転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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軌跡(キズナ)

 

「―――がっ!?」

「うぐっ!!」

 

まるで動きが違う。そんな感想しか、先生には出てこなかった。パワーアップしたシロコ*テラーの力はそれだけ圧倒的で、一撃の威力も、速度も、何もかもが一段階上に至っていた。シロコは何発もの弾丸を受け、モルフォも弾丸こそシールドで防ぐものの、その後に迫る蹴りを回避できず、吹き飛ばされていく。二人からすれば反撃もままならず、先生の指示もシロコ*テラーの速度の前ではあまりに遅すぎる。

 

「……な!?それは!」

 

それだけではない。畳みかけるかのように、プレナパテスはシッテムの箱を持っていない右手に、黒く焼け焦げてボロボロになっていた大人のカードを取り出す。それを見て、咄嗟に先生もまた、大人のカードを取り出す。

 

「こうなったら、大人のカードで……!」

 

この状況で勝つには大人のカードを使うしかない。今まで、使わずにこれたのはきっと、このためにあるのだろうと。そう念じるかのように大人のカードを取り出した先生は、すぐに気付く。その大人のカードに、光の鎖のようなものが巻き付いて使えなくなっていることに。

 

「!?これは……はっ!?」

 

そして気付く。プレナパテスが持つ大人のカードにも光の鎖が巻き付いていることに。プレナパテスの右手が一瞬、驚いたように震えていたことから、プレナパテスにも予想外だったのだろう。だが、この現象は大人のカード同士が干渉しあって互いの行動を封じているということを先生は悟る。

 

『……シッテムの箱同士が相互干渉できるように、大人のカード同士も干渉しあってるんです!でもこれは……まさか、ここの先生は大人のカードを使わされなかったことで、他の使われた大人のカードに対する抑止力が……?』

 

頼みの綱であった大人のカードすら封印される。これに関してはプレナパテスの大人のカードと互いに封じ合っているという状況を鑑みれば、お互いに使用し合えば一度も大人のカードを使ったことのないこちらが後れを取るのは確実であるという予測が簡単に出てくるため、むしろありがたいといえるだろう。しかし、状況が改善したかどうかというとそれは全くそんなことはない。

 

「それよりも、あのモルフォとA.R.O.N.A.は一体……!?」

『……おそらく、恐れていた能力の使い方をあのモルフォはしてしまったのでしょうね』

「っ、リオ?」

 

二丁のアサルトライフルを両手に持ち、弾幕の密度を上げてくるシロコ*テラー。モルフォがシロコのカバーに入り、シールドで二人の身を守っているとその背後に回り込む。慌ててシロコが横に跳ぶも、左手に握っていたアサルトライフルをハンドガンに入れ替えたシロコ*テラーは先ほどのお返しと言わんばかりにシロコの脇腹を撃つ。そしてモルフォにはアサルトライフルを向けるも、モルフォは反射的にサマーソルトキックで銃口を蹴り上げて空中に逸らす。しかし、即座にシロコ*テラーの回し蹴りが叩き込まれて吹き飛ばされてしまう。

 

『ベアトリーチェ、いえゲマトリアがモルペウスと称していた彼女の能力は、キヴォトスの外の様々な娯楽を生み出してきた。だけど、その方向性をもし、軍事兵器などの方向に向けていたら、どうなっていたと思うかしら?』

「……ベアトリーチェが狙った理由、だね」

『ええ』

 

痛みに顔を顰めつつも、ネルにボコボコにされていた時はこれ以上に痛かった、ヘイローを破壊する爆弾を喰らって死にかけた時なんてこの時の比じゃないぐらい体がやばかったと奮起するように割り切って即座に起き上がり、シロコ*テラーへと仕掛けていく。シロコも歯を食いしばって起き上がり、二人がかりで迫るも、足元に出現させたワームホールの中に吸い込まれたシロコ*テラーが空中に現れると、地面に着地しながらミニガンによる連射で二人を攻撃。不意を打たれた二人がそのまま吹き飛ばされていく。

 

『彼女の能力は、本来ないものを生み出せるのよ。厳密には生み出す方法を得ることができる、といったところかしら。私は過去にその危険性を彼女に指摘してきた。おそらく、彼女の能力を前々から知っているヒマリや百合園セイアといった人たちも同様の可能性を認識しているはず。そして実際、ベアトリーチェがそこに目をつけてモルフォを手に入れようとしたことで、それが可能であるか否か、という懸念は現実のものとなった。おそらく、彼女こそがそれを現実にしてしまった世界線のモルフォ。ただしこの場合は、物ではなく新たな能力という形でそれを生み出してしまったのでしょうけれど……』

