転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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謡精(モルペウス)

 

「……一体、何が……!?」

 

アトラ・ハシースで起こった異変。A.R.O.N.Aもさすがの事態に困惑しているのか目を見開いており、その傍に浮かんでいた光も驚いたように震えている。少し前に救出されたばかりのシロコも、事情はわからないがこちらにとって都合のいい展開になりつつあることを感じているのだろう、にやりと笑ってもう一人のシロコを見ると、彼女の癪に障ったのか睨むような視線が突き刺さる。

 

「……ウトナピシュティムの本船が、アトラ・ハシースの箱舟に再構築されました。そして、アトラ・ハシースの箱舟は……」

『名も無き神々の王女の力を継ぐ勇者、天童アリスとケイのものです!!』

「アリス、ケイ!」

「……ケイちゃんが、この状況で生きている……!?」

 

ナラム・シンの玉座にアリスの声が響き渡り、二人のホログラムが出現する。アリスとケイ、二人の姿を見たモルフォが遂にやったかと声を上げると、怪訝そうな声を漏らす光に気付くことなく二人もそれに応えるように手を掲げる。

 

『先生、聞こえますか?こちらは問題なくなりました』

「ヒマリ!」

 

アリスとケイ、二人がこのアトラ・ハシースを掌握したことでナラム・シンの玉座への通信もできるようになったようだ。自分達の後ろで皆が頑張り、その結果が形となっている。それは、三人に勇気を与えてくれていた。が、だからといってオペレーター陣の仕事が終わったかというと全くそんなことはない。

 

『地上の方は虚妄のサンクトゥムが生成途中で機能停止、守護者こそいないものの敵の追加もなくなったわ。ただ、サンクトゥムそのものはある以上、地上戦力で破壊に向かうべきね』

「そちらはお願いします、リオ会長」

 

ブリッジの方では虚妄のサンクトゥムへの後始末に追われる地上と、A.R.O.N.Aの次なる一手を封じるための作戦準備が行われていた。

 

『じゃあ説明するよ。私達は何とかして相手の管制システムからのハッキングを対処した、だけど依然としてその中継地点は残ったまま」

『アトラ・ハシースの内部構造を解析してたおかげでその中継地点の場所はわかっている。中に先生達がいることや、私達の把握していないその他の要因による横やりと言った不確定要素が考えられる都合上、大きくアトラ・ハシースを弄ることはできない。だから、大きな再構築を行えない。基本的には手動でその中継地点を破壊する必要があるね』

「……そのために、東西のセクションに分かれて存在する解除装置を破壊し、最下層にある中継端末を守るセキュリティシステムを破壊する必要があるということですね」

『そちらはコユキにやってもらうわ』

『え、また私ですか!?』

 

チヒロ、ウタハの説明を踏まえ、作戦内容を説明していくハナコ。本来ならば面倒な手順を踏んで破壊しにいく必要があるのだが、ただのセキュリティならもう一度コユキに破壊してもらえばいい。しかし、

 

「問題は、その最下層に誰が行くか、では?端末を電子的に無力化しただけでは安心できません。東西の解除装置も同様です」

『であれば、私達にお任せください』

 

アコが問題点を指摘する。アトラ・ハシースの最下層に迅速に向かおうとしても、人の足ではやはり時間がかかってしまう。が、ここに一つだけ、その問題を解決してくれる存在がいる。それこそが、

 

「び、美食研究会!?」

『もう!なんでこんなことになるの!』

『私達はフウカさんを信じていますから、お願いしますね』

 

美食研究会とフウカであった。発端は美食研究会のいつもの衝動によるものではあるのだろう、だが、彼女達がフウカ毎トラックをこの船に積んでいたことで、幸運にも機動力が用意されたのだ。

 

「……ええい、もうこの状況で贅沢なんて言ってられません。お願いしますよフウカさん!あなただけが頼りです!」

『ああもうわかったから!やればいいんでしょやれば!私だって死にたくないし!!』

 

フウカの口から半ばヤケに近い叫びが上がる。しかし、これで最下層の方は問題なさそうだ。となれば、次に対処しなければならないのは、

 

