転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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音瀬コタマ達と太鼓の達人パロディ

 

「えっと……それでお二人ともどうしたんですか?」

「ど、どうしたのその手首?湿布なんか貼っちゃって……」

 

突然ヴェリタスの部室を訪れたゲーム開発部。その内、モモイとミドリの両手首には湿布が貼ってあり、こっ酷く痛めていることがわかる。その並々ならぬ事態にコタマとハレも驚いたように見ており、マキに至っては冷や汗を流すほどだ。とはいえ、プルプルと何かを我慢するように震えている二人とは対照的に、その後ろに控えるユズとモルフォは苦笑しており、ケイは冷めたような視線をしているのは気になるが。

 

『うう、モモイとミドリの手首は大丈夫なんでしょうか……』

「いや、ただの腱鞘炎と言われたじゃないですか……」

「腱鞘炎?何やったのさ?モモとミドは」

 

マキが首を傾げながらモモイとミドリの手首を見る。湿布が貼ってあるせいで気付かなかったが言われてみると確かに腫れている気がする。一体、何をしたというのだろうか。そして、どうして彼女達がヴェリタスの部室を訪れたのか。

 

「……ドラムの達人ですよ」

「ドラムの達人というと、あのドラムの達人ですか?」

 

マキの言葉に若干呆れながらケイが答える。ドラムの達人。それはドラム……もとい和太鼓をバチで叩いて演奏をしていくというリズムゲームである。所謂太鼓の達人である。

 

「あれのやりすぎで手首をやられたみたいで……」

「お姉ちゃんがキヴォトス2000の鬼をノルマクリアしようとか言い出すから……」

「あ、それは手首を壊しますね」

 

ミドリの言葉を聞き、コタマが納得したように頷く。ドラムの達人は、面と縁、そのどちらかをバチで叩くことでドンとカッ、二つの音が鳴るようになっており、画面に流れる音符に合わせてどちらかの音をタイミングよく鳴らす。タイミングがピッタリならば「良」、少しずれていれば「可」、大きくずれていたり、外れていたりすると「不可」の判定が下される。このうち、良と可であればコンボが続くが、不可になってしまうとコンボが途切れてしまう。このコンボを繋いでいくと、画面に譜面と一緒に表示されているゲージが左から右へと動いていき、黄色い部分にやがて達する。その状態で演奏を終了することでノルマクリアとなるのだが、一度黄色い部分に達してもその後ミスが続けばゲージは普通に減少し、失敗する可能性もある。そのため、演奏中は常に気が抜けず、プレイヤーは可能な限りコンボを繋げるために努力するのだ。

 

「鬼はともかく、どうしてキヴォトス2000を……」

 

キヴォトス2000。俗に言う2000シリーズであり、太鼓の達人のプレイヤーであれば難易度の高い楽曲として知られているものである。当然このドラムの達人にも似たようなものはあり、このキヴォトス2000を始め、ゲヘナ2000、トリニティ2000、ミレニアム2000等々、バリエーションも豊かである。何より特徴的なのは、それぞれが異なる音楽ジャンルをテーマに作られており、中には曲の概念すら覆すかのようなリズムなどを取っているものすらある。

 

そのため、普通にやっていても難易度が高くプレイヤーは苦しめられるものなのだが、モモイとミドリがやった鬼という難易度がさらにやばかった。というのも、このゲームには易しい、普通、難しいという三つの難易度に加え、通常は出てこないものの特殊な操作を行うことで出現させられる鬼という最高難易度がある。これがまた、かなりの難しさであり、慣れた人でなければその圧倒的な譜面に押し流されることだろう。

 

「昨日の夕方ぐらいにゲーセンに行った時に、ドラムの達人を見て……」

「最近やってなかったし、やってみようってなったのはいいんだけど、それからあれやこれやで鬼のキヴォトス2000をクリアしようってなって……でも結局クリアできなくて」

「そっから意地になってやってたら……段々手首がきつくなって、そこを迎えに来たモルフォちゃんとケイちゃんに無理矢理中断させられて」

「……まあ、まずは難しいで様子を見てからやるべきでしたね」

 

そして、ゲーマーの意地でどうにかクリアしようとしたものの、先に肉体を壊してしまったようである。まあ事情は理解したが、ではどうして二人がこのヴェリタスにいるのか。そこまで考えたところで、コタマはあることに気付く。

 

「……もしかして皆さんがここに来た理由って」

「はい!コタマ先輩に仇を取ってもらおうと思って!」

「音楽ならコタマ先輩の得意分野ですよね!」

「……ま、まぁ確かに嗜んではいますが、正直その、ゲーセンでバチを持ってやってるタイプでは……」

 

