転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
ゲーム開発部と柴関ラーメン
「……まだかかりそう……?」
「……ここまでとは思わなんだ……」
アビドスの市街地を歩く四つの影。モルフォ、モモイ、ミドリ、ユズの四人は、至高のラーメンを求め、足を進めていた。まだ夏日でなくてよかった。もし夏にこんな中を歩いてたら干からびてもおかしくない。
「……準備はしてきたつもりだけど正直侮ってたかも」
それでもそこそこ暖かいことに変わりはない。帽子代わりに頭部に巻いた長いタオルの端を使って汗を拭いながら、モルフォは歩み続ける一行を見る。
「ユズ、汗掻いてないけど水飲んだ方がいいよ?」
「うん……」
「ちょっと休もうよ!あそこ日陰あるよ!」
そんな中、モモイが屋根がある場所を発見する。ここまで歩きっぱなしだったので、これはいいと四人は影に入って小休憩を取ることにする。
「うわ、もうエナドリないよ」
「お姉ちゃんエナドリ持ってきてたの?」
「飲み物はいるかなって思って……」
「いるけどスポドリとかをちゃんと用意しなよ……」
水分補給をしながら、モルフォはコンパスと地図を見る。道はちゃんと間違っていないようだ。アビドスはかなり広く、土地勘のない人が何の準備もなしに行ったら遭難は間違いない。おまけに砂嵐が数十年前から発生しているらしく、そのせいで過疎化も進んでおり、今では地図の更新をする人もいないようだ。
「……折角だしゲームの資料に砂漠の写真とかも撮っていきたいね」
「まあ、ここまで来たらねー」
「……それにしても、全然人いないね?砂のせいとは聞いてたけど」
(もしくはネル先輩が言ってたようにここもカイザーの土地だから、かなぁ。学園の土地か企業の土地かって結構でかいのかも)
カイザーコーポレーション。キヴォトスで様々な事業を行っている一大企業であり、派生会社の中には金融業だけでなく民間警備業務も担っている。そのため、カイザーの土地で騒ぎを起こそうとすれば捕まることは間違いない。悪人にはならないように注意しないといけない。
「……ふぅ、ここからラーメン屋までどれくらいー?」
「もうちょっとだけど……」
「やっぱ歩き続けると暑くなってくるね、もう上脱いでいいー?」
「焼けるから脱いだら後が大変だよ」
話をしながら休憩をしていた四人だが、休んでいたことで少しは参っていた気分も回復してきた。後は、ここまで来たのならせめてラーメンを食べないと帰れない、と考え始めてきたのかもしれない。
「……よし、気分転換にロシアンルーレットでもやろうか」
「モルフォ?」
「知らない?ロシアンルーレットはリボルバーに弾を1個だけ込めてシリンダーを回転させて額をパーンって」
「知ってるけどなんでそんなこというの!?」
「いきなり怖いこと言わないでよ!?」
そんなタイミングでいきなりロシアンルーレットを提案してきたモルフォに、モモイとミドリが真っ青になりながら否定する。銃弾を喰らっても死ぬことはないが、ゼロ距離でリボルバーを撃ち込まれたら痛いなんてもんじゃない。ユズも二人に同意するようにコクコクと頷いているが、モルフォはそれはわかっていると持ってきている荷物の中からチューイングガムを取り出す。
「まあそんなことはしない……というか私リボルバー使えないし。ロシアンルーレットはこれでやる」
「うわっ、懐かしいなぁ。一つだけ酸っぱい粉がめっちゃ入ってるやつ!」
「まだ売ってたんだねそれ」
「普通に駄菓子コーナーの一角にあったよ?」
モルフォが取り出したのは複数個入ったガムの中に一つだけ、酸っぱい粉が詰められた外れがあるという、よくあるタイプの奴だ。前世では大体三個入だった記憶があるのだが、キヴォトスでは学生たちが友人やグループで使うこともあるからか、意外と四個入やら五個入もあったりと意外とバリエーションに富んでいた。モモイ達も、今となってはお菓子を買うことはあっても駄菓子コーナーに足を運ぶことはあまりないのか、まだこれがあったことに驚いているようだ。
「じゃあどうする?これで外れ引いた人が全員分奢りとか!?」
「いやそこまでは……」
「お姉ちゃん、負けたら大変だよ?今月も課金してたでしょ」
「それを言われたら何ともいえない……!」
「課金はね……個人的には割引セールの時だけ課金するのが長く続けるコツなんだよ」
「一度課金し始めたらもうそのゲームからは逃れられないんだよ!!」