 

吹き飛ばされながらも地面を銃で殴りつけて体勢を整えて着地するモルフォ。随分と器用な真似をするともう一人のモルフォが驚きを浮かべながらも歌い続ける中、その隣で身体を起こしながらシロコがモルフォとA.R.O.N.A.に銃口を向ける。シロコ*テラー相手にこのまま戦っても勝ち目はほとんどない。ならばその強化を行っている二人を狙うべきだと判断したのだろう。しかし、

 

「っ!?弾がすり抜け―――ぐっ!?」

「何してるの!!」

 

一瞬モルフォの身体がブレたかと思うと、弾がモルフォの身体をすり抜けてしまう。しかも、その行為がシロコ*テラーの怒りに触れたのか、シロコの眼前に高速で跳んできたかと思うと勢いよく腹部を蹴りつけて吹き飛ばし、さらにショットガンを撃ち込もうとする。だが、その前に眼前に割り込んできたモルフォが一発目をシールドで、二発目をショットガンの銃身を使って逸らしていき、直撃を回避させる。が、そのせいで次の攻撃を避けられず、アサルトライフルの斉射を喰らってしまい、シロコと共に吹き飛んでしまう。

 

「うぐっ……モルフォ……!」

「大丈夫です……!くそ、やっぱり弾が当たっても痛いだけって頭ではわかってるけどいい気分じゃない……!!」

 

それでも即座に立ち上がる。ここで倒れていてはシロコ*テラーに即座に蹂躙されてしまう。ここで自分達が負けては先生もすぐにやられてしまう。今、先生が倒れていないのはシッテムの箱の力によるものだろうが、それだって何度も何度も攻撃を受ければ持つわけがない。他の皆がここに到着するまでどれほどの時間がかかるのかもわからないのだ。まだまだ余裕はできない。

 

「でも、まだ……まだだ!」

「……勝てないのに、まだ戦うんだ。諦めればすぐに楽になれるのに」

「勝てる可能性が少しでもあるなら、私達は諦めない……!」

「……まあ、理屈はわかるよ。アトラ・ハシースの箱舟は奪われた。後は私達を倒すだけ。ここまで追い詰めたんだからね。今は無理でも、ホシノ先輩達が来れば勝てる。そう思ってるんでしょう?だけど……皆がここに来ることはない」

「何を言って……」

『先生、大変です!敵が……今まで認識されていない個体です!』

 

シロコ*テラーの言葉を裏付けるように、アヤネから険しい声が届く。その声に先生が目を見開きながら状況を確認しようとすると、リンが即座にその内容を告げる。

 

『傘のような、謎の怪物たちが出現しました!銃弾が効いていません!でも、なんでこんな怪物が……!?』

『それに、こんなものがあったなら、なんで今まで……』

「……まだ、今のキヴォトスで生まれてないから。いや、もしかしたら似た怪異は生まれてるのかもしれないけど、私達が手に入れたこれは、奪い取った分しかもっていない。だから、状態の共存も合わせてこの世界ではあまり使いたくなかったけど……しょうがないよね。それにどうやら、このアトラ・ハシースの中でなら安定して運用できるみたいだし……不幸中の幸いってことだね」

「怪異……?」

 

怪異と呼ばれる怪物達。それに銃弾は通用せず、ゲーム開発部、対策委員会、美食研究会は足止めを喰らってしまっている。ここで時間を取られてしまうというのは、大きすぎる痛手だ。そのせいでモルフォとシロコは、二人だけで今のシロコ*テラーを相手するしかない。悔しそうに歯噛みするシロコ。モルフォも絶望してしまったのか、無言のまま俯くばかりだ。

 

「これでおしまい」

 

シロコ*テラーがモルフォの頭部にアサルトライフルを突きつける。そしてその引き金に指がかけられたその時だった。シロコ*テラーを見上げたモルフォの目にはまだ、彼女の耳元に走ったノイズのような音と共に諦めないという強い意思がもたらす光が宿っていた。

 

「っ……まだ諦めないんだ。なら、もう容赦はしない。あなた達が足掻くのなら―――」

 

シロコ*テラーが引き金を引く。しかし、それはモルフォに命中することはなく、モルフォはシロコ*テラーの懐に潜り込むと足払いをかける。

 

「!!」

 