「じゃあ次!左右の解除装置!」

「ホシノ先輩!一旦東の方に向かえますか!?」

『オッケー、先生達の方も結構ノってそうだし、こっちは足を掬われないようにしようかー』

「ヒマリ先輩!ユウカ!私達が西の解除装置に向かいます!」

「え!?だけど―――」

「アリスちゃんもケイちゃんも、モルフォちゃんも頑張ってるんだよ!だったら私達だって頑張らないと!」

「……私達に任せてほしい、です」

『アリスは向かってください。私はこのままここに残ります』

「ケイ……わかりました!行きましょう、皆!」

 

東西の解除装置。そちらはモルフォとケイを抜いたゲーム開発部、そして対策委員会が対処することになる。安全となったアトラ・ハシースの内部を三部隊が走り回る中、プレナパテスと対峙していたモルフォ達。完全にA.R.O.N.Aが後手に回り、もう一人のシロコにも動揺が走ったその瞬間。それを、先生とモルフォは見逃さなかった。

 

「モルフォ!」

「っ!」

 

シッテムの箱を手に、指示を出す。モルフォが全力でもう一人のシロコへと突っ込んでいくが、彼女は再びショットガンを取り出す。

 

「当たっちゃ駄目だ!」

「っ、無駄!これを避け切ることはできない!」

 

ショットガンを手にしたことで少しだけ落ち着いたのか、二発の弾丸がモルフォへと襲い掛かる。一発は避けられる。しかし二発目は。

 

(どうすれば避けられ……いや、違う!)

 

一発目を避ける態勢を取りながら、モルフォは考えていた。どうやってこれを掻い潜り、もう一人のシロコの懐へ潜り込むのか。だが、そのヒントは先生の言葉にあった。

 

(―――そうか!当たらなきゃいいんだ!)

「っ!?」

 

何かを閃いたモルフォが、シールドを何と横向きに構える。その先端をもう一人のシロコに向けたような姿。攻撃を受ける気が一切ないその姿に困惑したのも一瞬。

 

「どんなに強い弾丸だって……受けなきゃダメージにはならない!!」

「―――嘘」

 

シールドの湾曲した表面を使って弾丸を受け流し、後方へと逸らしてしまう。そのままもう一人のシロコへ向かってシールドを突き刺すように突っ込んでいく。

 

「!?このっ!?」

「戻れ!」

 

咄嗟にその盾をハイキックで蹴り上げようとするシロコ。しかし、その右足がシールドの展開部分に触れようとしたその時、Bluetooth機能によってヘッドフォンと接続されたモルフォの声に反応し、盾が元の待機状態に戻ってしまう。それによってもう一人のシロコのハイキックは空を切ることとなり、無防備な姿を晒してしまう。

 

「え!?」

(やっぱり!敵は……私を知らない!!)

 

向こうの自分はアビドスの生徒だったという。ならば、こちらの自分とはおそらく戦闘スタイルがまるで違うのだろう。何せ自分の戦闘スタイルはエンジニア部が作ってくれた様々なハイテク装備が支えるタンクと司令塔を兼ねたものだからだ。相手を殴ることに優れたショットガンは勿論、このシールドだってミレニアムの、エンジニア部の伝手がなければ入手することすらできない。それ故に、その戦い方だって変化せざるを得ないはずだ。

 

「うおおおおおおお!!」

「う!?重……!?」

 

勢いよく右手で持ち上げ、振り下ろされたショットガンハンマー。右足を上げたままのもう一人のシロコがショットガンを捨ててアサルトライフルを両手で持って頭の上に掲げ、それを受け止める。しかし、これに驚愕したのはもう一人のシロコであった。あまりに一発の攻撃が重い。

 

「……いや……当たり前……!ホシノ先輩じゃないから力を引き出せないとはいえ、あれに耐えることができてるんだから、この世界のモルフォのパワーは……!?」

 

それに驚愕するシロコ。しかし、すぐにそれもそうだと理解する。シロコが使っている黒いショットガンは、特別な代物だ。それは、彼女が使用しているアサルトライフルのように変質したものであるからだ。彼女が使用した場合は本来の使用者ではない故にその力を引き出しきれないのか、一度に実弾二発しか撃てないものの、実弾だけでもその実力は折り紙付きだ。少なくとも、彼女の知るモルフォでは受け止めることすらできない。その認識のずれが、致命的な隙を生み出していた。

 

「今だシロコ!後ろから!」

「ん!!」

 

