転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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不知火カヤと昆虫王女ムシクイーン

「「「「ありがとうございました!!」」」」

 

数日前。D.U.地区から少し離れた場所に存在するSRTがかつて運用していた訓練施設。そこには、RABBIT小隊とFOX小隊の姿があった。

 

「……成程。随分と経験を積んできたんだな」

「ま、苦労はしてきたからね~」

「モエ……えっと、あのFOX小隊と手合わせしてもらえるなんて……光栄です!」

「光栄、ね……あはは、なんか色々複雑な所はあるけど」

「?」

「ああ、もう関係なくなる話だから気にしないで」

 

そこで行われていたのは、FOX小隊とRABBIT小隊の摸擬戦であった。カヤから梯子を外されたFOX小隊ではあったが、そのカヤがRABBIT小隊のプランの方に期待を寄せているのであれば、防衛室はともかく連邦生徒会と完全に関わりを断って独自の道を進めるこちらの方が好ましいのは確かだ。だが、それならばそれで気になるところがあると、RABBIT小隊の実力を確かめる意図も込めて、この摸擬戦を組んだのだ。

 

「……FOX小隊といえば、あの七囚人のワカモを捕まえた手練れ……キヴォトスでも最強の特殊部隊の力を見せてもらえるなんて」

「私達としてはあなた達の強さの方に驚いてるんだけどね……いやまぁ、経歴を見れば不思議ってわけでもないのか」

 

ミヤコ程ではないにしても、十分嬉しそうな顔を見せるサキに、クルミが呆れたように呟く。今回の摸擬戦ではRABBIT小隊は予想以上の実力を発揮しており、FOX小隊がギリギリで辛勝できたのは、この施設を使い慣れていたことや、前々からこの摸擬戦の事を考えていたことによるアドバンテージの差が大きい。

 

「いやー……まさかあそこまで見つからないとは……」

「雪があるのとないのとだと隠れやすさって全然違うんですね……うぅ、次は気を付けないと……」

「……これ以上見つかりにくくなったら本当に私やばいかも」

 

摸擬戦中に行われたスナイパー同士の狙撃戦を思い出してクルミは思わず冷や汗をかいていた。クーデターで培われた狙撃技術は、当然身を隠すという行為にも反映されている。驚くべきことに、あの激動の毎日はRABBIT小隊の実力の向上に大きく役立っていたようだ。

 

「……あの!先輩達は……」

「……今は私達も身の振り方を考えている。だけど、応援はしている」

「この摸擬戦は、頑張る後輩達へのエールだと思っていてくださいね」

 

がむしゃらに頑張り続ければいいミヤコ達とは異なり、まだまだユキノ達は先が見にくい状況だ。

 

(……私達がこの方法をあの時思い付いていれば、な……いや、もう遅いか……)

 

だからこそ、こうして彼女達に期待してしまうのだろう。もし、全てが終わり、落ち着いてきたら。その時は彼女達と合流してもいいのかもしれない。そう思いながら、連邦生徒会の所有物となっているこの施設をユキノは見渡すのだった。

 

(……なんにせよ。後ろめたい作戦は、次が最後……らしいな……防衛室長の言葉が事実なら)

 

 

 

 

 

 

 

 

RABBIT小隊とFOX小隊の摸擬戦から数日後。先生からゲーム開発部、特にモルフォに、防衛室長である不知火カヤから個人的に話があると言われたことで彼女達はシャーレに赴いていた。そこからモルフォだけが指定された建物の個室で待つカヤの下へと向かうこととなったのだが。

 

「こうして会うのは初めてですね。あなたのことは……おそらく一方的ですが存じ上げています」

「あ、いえ……ありがとうございます。しかし、何故防衛室長のカヤさんが……それもゲーム開発部ではなく私に?」

「まあ、大事な話がありまして」

 

先生に借りは作っておいて正解だったと内心笑いながら、飄々とした様子で話すカヤ。もしこの申し出をミレニアムに出していればもっと難航していたことは間違いない。何せ、セミナーが彼女の魅力を知らないわけがないだろうから。そして、この話はあくまでまだ内密にしなければならない。連邦生徒会の他の人にも知られるわけにはいかないのだ。

 

(彼女の人脈、そして事務能力はどこも欲しがるでしょうからね……彼女が既にミレニアムの所属だから黙っているだけで、もし連邦生徒会に所属しているフリーの人間だったらどこの局も引く手数多ですよ)