バランスを崩したシロコ*テラーだったが地面にワームホールを作り、その中に入って再び空中に現れる。しかし、

 

「そこ!」

「な!?」

 

シロコ*テラーが現れた場所に向かって、モルフォが銃を突きつけていた。まるで、ワープする先を見切ったとしか思えない行動に、シロコ*テラーの目が見開かれる。直後、シロコの放った弾丸が、シロコ*テラーの左肩に突き刺さっていく。

 

「っ―――!!」

 

たまらず、もう一度仕切り直すために足元にワームホールを作り出し、その中に入り込んで逃げる。今の攻防に致命的な変化が生じたことを察し、A.R.O.N.A.ともう一人のモルフォが歌いながら先生を見ると、先生の方も何かを掴んだかのように冷や汗を浮かべながらも笑みを浮かべていた。

 

「二人とも、仕掛けてくるよ!」

「……」

 

ここにきて、プレナパテスもまずいと察したのだろう。先生と共にシッテムの箱を操作していく。プレナパテスは指先で画面を操作し、シロコ*テラーに指示を与えていく。地面に出現したワームホールから出現したシロコ*テラーの動きがガラっと変わる。これまでの多くの種類の武器を操り、容赦なく敵を叩き潰そうとする戦い方から一転、細かく、一手ずつこちらの行動を確実に潰してアドバンテージを取っていくような戦い方へと変わっていく。

 

「っ、何これ……!」

「……耐えますよ、シロコさん!」

「二人とも、迂闊に攻めれば付け込まれる!落ち着いて対応するんだ!」

 

それに対し、先生が出した指示は守りの指示。今は耐えて、この猛攻に対する逆転の一手を作り出そうということか。そんなものは無駄だと言わんばかりにシロコ*テラーは溜息を吐くと、二丁のアサルトライフルをそれぞれ手に持ち、激しく攻め立てる。モルフォがシールドを構えようとすればその防御先を誘導させるように弾を撃ち込み、シロコが銃を構えればその銃身や手を撃って攻撃を中断させる。次第にモルフォもシロコを自由にするためにではなく、時間を稼ぐように回避と防御に専念するシロコのカバーに入ることしかできなくなっていく。

 

「……もう、防戦一方だね。守ることしかできない」

 

シロコ*テラーの右のアサルトライフルから放たれた弾がシロコの手に吸い込まれそうになる。それがモルフォの突き出したショットガンの銃身で受け止められる。続けて左のアサルトライフルから放たれた弾が二人に襲い掛かろうとしたその時。その弾がシールドに阻まれる。

 

「!!」

 

その時。A.R.O.N.A.ははっきりと見ていた。モルフォが、シロコ*テラーが弾を撃つ前にシールドを先に置いていたことに。それだけではない、シロコ*テラーが最初に弾を撃つときも、モルフォは銃をカバーする場所に既に差し込んでいた。もう一人のモルフォは気付いていないようだが、彼女は間違いなく。シロコ*テラーに対応してきている。だが、ありえない。今のシロコ*テラーはキヴォトスの中でもトップクラスの実力者だ。彼女に対抗できる人物などそうはいない。

 

(一体どうやって……)

「―――!!」

 

そして、遂にその瞬間が訪れる。シロコ*テラーの猛攻をすべて読み切り、モルフォが防ぐ。そして、シロコの放った弾丸が遂にシロコ*テラーに突き刺さる。

 

「そんな……!」

「よし……!」

「やった!!」

 

ヘッドフォンをかけ直しながら、モルフォが不敵に笑う。シロコ*テラーもここで漸く、何かがおかしいことに気付いたのだろう。そもそも、ありえないのだ。先生とプレナパテスの指示にも大きく差はある。先生は大雑把な指示しか出していないのに対し、プレナパテスは細かく、確実な指示を出しているのだ。そして、それは間違いなく戦果を出しているはず。だというのに、それにどうやって向こうは対応しているのか。これは先生の指示によるものではない。

 

「このっ!」

 

ショットガンを取り出し、強引にモルフォを引き剥がそうとする。しかし、その二連射をモルフォはまるでどこから来るかわかっていたかのように避け切ると、一気に懐に潜り込む。だが、シロコ*テラーも即座にショットガンを手放してハンドガンを取り出して銃撃しようとした、その時。モルフォは地を蹴ってシロコ*テラーを飛び越える。

 

『―――着地に合わせて攻撃されます!』

「!?」

 

