかし、
「次があればエリドゥの外壁はもう持たないでしょうね」
戦闘の影響はかなり大きく、堅牢な城塞都市であったエリドゥの外壁にも大きくヒビがはいっていた。とはいえ、デカグラマトンの進行を防いだのは間違いなく事実であり、千年の守護者達が応急処置をしてはいるものの、破壊された箇所は大きく、修理も時間がかかる。
「一気に再構築することはできないのかしら?」
「条件さえ整えば可能ですが……正直虚妄のサンクトゥムが残っている時点で迂闊なことはしたくありません。不確定要素が大きすぎるので……そもそもこの場にアリスがいませんし。とはいえ、これで五本の虚妄のサンクトゥムは破壊されました。後は、D.U.地区に存在する最後のサンクトゥムを破壊するだけです」
「ええ―――!?」
エリドゥが受けた被害は決して小さくはないが人的被害は皆無。これで済んでよかったと安堵しながらAMASと千年の守護者達の手によって倒壊していく虚妄のサンクトゥムを見届けた次の瞬間。突如として警告音が鳴り響く。その音にリオとケイが驚いたように画面を確認すると、
「これは!?」
「破壊されたはずの虚妄のサンクトゥムが復活していく!?しかも、守護者まで―――!?」
なんと、破壊したはずの五本のサンクトゥムが復活したことが示されていた。それだけではない、それぞれのサンクトゥムを守る守護者まで復活しており、急いでエリドゥ近郊のカメラを確認すると、そこにはモノアイのカメラでこちらを見る、六本の機械の触手を伸ばす巨大な兵器、ホドの姿があった。
『リオ会長!?た、大変です!守護者が……!』
「ええ、こちらも観測しているわ。サンクトゥムを破壊しにいったAMASと連絡が取れなくなってしまったけれど、そっちはどうかしら」
「残念ながら」
復活したホドは、エリドゥを一瞬睨みつけたかと思うとそのまま突進してくる。それを外で見ていたチヒロ達も冷や汗を流しながらエリドゥを見渡す。
「まずい……今の備えじゃあれを止めることはできない……!」
「ええ!?どうすればいいんですか?」
「何か残ってないの?」
『ありますよ。エリドゥにはあれを置いたままでしょう』
『……確かにないわけではないわ。ただ……今回の戦いで使うことはないと思っていたから、調整に時間がかかる。それまで食い止められればいいんだけど。ケイ、今のあなたにあれを使わせるのは推奨できないのだけれど』
『問題ありません。それに―――当たらなければどうということはないんですよ』
「……ああ、あれね……でも、時間を稼ぐってそれができたら苦労しないんだけど……」
ハレが苦虫を噛み潰したような表情で近づいてくるホドを見る。その巨体を見上げながら、マキが頭を抱えてしまう。
「そもそもなんで復活するのさー!」
『D.U.地区に存在するサンクトゥムのエネルギー反応が消滅しています。おそらくあれは他のサンクトゥムのバックアップを担っていたのでしょう』
『それと並行して第六サンクトゥムの守護者が出現したことを確認できたわ。えっと……鳥?のような何かみたいだけれど……それよりも大事なのは、散らしていた戦力を結集することが不可能になったことよ。先生は問題ないと言っているようだからそちらは任せるしかないけれど……』
「……とにもかくにもこちらは私達でどうにかするしかなさそうですね……」
『では私は先生の方のサポートでもやりますか。少々面白……いえ、中々に活かせそうな現象を発見したので』
マキの疑問にリオとヒマリが答えてると、ユウカとノア、そしてその後ろからヒイヒイ言いながらコユキが走ってくる。視線を前方に向けると、エリドゥの外壁修復を行っていた守護者達がそれを放棄し、ホドへと攻撃を開始し始める。エリドゥからも砲撃などが行われるのだが、先代ホドとの戦いによる影響で防衛設備も破壊されたものが出てきており、その効力は先程よりも弱まってしまっている。
「……さすがに火力不足だね……」
「……待って、何かしようと―――」