(連邦生徒会、それも防衛室長からリオ会長やユウカ先輩じゃなくて私に?もしかして、アトラ・ハシースの箱舟での戦いで何か……?うーん、もう一人の私やシロコ先輩の事を考えると)

 

モルフォとしても、この話を受けて彼女の下に訪れたのは、モルフォ自身心当たりがないわけではないからだ。だからこそ警戒はしていたのだが。

 

「単刀直入に言いましょう。連邦生徒会に……いえ、私の下に来る気はありませんか?」

「……?何故、セミナーのメンバーではなく私に?」

「何故、ですか……まあ、そのセミナーはミレニアムの生徒会でしょう?そこから引き抜きなんてしたらミレニアムの政治的運営に影響を及ぼしてしまうでしょう」

「まあ、それは……」

 

まさかの勧誘に逆に困惑してしまう。しかし、いまいちピンとこない。何故彼女が自分に目をかけたのか。

 

「SRT再建の件について調べていく内にあなたに辿り着きまして」

「えっと、それは的確なアドバイスをしてくれたミノリさんの手柄では……?」

「私が評価しているのは、あなたが持つ伝手、他者との緩衝材足り得るその手腕、そして事務能力なんですよ。無論、あなたの言うレッドウィンターの生徒も中々やり手だとは思いますが……」

「は、はぁ……」

 

そう言われると何となくわかるような、わからないような。とはいえ、評価してくれているところ悪いのだがとモルフォは自分の意思を口にする。

 

「ですが、私は連邦生徒会に所属する気はありません。今のミレニアムから転校する気もありませんし、ゲーム開発部以外の所に所属する気も今はありません」

「ふむ、まあそうなりますよね」

 

ここまではカヤとしても予想済みだ。既に彼女は自分の居場所を見つけている。そこから動かすとなれば相応の一手が必要となることは理解している。だからこそ、彼女が所属するゲーム開発部らしく、彼女が納得せざるを得ない解決方法をカヤは用意していた。

 

「では……あなたが所属しているゲーム開発部らしい方法でそれを決めませんか?」

「……?それは、どういう―――」

 

机を挟んで向かい合う二人。糸目を開きながら、カヤは真剣な声音をかける。その表情を見て、モルフォはごくりと息を呑む。一体、彼女は何をしようとしているのか、モルフォが警戒していると。

 

「あなたの行く末を、ゲームで決めませんか?」

「……ゲーム?」

 

ジュラルミンケースを取り出したカヤから飛び出したまさかの言葉に、つい困惑してしまう。その様子を見てカヤは笑みを零すと、

 

「私もあなた達の事を調べるにつれて少々ゲームというものに手を出してみまして。まあ、私の場合はこういったアナログゲームの方がどうやら好みらしくて。ふふ、私達との勝負ですよ」

「……私が負けたら軍門に下れ、と?」

「ふふ、理解が早くて助かります。もしこちらが負けたら、二度とあなたへの勧誘はしないと約束しましょう。どうですか?」

「……私じゃなくてゲーム開発部への勧誘を取りやめてください」

「いいですよ」

 

食いついた。内心微笑みながらカヤはモルフォを見る。

 

(相手に一度拒否させ、本命を通す……ふふ、この勝負に乗った時点で、あなたは既に私の術中にはまっています。確かにそこそこやるようですが、まだまだ一年生。青いですね)

 

彼女の機嫌も取りつつ、さらに納得、屈服させられる最大の方法、それはゲームだ。そして、その内容としてカヤがジュラルミンケースを開きながら提示したもの。それは、

 

「―――この、昆虫王女ムシクイーンで決めませんか?」

「?????」

 

キヴォトスで流行しているカードゲーム、ムシクイーンであった。

 

「……あの、何故ムシクイーン?」

「まあ、流行りですし。ルールは知っていますか?」

「まあルールは。とはいえ、デッキは持っていませんが」

「でしょうね。そのためにこれがあるので……時間制限を設けるつもりはないので。是非、ご自由にお使いください。なんなら、今日の勝負が終わればこれはお譲りしますよ」

「……わかりました」

 

カヤの言葉に色々言いたくなるが、それを呑み込んでジュラルミンケースの中に手を伸ばす。そして、そこからカードの束をいくつか取っていく。

 

(……幻のスフィンクス。これを使えば相手にフィットネスを強要できる……これと連続攻撃を行わせる次元の幻影、破壊耐性を持たせる架空の守護者……ここら辺はこの勝負に勝つために必要になるかな?ループは組めるな……)