その時。モルフォのヘッドフォンから漏れた声に、シロコ*テラーの目が見開かれる。背中を向けて着地したモルフォに向かってシロコ*テラーがアサルトライフルを撃ち込もうとするのだが、後ろを見たままの状態で横に跳んでそれを回避。そして、

 

「うぐっ!?」

 

モルフォに一瞬でも気を取られている間にシロコの放った弾丸が体に命中し、その痛みに顔を顰めてしまう。

 

「……今の声、このアトラ・ハシースを……」

「……バレたか」

 

そう呟きを漏らすモルフォ。そう、モルフォがシロコ*テラーに対応することができた理由は単純。彼女はケイによるサポートを受けていたからだ。

 

『……ケイは以前、エリドゥを用いた未来予測シミュレーションを行っていました。今のケイならば、モルフォ、シロコの身体能力を元としたより高度なシミュレーションを可能とできる。何せここには、大量の演算装置がある……演算装置の質だけならばむしろあの時よりも上!』

『ケイがこちらに残ってすぐに、シミュレーションを開始していたわ。それにケイは二度、行動予測シミュレーションをしていた経験もある。それを、モルフォ達に合わせて調整することだってできるはずよ』

 

時間を稼いでいた最大の理由がこれだ。プレナパテスという変数が加わったシロコ*テラーの行動を完全に読み切り、予測するためにデータを集める必要があったのだ。

 

「―――未来がわかるってのも、案外悪い気分じゃないね!」

「っ!」

「いきましょう、シロコさん!反撃開始です!」

「ん!」

 

モルフォの発言を聞き、もう一人のモルフォの表情が大きく歪む。同時に、先生の指示が何故大雑把だったのか、その理由にも納得する。相手の行動パターンを完全に読み切れるケイの未来予測の方が、ずっと精度がいいからだ。先生はシッテムの箱によるバックアップを入れつつ、モルフォには大まかな方向性を、そしてここからは細かい指示はシロコに対して行えばいい。

 

「私は……負ける、わけには―――!!」

 

シロコ*テラーの狙いがシロコに向けられる。身体能力、実力の遅れを未来予測で補ってしまった今のモルフォを相手にするよりも、既に傷だらけで体力も消耗しているシロコを狙うのが合理的なのは間違いないだろう。だが、シロコを狙う、という動きもケイによって予測されてしまっていた。

 

「当たら、ない……!!」

 

アサルトライフルの銃弾はシールドで受け止められる。ショットガンによる攻撃は命中せず、受け流される。ハンドガンでは単純に火力が足りず、取り回しの問題で相手との距離が近くならないと使えない。ミニガンであればモルフォを留めることはできるが、シロコ*テラーの方も両手で扱わないといけない都合上、取り回しが大雑把になってしまい、その隙を突かれてしまう。完全に攻め手は潰され、モルフォの繋ぎを受け、先生の指示を受けたシロコが確実に攻撃を当ててくる。着実に、ダメージが入っていくシロコ*テラー。そのオーラも段々薄く、小さくなってきており、息もシロコ程ではないにしても荒くなり始めている。

 

「……」

 

シロコを見ながら、モルフォも呼吸を落ち着かせる。全身に痛みこそあるが、倦怠感などがない分、あの時よりはマシだ。体力もまだ残っている。まだまだ戦える。しかしシロコはダメージを受けすぎている。呼吸はモルフォ以上に荒くなっており、足元も若干ふらついている。これではいつまでそれが持つかはわからない。このまま続ければ勝てる、だがそれは、二人の体力が最後まで持てばの話だ。

 

「……ケイ」

『わかりました。先生にも、その旨を伝えます』

 

モルフォの言葉を聞いたケイが頷くと、シッテムの箱にメッセージを送る。そして、それを聞いた先生とアロナも、その作戦に全てを賭けることにする。

 

「シロコ!仕掛けるよ!」

「……ん!!」

「いきます!!」

 

シロコも、これが決着をつけるために必要なことなのだろうと判断し、今一度気力を振り絞るように頷く。モルフォと共に走り出す二人を見て、シロコ*テラーも彼女達が何かをしようとしていることに気付き、両手にアサルトライフルを握りしめ、弾を放ち始める。

 

「いって、モルフォ!」

 

そこにシロコが次々と弾を撃ち込んでいき、シロコ*テラーの行動を妨害する。そしてモルフォも弾を掻い潜るように走り出していく。姿勢を低くし、スライディングを交え、時には跳んでシロコ*テラーの攻撃を回避していく。

 

『―――三秒後に弾切れを起こします!』

「―――シロコ!」

 