モモイとミドリに詰められて、ずれた眼鏡を調整しながら困ったように頬を掻くコタマ。彼女とて当然、ドラムの達人はやっているし、むしろ結構やりこんでいる方である。しかし、あくまで彼女が言うやり込みはバチで叩くものというよりはゲーム機を使って遊ぶ方のやり込みであり、ボタンでポチポチとやる方である。ただボタンをタイミングよく押すのと、バチで叩いてタイミングを合わせて演奏するのでは、感覚が大きく違うのだろう。

 

「でも、得意なんですよね!?」

「まあ、他の人よりかはおそらく……?」

「へー、コタマ先輩のドラムの達人かー、見てみたいかも」

「マキ!?」

「あ、私も。よく部室で遊んでるのは見るけど、ゲーセンで遊んでるところは見ていないんだよね」

「ハレまで……はぁ、あんまり期待しないでくださいよ?結構感覚違いますからね」

 

いまいち乗り気ではないが、後輩達からもこう期待の視線を向けられてしまえば断ることもできない。あまり成果は期待しないようにと前置きしつつ、席を立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、難しいまでなら私でもできるか……」

「モルフォちゃん、鬼はやらないの?」

「あれはまず譜面と手の動かし方覚えてからじゃないと無理。今日初めてやってもノルマクリアすら厳しいよ」

「私も初見だとさすがに……」

 

そしてゲーセンに赴いたゲーム開発部とヴェリタス。折角だからと手を負傷しているモモイとミドリ以外の面々もドラムの達人に興じていた。そんな中、Unwelcome Schoolという曲名を演奏しきったモルフォは、フルコンボができたことに安堵するように溜息を吐く。

 

「しかし、難しいも中々難易度は高いですよ。モルフォも嗜んでいたり?」

「まあ、これは曲自体が難しいの中でも難易度低めなのはあるんじゃないですかね?難しいであってもヒャッキ2000とかやり出したら多分ノルマクリアも怪しいですし」

「うぅー、途中でミスってフルコンボ逃したの痛いなぁ」

 

モルフォと一緒にプレイしていたマキが溜息を吐く。このゲームは、アーケードの場合は一度のプレイで二人まで同時にプレイできるという仕様があり、その際は曲こそ共通ではあるが、難易度は個別に設定できる。そして、プレイ中、全ての音符を良、もしくは可で叩き終えるとその曲はフルコンボとなるのだ。

 

「それにしても、ただ音楽に合わせて叩くだけじゃないんですね!」

「そうなんだよね」

 

このゲームには、ドンとカッ以外にも様々な音符が存在する。通常の音符はバチ一本で面か左右の縁を叩けばいいのだが、中には通常のよりも大きな音符が存在する。その音符に対しては両手で同時に面を叩くか、左右から叩き、大きな音を出す必要がある。他にも、黄色く長い音符もあり、これが流れている間はひたすら面を叩いて連打することでスコアを稼いでいく。他にも、一定時間内に連打しないと不可になってしまう風船のような音符や、協力プレイなら二人で同時に叩かないといけない音符もあるなど、そのバリエーションは意外と多い。

 

「よーし、次はアリスが挑戦します!」

「じゃあ私がいこうかな」

 

モルフォとマキが挑戦を終えると、すぐにアリスとハレがお金を投入していく。そんな様子を見ていたモルフォが視線を横に向けると、そこではヘッドフォンを付け、手を曲に合わせて動かしているコタマの姿があった。どうやらこれから挑戦する曲の譜面を確認しているようだ。そんな集中している彼女の邪魔をするのは悪いと、ハレとアリスの挑戦を見守っていく。

 

「―――よし」

 

妖怪MAXを一気飲みし、カフェインをフルチャージしたハレがバチを両手に持つ。その隣でわくわくした様子でバチを握るアリスと一緒に、曲を選んでいく。といっても別にそこまで真剣にスコアだのを狙って選ぶわけではない。単純にハレが知っている持ち曲をやっていこうというだけの話だ。

 

「……そういえば、これなんか歌に違和感が」

「ああ、これ歌ってる人別人だからね。たまーに本人がやってくれてる場合もあるけど」

「えっ、そうなんですか!?」

 

曲を選ぼうとカーソルを合わせると、その歌のサビが流れていく。それはアリスも知っている曲だったようだが、その歌い方に違和感を感じて首を傾げてしまう。だが、それも当然だろうとハレが真実を伝える。