(随分悩みますね……まあ、一からデッキを作れと言われればそうなりますか。とはいえ……)

(サブプランに必要なのは転移系カード。後は……ドロソや、中核となるテーマは……)

 

それから十分ぐらいして。デッキを持っていないモルフォの為にデッキ構築の時間を与えていたカヤは、自分が使うデッキを見て不敵に笑う。カヤとて、実際は初心者だ。コンボ性の高いデッキを扱えないのは自分自身よくわかっている。だからこそ、あまり高望みせず、素直に引いてきたカードを叩きつける、単純なカードパワーの高いカード群で構築されたグッドスタッフという環境デッキを作っている。一応このデッキにもコピペしたデッキに採用されているコンボ自体はあるが、それぐらいの単純なものなら許容範囲だろうとカヤも素直に受け入れていた。

 

(……いまいち効果が素直じゃないものだったり控えめな効果が多いな……これは、やってるな?)

 

時折、チラとカヤを見るも、カヤはニコニコと笑うだけ。おそらくカヤも、自分が気付いていることに気付いているはずだ。このカード群には、所謂環境デッキに採用されているカードは一枚もないことに。それを誤魔化すためにこのように大量のカードを入れているのだと。

 

「……できました」

「急な申し出で申し訳ございません。ですが、お付き合いいただきありがとうございます。それでは、始めましょうか」

(……というかこの人、色々準備とか考えとかはするけど、これでいけると判断したら多少穴があっても平気で突き進んでいくタイプの人なんじゃ……)

 

このためにわざわざ用意したのだろうか、プレイマットを敷くカヤを見ながら苦笑いするモルフォ。しかしすぐに、カヤとの真のデュエルを開始することになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……モルフォ、遅いねー」

「うん……何を話しているんだろう」

 

一方。場所は打って変わってD.U.地区に存在するカフェ。そこそこお高めのカフェの個室なのだが、カヤの計らいでただ食いできるとあって、モモイ達は喜んでそれに乗っかっていた。

 

「もしかして……勧誘とか!?」

「ええ!?」

「ゆ、ユズちゃん落ち着いて。モルフォちゃんが勧誘を受けるなんてないでしょ」

「……そうですね」

 

モモイの言葉に慌て始めるユズを見つつ、ケーキを口にするケイ。ケーキの味を楽しむように目を閉じる……ように見せつつも、彼女は内心溜息を漏らしていた。

 

『ケイ、あのこれ……』

(ええ、見張られてます。しかも、通常の通信が通らないようにジャミングまでされていますね。やれやれ……私達でなければ大変なことですよ)

 

アリスの不安の声がケイの頭に聞こえてくる。モルフォがカヤの勝負を受けざるを得なかったのは、彼女の言葉に隠されたもう一つの罠に気付いていたからだ。

 

(「私達」との勝負、ですか。成程……仮にあちらでモルフォが勝っても、伏兵を使って私達を襲い、倒す。そうすれば、モルフォ一人ではどうにもならないので彼女達が勝利する、と……)

 

モルフォを囲うためにここまでするのかと、思わず言いたくなる。この事は先生にも報告する必要があるだろうが、ひとまずはモルフォがカヤに勝ってからだろう。そこから、彼女の私兵達が動いたところを抑えればよりダメージは大きくなる。相手がユズとかであればともかく、モルフォに限ってゲームに無頓着であろう連邦生徒会の人間に負けるとはとても思えない。

 

(……はあ。金はかかっているようですが……とても美味しくは感じませんね。これなら、いつものスーパーで売っているような安いお菓子の方がよっぽど上等です)

 

こんなに美味しくないスイーツは初めてだ。そう思いながら、ケイはフォークをケーキに刺すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このカードを特殊召喚するには、この文章を感情を込めて読み上げる必要があるので―――では。「立ち上がれ、私の分身!ブラスター・ドラゴン!」」

(相変わらず変なカードゲーム……)

 

カヤが繰り出した、白いドラゴンが描かれたカードが盤面に登場する。このカードゲームは、攻撃力、防御力などがカードに記されていたり、効果の発動条件にアクションを要求したりするという中々にユニークなカードゲームである。なお、このカードゲームのカードには特殊なホログラム処理があり、相手からカード効果が見えなくなっている。そのため、ぱっと見はイラストとステータスだけが書かれているように見えるのだ。

 

「ブラスター・ドラゴンは詠唱をして特殊召喚されたことでスピードをアップしているため、召喚酔いはしません。この攻撃力をぶつけられれば、終わりですね」

「……!」

 