しかし、片足だけでは受け止めるのが精一杯なようであり、その背後から起き上がったシロコが銃口を向ける。が、シロコが放った弾丸は彼女の生み出したワームホールの中に吸い込まれてしまう。

 

「左右!!」

「「!!」」

 

が、それを待っていたとばかりに先生が声を張り上げる。モルフォはアサルトライフルに引っかかったままのショットガンハンマーをうまく動かして自分の体を振り子のように振り上げると、そのまま捻りを加えて威力を増した回し蹴りをもう一人のシロコの左わき腹へと放つ。同じタイミングでワームホールを避けるように右から回り込んだシロコが地面を蹴って跳びあがりながら全力の回し蹴りを放ち、両脇からもう一人のシロコに強烈な一撃が突き刺さる。

 

「―――がっ……!?」

 

たまらず、痛みを訴えるもう一人のシロコ。たまらずアサルトライフルにひっかけていたショットガンハンマーを解放し、反撃に転じようとするも、武器が解放されたモルフォが重い一撃を彼女の右肩に振り下ろす。

 

「うぐっ!?」

「はああああああ!!」

 

さらにシロコももう一人のシロコの脇腹に銃口を突きつけると、ゼロ距離で弾丸を叩き込んでいく。その衝撃でもう一人のシロコが吹き飛んでいく。彼女は肩を脇腹の痛みに顔を顰めながら吹き飛んでいった先にワームホールを生み出してその中に入り込む。そして距離を取るように現れた彼女を前に、モルフォとシロコが立ち塞がる構図になる。

 

「……この強さは、一体……」

「私一人じゃ、確かに勝てなかったかもね。でも……モルフォがいて、先生がいるから。私達なら、あなたに勝てる」

「一人じゃ駄目でも、二人なら、一緒に戦ってくれる皆がいるなら、私達は負けない……この危機だって、乗り越えられる。そうやってここまで来たんだ、だったら最後までやり遂げてみせるだけだよ」

「っ……」

 

もう一人のシロコが戸惑ったように呟きながらA.R.O.N.A.の方を見る。自分達のもう一つの勝利条件を達成することができるのは彼女だけだ。しかし、A.R.O.N.A.は首を横に振る。

 

「……このままでは、計画が失敗します」

 

A.R.O.N.A.の方でも、電子戦で勝つために全力を尽くしていたのだろう。しかし、いくらシッテムの箱のOSであっても、彼女には荷が重すぎたようだ。考えられる限りの手段を全て講じたが、それを上回ったのはこの世界であった。今や、顕現途中の虚妄のサンクトゥムはその機能を停止させられ、たまたま近くにあったことでC&Cと千年の守護者の手によって破壊されている事だろう。ウトナピシュティムの本船への接続を試みるも、対策委員会とゲーム開発部によって解除装置が破壊され、コユキによってこじ開けられた中継装置も美食研究会が破壊した。これにより、ウトナピシュティムの本船へのアクセスは封じられてしまい、既に掌握されたアトラ・ハシースへのアクセスもできなくなっている。最早、A.R.O.N.A.が打てる手はないに等しい。

 

「……なら、計画を進めるには全員殺すしかないんだね」

 

裏ではアトラ・ハシースの自爆シーケンスが進められていることだろう。これが決まれば、自分達の敗北は決定的なものとなる。それを回避するには、三人を葬らなければならない。向こうだって、先生達がいるこの状況で自爆シーケンスは発動させられないだろう。そして、この船に乗り込んだ各実働部隊も、最終的にこちらへ向かうことになる。つまり、まだ勝ちの目は幾らでも転がっている。

 

「言ったね。モルフォと一緒なら勝てるって。そうだね……モルフォと一緒なら、勝てる」

 

そう呟き、もう一人のシロコは傍に漂う光に目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「外が……!」

 

各々の健闘によって虚妄のサンクトゥムが再び破壊され、空が元の青色を取り戻す。完全にアトラ・ハシースを掌握したことにより、二つの船を包んでいた多次元バリアが消滅していき、完全な大空が広がっていく。そして今の制圧状況を踏まえれば、もう空が緋色になることもないだろう。先生達が負けなければ、の話ではあるが。

 

『ナラム・シンの玉座との中継を接続します』

 

ケイの声が聞こえ、ウトナピシュティムの本船のブリッジからナラム・シンの玉座の映像が広がる。

 