『っ、ホドが何かを空に打ち上げました!回避を!!』
そのせいで、ホドに次の行動を許してしまった。ホドは塔のようなものを空へと打ち出すと、それが次々とエリドゥの地面に突き刺さっていく。幸い誰にも命中はしなかったが、次なる異変がエリドゥを襲う。
『……!?エリドゥの機能が麻痺していく……!?』
「え!?」
「っ、あの杭……インベイドピラーか!?」
『その可能性が高いでしょう。千年の守護者達は私の指揮系統で動いているので問題はありませんが、それでもエリドゥが動かせなくなるのは非常にまずい……そちらに回す手もない、どうにか破壊できませんか』
「やるしかなさそうですが、爆弾の類を誰か持っていますか?」
「残念だけど……」
ホドが突き刺した塔、インベイドピラー。それがエリドゥの機能を妨害してきているのだ。最初の戦いではその隙を与えなかったので問題なかったのだが、ここにきてその問題が発生してしまった。
「破壊するには、ピラーの周辺に穴を掘って地面から分離、そして焼き尽くすしかないようだね……」
「……きっついですね……ケセドの相手をしつつ、ピラーを破壊なんて。今の状態でギリギリですよ」
「それでもやるしかない……ただ、これだと都市開発レベルの土木工事が必要なんだよね……」
『エリドゥの機能さえ回復できれば地形変更機能を使ってピラーを引き抜けるから破壊だけ行えばよくなるわ。そういう意味でいえば作業が必要な本数は大分減ると思うけれど』
「……確かに全部撤去するよりは楽さ。それでもこの状況では致命的ではあるんだけど……」
どうにかしてピラーを破壊できないか四苦八苦しているユウカ達を見ながら、チヒロが溜息を吐く。そうしている間にもホドはじわじわと接近してきている。限界まで諦めるつもりはない。だが、このままでは。チヒロやリオの脳裏にその言葉が過ったその時だった。
「ハーハッハッハッハ!」
突如として響き渡る声。その声に作業を止めて全員が振り向くとそこには、
『お、温泉開発部!?なんでここに!?』
なんと温泉開発部の姿があった。生徒が外から入ってきていたこと自体はリオとケイも把握していたものの、生徒が入ってきたこと程度を気にする余裕もなかったのだ。
「当然、私達が来たのは温泉開発のためだ!」
『そんなの後にしてください!というかいるならピラーをぶっこ抜いてください!世界が終わったら温泉開発もへったくれもないんですよ!』
「うむ、わかっているとも!ここに来たのも全ては温泉に辿り着くため!そのためなら世界でも何でも救おうじゃないか!」
『……ところでなんでゲヘナの生徒がミレニアムまで来てくれたのかしら……』
「えーとねー、ヒナや風紀委員会がいるところとか、トリニティの人がいるところだと面倒だから?アビドスは温泉なさそうだからここに来た!」
「まあそれにミレニアムには我々と見知った仲の開発魂を共有する者達がいるからな!」
『……色々ツッコミたいですがピラーの撤去と処理をお願いします』
「もうやっているとも!」
もうこれ以上はツッコまないぞと言わんばかりに手伝ってもらおうとするケイ。しかし、そのつもりでも来ていたようで、既に温泉開発部はピラーの撤去、破壊作業を開始していた。普段から温泉開発をしているだけあってその手際はユウカ達よりの何倍も手慣れており、次々とピラーが引き抜かれ、破壊されていく。そして、
『機能が回復したわ!皆、ホドの相手を!』
遂にエリドゥの機能が回復。それによってチヒロ達の立つ地面が揺れていき、それに伴ってピラーが次々と引っこ抜かれて倒れていく。それに温泉開発部が群がっていき、ピラーが破壊されていくと共に残るエリドゥの機能も回復、遂に完全な機能を取り戻すと、間近まで迫っていたホドへ向けて攻撃を開始する。
「さあ、今度は奴を蹴散らそうではないか!」
「よーし、いくぞー!」
「もうこんな近くにー!?」
「こうなったらやるしかないわね……!」