グッドスタッフデッキのカヤの繰り出すカードパワーに、モルフォは苦しめられていた。既に、後一撃でも攻撃を喰らえば終わり、という程に追い込まれてしまっており、紙一重で攻撃を防ぐ場面が多くなっていた。

 

「さあ、これでトドメといきましょうか」

「―――まだですよ。この攻撃に対し、私は手札の速攻カブトムシを召喚します。速攻カブトムシは召喚と同時に呼吸を三秒止めることで、スピードを得る。それによって相手への攻撃によるブロックを行います」

「……防がれましたか。しかし、だいぶ苦しそうですね?ふふ……」

 

汗を軽く拭いながら、モルフォは余裕そうなカヤを見る。カヤが使うグッドスタッフデッキは、単純にカードパワーが高いだけでなく、体力をあまり消耗しないという利点がある。一方モルフォは、カヤのデッキパワーに対抗するため、フィットネスなどをよく行うカード群を使用しているため、体力をもすり減らしていた。

 

「私はこれでターンエンドですよ」

「私のターン……よし。魔法カード、その真実は鏡像を発動。その効果により赤猫ルリと緑猫ルメを特殊召喚。ルリとルメが揃っていることで、猫カード達の攻撃力と防御力が上昇し、さらにスピードがアップします。そしてルリでブラスター・ドラゴンを攻撃!」

「ふふ、ステータスが劣っていますが?」

「ここで魔法カード、絆の剣を発動。他のカードの攻撃権を放棄することでその攻撃力を収束することでブラスター・ドラゴン、そしてハイパータテガミウルフを粉砕!」

 

カヤが呼び出したブラスター・ドラゴンと場に存在していたハイパータテガミウルフが二匹の兎によって葬り去る。

 

「さらに場に常駐している魔法カード、伝説の鼓動の効果で、ターンの終わりにスクワットを五回することで一枚ドローします。ターンエンドです」

 

引いたカードの効果を確認しながら、ターンを渡す。一方、ターンを渡されたカヤはというと、余裕そうな表情でデッキからカードを引く。いや、実際余裕なのだろう。モルフォは後一撃で終わる状況に対し、カヤは今だノーダメージ。さらに、完璧なコンボがその手に揃ってしまっていた。

 

「ふふ……」

「!」

「私はデッキの半分を墓地へ送り、雷神の龍王サンダー・ドラゴンを特殊召喚します」

「サンダー・ドラゴン……?」

「このカードがいる限り、相手カードの攻撃力・守備力は召喚、特殊召喚された瞬間に2000ダウンし、0になれば破壊されるという効果があります」

(お前オシリスかよ……でも)

 

ちらと、手札と場を見るモルフォ。確かにこのサンダー・ドラゴンの効果は厄介な制圧効果だ。しかし、これだけならば厄介なだけで対処は幾らでもできる。が、そこはカヤだって予想済みだ。

 

「おっと……先程のように魔法カードで対処されても困るので。私はここで過労死スライムを召喚します。このカードは召喚・特殊召喚する際にスクワットを5回する必要があるのですが……まあ、これくらいは」

 

ちょっと失礼しますね、と言い、スクワットを行うカヤ。その様子を見ていると、どうして私達はムシクイーンなんてやっているんだろうとついつい考えてしまうも、自分を賭けている闇のゲームなんだぞと気合を入れ直し、これからさらに盤面が固くなっていくであろうカヤのフィールドを見ていく。

 

「とはいえ、それだけではありません。この過労死スライムはフィールドから離れると、特殊召喚されます」

「……テキスト確認しても?」

「ええ、いいですよ」

(このカードを召喚・特殊召喚する際、プレイヤーはスクワットを5回行わなければならない。このカードがフィールドを離れた時に発動する。このカードを特殊召喚する……成程)

「ふふ、いいですか?そして次に魔法カード、神の生贄を発動します。このカードは場に残り、このカードがある限り、相手がこちらのカードを攻撃、もしくは効果の対象にする時、その対象を過労死スライムに変更できます」

「!これは……」

 

普通のカードゲームなら加減しろ馬鹿!と言いたいターン制限なしの効果だが、このカードゲームではそれが許される。いや許していいのか?と困惑する能力だが。何せ、これと神の生贄がある限り、モルフォはサンダー・ドラゴンに触ることができなくなってしまうのだ。

 

