転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
『……これが、あのアトラ・ハシースの箱舟が私達の知るものと全く同じ機能を有していると仮定した場合におけるスペックです』
「……成程。予想以上の代物ね」
夜中、ウトナピシュティムの本船についての解析のある程度の区切りがついたタイミング。リオはケイからアトラ・ハシースの箱舟に関する詳細を聞いていた。
「……しかし、ウトナピシュティムの本船に名も無き神々の王女を撃破し得る力があるなんて……」
『信じられませんか?』
「……そういうわけではないわ。現にウトナピシュティムの本船はアトラ・ハシースの箱舟が展開する多次元バリアを攻略することに成功しているのだから。アトラ・ハシースの箱舟が持つ絶対的な防衛システムを打ち破れるのは―――」
『ええ、多次元バリアは突破できます。では、どうやって名も無き神々の王女を、アリスをウトナピシュティムの本船は破壊するというのでしょうか?もっと言いましょう。仮に王女を破壊できたところで、残る彼女の創り出した箱舟はどうなるというのでしょうか?』
『……そのままになるでしょうね。ウトナピシュティムの本船に武装はありませんから』
「武装がない……まさか、ウトナピシュティムの本船は未完成?」
『それは違います。この船はこれで完成ですよ。武装の追加という拡張性はありますが、それはまた別の話です』
会話の中から、リオはそれらの情報からウトナピシュティムの本船が未完成であるかと推測するが、ケイはそうではないと告げる。つまり、あの船はあれで完成ということなのだ。
「……多次元バリアを突破し、名も無き神々の王女を検知し攻撃プログラムを走らせる。それによってアトラ・ハシースの電子機能を王女諸共破壊し、ただの鉄屑へと変えるということ?」
『その通り。ウトナピシュティムの本船で突破に必要な演算は時間を考えれば一回しか行えないでしょう。その一回で多次元バリアを突破、そのままアトラ・ハシースに接し、懐から攻撃プログラムを行使し、全てを破壊する……それがこのウトナピシュティムの本船、対アトラ・ハシース及び王女のためだけに用意された特攻兵器ですよ。まあ……この船が完成しているからと言ってもアトラ・ハシースに通用するかはまた別の話ですが』
「多次元バリアを突破し、攻撃プログラムでアトラ・ハシースと王女を攻撃する。ロジックとしては合理的だと思うけれど」
しかし、これでは不十分だと言うケイ。ウトナピシュティムの本船としては確かにこれで問題はない。ただ、アトラ・ハシースの箱舟の方がその上を行っているだけなのだと。
「多次元バリアを展開できるということは、勿論、その軸を幾らでも弄れるし追加もできるということ。いわば二次元が三次元になるようなもの。平面世界の存在は立体世界を認識できないものです」
「!」
『……だとすると、ウトナピシュティムの本船だけでは突破することができないことになってしまいますが。こちらが計算する度に軸を調整し直されればこちらは突破できない。そして再計算には当然時間がかかります。少なくとも飛行中にそんなことをする時間は……』
『その通り』
ヒマリの指摘に同意するようにケイが頷く。そして、はっきりと彼女はそれを口にするのだった。
『今のままでは、飛んだところで中途半端に多次元解釈システムの計算を行い、部分的に同期した状態で突っ込んでいくため、船は間違いなく跡形もなく破壊される。或いは未知の次元に取り込まれ、我々は時空の狭間に全員放り出されるかもしれませんね』
★
早朝。ゲーム開発部が対策委員会と共にウトナピシュティムの本船に乗り込む。ゲーム開発部はケイの持つ知識をアテにされる可能性もあって、先生、オペレーター陣と共にブリッジで待機することになる。そのため、一旦メンバー全員で顔合わせをすることも兼ねて発進時に別室で待機することになる対策委員会と共にブリッジに向かうと、そこで目に飛び込んできたのは、
「……おお!?」
「凄いよヒビキちゃん!これがオペレーター衣装なんだね!」
