転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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RABBIT小隊とルドー

 

「……ふーむ、どうしたものですか」

「……」

 

防衛室長室。そこの机に座るカヤは、書類やパソコンの画面とにらめっこしていた。彼女の傍らには四人の狐耳の少女達。静かに、カヤの言葉を待つ黒髪の少女。その近くでは桃髪、金髪、灰髪の少女がいたが、先の言葉を呟いたきり黙り込んでしまったカヤの様子に我慢ならなくなったのか、灰髪の少女が口を開く。

 

「防衛室長は何が気になるの?」

「……オトギ」

「まあまあ、ユキノちゃん。オトギちゃんもクルミちゃんも、私も皆気になってるんですよ。SRTの復活を取り巻く状況が複雑になってきているのは嫌でもわかりますし」

 

灰髪の少女、オトギを制するように黒髪の少女、ユキノが注意する。それを桃髪の少女、ニコが宥め、金髪の少女、クルミがはぁと溜息を吐く。

 

「いえ……カイザーグループの衰退が予想以上でしてね……もうここまできたら手を切るのも悪くないかと思いまして」

「……それ、大丈夫なの?」

 

防衛室とカイザーは繋がっている。それは、彼女達四人も知っていることだ。カイザーはカヤが防衛室長になるよりも前から、その魔の手を連邦生徒会に伸ばしていた。それ故に、虚妄のサンクトゥムに連なる一件が始まる前、先生は攫われてしまったのだ。あの件も、ある意味で防衛室が絡んでいると言える……のだが。

 

「さすがに、同盟を裏切って私を誘拐なんてやられては今後の関係も見直さざるを得ませんし」

 

そのカイザーは、先生を攫うと同時にカヤを気絶させて別の所へと連れ去ってしまったのだ。その後、彼女が実質所有しているというFOX小隊に救出されたのだ。そのFOX小隊こそが、カヤが傍においているこの四人というわけだ。

 

「それに……このままでは当初予定していた形でのSRTの復活も難しそうですねぇ」

「なっ……!?」

 

カヤの呟きに揺れるFOX小隊。彼女達がカヤに協力している条件、それはSRTの廃校を取り消して復活させるというものであった。しかし、カヤのその言葉は、FOX小隊の目的達成が不可能になるというまさかの現実を突きつけるものであった。

 

「何故?」

「何故と言われても……まあ、理由は三つほどあります。一つ、これは単純にカイザーの影響力が弱まりすぎている。依然として大企業ではあるものの、少なくとも連邦生徒会への影響力に関しては大きく削がれたといっていいでしょうね。これは風の噂ですが、どうやら損傷したサンクトゥムタワーの修復作業をカイザーが担おうとするプランもあったようで」

「……それは」

「まあ、復興のために猫の手も借りたい状況でしたから。もしあのままサンクトゥムタワーが破壊されたままであれば、面の皮が厚いと言われても連邦生徒会はカイザーを拒めなかったでしょうね。結果としてはこの有様ですが……そのせいでSRTを復活させるために必要な事……私が天に立つという目的のために、カイザーに担わせようとしていた役割が一切期待できなくなってしまったことが挙げられます」

 

連邦生徒会を襲撃し、サンクトゥムタワーを押さえる。それだけでなく先生を攫い、シャーレを制圧したというのはあまりに大きな罪だ。シャーレ、そして復活した連邦生徒会は勿論、各学園の首脳陣からもこの暴挙には当然カイザーへの警戒心を強める結果となり、カイザーはこの大きな失態を受け、必死の尻尾切りを敢行していた。風の噂ではシャーレ制圧作戦の指揮を執っていたジェネラルに対してお咎めがなかった、などという話も聞くがそこは大きな問題ではないだろう。それよりも問題なのは、この件でカイザーは連邦生徒会に対する影響力を著しく弱めてしまったということ。

 

カヤの方でカイザーに取りなすという選択肢もあった。しかし、様々な要因とカイザーの落ちぶれよう、そして今の彼女達を取り巻く現状を考慮すると、このまま付き合うよりいっそ切り離した方が得なのでは?とすら考えるようになってしまったのだ。

 

「もう一つは……RABBIT小隊でしたか。彼女達がSRTを作り直してしまったことです。この状況で、仮に全部が成功してSRTの廃校を取り下げて復活したとして、どうなりますかね?」

「「「「あ……」」」」

 

