転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
モルフォがカヤとの闇のゲームを制した数日後。ちなみにあの二日後、おそらく回復したであろうカヤから先生を通じてお詫びと称した焼き菓子などが送られてきたため、彼女としてもある程度の事情を先生に説明せざるを得なくなり、その上でモルフォを取り込むことを諦めたようである。まあ、その代償として膝を完全に壊したとなればこうもなろう。一応軽めの脱水症状なども引き起こしていたようだが、そこはモルフォもしっかり体調と時間を確認していたのもあり、健康上は筋肉痛以外は問題ないようだ。こうしていつも通りの日常がまた戻ってきたのだが。
「これが……お祭りですか!!」
「そういえばアリスちゃんとケイちゃんってお祭り初めてだっけ?」
「確かそのはず……いや、晄輪大祭は?」
「あー、あれなんかお祭りって感じしないんだよね……体育祭だから祭りではあったし、屋台とかもあったんだけど……なんかこう、違うっていうか」
「まあ、言いたいことはわかるよ……」
この日、ゲーム開発部はミレニアムの近くにある小さな神社で行われるお祭りに顔を出していた。とはいえお祭りといっても、百鬼夜行でやるような大きなものではない。よくある、近所で町内会がやるような小さな縁日とかそんなレべルのやつだ。学園が関与しているわけではないため、屋台の数なども多くはないが、獣人の小さい子供達も楽しそうにワイワイ騒いでいる。
「……しかし、ここに売っている食べ物は高くないですか?」
「そ、それがお祭りだから……」
「こういうのは雰囲気代みたいなのもあるからね……」
そんな子供達や引率の大人達に紛れて、生徒の姿もちらほら見える。単純にここに住んでいたり、たまたまこのことを知って折角だからと来てみたり。ゲーム開発部は後者であった。
「まあでも、こうやってワイワイしている中で食べるのも悪くはないよね」
「それはまあ、そうですが……」
『私も焼きそばを食べたいです!』
つい一時間程前まで新作ゲームの会議をしていたのはいいが、今回は中々に難航していた。そういったこともあり、気分転換に何かをしようとしていたところ、調べたら偶然この小さなお祭りの事を知り、こうして気分転換に繰り出したのだ。
「見てください!金魚が泳いでいます!」
「金魚すくいかー……まあ、やるのはいいけど、取っても飼えないんじゃない……?」
「リリースって許されるのかな……こういうのって大体許されるイメージがあるけど」
「ああ、いいよ。変な所に捨てられて死なせるよりはおっちゃんも嬉しいからね」
猫の獣人の店主が金魚すくいを見ているモルフォ達にそのように声をかける。それを聞いたことでモルフォ達も遠慮なく金魚すくいに興じてみるのだが。
「……あっ、ぽ、ポイが簡単に……」
「うわ、破かれた……」
「み、水で……」
「うーん、やっぱり全然慣れてないなぁ……」
金魚すくい初心者もいいところである六人が、そう都合よくできるというわけもなく。薄く、弱いポイを金魚の重さで破かれ、金魚の抵抗によって蹴破られ。さらには水の中を動かすというだけの動きですら破ける程にポイは弱い。これで何十匹も高速で取る上級者は本当に人間なのか思わず疑問に感じてしまう程だ。
「これ、上手な人ってどれくらい練習したんだろうね……」
「おそらく日常が金魚すくいだったはず……」
「そこまで?いやまぁ、あながち間違ってないのかな……?」
金魚すくいで見事に全滅し、口直しにフランクフルトを買い食いしながら六人が散策を続けていく。とはいえ、決して大きなお祭りではないというのもあり、全体を見るのにそこまで時間がかかるというわけでもない。軽く全体を見ていたのだが、
「……あれ?あの子は」
ふと、モルフォの目が屋台などをじっと見る灰髪の少女を捉える。確か彼女の名前は、
「……ウミカ」
「はい?……って、あ!確かゲーム開発部の皆さん!お久しぶりです!」
「あー!お祭り運営委員会の子!」
「リゾート地以来だね?ウミカちゃん、今日はどうしてここに?」
「それは勿論、そこにお祭りがあるからですよ!」