「うへ~、アヤネちゃん可愛いねぇ」
「あはは……」
白を基調とし、半袖、もしくはノースリーブとロングスカートを一つにし、黒いネクタイや帽子などを統一したオペレーター用の衣装に身を包んだ九人のオペレーター陣であった。ユウカ、ヒマリ、アヤネ、ハナコ、アコ、カヨコ、リン、モモカ、アユム。この九人がウトナピシュティムの本船のオペレーターとして乗り込むことが最終的に決まった。その中で唯一、ロングコートを羽織らされたリン。彼女はこの船の船長という位置づけとなっていた。
「ふっ、渾身の力作だよ」
「それだけではありません!この衣装はなんと、着用者の脳波や脈拍を始めとしたコンディションを記録するだけではなく任務遂行をサポートする機能も搭載しているんです!防火・防爆・防水、Bluetooth、自爆機能など様々な機能が山盛りのスーパースーツなのです!」
「ちょっと待ってください!?自爆装置ってなんですか!?」
「うわわ!?」
どや顔で説明するコトリに思わずアコが掴みかかる。だがそれも無理もないだろう。この服に自爆装置がついていると聞いてヒマリ以外の着用者全員が思わず青ざめる。
「あなた私達を気絶させる気ですか!?」
「自爆装置は使われないから自爆装置なんです……まずまともに機能することはありませんし、過去の反省から着用者に可能な限りダメージが入らないように調整してますから!それに自爆は人命を救うんです!」
「何を言ってるんですかあなたは!?」
「……ところで、Bluetoothって何に使うの?」
「まあまあ、私達には時間が無いのですから。細かいことは気にしないで本題に移りましょう」
「はあ……そうですね」
アコに揺さぶられるコトリを横目に、リンが溜息を吐きながら軌道修正を行う。リンが咳ばらいをすると同時に場が静まり返り、アコもコトリを解放してリンの次の言葉を待つ。
「今から私達はウトナピシュティムの本船に乗り、キヴォトスの上空75,000メートルにあるアトラ・ハシースの箱舟に突入。箱舟を占領し、機能を無力化……そして、無事地上に戻らなくてはなりません。それでは点呼を取ります―――」
作戦内容を簡潔に伝え、点呼を取っていく。オペレーター陣について点呼を取ると、続けて地上で航空管制及び技術支援を担当する面々の名を呼ぶ。続けて、地上に残る面々として、カイザーの基地と設備を使ってサポートを行うのがヴェリタスとエンジニア部。そしてエリドゥからサポートを行うこととなっているのがリオ、そしてノアの判断でエリドゥに移されたコユキ。船に乗り込むオペレーター以外のメンバーとして、突入後の戦闘に備え、占領戦のサポートを行うのは対策委員会、ゲーム開発部となっている。
「……そして」
「?他にもいるんですか?」
「……皆さんの食事を担当する、ゲヘナ給食部の愛清フウカと……美食研究会」
「「「「「美食研究会!?」」」」」
そしてリンも少し視線を皆から逸らしながら美食研究会の名を口にする。それに驚いたのはモルフォ達だ。何故彼女達がここにいるのか。ゲヘナの人間で呼ばれたのはアコとカヨコだけで、アトラ・ハシースの知識で呼ばれたゲーム開発部やシロコ救出という目的のある対策委員会とは違い、全く呼ばれる理由もない。つまり、
「……自力でここを知って乗ってきた?」
『ふふ、その通りです。皆さんよろしくお願いしますね』
『いや、なんで私がここにいるの!?全然意味がわかんないんだけど!?』
モルフォの指摘に通信を通じて答えるハルナ。彼女の横ではエプロンを着た黒と水色のグラデーションの髪をした、角を二本生やした少女、フウカがどうしてこうなったと頭を抱えていた。そんなフウカにハルナは当然とばかりに笑いかけると、
『ふふ……そんなのは当然でしょう?一生に一度、口にできるかどうかの料理を食べるチャンスが目の前にあるからですわ。そう……宇宙で口にする食事という美味を求めて』
「というわけで今更降ろすこともできません。使うかどうかはわかりませんがトラックを持ち込んでくれた以上何かの役に立つかもしれませんし、戦える人員は多いに越したことはないでしょう」