 

「へー、そうだったんだ」

「結構有名な話だよ、お姉ちゃん」

 

ドラムの達人に収録されている曲は、そっくりな人が本物にできるだけ寄せて歌っていることが多い。勿論、中には本人が歌っている曲も収録されているのだが、基本的にはそっくりさんがやっているカバー曲の形を取ることが多い。その理由は権利や金など、様々な問題があるのだが、この場でわざわざそれを指摘することもないだろう。

 

「まあ、そういう意味だと2000シリーズは心配ない曲と言えるのかもしれないね」

「あー、あれ自体がオリジナルだからね」

 

変に歌い手の変更などで知っている人からしたら違和感を感じられる作りになるよりもこちらの方が丁度いいのかもしれない。やがて曲が始まり、集中してバチを叩いていく二人。アリスは初めてやる曲ということもあって普通の難易度でやっており、ハレは慣れているのもあって難しいで挑戦していた。アリスは普通でやっているのもあり、初見でも普通にフルコンボができていたが、ハレの方は二、三回はコンボを落としてしまう。それでもノルマクリアには十分なスコアを稼ぎ、無事に演奏を終了する。

 

「ふう……まあ、こんなものかな」

 

全力でバチを振り回したのだろう、疲れを取るように両腕を回しながら画面を見る。その後も、途中でアリスとケイが交代するなどの一幕はあったものの、順調にプレイが終了し、二人とも戻ってくる。

 

「久しぶりにやると意外と効くね」

「凄く楽しかったです!」

「ハレ先輩お疲れー」

「よかったね、アリス、ケイ。結構良い感じだったし、次は上の難易度もやってみようよ」

「はい!アリスは次の難易度にチャレンジします!そしてクリアしてレベルアップします!」

 

ベンチに座り、妖怪MAXの缶を開けて再び飲み始めるハレ。一気に半分ほどを飲み干すと、ふぅと大きな溜息を吐きながら達成感を感じて笑みを浮かべる。そして、遂に本命のコタマの挑戦がやってくる。コタマはうんうんと頷きながらヘッドフォンに耳を当てて、スマホの画面に流れる実際のプレイ動画を見ながら調整を続けていたが、その表情が真剣そのものだったのもあり、中々声をかけれずにいた。だが、その最終調整も終わったのだろう。

 

「―――では、音瀬コタマ、いきます」

 

真剣な声音で歩き出し、ヘッドフォンを外してバチをしまう袋に立てかけると、太鼓を前にするコタマ。その洗練された動きは、100円玉を入れる動きすら美しく見えてくる。その雰囲気に見ていた全員が思わずごくりと息を呑む。硬貨を投入し、ゲームに参加すると、手慣れた動きで鬼の難易度を出す。そして迷わず、キヴォトス2000を選択する。すると、さすがは鬼と言うべきか、一気に大量の音符が流れ始めていく。

 

「うわっ、目が痛い……」

「慣れないとこうなるよねー、正直ここまで来たら見て打つより覚えて打つ方が早いと思う」

 

一人プレイの場合は、画面が広々と使えるのもあり、画面の下半分に賑やかしのようにモモフレンズのキャラ達がゲージに応じて現れ、踊り始めてくれるという演出がある。モモフレンズファンにはたまらない演出だろう。問題は、2000シリーズを前にそんなことを楽しんでいる余裕などあるわけがないというところだろうか。

 

「す、凄い……コタマ先輩、めっちゃ上手じゃん!」

「おお……」

 

そんな音符の群れを前に、なんとコタマは手を動かし続けてコンボを途絶えずに叩き続けていた。一心不乱に、目の前の音符に、譜面に、音楽に集中していく。一つも音符を逃さないという覇気と共に放たれるバチ捌きで処理していく。見る方も感心するレベルの全力の演奏は、遂に最後の音符を叩ききるというフルコンボを見せつけた。

 

「おおおおおお!?」

「凄い!凄いよコタマ先輩!!」

「成功するなんてさすがです!コタマ先輩!!」

「すごーい……やっぱ違うなぁ」

「そうだね」

 

その完璧な演奏に盛り上がる後輩達。コタマも全てを出しきったと言わんばかりの表情で、プルプルと両腕を震わせている。音に一家言ある者として、絶対に負けられない戦いを制したのはいいが、その代償はあまりにも大きい。おそらく明日はモモイとミドリの比ではないぐらいの痛みが腕を襲うことだろう。だが後悔はない。これで自分は―――

 

「もう一曲!もう一曲!」

「えっ」

「あ、そうか。一回で二回できるからまだ挑戦は」

「……そういえば、そうでしたっけ……」

 