里浜ウミカ。以前、ロスト・リゾート・パラダイスで共闘した少女である。まさか彼女が一人でこんなところにいるとは思わなかったが、彼女の言葉を聞いてある程度その目的を理解する。お祭り運営委員会に所属している彼女はこうやって、日々キヴォトス中の祭りを巡っているのだろう。それでもこんな小規模な祭りにまで顔を出しているとは思わなかったが。
「でも、百鬼夜行のものよりはやっぱり小さくない?」
「確かに規模だけでいえばそうですが……でも、こういう小さいお祭りだからこそ、細かいところで気配りが行き届いている所も多いんです!お客さんを楽しませようとする運営の意思がはっきりと見えて、凄く楽しいんですよ!」
「へー……」
さすがはお祭り運営委員会、目の付け所が違う。このシャープな視線はゲーム開発部としても色々参考にするべきことなのだろう。
「私達なんてゲームは基本買い切りで売った後はバグ修正ぐらいで追加コンテンツとかやらないもんね」
「ソシャゲとかみたいに運営やるのも憧れるんだけどねー、後DLC商法とかさ。まあ私達はやらないけど……」
「ゲームのボリュームなんて基本買い切りで十分だし、ソシャゲ運営なんて私達だけじゃ無理無理。ヴェリタス捕まえてずっと缶詰させて、規模次第ではミドリやマキ以外にももっと絵師とか探す必要あるし。こういうのは私達は遊ぶ側で十分なんだよ」
「へー……ゲーム作りも大変なんですね」
休憩スペースに備え付けられた机を囲み、飲み物や軽食を摘まみながら、お互いの話をし合う。過去にお祭り運営委員会と関わった時は少々ごたついた時しかなかったため、こうしてのんびりと話をすることは初めてではなかろうかと感じながら、雑談に花を咲かせていた。
「確かに、人が多く関わってくるとそれだけ大変になりますからね。本当に社長には頭が上がりません」
「社長ってシズコさんだよね?確かに凄いよね……」
「それに、祭り一つとっても様々な祭りがありますからね。ゲヘナには仮面を使う祭りもありますし、他にも坂からチーズを転がしてそれを追いかける祭りとか、氷が貼るぐらい寒い湖に仮装して飛び込む祭りもありますし。後はトマトを投げつけ合う祭りもありましたね!」
「ごめんなんて?」
「まあ、祭りって言い伝えとか伝承とか地域性とかあるしねぇ……」
「はい!……あ!」
多くの人を楽しませる、という意味では共通するところも多いのだろう。と、ここでウミカが思いついたと言わんばかりに手を叩く。
「どうしたの?」
「ゲーム開発部の皆さん!実は近いうちに、百鬼夜行でお祭りをすることになってるんですよ!百鬼夜行燈籠祭っていう20年前に廃止された祭りで、それを再現しようとしているです!是非来てみませんか!?」
「お祭りか……」
「魑魅一座とか……大丈夫?」
「た、多分大丈夫です!修行部の皆さんとかいますし……?」
(ああ、百花繚乱って活動停止になってるんだっけ……治安維持組織がないってのも大変だろうね……)
どうやら百鬼夜行では近く、大きな祭りをする予定らしい。モルフォ達としても、アリスとケイも、百鬼夜行の大きな祭りは期待しているらしいので、行ってみるのも悪くないだろう。それに、
(どうせ行くなら……今度はシロコ先輩も連れて行った方がいいかな?いい気分転換とかになるかもしれないし……)
モルフォとしては同居人となっているシロコ*テラーの事も気にはなっていた。本人なりに少しずつ立ち直ってはいるのかもしれないが、こういうのは環境と交友関係が大事なのだろう。モルフォの勝手な主観ではあるが、それが恵まれていれば恵まれている程、立ち直り方には大きく差が出てくると思っている。後は時間もあるが、時間については正直人によるとしか言えない。とにかく必要なのは大人数との交流だ。本人は煩わしいと思うこともあるかもしれないが、十人と接して一人が放っておいてくれなくなれば御の字だ。
「わかった。何かのゲームのイベントの参考になるかもしれないし、行こうか」
「やったー!」
「お姉ちゃんが喜ぶの?いやまぁ私も嬉しいけどさ」
「ありがとうございます!お待ちしていますよ!」
モルフォの手を掴み、ブンブンと振り回すウミカ。その様子を微笑ましそうに見ながら、モルフォは苦笑するのだった。
★