ピラーの破壊を終え、ユウカ達も温泉開発部を加えて一気にホドへの攻撃を行っていく。ホドの攻撃を回避していきながら、温泉開発部が所有する爆弾などの威力も喰らっていき、装甲にヒビが入っていく。ノアやコユキ、チヒロ達もホドの攻撃に当たらないことを最優先にしながら、エリドゥに侵入してくるホドを攻撃していくと、
「―――喰らいなさい!!」
「!?」
「ケイ、それは……!」
突如として放たれたレーザーがホドの触手を根元から破壊する。驚いたようにヴェリタスとセミナーがレーザーが放たれた方角を見ると、そこにはケイがアビ・エシュフに乗り込んで駆けつけてきた姿があった。アビ・エシュフは本来トキが使用するパワードスーツなのだが、そのトキはケセドとの決戦の際に上空からヘリで他のC&Cと共に降下し、直接ケセドを叩くという役割を担っていた。そのせいでヘリの速度などを確保するためにアビ・エシュフを積ませることができず、エリドゥに保管されたままとなっていたのだ。それを思い出したケイが急遽戦力確保のために持ち出したのだ。
『エリドゥの調整は急ごしらえになるけど何とか終わらせたわ。でも何が起こるかわからない、気を付けて』
「ええ、わかっています。火力は任せてください!」
「私達はヒビが入っているところを狙っていきますよ!」
「わかった!すぐにこいつを倒してサンクトゥムを壊さないと!」
「我々は脚だ!あの脚を攻撃してスッ転ばせてやれ!」
千年の守護者達が取り付いて身動きを鈍らせたり、他の皆もケイのサポートをするように動き、ケイは着実に触手を破壊していく。ヒビが広がっている部分はガトリングで装甲を剥がしていき、装甲が剥がれ内部機構が丸見えになれば他の生徒達でも破壊が可能になっていく。そして少しずつ確実に解体するようにホドを追い詰めていき、遂に、
「―――これで、トドメです!!」
ケイが最大出力で放ったレーザーがホドのボロボロになった胸部装甲諸共貫き、大爆発を引き起こす。しかし、これで終わりではない。サンクトゥムが健在のままでは再びホドが現れるということになる。その前にサンクトゥムを破壊する。そのために、ユウカ達はサンクトゥムへ向かって全力疾走するのだった。
★
「……ふぅ」
『やりましたね、先生!』
全てのサンクトゥムを破壊し、やっと一息ついたと言わんばかりに先生が溜息を漏らす。アロナも嬉しそうな様子で、先生と共に各地の戦況を見ていた。
アビドスに出現した第一サンクトゥム。守護者、ビナー。対応したのは対策委員会と便利屋68。
廃墟に出現した第二サンクトゥム。守護者、ケセド。対応したのはC&C、正義実現委員会、そして援軍に駆け付けたチェリノ率いるレッドウィンター事務局。
廃墟化した遊園地スランピアに出現した第三サンクトゥム。守護者、シロ&クロ。対応したのはゲーム開発部、RABBIT小隊、そして空崎ヒナ。
カタコンベ内のバシリカに出現した第四サンクトゥム。守護者、ヒエロニムス。対応したのはアリウス分校、シスターフッド。
エリドゥ近郊に出現した第五サンクトゥム。守護者、ホド。対応したのはセミナー、ヴェリタス、ケイ、そして増援として駆け付けた温泉開発部。
そして第六サンクトゥム。D.U.地区に出現した守護者はペロロジラと呼ばれる巨大怪獣。第六サンクトゥム攻略に対応したのは、美食研究会、ハナコを除く補習授業部。
五本のサンクトゥムが再び破壊され、最後の、六本目の虚妄のサンクトゥムの破壊に乗り出す……と思われた矢先の出来事であった。第六サンクトゥムにエネルギーが集まり、その影響かペロロジラが突然巨大化。生徒達では対応できない状態に陥っていた。だが、この特異現象を逆に利用し、こちらも無機物を巨大化させて対応させるという奇策をヒマリが打ち出したことで状況は一変。先生が白羽の矢を立てたのは、キヴォトスでも名の売れたお騒がせテロリスト集団、無限回転寿司戦隊・カイテンジャー。彼らの所有するロボ、カイテンFXMk.∞を巨大化させ、ペロロジラを殴り倒すという特撮映画も真っ青な大戦闘を繰り広げてみせたのである。
「……!空が……!」