ハルナの発言を途中で切り、通信を落とすとリンは淡々と説明する。宇宙食を食べたいという魂胆で乗り込んだところ残念だが、この船は解析の結果、宇宙まではいけないことは既に判明している。黒服は宇宙戦艦、などと言っていたが、あれはただの例えということなのだろう。言いたいことはあるが、こうして乗り込んできた以上下ろす暇もない。ならば戦力として美食研究会をこき使うことを決定したようだ。
「―――先生。この船の起動については、サンクトゥムタワーが使えない今、シッテムの箱を所有している先生だけが可能です」
「うん、任せて」
そして、一番大事な役目を担うのは先生、そしてアロナだ。ウトナピシュティムの本船を起動させるため、シッテムの箱を使う。アロナもそれは重々承知だ。しかし、それにリスクが伴うことを改めて実感し、昨日の夜にアロナと話したことを、目を閉じた先生は思い出していた。
『……先生。私の能力でこのオーパーツを起動させることは確かに可能です。ですが、このオーパーツに宿っている力は、シッテムの箱の所有者である先生に影響を及ぼしてしまいます……』
『―――大丈夫だよ』
『せ、先生の肉体は普通の人と変わりません……!銃弾一つで、危険な状況に陥るかもしれないんですよ!?』
『でも、アロナはいつも守ってくれたよね』
『で、でも……これは、今までとは違うんです。もう一度考え直してください、先生。どれだけの負担がかかるのか、私でさえ把握できていないんです。別の方法を模索しましょう、きっと何かが……』
アロナはいつになく必死で、泣きそうな表情を浮かべながら先生を説得しようとしていた。先生だって、別の安全で確実な方法があるなら当然そっちに行くつもりだ。しかし、今回はどれだけ時間をかけたところで、サンクトゥムタワーを元通り完全に直す、以外に方法はないのだろうと理解していた。
『……もし、それが本当にあるなら、あの時の黒服はちゃんと教えてくれていたはずだよ。少なくとも黒服ならそうする。それだけの覚悟をこちらは示した、その上でこの方法しか出なかったんだ。だから……私はそれを受け止める。大丈夫、アロナ。きっと何とかなるよ。だから、シロコを助けて、プレナパテスとの戦いに決着をつけて、謎も解いて、皆で帰ろう』
『……先生、どうしてそこまで』
『大人として。子供を守り、先生として生徒を守るため。そして大人の責任……先生の義務を果たすためだよ。そのために、どんな代償を支払うことになっても、私は生徒を助けに行くんだ』
アロナとの話を思い返した先生は、ゆっくりと目を開く。何かあったのかと不安そうな顔でこちらを見るリンに問題ないと笑いかけると、
「―――よし。それじゃあ、出発しよう」
先生がそう言うと、乗り込む生徒達が席に座り、シートベルトをつける。ここから上空に飛ぶとなれば相応のGがかかる。一度、75,000の高度まで急上昇し、そこから一直線に多次元バリアへと突っ込んでいくのだ。
「……皆さん、最初に言っておきます。この突入、かなりの恐怖体験を強いられることになると思いますが、我慢してください」
「……」
「?恐怖体験って……そんなのこの状況じゃ今更では」
船が動くかどうか、そんなタイミングで突然ヒマリが口にした不穏な言葉。それを聞いたオペレーター陣の視線が、こんな状況で不穏な事を言わないでくれとヒマリに突き刺さる。しかしヒマリは苦笑しながら肩を竦めるばかりで、通信の回線を開く。
「―――このプログラム、本当に信用していいんですね?」
『正直な所、五分といったところね。とはいえ……相手がアトラ・ハシースならば十分役に立つはずよ』
「……まあ、いいでしょう。伏せ札としては一応及第点としておきます」
『……そう。ヒマリ』
「……なんでしょうか」
『必ず帰ってきて』
「!?…………言われるまでもありません。このミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美しょっ」