その後、談笑を続けたり適当な屋台を見たり遊んだりししていたが、祭りも段々終わる時間が近づいてきたこともあり、片付けをする人達などの邪魔にならないように、ウミカを伴って近くのファミレスで一緒に食事をしていた。屋台ではやはり軽めの食事ばかりだったので、こうしてガッツリ食べるならこちらだろう。と、注文をして待っている間も談笑を続けていたのだが。
「……そういえば、これはなんでしょう?」
「ん?あー、これは……間違い探しか……」
「へー、ここの店はあんまり来たことないから知らなかったけど、こういうのあったんだ」
アリスが机にかけられていた間違い探しの紙を取り出す。それには、二つの絵が載っており、その違いを探そう!というだけの単純なものである。食事中の話題にしたり、注文したものが出てくるまでの間の時間潰しにやってほしいという店側の気遣いなのだろう。
(確かこの手のってやたら難易度が高すぎてわかるわけないだろってなるものもあるからなぁ……)
説明を見てみたが、間違いの個数は十個あるというそこそこに手の込んだものになっているようだ。これは難易度の差が激しそうだと何となく察しながら、既に間違いを一緒に探し始めるアリスとウミカの様子を見ていく。
「間違い探しですか。小さい頃はやったことがありますが……なんかこういうの見るとちょっとわくわくしますね」
「はい!あ、ここの机の部分とかちょっと違いますよね!」
二人が見ているのは円形の机を多くの人で囲んでエスカルゴを食べている絵を中心に置いたファミレスの絵だ。早速、簡単なものをアリスが見つけたのを皮切りに、ウミカやモモイ、ミドリもどんどん見つけていく。しかし、その光景を見ながら、モルフォの隣に座っていたユズがモルフォに寄りかかりながら小声で話しかける。
「……これ……かなり難しくない?」
「後半、凄く厳しいよねこれ……私はもうわからない」
「私も……」
どうせ簡単なものはすぐにわかるだろうと二人は難しめのものを探そうとしていたのだが、これがまた、まるでわからない。大体この手のは言われないと分からず、二つ一緒に出されても「全部一緒じゃないですか!」と言われるのが関の山だ。それぐらい微妙な違いすぎてわからないのだ。
「あ、私分かりました!これコップがグラスになってますよ!」
「うわ、本当だ!え、よく気付いたねウミカちゃん!?」
「ふふん!」
「コップ自体小さいから全然わかんない……」
料理が運ばれてきて、その味に舌鼓を打ちながらもゲーム開発部とウミカの関心はすっかり間違い探しに向いていた。しかし、フォークとスプーンの違いやら、ストローの向きやら、グラスの形やら。そんな、見ればわかるような、数や形、模様が違うものならばともかく、残りが見つからないとなると。
「これ、残りは多分……もう模様がどうとかそういうパターンじゃないんじゃないかな……」
「と、いいますと……?」
「例えば、人と人の距離とか……物と物の間とかそういう……」
「いやわかんないわかんない」
さすがにそこまで鬼畜な難易度はしていないだろう。いや、していないでほしいという願望を抱きつつも、まだ見つけていないところは二つ。だが、その二つがあまりにも見つからない。
「……これ、調べたら答え出るかな」
「えっ、し、調べちゃうんですか!?」
「いやー、私はもう無理だし答え見ようかな……探すなら、ヒントは出すけど……」
「むむむ……わかった!ぶっちゃけ無理だしヒントだけもらおう!」
モモイの言葉に異を唱える人はいない。モルフォが早速サイトに載っている答えを確認してみると。
「……えぇ」
そんなんわかるか!と声を出したくなるような答えがそこにはあった。同時に、これはどうやって伝えるべきなのかと頭を抱えてしまう。
「……えっとね……ヒントはそうだなぁ……真ん中と右下のお皿かな……もう一つは左上かな……」
どうにか、ヒントを絞り出す。しかし、これでも大分苦しい内容だ。この間違い探しを作った人はまともにクリアさせる気があるのだろうかと首を傾げてしまうレベルである。まあ、もしかしたらそれも込みで話の種にしてもらう算段なのかもしれないが。
「お皿……?え?お皿……?」
「どっちも変わらない気がするけど……」
「左上……どこが違うんですかねこれ……」