「!シロコ先輩……」

「モルフォ……!」

「三人とも、無事なようですね。しかし……」

「あれが、もう一人のシロコ……」

 

真っ先にシロコとモルフォの姿をアヤネとユウカがそれぞれ捉える。先生も含め、三人が無事でいることにヒマリが安堵している横で、カヨコがもう一人のシロコの姿を見る。

 

「……あれがプレナパテス。別時間軸の同一存在の先生……確かに彼が持っているあのタブレットは、シッテムの箱です」

「……じゃあ、本当に先生は……」

「……色彩、恐ろしいですね……」

 

プレナパテスの姿を見たリンが、苦々し気な表情を浮かべる。先生が、こんなことをするとはとても信じられなかったのだろう。だが、同時にそれを可能とする色彩の力にモモカとアユムも改めて恐ろしさを感じていた。

 

「……待ってください!あの光は、一体!?」

「光が……人の形に?って、嘘!?」

 

と、ハナコとアコがそれぞれ光に注目する。それは大きくなっていき、一人の少女の姿を作り出す。光で作られた青い蝶の羽。青と黒を基調とした髪飾り。アビドスの制服と両腕に蝶の羽をモチーフとした袖が合体したような衣装。腰まで伸ばされた髪。そんな、異質な彼女の姿に、ミレニアムの面々は目を見開く。

 

「あれが……モルフォ?」

「あの制服は、確かにアビドスの制服です……でも、向こうで一体何が……」

『……』

 

ナラム・シンの玉座。仕切り直しになり、膠着状態に陥った状態で現れた蝶の羽を生やした並行世界の自分。その姿を見て固まっていたのは他ならない、モルフォであった。

 

(……あの姿。あの羽……いや、そんな馬鹿な)

 

心当たりはある。具体的にはその形態についての心当たりだが。そう考えると先ほどまで小さな光となって浮かんでいたことも説明ができてしまう。そして、それに至ることが可能かどうか、と言われると、リオらが提示した可能性を拡大解釈してみればおそらく可能ではあるのだろうという推測も立てられる。おそらくはこういう面こそがかつて、ベアトリーチェがモルフォを狙った理由にも繋がるのだから。

 

(もし、もしあの姿の私が知っている通りの力を発揮するとしたら……!)

「モルフォ……なの?」

 

シロコが驚いたようにもう一人のモルフォに声をかける。それを聞いたモルフォはゆっくりと目を開いてシロコを見て儚げな笑みを浮かべると、もう一人のシロコの方を見る。

 

「先輩は反転した存在。謂わばシロコ*テラーとも言うべき存在。そして私は、身体を失った夢見モルフォ。でも、私はある能力に目覚めた。この能力で私は―――成すべきことを成しにきたよ」

 

そうシロコに告げ、そしてモルフォを見る。二人のモルフォは、二人のシロコ、二人の先生と同じようにその姿は異なっていた。しかし、ここまでの戦いを見るだけでわかる。この世界のモルフォも、多くの経験をしてきたのだろうということを。

 

「……この世界の私も、いろんな事を経験してきたんだね。大切なのは経験ではなく選択、とは言うけれど」

「?何故君がその言葉を―――」

「私は、大きな影響を世界にもたらす。夢は、それだけの力を秘めているから」

「……」

「あなたの行動はどう?この世界に良い影響を与え続けたと胸を張って言える?」

 

この世界の自分にそう語り掛けるもう一人のモルフォ。モルフォ自身はこの世界にどれだけの影響を与えたかと言われればその自覚がさほどあるわけではない。それでも、少しでも今を良くするために戦ってきたつもりだ。ミレニアムでも、アビドスでも、トリニティでも、アリウスでも、そしてこのアトラ・ハシースでも。

 

「そんなことはわからない。どう転ぶかなんて、その時にならないとわからないし、私達に未来を予想することはできても、できるのはその時、訪れた未来で足掻くことだけだから」

「……そう。あなたは先を知らないんだね。なら、あなたの行動が最悪を引き起こす引き金になることだってあり得る」

「……?」

「もし、あなたにその可能性があるのなら。この最悪を乗り越えて、この世界を守ってみせて。でも、シロコ先輩は負けない。私が負けさせない……私の力で―――」

「っ!?」

 