「ふふ、ターンを終了しましょうか。さあ、この状況……詰みですよ」

「……詰み、ですか。私のターン、ドロー」

 

デッキからカードを引く。これではまだ足りない。

 

「私は魔法カード、マガジンリロードを発動。手札を任意の枚数捨てて、その枚数分ドロー。この効果処理の間、私は片目を瞑って処理を行わなければなりません。カード、ドロー……よし」

「……何か、きたようですね。ですが、何が来たって―――」

「栞猫メリバンを召喚」

「ふふ、そんなことをしても無駄ですよ。サンダー・ドラゴンの効果でメリバンは破壊してもらいます」

 

召喚した白猫が破壊される。このカードには戦闘でコントロールするプレイヤーにマウンテンクライマーを強要させる効果がある。しかし、これは正直どうでもいいのだ。出すカードは何でも。大事なのは、ここでカードを出したことで、サンダー・ドラゴンの効果を誘発させることである。これで、さっきのターンに引いたカードを使うことができる。

 

「……使いましたね」

「?確かに使いましたが、それが……」

「まあ、サンダー・ドラゴンの効果はどうやら強制効果らしいのでどうしようもないのですが。魔法カード、スリー・バトル・ギフトを発動。このカードは、相手がフィールドのカードの効果を発動したターンに発動でき、デッキから二枚引く効果、相手の手札を一枚見てデッキに戻す効果、そして相手のカードのコントロールを奪う効果のどれかを適用します」

「!そんなピンポイントなカードまで……!」

(三戦の才が弱いわけないんだけどな……いやでも、発動条件が相手依存だから初見だと弱く見えてもしょうがない?誘発大正義環境ってわけでもなさそうだし……)

 

モルフォが繰り出したカードに驚くカヤ。モルフォからすればなんでこんなお宝を見過ごしてストレージに入れているのか疑問ではあったが、もしかしたらムシクイーンの環境でそういうのが求められていないのかもしれない。

 

「この効果でサンダー・ドラゴンのコントロールをこのターン得ます」

「ですが、神の生贄の効果で選べるのは過労死スライムだけですよ」

「何言ってるんですか?これは対象に取る効果ではなく選ぶ効果なので神の生贄では防げませんよ」

「えっ……?」

「公式サイトとかwikiに載ってません?選ぶと対象の違いとか」

「…………ほ、本当ですね……神の生贄の項目に選ぶ効果は防げないと……」

 

そんな、言葉遊び……と若干呆れたように呟くカヤ。しかし、その言葉遊びこそがカードゲームでは大事な要素となりうるのだ。

 

「この効果により、サンダー・ドラゴンは私の僕となります。そしてサンダー・ドラゴンは召喚酔いをしていない」

「……成程、確かに即座に攻撃ができると。ですがわかっていますか?私の場の過労死スライムは―――」

「サンダー・ドラゴンで過労死スライムを攻撃!サンダーフォース!」

「ふふ、サンダーフォースですか」

 

思わず技名を口にするモルフォを生暖かい目で見つつ、過労死スライムを墓地へと送るカヤ。若干の嘲笑すら織り交ぜながら、彼女は過労死スライムを蘇生。その処理としてスクワットを終えたその時だった。

 

「―――では、サンダー・ドラゴンの効果を発動します。過労死スライム、粉砕!」

「……え?」

 

場にカードが出たことでサンダー・ドラゴンの効果が発動し、過労死スライムが破壊され墓地へ送られてしまう。

 

「で、ですが……」

「そう、過労死スライムは再生復活する。さあ、スクワットをしてどうぞ」

「……え?」

 

言われるがまま、スクワットを5回行うカヤ。直後、

 

「そしてサンダー・ドラゴンの特殊能力、召雷弾が発動し―――過労死スライムは再び粉砕……そして」

「さ、再生する……!?」

「さあ、スクワットをしてもらいましょうか」

(サンダー・ドラゴンの攻撃……過労死スライムが破壊……再生……再びサンダー・ドラゴンの攻撃……まさか、まさかこれは……!?)