力説するモモイもそこそこに、モルフォがお菓子を開封し、全員で一個ずつガムを持つ。そして、同時に四人はそれを口の中に放り込んだ。
「「「…」」」」
「……!?すっぱ!?」
不幸にも外れを引いたのはミドリだった。あまりの酸っぱさに変な顔になりながら、普通の水を飲んで味を流そうとする。
「あはは、ミドリが外れだー!」
「そ、そんなに酸っぱい……?」
「これなんかすっごい酸っぱいんだけど!?え、こんなに酸っぱいの!?」
「一回試した時はよくここまでのものを用意したよと感動したよね」
「感動しないでよー!?」
シンプルに甘いガムを味わいながら自分の感想を述べていくモルフォの背中を思わず叩くミドリ。とはいえ、酸っぱいのは最初だけでそれが過ぎれば甘いガムが残るだけなので段々その表情も元に戻っていったが。
「……あ、でも確かにこのガム美味しいかも」
「でしょ?」
「……普通にガムを食べたかった……」
そして、そのまま溶けて小さくなっていくチューイングガムを味わいつつ、休憩を楽しんだ一行は再び柴関ラーメンへと移動を再開するのだった。
★
「いらっしゃい!」
「やっと着いたー!」
そしてついに、モルフォたちは目的地である柴関ラーメンへとたどり着いていた。店の中に入り、タオルを脱いだモルフォは、店長の案内で机に案内される。そして四人はお冷を飲み込みながら一息つく。
「あー、生き返るー!」
「み、水が冷たくて美味しい……!」
「……やっぱり来て正解だったね」
「え?」
店の中を見ていたモルフォが、ある方角を指差す。そこには四人の少女が座っているが、その服装を見るに彼女たちはゲヘナの制服っぽく見えた。
「ゲヘナからも人が来るんだからやっぱ名店なんだよ」
「成程ー、それより私、お腹ぺこぺこだよ、早く注文しよ!」
「この後は砂漠の写真撮って……後、砂に塗れた街って街のデザインにも使えそうだよね?」
「じゃあ街も回ってみる?ゲーム作りの参考になるかもよ?」
そんな、自分達を指差すモルフォの仕草を見ていた骸骨のようなマークのパーカーを着ていた少女。しかし四人の制服がミレニアムのものであることや、ゲーム作りという言葉を聞いて彼女たちから視線を外す。
「……?」
「どうしたの?ユズ」
「……うぅ、見られてた……やっぱりここらへんだとミレニアムの人って珍しいのかな……」
「……席、変わる?ユズが奥の方に行った方が人目につかなくなるでしょ?」
「ごめんね……」
ゲヘナの人から見たらここにミレニアムの生徒がいるのは珍しいのだろう。ユズと席を交換して彼女を奥の席へ移動させると、四人は柴関ラーメンという店のおすすめを注文することにする。
「それじゃ……」
「「「「いただきまーす!」」」」
少しして、四人分のラーメンが届いたところで四人は同時に麺をすすり始める。そしてすぐに、四人は同時に目を見開く。
「「「「美味しい!!」」」」
四人の口から飛び出した食事への感想。それと共に箸は止まらず、次から次へとラーメンを味わい始める。無理してでもここに来てよかったぁ、そう四人で話しながら楽しく談笑をしていたその時だった。
「わかった!何が引っかかってたのかわかったわ!問題はこの店、この店よ!!」
「「「「……?」」」」
突然、ゲヘナの生徒達が座る席から声が響く。箸を止めないまでもついつい耳を傾けてしまった四人には気付かず、桃色の髪の少女は何かに気付いたように声を張り上げる。
「私達は仕事しにこの辺りに来ているの!ハードボイルドに!アウトローっぽく!なのに何なのよこの店は!お腹いっぱい食べられるし!あったかくて親切で!話しかけてくれて、和気藹々でほんわかしたこの雰囲気!ここにいると、皆仲良しになっちゃう気がするのよ!」
「それに何か問題ある?」
彼女の力説を聞いた同席していた白髪の少女が首を傾げる。それを聞いた桃髪の少女は、ダン!と机を叩きながら、
「ダメでしょ!?滅茶苦茶でグダグダよ!?私が一人前の悪党になるには、こんな店は要らないのよ!私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの!こんなほっこり感じゃないのよ!」
「……なんかすっごいこと言ってるね……」
「ミドリ、反応しちゃダメだよ……」
しっ、目を合わせちゃいけません!とミドリの袖を引っ張って食事に戻らせるモモイ。まだまだ彼女たちの話は続きそうだが、やっぱゲヘナはやべーわと結論を下して、四人は視線を残りが少なくなってきたラーメンへと向ける。
「……いや、それは考えすぎなんじゃ?」