もう一つは、既にミヤコ達が廃校になってしまったSRT特殊学園を諦めて、自分達で新たなSRT、SRT学園を作ってしまったということだ。まだ自治区が確保できていないなど、問題は山積みではあるが、実績という意味ではシャーレ奪還作戦に協力、虚妄のサンクトゥム攻略作戦に参加と、このキヴォトスを救う戦果を挙げたという意味では中々に大きい。そんな彼女達の活動に、各地に散っていった元SRTの面々も注目し始めており、さすがに今の状況で自分達も転校を、と博打を打つ者はまだいないものの、それでも期待の色は厚い。いや、それだけ自分達を冷遇した挙句、廃校まで持っていった連邦生徒会に対する評価が残念ながら冷めているというべきか。

 

「カイザーの暴挙を受けて慌てて復活させた……まあ、そう受け取られるでしょうね。そうなればこちらが余計なダメージを受けるだけでしょうし、そうなるぐらいならいっそ、こちらで復活、なんてことはしない方がずっといいでしょう」

「……それは、私達に後輩と合流しろと……だが、私達はもう……」

「……最後の一つはなんですか?」

「……最後の一つは……ふふ」

 

と、そこでFOX小隊に目を向ける。そして、不敵な笑みを零すと、彼女達に一枚の写真を見せる。そこには、オレンジ色の髪の少女が写っていた。

 

「……彼女は?」

「ミレニアムの制服?」

「ええ。そもそも……気になりませんでした?何故、あんな滅茶苦茶なデモ活動をするぐらい行き当たりばったりだったあの四人が、学園を新たに建てる、しかも、歩みこそ遅いとはいえしっかりとしたビジョンを持って臨むようになったか」

「「「「……」」」」

 

その言葉にFOX小隊が気まずそうに視線を逸らす。しかし、初めてこの話を聞いた時にはFOX小隊も正直な所、「そういう手があったか……」と感心すら覚えたレベルだ。実際問題、彼女達もRABBIT小隊の努力を期待しているかでいえば、連邦生徒会を動かすよりは現実的かもしれないと期待はしている方だ。それでも引くに引けなかったのは、既に自分達がカヤの指示でやらかした側の人間であることや、こちらもこちらで着実に事態が進んでいるとカヤから聞いていたからだ。中途半端に抜けることに対する抵抗感や、これで後輩達に迷惑をかけることを危惧して、彼女達は立ち止まるを得なかったのだが。

 

「ゲーム開発部の夢見モルフォ、ですか。中々面白い子だと思いません?」

「それは、どういう……」

「さて、ここらで私達の関係、そして今後についてはっきりさせておきましょうか。大前提として既存のプランはもう使えなくなりました。カイザーに期待するのは止めです」

 

ユキノの疑問には答えず、こう告げるカヤ。その言葉に四人が表情を引き締め、カヤの言葉を聞き逃さないように耳を傾ける。

 

「彼女を引きずり降ろすこと自体はできますが……その後が続きませんので一旦見送りましょう。そして先程言ったように、SRTを復活させる、それだけであれば……正直な話、RABBIT小隊の子達の活動が一番現実的だと思いますよ?軌道に乗れば私個人から支援もすることを先生と取り付けていますしね」

「成程……そちらの方が、都合がいいと考えたんですね」

「でも、私達がやったことは?」

「なかったことにしましょうか。お互い黙って卒業してしまえばわかりませんし―――後輩達に迷惑はかけたくないでしょう?」

「「「「……」」」」

 

カヤの言葉に黙り込んでしまうFOX小隊。お互いに墓まで悪い話は持っていこう、カイザーが何か言うようならまた変なデマを言っていると流してしまえ、暗にそう告げられたFOX小隊達は顔を見合わせるが、最早カヤでもこうなってしまえばコントロールが困難な状況になっていると理解したのだろう。頷き合う。

 

「……わかった」

「まあ、SRTと私の今後についてはこんな感じで。これからはあなた達にちょっと調べてほしいことがありまして」

「?それって」

 

モルフォの写真を見せながら、にこにこと笑うカヤ。そして彼女は、こう告げるのだった。

 

「ミレニアムの一生徒なのに、幅広い交友関係を持っており、緩衝材としても機能する少女、しかも一年生……ふふ、勧誘する相手としては魅力的だと思いませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……す、凄い装備だな……」

「気に入ったのなら是非持っていってくれたまえ。天下のSRTが我がエンジニア部の開発した武器を使ってくれるとあればエンジニア部冥利に尽きるってものさ」

 