 

再び過労死スライムが破壊される。過労死スライムの再生とサンダー・ドラゴンの能力による破壊。それを見せられ、カヤは理解させられる。これは、無限に続く破壊と創造によるループであると。

 

(そんな、このコンボは一度決まれば環境にあるカードでは入念な準備やコンボでなければ打開できないはずなのに……あまつさえ、彼女が使っているカードはパワーだって低い、その中でも組み合わせを考えてデッキを作ったのは確かに凄いのかもしれませんが、こんな、こんなことが―――)

「どうしました、カヤさん。スクワットが止まっていますよ」

「っ……こ、こうなったら……」

「―――そういえば、これは公式ルールでは時間は40分でしたっけ。そして、一分間効果処理をプレイできなければ、強制敗北になると……ただし、意図的な遅延は即座に失格になる」

「……40分……」

 

モルフォの言葉に、膝を動かすカヤの思考が急に動き始める。こんな勝負は無効にしてFOX小隊を動かし、ゲーム開発部を。そう思っていたが、40分の時間制限があるとなれば話は変わってくる。ちらと、壁にかけられた時計を見て、デュエルが始まった時間を思い出す。もうすぐ30分のはずだ。もし制限時間を迎えれば、どちらが負けるか?それは勿論、モルフォの方だろう。つまり、それまでの間、この地獄のスクワットを耐えればいいだけの話だ。

 

「―――いいでしょう。この十分、耐えてみせますよ……!」

 

カヤとて、FOX小隊を私兵として動かさずに済むならそれに越したことはない。何故なら動きを見せればそれだけ事が大きくなるからだ。後10分耐えれば。

 

「―――はぁ、はぁ……後、後何分ですか……」

「大丈夫ですか?時計外して持ってきましょうか?」

「……お願いします」

「ついでに部屋の温度も下げておきますよ。リモコン貰いますね」

「な、なんでそこまでしてくれるんですか……?この勝負に負けたらあなたは……」

「全力で勝負するため、ですよ」

「……そうですか」

 

数分後。プルプルと膝を震わせながらスクワットを続けるカヤ。普段ほとんど運動していないのだろう、既に根を上げ始めていたが、後数分、後数分と己自身に言い聞かせながら彼女は無限に続くスクワットループをこなしていた。

 

(暑い……ああ、暑い……後……うう)

(ちゃんと勘違いしてくれたみたいだね……そもそもこのデュエル、最初から公式戦じゃないし。ジャッジもいないんだから)

 

部屋の温度を下げてもらってるのに全くその恩恵を感じられない。時計を見るも、ほとんど針が動いていない。疲れのせいでたった数秒すら数分に思える。だが、やらなければ。このゲームにだけは勝たなくては。その一心で続けていたカヤだったが、

 

「―――あっ」

 

ぐらっと、頭が揺れる。そして倒れ込んでしまい、意識が朦朧となっていく。体が動かない、そんなカヤに近づいて健康状態に注意しながら、一分経過したのを確認し、スマホにそれを保存する。ゲームにただ勝つだけでは駄目であり、最初からカヤを無限ループにハメて肉体的にダウンさせるのが目的であった。そのために便利なパーツをカヤの方から提供してくれたのは手間が省けてよかったといえるだろう。

 

「あ、先生ですか。すみません、ちょっと来てもらってカヤさんを運んでもらいたくて。ええ、実は―――」

(あ、だめです、先生は―――)

 

完全に敗北し、指示すら出せなくなってしまったカヤを先生に回収してもらうことにする。カヤは色々企んでいたようだが、そのカヤがぶっ倒れてしまい、その後の指示が出せなくなったことでそこら辺のプランも全ておじゃんとなることだろう。先生が来るのに合わせて時計の電池を入れ直して針を動かし、最大温度まで上げた暖房を切っておく。

 

「モルフォ、大丈夫?カヤが倒れたって……」

「―――あ、先生。ちょっとムシクイーンで対戦していたんですが、そしたらこんなことに……後は任せてもいいでしょうか」

「うん、わかったよ。後は任せて」

「あ、それとカヤさんが起きたら伝えておいてください」

「?いいけど……どうしたの?」

 

と、その前に先生に、カヤへの伝言を頼むことにする。

 

「このゲームは私達の勝ちです、ってね」

「あ、うんいいけど……えっと、ムシクイーンをする前に何かあったの?」

「私が言うのはあれなので……カヤさんに聞いてもらった方がいいと思います。結構色々込み入った話だったので……すみません」

「そっか……うん、わかったよ」

 

そして、ついでに事情説明も全部カヤに任せてモルフォはゲーム開発部の下へ戻ることにする。

 

ちなみに、ゲーム開発部に無事に合流したモルフォの姿を見て、FOX小隊もカヤは失敗したということを悟り、手を引くことになるのだった。




このカードゲーム、原作でも意☆味☆不☆明だからなんか適当にフィールを感じておくといいぜ(ドン☆
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