ヒントをモルフォからもらっても尚、何が違うのかわからず首を傾げるしかない。そんなこんなで食事も終わり、スイーツも注文することとなり、それを選ぶ傍らで間違い探しを続けていく。ここまで来たらもう意地だと言わんばかりに絵をじっと睨みつけるモモイ達。もう既に答えを知ってしまったモルフォはもうその輪に入ることはできないため、ドリンクバーを楽しんだりしながらスイーツを待つ。
「もう頭が沸騰しそうだよ……」
「私もギブアップしそう……」
「違和感は感じるんですが……」
「え、そ、そうなんですか?凄いですね……アリス」
「そうでしょうか……しかし、これはモルフォにこう言われたからというところも……」
『いやまぁそれはそうですよアリス……そこにあるんですから……』
「……あー……」
何かあるのかとアリスに視線が集まるも、違和感を感じる扱く真っ当な理由を述べられてしまい、揃って溜息を吐いてしまう。モルフォがそこだと言ったのだから、当然そこに違和感があるのも当然だろう。
「……あれ?もしかしてこれって……」
「え、ユズ、なにかわかった?」
「えーと、ね……いや、これ本当にそうなの?」
じっと、二つの絵の、該当する間違いの部分を見比べる。じっと、目の近くまで持っていって目を凝らすレベルで真剣に見ていく。
「ま、まさかこれは……」
「間違い探しにやるの……?」
「でました!UZQueenモードです!」
「UZQueen……?」
突然のワードにウミカが困惑する目の前で、ユズはしっかりと検証していく。ただ、それでもやはり不安な所は不安なのだろう。やがて元の表情に戻ると、皆に見えるように皿と皿の間に指を震わせながら置く。
「多分……多分ここ。ほら、真ん中の皿と右下の皿の間の隙間……」
「「「「え……?」」」」
ユズが示した隙間を全員で見比べていく。隙間と伝えるユズの言葉に従い、じっと見ていく。そこまでやって初めて、
「あ!?」
「ほ、本当ですね……!」
ユズが発見した間違い探しの答え。それを見て、二つの皿の隙間が微妙に違っていることにようやく気付く。だが、こうやって指摘されて本当に漸く気付けるレベルの微妙な差だ。こんなもの、ノーヒントでわかるわけがなく、ウミカ達の表情が思わず引き気味になってしまう。
「……え、これわかる人いるの?」
「いやわかんないと思う……」
「わからないと思います」
「同感ですね……」
当然、こんな感想も出てくる。しかし、残念ながら間違い探しはまだもう一ヶ所残っているのだ。が、こんなとんでもない間違いを見せられてしまった以上、ユズであっても苦労するようなレベルではモモイ達に解くのはほぼ不可能だと悟ったのだろう。
「ねえねえモルフォ、これ残るのって何?」
「お姉ちゃん諦めちゃうんだ……いやまぁ私も聞こうと思ってたけど」
「アリスもこれは無理だと思います……」
「モルフォ、答えを教えてくれますか……?」
「私ももう一つは、もういいかな……」
これ以上はさすがにもう無理だと白旗を上げる。まあそうなるよねとモルフォもどことなく納得しながら、答え合わせを行っていく。左上にはリボンの見出しがついているのだが、そこの端っこを指差す。
「え?え……え!?」
「いや、ちょっと待ってなんか怖くなってきたんだけど」
「ひえええ……」
リボンには折り目がついているのだが、なんとその位置が本当に微妙に違っているのだ。こんなの、言われるまでわからないし、なんなら言われてもわからない。最早そんなレベルである。
「待って、これ本当に違う?違うの?」
「いや本当本当。ほらサイトにも答え載ってる」
「「うわぁ」」
答えを見せると、モモイとミドリが口を揃えてドン引きする。ま、なるわな……とモルフォも頷きながら、ウミカを見る。
「ま、こんな感じだったけど……なんかごめん、ウミカ。これ結構きついね……」
「い、いえ!元々ここにあったものですし……私の方こそ全然後半わからず……なんか、すみません」
「いやぁ別にいいっていいって。私達が挑戦して勝手に負けただけだし。それよりもさ、百鬼夜行でやるっていうお祭りのことなんだけど―――」
「!!なんでしょうか!!」
あまり力になれずに申し訳なさそうに肩を竦めるウミカに、話題転換をしようと祭りの事について質問する。それを聞き、目の色を変えて身を乗り出したウミカを宥めながら、彼女のお祭りトークにモルフォ達は耳を傾けるのだった。