今回の戦いで裏方、そして各地の生徒達の統括として忙しなく動いていたリン、モモカ、アユムに通信越しに労いの言葉をかけながら、先生が空を見上げると、緋色の空は元の澄み渡る青色を取り戻していた。
『やりましたね!先生!』
「うん。シロコの行方とか、破壊された場所とか、どういう原因でこんなことが起こったのか、色々やらなきゃいけないことは多いけど……今は喜ぼう。お疲れ様、アロナ」
『はい!先生もお疲れ様です!』
もうずいぶんとこの色の空を見るのも久しぶりな気がする。この空を取り戻してくれたのは、サンクトゥムを攻略してくれた生徒達だけではない。彼女達が全力で戦えるように、それぞれの自治区を守ってくれた生徒達の存在がいたからだ。このD.U.地区だって、ヴァルキューレだけではない、学園に所属していない不良の生徒達もこの世界を守るために尽力してくれたのだ。全員が力を合わせてやっと掴み取った勝利に、先生の顔に疲れと共に笑みが浮かぶ。
「よし!これで―――」
だが、その先の言葉は紡がれることはなかった。何故なら先生の背後から何かが開かれるような音と共に、一人の少女が現れたから。
「……シロ……コ……?」
黒いドレスを着て、髪を伸ばしたその少女は、砂狼シロコに似ていた。しかし、身長もシロコより高く、成長しているように見える。何よりそのヘイローが異質で、黒く染まっていた。
「……先生、ここまで来たんだ。流石だね。でも、未来を変えることはできない。キヴォトスが終焉を迎えることは、決まっている」
シロコに敵対心といったものはない。ただ、世間話をしにきたかのような、そんな穏やかな雰囲気すら感じる。しかし、それはシロコが今口にしたようにキヴォトスはどうやっても滅ぶという不変の未来を信じているからなのだろう。多少それが先延ばしになるとしても終着点は変わらない。だからこそ生まれる余裕の表れなのだ。
「待って。シロコ、君は本当は……」
「違う」
「……!」
先生の知るシロコがこんなことを言うわけがない。だとするなら考えられるのは色彩だと。色彩の力でシロコは操られていると思っていた。しかし、その先生の質問を予想していたのかシロコは即座にそれを否定する。
「私は、色彩に操られてなんかいない。違うよ、先生」
そう言い、少しだけ悲し気な表情を浮かばせると、はっきりとシロコは告げる。
「これは、私自身の本質。この世界を定められた未来へと導く……その役割を私が担当しただけ。色彩はその手段の一つに過ぎない……いや、むしろ私の方が色彩を利用しているのかも」
「……!」
「私の役割は、全ての命を別の場所へ導くこと。これは、砂狼シロコが、この世界に存在した時点で確定した未来。それは、あの子も同じ」
「……あの子……?」
「定められた運命を変えることはできない。それが、この世界のルール。だけど―――」
ここで一旦言葉を区切る。そしてシロコは先生の目を見る。先生の知るシロコとは違い、どこか虚ろで、絶望に満ちた目。だが、その奥で少しだけ光が宿っているのが見えた。
「でも、私は先生を傷つけたくない。だから、キヴォトスからいなくなってほしい。そうすれば、先生に銃を向けなくて済む……私達は、先生にこのキヴォトスから出ていってほしい」
「シロコ……」
「……先生の最期を見送るのも、きっと私に与えられた本質なんだと思う。いつ、その時が来たとしても、私は迷わないよ。だから……」
このままキヴォトスに残るなら自分は先生を殺す。そうなる前に出ていってほしい。シロコの優しさが込められた言葉。しかし、同時に先生は、シロコの言うあの子が誰なのかという疑問が湧き上がってくる。このキヴォトスで行方知れずとなっている生徒はシロコ以外にいない。無論、行方不明の生徒、というだけなら何人かいるのだが、そのいずれも、まだ先生と面識がないのだ。つまり、シロコのように先生を気遣う言葉を投げかけられるかというと疑問が生まれてしまう。
「―――先生!現在、キヴォトス全域でエネルギー反応が再び検知され……!?」