ミレニアムのエンジニア部。そこには、RABBIT小隊の姿があった。彼女達が手にしていたのは、様々な銃器や爆弾など。エンジニア部が色々弄ったのはいいが、C&Cもゲーム開発部も保安部も使えず、まともな運用実験すらできずにお蔵入りになりかけてた発明品の数々を押し付け、もとい提供しようとしていたのだ。

 

「ちなみに全部自爆装置がついているよ」

「本当に!?」

「モエ!?何を喜んでいるんだ!大体自爆装置って……」

「ふふふ……自爆装置はタンクやポイントマンには大事な要素ですよ、これがあるおかげで戦場で生き残れたという実例があります!」

「嘘だろ!?」

「……特殊すぎるケースですが、まあ事実ですね……」

「本当なのか!?」

 

そんな中、ヒビキとコトリの話にサキは絶句してしまう。そんなことがあってたまるかと、そう言いたかったが、本当にあったことだと聞いてしまい、複雑な表情になってしまう。それはそれとして、自分は自爆装置を絶対に使いたくないし渡さないでくれと後でモエに言うことを決定しておく。

 

「……へー……スランピアの時も思ったけど、ミユちゃんほんと凄いね……」

「ああ。SRTの狙撃技術……話には聞いていたが、参考になるな……」

「あ、あ、ありがとうございます……」

 

エンジニア部の部室の一角では、ミユとミドリとカリンが話をしていた。エンジニア部に置かれた的用のカカシを撃ち合いながら、狙撃について話し合う。やはりSRTの洗練された狙撃技術は、ミユ自身のセンスも当然のことながら、二人から見ても中々に学べるところが多いようだ。

 

「……成程、このシールドは軽量なのに持ち運びもしやすい、折り畳みもできるから扱いやすいと……」

「まあ、これもエンジニア部に作ってもらったものだけどね」

「銃はともかく……確かにこれは便利そうですね」

 

ミヤコがモルフォの持つシールドを見る。シロコ*テラーとの戦闘で初めて気付いたのだが、待機状態だと手の甲に装着されたような形になるため、左手が自由になることが判明した。とはいえ、戦闘中に状態を切り替えるというのはリスクも大きいので基本的に使わないとは思われるが。

 

「こいつには色々助けられたからね……」

 

シロコ*テラーの事を考えたところで、家に居候するようになった彼女の事を思い出す。

家に連れ込んだ初日と比べて大分安定しているようにも見えたため、一度シャーレやアビドスに行ってみないか、そしてホシノ達も会えないかと聞いていることを言ってみたものの、不可抗力で会ってしまったモルフォはともかく、前の世界で見知った相手に会うことに対しては未だに消極的な姿勢なままであった。

 

「でも、折角ならリーダー達も来ればよかったのに」

「確かミユちゃん達が来たのもたまたまだったし、カリン先輩も知ったのは偶然ですから、知らないのも仕方ないかと……」

「モルフォー!!」

 

そんな感じでワイワイと話し合いながらエンジニア部の開発物を見たりしていたが。やがて落ち着いてきたところで折角ならとミヤコ達はゲーム開発部の部室に案内されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム開発部の部室。ケイのボディが入った箱や千年の守護者を収めたボックスなどにちゃんと鍵をかけてRABBIT小隊に見られないようにしてから四人を招き入れる。意外と整った内装に四人が驚きながら見学をしていると、一つの箱を持ってアリスが部室に入ってくる。

 

「どうしたの、アリス」

「これを見てください!買い物に行ったらセールで売ってたので面白そうだから買ったんです!」

「買ったって何を」

 

色々お菓子とかを買いに行った道中で偶然売り出されていたものを買ったのだろう。その後、ミレニアムに戻ったところでモルフォ達がエンジニア部の部室にいることを聞いてやってきたというところか。一体何を買ってきたのかとモルフォが箱を見てみると、

 

「……ルドー!?」

「ルドーとは?」

 

ルドーとは、二人から四人で遊ぶボードゲームである。プレイヤーは一つのサイコロの出目に従って四つの駒をスタートからゴールまで進ませて競うゲームなのだが、その元となるゲームであるパチーシは六世紀にインドで考案されたと言われる程に中々歴史の深いものだ。しかし、それを聞いたモルフォは驚いたように声を張り上げてしまう。

 

「まあ、その……ボードゲームだよ」

「珍しいね、モルフォちゃんがここまで警戒するなんて。どんなルールなの?」

 