シッテムの箱を通じて聞こえてきたケイの言葉を受け、シロコ*テラーの弾幕が半分止んだ瞬間を見計らうかのようにシロコも走り出す。リロードしている暇はないと判断、ワームホールを開く暇すら惜しいと直感したか、その場にアサルトライフルを手放して落とす。続けてシロコ*テラー本人のアサルトライフルも撃ち尽くし、それを懐にしまうと同時に次の銃を取り出す。

 

『ミニガンを取り出します!』

「モルフォ!シールドをシロコに!」

「はい!シロコさん!」

 

そこで、モルフォが待機状態に戻したシールドをシロコに投げ渡す。モルフォの横を走り抜けて前に出たシロコがシールドを突き出し、モルフォがシールドを遠隔操作で展開させたのと、シロコ*テラーが弾丸を放ったのは同時。ミニガンの弾がシールドに突き刺さる中、

 

「モルフォ!跳んで!!」

「はい!!」

 

モルフォはシロコの両肩に飛び乗ると、そのままシロコの肩からジャンプし、シロコ*テラーに迫る。シロコ*テラーは一瞬どう迎え撃つか迷うも、ここで選んだのはミニガンを捨てて後ろに一歩下がるというもの。シロコ*テラーの目の前の地面に落下の勢いと共に叩きつけられたショットガンハンマー。一歩間違えれば頭部を狙い撃っていたであろう一撃を回避すると共に決定的な隙を見つけたシロコ*テラー。だが、

 

「やあああああ!!」

 

シロコがシールドをフリスビーのように投擲する。それを体を捻って回避するシロコ*テラー。その直後。

 

『―――イグニッション!!』

「がっ!?」

 

ケイの声に反応し、指示を受けたシールドが爆発。その爆風によって押し出されたシロコ*テラーに向かってモルフォがショットガンハンマーを打ち付けた勢いによる反発を利用する形で振り上げる。顎に向かって振り上げられたその攻撃に対し、シロコ*テラーもギリギリで反応、顔を後ろに逸らして回避してみせる。シロコ*テラーの目の前に見える銃身。だが、シロコとモルフォの猛攻も、ギリギリではあり、一発貰ってしまったものの、どうにか耐えきった。今ならば当たるとショットガンを取り出した、その時だった。

 

「―――!?」

 

モルフォとA.R.O.N.A.の歌声すらかき消す爆音がシロコ*テラーの耳から脳、そして全身に響き渡る。その不快な、そして脳を揺さぶるような音に思わずシロコ*テラーの表情が歪む。

 

「何、こ……」

 

モルフォが、さらにショットガンの上のトリガーを引く。次の瞬間、銃口から先程シロコ*テラーが聞いたのと同じ爆音が響く。

 

「ま、た―――!?」

 

さらにもう一度。何回も、何回もモルフォは一心不乱にトリガーを引いていく。脳を揺らし、全身を攻撃してくる音の攻撃に、シロコ*テラーはその場に崩れ落ち、思わず両手で耳を塞ごうとした、その瞬間。

 

「っ!?」

 

両耳をマフラーで巻いて申し訳程度の防音対策を行ったシロコが、その両腕をがっちりを掴んでしまう。そして無防備になった両耳に、間髪入れずにモルフォは音を響かせていく。これが、ただ銃で撃たれたり、爆発を喰らったり。殴られたりするのならばいくらでも耐えられただろう。しかし、音による攻撃はそれとは次元が違う。どれだけ体が頑丈でも、脳を、体内を攻撃するこの攻撃は容易には止められない。

 

「いっけえええええ!!」

 

エンジニア部が作り、ヴェリタスによって入れられた音、自分達を鍛えてくれたC&C、そして一緒に戦ってきた、そしてここまで繋いでくれたゲーム開発部。バックアップをしてくれているセミナー、特異現象捜査部。地上、そして共に戦っている他の学園たち。ありとあらゆるものの積み重ねによって辿り着き、足掻き掴んだこのチャンス。ここで失敗すれば全てが無駄になる。最初で最後のそのチャンスを無駄にしないために、モルフォは引き金をシロコ*テラーが戦えなくなるまで引き続ける。

 

「―――シロコ先輩ッ!!」

 

たまらず、もう一人のモルフォが悲鳴を上げる。直後、シロコ*テラーを覆っていたオーラが消滅し、その全身から力が抜けていく。そしてシロコが両腕を離すと、シロコ*テラーは最後まで握りしめていたショットガンを手放し、そのまま倒れ込むのだった。

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