そんな時だった。リンが慌てた様子でシャーレのオフィスへと入ってきたのは。そしてシロコの姿を見て、その異様な雰囲気を感じたのだろう、咄嗟に銃を引き抜いてシロコを撃つ。
「リン!?」
「え!?今リン先輩が撃ったの!?」
「し、侵入者です!い、今、応援を要請しました……!」
遅れてモモカ、アユムが入ってくる。アユムの応援要請、それを聞いて、さらになだれ込むようにシャーレに残ってサンクトゥム攻略作戦に尽力していたオペレーター陣、アヤネらも入ってくる。
「……え?し、シロコ先輩……?」
アヤネは入ってすぐに変わり果てた姿をしているシロコに気付く。シロコは左手で受け止め、握っていたリンが放った弾丸を床に落としながらアヤネを見ると、その場から背を向ける。
「どこに行くんですかシロコ先輩!皆待ってるんですよ!ホシノ先輩も、ノノミ先輩も、セリカちゃんも!!アビドスで皆待ってるんです!どうして―――」
「……皆?」
「そうですよ!?私達は五人揃って対策委員会じゃないですか!なのに……」
「……
「……え?」
五人しか。一体何のことなのか。そもそも対策委員会は最初から五人だ。百歩譲って、去年の事を言っているなら三人ということになるのだろうが、もしそうなら五人「しか」なんて言い方はしない。今度はアヤネの方が困惑し黙り込む番であった。その言葉を聞いたシロコは、一瞬溜息を吐き、何かを察したような表情を見せると、
「ああ―――この世界に、ユメ先輩とモルフォはいないんだ」
「……モルフォちゃん?なんでモルフォちゃんの名前が……そしてユメ?一体誰の……」
モルフォの名が突然出されたことでその場にいた全員が固まってしまう。何故ミレニアムの生徒である彼女の名がシロコの口から出てくるのか。彼女ならスランピアで戦闘を繰り広げているというのに。いや、そもそもユメという人物は一体何なのか。自分達の知らないことを口にするシロコにアヤネが混乱していると、シロコはもう話すことはないと言わんばかりにワームホールのような異空間の穴を出現させると、その中へと消えていく。
「待って、シロコ!」
「っ!?お待ちください先生!彼女を追っては―――」
慌てて我に戻ったリンが先生を制止するも、先生はそのままワームホールへと飛び込んでしまう。その先にあったのは、白い光の床と、黒い地平線が広がる謎の空間。そこに辿り着いた先生が顔を上げると、そこには謎の人物がいた。
「!?」
包帯に巻かれ、肉が全て削ぎ落されたような、皮と骨しか残ってなさそうな細長い手を見せる謎の人物。白と赤の二色で作られた、異形のローブのようなオブジェ。それに身を包んだその人物こそが、おそらく―――
「あなたが、色彩の嚮導者……えっ!?」
この人物こそが黒服が言っていた色彩の嚮導者、即ちプレナパテスなのだろう。まだそうと目の前の人物は頷いたわけではないが確信を持ったその時だった。先生は気付く。プレナパテスのすぐ近くに、小さな光のようなものが浮かんでおり、その上に色こそ青色に変色しているものの、見覚えのある形状のヘイローが浮かんでいることに。蝶のマーカーを円で取り囲んだようなその形状は―――
「うわっ!?」
直後。シロコが光に対して頷き、先生に近づいたかと思うと身体を軽々と持ち上げてワームホールの外へと放り投げる。外へ投げられた先生がシャーレのオフィスで思い切り背中を地面に打ち付ける。痛みに呻きながらもどうにか体を起こした先生に、リンやアヤネたちが駆け寄ってくる。
「先生!大丈夫ですか!?」
「せ、先生……シロコ先輩はいったい……それに、なんでモルフォちゃんが……」
「わからない……だけど、あれはもしかしたら……なら、まずはモルフォが無事かどうか確かめないと……!」
先生が顔を顰めながらワームホールの方を見ると、既にそれは消えていた。虚妄のサンクトゥムを攻略し、新たに湧き上がった様々な疑問。だがまずは、モルフォの無事を確かめようと、先生はスランピアにいるモルフォに連絡を取るのだった。