先生がシッテムの箱を接続し、メインコントロールシステムが起動する。それと並行して各種チェックをこなしながら、リオと話をしていたヒマリが突然自分語りをし始めた瞬間。先生がウトナピシュティムの本船の発進号令を出したことで船が離陸、そのまま大空へと飛び出したことでガン!!と勢いよくモニターに顔をぶつけてしまう。突然の光景に挙動不審になりながらもリオは思わず映像を遮断して退散してしまう。
「ヒマリ先輩!?」
「うわーん!ヒマリ先輩が大ダメージです!!」
「あわわ……い、意識を失ってないですよね……?」
「ふ、ふふ……こ、これぐらいでこの超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私が倒れるなどと……思っていたら大間違いですよ……」
「……え、えっと大丈夫?かなり顔が赤いけど……」
「これもリオのせいです。あの女のせいです」
「リオ会長……なんて理不尽な……」
「あらあら」
ぶつけた衝撃だろうか、顔を赤くしユウカらから心配されつつも、多次元バリア突破のために必要な多次元解釈システムと呼ばれる機能を起動する。その瞬間、
「!!」
先生は衝撃を感じ取る。体が震え始め、意識も段々遠のき始める。リン達から心配の声をかけられるも、それを乗り物酔いと誤魔化してどうにか自分を保とうとしている中、遂にアトラ・ハシースの箱舟と同じ高度に到達。揺れこそ徐々に徐々に収まるものの、
「よーし、皆しっかり捕まって!マニュアル通りなら尋常じゃない速度が出るはずだからね!そして……その後が勝負だよ!一回限り!失敗すれば全滅、でも成功すれば……!」
モモカの声に、全員が頷くかどうかの時間すら取らず、アヤネがレバーに手をかける。
「いきます!最大出力……加速します!」
「さあ、オーパーツの性能とやら、見せてもらおうじゃな―――きゃあ!?」
急加速するウトナピシュティムの本船。その速度はすさまじく、強烈なGがかかり始める。それは、生徒達ですら表情を歪ませるほどのものだ。そんなものを受ける先生もまた、影響は大きい。いくらアロナの力があっても、ウトナピシュティムの本船から受ける影響も相まって、先生の意識が完全に途切れるのだった。
★
けたたましく鳴り響く警報。その音でも先生は意識をまだ取り戻していない。しかし、その間に状況は、最悪に陥っていた。
「こ、この警報は!?」
「多次元解釈システムにエラーが発生しました!」
「二つの船の状態が一致していません……!このまま衝突すれば!!」
「本戦の航行速度を減速します!くっ……やっぱり速度は緩くするべきでしたか……!?」
「いえ……そんなことをしては悟られます!しかし、やはりというべきか値を変えてきましたか……!」
アトラ・ハシースはケイの予想通り、その多次元バリアの値を変更してきたのだ。新たな軸を追加し、バリアを変化、変化したバリアにウトナピシュティムの本船が衝突すれば、跡形もなくバラバラになるだろう。その事実を、嫌でも認識させられてしまう。
「……本当にこうなってしまうとは」
「……ええ。今回の突入作戦は、まず失敗させる前提で動く必要があった。いきますよ、次元解釈システムのリセットです!」
「これも結構苦労して計算したんですけどね……!!」
しかし、オペレーター陣の顔に絶望の色はない。待っていましたと言わんばかりに各々が手を動かし始める。アコのぼやきを聞きながらも、何かを知っているのかとゲーム開発部はケイの顔を見る。
「ケイ?」
「アトラ・ハシースは新たな軸を追加し、さらに高位の次元に多次元バリアを位相させました。あれに対抗するには今ある多次元解釈システムが導き出した計算では不可能。そこで―――」
『エリドゥとミレニアム、そしてウトナピシュティムの本船が眠っていた施設にあったカイザーにしては随分と質のいい演算装置、その全てを使い、用意した計算式をそちらに送信するわ』
『全く……!全員であそこに行くにはこれしかないとはいえ、こんなバカな命の賭け方はこれっきりにしてほしいんだけど!』
『だけど、それだけの価値はあるんじゃないかな!チーちゃん!!』