呼吸を落ち着かせながら、画面を見る。しかし、これ以上はもう腕が無理だ。さすがに色々出し尽くしすぎた。

 

「申し訳ありませんが、もう腕が……後気力も正直あれですし、どうか……」

「まあ、仕方ありませんよ。コタマ先輩お疲れさまでした」

「これ、キンキンに冷えてるよ」

「あ、ありがとうございます……あ、まだユズはやってませんでしたよね。残りの分消化してもいいですよ」

「あ、それじゃあ……」

 

これ以上は許してくれと震える腕を上げながら懇願するコタマ。その様子を見せられたらモモイ達も引くしかない。ベンチに戻ってきたコタマはハレから受け取った冷たい妖怪MAXの缶を両腕で挟んで腕を冷やしていく。その冷たさが腕を通して全身に染み渡っていく中、コタマの残したバチを手にしたユズが曲を選んでいく。そして彼女が選んでいったのは、同じ2000シリーズの曲の一つ、ミレニアム2000である。

 

「そういえば……学園の名前を冠する2000シリーズもあるけど、あれって学園の許可取ってたりするのかな」

「まあ、別に許可なんてとってないんじゃないです?あくまで曲名につけてるだけでそこまで学園の事を話したりしてるわけでもありませんし」

「それはまあ、確かにそうですね」

 

その破天荒な曲に対し、表情を引き締めてUZQueenモードに入る。コタマの時も凄い集中力ではあったが、ユズの方も負けていない。そればかりか、手さばきの方は極限まで無駄を省いているようにも見えるし、なんならその動きすらリラックスして行っているようにすら見えてくる。心を無にして叩いているかのような無我の境地は、曲以上に人の動きを魅了していく。

 

「……おい、あれ」

「いやすげぇなぁ……って、ちょっと待て。あいつ可だしたか?」

「いや、見てないけど……え?待って、まさか」

「全部良……?ってうお、連打すっご……」

 

だが、なんといっても驚異的なのはその正確さだろう。なんとユズは、現在流れてくる全ての音符に良判定を出している。それだけでなく連打音符に対しても異次元の連打力を見せつけ、一気にスコアを稼いでいく。先程、コタマが全てを出しきって掴み取ったキヴォトス2000のフルコンボで足を止めて見学しに来た生徒達も多いのだろう、その矢先にユズのスーパープレイを見せられたことで観客達の興味も盛り上がりも更なる熱を帯びていく。そして、

 

『フルコンボ!!』

「「「おおおおおお!?」」」

 

遂にユズはフルコンボ、しかも全ての音符に対して良を出すというとんでもない結果を叩き出す。その異次元の結果を前に、それを見ていたギャラリーも思わず声を上げる。ユズのプレイに見入っていたモルフォ達も、ここで漸くギャラリー達に気付く。

 

「うわ、凄い人!?」

「ユズちゃん、さすがだね……」

「はい!さすがはUZQueenです!!」

「あ、アリスちゃんそれは言っちゃ……」

「UZQueenだって……?」

「UZQueen……まさか、あの?」

 

さらに、アリスがUZQueenの名を口にしたことで風向きが変わる。このギャラリーを前に慌ててマキが止めようとするも、時既に遅し。

 

「な、なあ!あんたがあのUZQueenなのか!?すげぇ、格ゲー以外でも滅茶苦茶強いんだな!!」

「そういえばレースゲーでも見ましたわ!最初は偽物かと思っていましたが、あのスコアは偽物とは思えませんし……」

「さ、サインください!!」

「え……え!?」

 

ここでユズも我に返ったのだろう。まさかの状況に陥っていることに気付き、UZQueenモードも解除されてしまい、あわあわと慌てた様子でモルフォ達に助けを求めようと視線を向ける。

 

「……ふぅ、仕方ありませんね。ゲームセンターに来る原因の一つには私もあるようですし……少し後輩達に格好いいところを見せるとしましょうか」

 

そう呟き、立ち上がるコタマ。そしてユズの下に向かうと、二人分のクレジットを入れていく。

 

「こ、コタマ先輩?」

「ユズ……二人プレイでキヴォトス2000の鬼、やりましょう」

「……!はい!!」

 

ゲームを始めよう。そう聞いたユズが再びUZQueenへと入っていく。そして、二人の奏でる激しい演奏に観客達がさらに盛り上がり、それからどうにかユズを連れて脱出することに成功する。

 

翌日、コタマは手首を無事破壊するのだった。

 

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