普段なら意気揚々とゲームを勧めてくるモルフォが思わず警戒するとは。逆にどんなゲームなのか気になってミドリが声をかける。

 

「えーと、ね……」

 

ルドーは赤、青、黄、緑の四色に分かれた駒をコースを一周させて全てゴールさせる。それだけ聞けばシンプルなのだが、駒をスタートから出すには、サイコロで6を出す必要がある。もし、動かせる駒がない状態で6以外の目を出したら、駒を動かすことなく次の手番に移ってしまうのだ。それだけでなく、他の人の駒と同じマスに止まると、その駒は持ち主のスタートに戻されてしまうのだ。

 

「……6を出さないと出れないのか……」

「その代わり、6を出せばもう一回サイコロを振れるんだけど……とはいえ、お互いに駒を蹴散らし合う上に6を出さないと次の駒が出ないっていうルールだから、嫌でも時間がかかるんだ……まあ、そこら辺を調整すれば一応ストレスフリーにはなるけど」

「というと?」

「駒がない時は自動的に駒が一つ出るようにするだけでもかなり話は違ってくるかな。二個同時に出したければ6を出す必要があるけど……でも、これだけで大分楽にはなるはず」

「ふーん……別にそこまできつそうなゲームでもないけどね……なんかのんびりやれそうだし」

 

実際にやってみないとモエのような言葉が出てくるのも仕方のないことだろう。しかし、モルフォはやったことがあるからこそ言えるのだ。とはいえ、これは現代人のモルフォの感性だから中々終わらない運と足の引っ張り合い、のように見えるだけで、昔、これを開発された時はこのスピード感が逆に丁度よく、長く楽しめる楽しいゲームだったのかもしれない。

 

「じゃあ、四人でやってみる?私は見てるから……」

「な、なんかそこまで言われると逆に怖いぞ……」

「でも……ボードゲームも楽しそうだよね」

「……まあ、いいでしょう。折角ミレニアムまで来ましたし……」

 

まあ、こういうのは実際にやってみた方が早いだろう。RABBIT小隊にそれぞれプレイヤーになってもらい、ルドーを始めてもらったのだが。

 

「おっとぉ、ごめんねサキ、またスタートに戻しちゃってぇ」

「モエ!またか!?」

「うう、出目が全然……」

「……思ったよりゴールできませんね。これは確かに勝手に駒が出るようにしてもらって正解でした……」

 

案の定、ミヤコ達はルドーの魔力に取り込まれていた。一度勝負を始めてしまった手前、終わるまでは離れられないのだろう。アリスもまずは見学してルールを見ようとしているようだが、既にケイはどこか諦めたような目でそれを見ており、一方モルフォは最初の数周ぐらいは見ていたものの、問題なく遊んでいるところを見て、時折ボードの状況を確認しながらもミドリと共に次回作で使うキャラの案などを固めていた。

 

「こうしてみると結構楽しそうに見えるけど……確かに慣れたらモルフォちゃんが考えるようなこともあるのかも……思ったけどこういうことやってて片手間でやるなら案外いいのかもね」

「あー、スナック感覚は確かにあるのかも」

「でも、こうやって駒がスタート地点に戻されるのはちょっと楽しいと思います」

「モエ!私の駒を踏むな!!」

「ごめんねー?私駒が多いからさー」

 

ルドーの方では、手際よく駒をゴールに進めていくミヤコに対し、6が出る度にどんどん駒を出していくモエ、ひっそりと確実に一個ずつ駒を進めていくミユとそれぞれのスタイルが明確に分かれていた。サキはモエとミヤコの中間といった感じで余裕があるなら追加の駒を出しつつ、基本的に一個の駒を大事に育てるやり方をしていたのだが、サキの次の手番がモエだったせいで、彼女が出している大量の駒に潰されてスタートラインに戻されることが多発していた。

 

「でも、私も私で駒戻される事多いし?お相子じゃない?」

「まあそれは……そうかもしれないが」

「さて、これで駒は二つゴールに辿り着きましたね。やっと半分ですか……」

「うう……私、まだ一個しかゴールできてないのに……」

(……やっぱり自動的に駒が出るようになるだけでスピード感は大分変わってくるものだなぁ……)

 

その後も、取って取られてを繰り返し、泥沼の乱戦に陥っていくRABBIT小隊のルドーをモルフォとミドリは時折ちらちら見ながら作業を進めていくのだった。

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