さらにリオ、そしてチヒロとウタハの声が通信を通じて聞こえてくる。その通信の向こう側ではリオ、そしてヴェリタスとエンジニア部が必死に手を動かして多次元バリアの再解析と再計算を行うサポートをしているのがわかる。
「……アトラ・ハシースの情報は昨日、全員に共有されていたと思います。無論、こんなことにならなければ安全に行けたわけですが……まあ、当然そんな甘いことになるわけもなく」
「これもアトラ・ハシースが多次元バリアの値を変更できるという情報が共有されたおかげですね」
「……死中に活を求める、そう言えば聞こえはいいけどね」
ヒマリの言わんとしていることにハナコが即座に気付き、カヨコも冷や汗を流しながら手を動かし続ける。ここまでは全て作戦通りとはいえ、あまりにも常軌を逸していると言ってもいいだろう。相手が多次元バリアを変化させたのに合わせてこちらも再計算を行い、対応するという手段を取ったのだから。
「だからってこんな……!ちょっとでもミスが起これば、私達は全滅ですよ!?」
「……でも、それがあったとしても多分使えないんだと思います。そして、その作戦で誰かが犠牲にならないとあちらに辿り着けないのなら……シロコ先輩に顔向けなんてできません。だから、私はこの作戦に賭けます」
「勝つために、リスクを背負う必要がある。ハイリスクであるからこそ、そのリターンは大きい。少なくとも直前まで私達は一回の多次元解釈システムの計算であのバリアを突破しようとし、プレナパテス側はそれを見越したカウンターとして多次元バリアの調整を行った。そしてその目論見は成功しようとしている、今だからこそ!」
アコが全力で手と頭を動かしながら悪態を吐くも、その横で決死の表情を見せるアヤネ。彼女はアリスとケイのことを知っている。だからこそ、このウトナピシュティムの本船が持つ攻撃能力も知っているため、何となくだが今よりもリスクを廃して突入する方法を悟ったのだろう。それ故に、全力をこの作戦に注ぐと決めていた。
「突入まで、残り30秒……!!」
残り30秒。多次元バリア突入までのタイムリミットがアユムによって伝えられたことで全員の顔に少なくない汗が流れ始める。それでも、手を動かし続ける九人。通信の向こうではリオ達も同様の状態なのだろう。全員の力を結集し、着実に計算は行われていく。しかし、それでもまだ足りない。ほんの僅か、ほんの僅かだけ時間が、作業量が。
「残り20秒!!」
ゲーム開発部、そしてそれぞれの別室で待機している対策委員会と美食研究会+フウカも固唾を飲んで必死に作業を進める九人に希望を託す。しかし、まだ足りない。
「10秒!5……4……3……!」
「嘘、嘘、嘘―――」
「そんな、あと少し、後ちょっとなのに―――!!」
切羽詰まった叫びがオペレーター陣から漏れだす。しかし、彼女達がいくら騒いだ所で何も変わらない。現実は無常に、箱舟を多次元バリアへと接触させ、その内部へと突入させていく。そして―――
「……あれ?生き……てる……?」
突入の瞬間、思わず目を閉じたユウカが恐る恐るといった様子で目を開くと、そこには五体満足な自分の身体、そして、他の皆の姿があった。遅れて、他の皆も少し驚いたように自分や他の人達を見ている。アヤネがすぐにホシノ達の無事を確認し、カヨコが魂が抜け始めているフウカと安堵する美食研究会が無事であることを把握していると、
「……よかった、ギリギリで間に合ったみたいだね」
「「「先生!!」」」
先生がほっとした様子で起き上がってきていた。その手には、光を灯すシッテムの箱が握られており、その中でアロナは疲れたのか緊張の糸が切れたのか、脱力したように机の上に寝転がっていた。
『な、何とかギリギリで先生を目覚めさせることができました……!そして、多次元解釈システム、最後の一押しはこの、スーパーアロナちゃんです!!』
この一件が終わったらイチゴミルクを浴びるほど飲みたいとアロナは思いながら、多次元バリア突入寸前で意識を取り戻した先生を見る。多次元バリアの突破に喜びつつ、アトラ・ハシースの箱舟へ突入するため、オペレーター陣は再び、気力を漲らせるのだった。