モルフォの言葉を彼女はどう受け取ったのだろうか。それはわからないが、これで聞きたいことは聞けたと言わんばかりに頷くと、青い羽が広げられる。次の瞬間、モルフォの背中から一瞬、呼応するようにオレンジ色の羽が出現し、それが消えていく。

 

「……今のは」

「ユニゾン……でも、あなたは私とは違う方向にモルペウスの力を昇華したからこれが限界なんだろうね。じゃあ、可能性を形にしよう、A.R.O.N.A.」

「わかりました」

 

A.R.O.N.A.に声をかける。もう一人のモルフォの言葉を聞いた彼女はその内容をすぐに理解したようで目を閉じる。すると、その背中に先程モルフォに生えかけたオレンジ色の羽が生え、それが鳥の翼のように変化し宙に浮き始める。

 

「え!?」

「なんでA.R.O.N.A.に……!?」

「可能性は……いくらでも存在している。私がアビドスやミレニアム以外にいた可能性……例えば私がこの力で百蓮を使いこなしている可能性も、私が連邦生徒会でSRTを総括していた世界も……トリニティで浦和ハナコと共に一つの派閥を率いる大きな存在になっている世界も。そして―――私がシッテムの箱のメインシステムを、歌姫に変えた世界も」

「……これより、モルフォの異能―――SONG OF DIVAのサポートシーケンスを開始します」

「SONG OF DIVA!?」

 

予想はしていた、あの羽を見て予想できるゲームが一つあったから。しかし、もし本当にその通りの力をモルペウスの力が再現してしまったというのなら、この力を使われては大変なことになる。そう直感し、モルフォは走り出す。

 

「止めて!二人に歌わせたら―――駄目!!」

「っ!」

 

シロコも即座に動いてモルフォを狙おうとする。しかし、そうはさせないと言わんばかりにシロコ*テラーがミニガンを取り出すと、その弾幕で二人を止めてしまう。

 

「くっ!」

 

その弾幕によって足止めされている間に、二人が口を開く。次の瞬間、もう一人のモルフォとA.R.O.N.A.の力の依代になるかのように、動かないプレナパテスから、青い蝶の羽とオレンジの鳥のような羽が出現し、遂に言葉が紡がれ始める。

 

「……この、歌は……?」

『以前、モルフォさんがシャーレに持ってきた音楽に少し似て……』

 

なんとなく聞き覚えのある歌詞。だが、それもそうだろう。二人が紡いでいる曲の名は、「藍の運命」。かつて、モルフォがシャーレに持ってきていたそれは、RoRoが歌うバージョンではあったが、ここで二人が紡いでいるのは、デュエットバージョンと呼ばれる、二人の歌姫が歌うバージョン。しかし、重要なのはそこではない。

 

「……なっ!?」

 

シロコ*テラーの全身が、歌に呼応するようにオーラに覆われていく。やはり間違いない。向こうの世界の自分が使っている力、SONG OF DIVAはモルフォがプレイしたことのあるゲーム、蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルトにて登場する能力だったはずだ。その能力は多岐にわたるのだが、ゲーム本編でシステムとして使われていた能力の用途としては、加護を与える相手のパワーアップや、死亡したキャラを復活させたり。つまり、今のシロコ*テラーはモルフォとA.R.O.N.A.の能力によってこれまでとは比べ物にならない程のパワーアップを果たしているということであり―――

 

「「―――!?」」

「シロコ!?モルフォ!?」

 

一瞬にして二人の目の前に迫ったシロコ*テラーはモルフォとシロコを吹き飛ばす。そのスピードに、先生が目を見開く中、シロコ*テラーは口元に笑みを浮かべるのだった。




Q.ゲーム知らないんだけどSONG OF DIVAって何?
A.作中登場人物、モルフォやシアン等が使用する、単純にバフをかけて、場合によってはリザレクションすらやってのける能力と思ってくだされば現状は問題ないです。詳しいことは後程ガンヴォルト回作るのでそちらに書くと思います。

歌詞を書かないのはガンヴォルトの曲は歌詞コードが登録されてない曲だからです。疑わしいのを書いて注意されたりするのもあれなので書きません。ですが藍の運命は名曲なので皆さんも是非お聞きください、ソロもデュエットもどちらもいい曲ですよ。
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