「……それって、こんなお店はぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」
そんな中、ずっと黙っていた深紫色の髪の少女の不穏な呟きが漏れる。先ほどまでアルと呼ばれた少女が騒いでいたこともあって全く四人は聞いていないし気付いていない。
「?なんで起爆装置を―――」
「!?ハルカ、ちょっと待……」
パーカーの少女がそれはまずいと慌てて止める間もなく、ハルカと呼ばれたその少女はそのボタンを押してしまう。直後、
「「「「!?」」」」
突然大爆発が巻き起こり、四人の体が吹き飛ばされる。爆発の勢いで建物が吹き飛び、店の外に投げ出されたモルフォは慌ててシールドを展開しながら体を起こす。
「今の……ば、爆発!?皆、大丈夫!?」
「な、なんとかー……」
「何が起こったの……?」
「ぶ、無事でよかった……」
視線を動かすと、周囲で倒れてるモモイ達を発見し怪我を確認する。幸い、軽傷で済んだようで、三人も銃を構えながら立ち上がる。爆破に巻き込まれてもピンピンでいられる体で本当に良かったと安堵しながらモルフォが視線を動かすと、そこにはゲヘナの四人の少女が、跡形もなく吹き飛んだラーメン屋を見ていた。
「……アルちゃん、マジで?マジでぶっ潰しちゃったの?」
「……え?」
「情にほだされるからって、あんなに優しくしてくれたラーメン屋さんを吹っ飛ばしたの?やるじゃん!」
「え?」
「これぞまさに、血も涙もない大悪党!そんじょそこらの雑魚には到底できない鬼畜の所業!悪人中の悪党だね!」
「……えっと?」
「これがハードボイルドなアウトローってやつだね!凄いよアルちゃん!見直したよ!」
「へ、あ、あははは!当然でしょう!?冷酷無比、情け無用!金さえもらえればなんでもオッケー!それがうちのモットーよ!?」
「ちょっと!!」
盛り上がるアルと白髪の少女に、モモイが怒りの様子で声を張り上げる。その声に四人も、モモイ達がいることに気付いて視線を移動させると、怒り心頭といった様子のモモイとミドリ、顔が青いユズと困惑しているモルフォが視界に入る。
「いきなりラーメン屋さんを爆発させるなんて何考えてるの!?」
「そうだよ!怪我したらどうするの!?」
「うーん、でも美食研究部も同じことやってるし?まあ巻き込まれて運がなかったなってことで!」
「くそー!ここまで苦労して来たのにこんなの許さないんだから!皆、こいつらとっちめてやろう!」
「「……」」
ヒートアップしていくモモイと、その後ろで静かに怒りのボルテージを上げていくミドリ。その様子を観察していたパーカーの女の子とモルフォの目が合う。この状況をどうするかな、みたいなそんな考えがお互い浮かんでいるのだろう。
「やっぱりあんたたちの仕業だったのね!!よくもこんな酷いことを!!」
「……あれは、仲間?制服が違うけど」
「でも味方という雰囲気ではありませんね~」
「だ、誰!?」
そこに三人の少女と一人の男性が現れる。猫耳のツインテールの少女と、狼の耳を持つ銀髪の少女、ベージュのロングヘアの少女を見たゲヘナの四人はその顔に見覚えがある様子だったが、モモイ達は知らない人物たちを前にさらに警戒を強めてしまう。
「だ、誰なのあの人達?」
「あれは……モルフォ!?なんでここに……彼女たちはミレニアムサイエンススクールの生徒達だよ」
『先生の知り合い……ということは、便利屋68とは違うようですね……この状況を見ると、便利屋の店舗爆破に巻き込まれた被害者、ということでしょうか』
「……あれ、先生!?」
その男性は、なんとシャーレの先生であった。先生の方もモルフォに気付いたようで驚きを露わにする。すると、彼女たちのオペレーターだろうか、冷静な少女の声が聞こえてくる。ゲヘナの四人組は便利屋68という組織の所属らしい。
「ミレニアムの皆さん、安心してくださいね~私達はアビドス高等学校の対策委員会ですから!」
「「「アビドス?」」」
「ここは私達の自治区よ!そこで滅茶苦茶やったそいつらをとっちめてやるわ!」
(自治区?え?アビドスの?)
聞き覚えのない学校名に首を傾げるモモイ達。しかし、モルフォが首を傾げたのは、その後の猫耳の少女の発言であった。アビドスだってこんなに広いのだから学校の一つや二つはあるだろうとは思っていたが、土地についてはカイザーのもののはずだし、ネルからそう聞いている。情報源がC&Cなのだ、間違ってはいないはずだが、彼女の迷いのない発言を聞いていると、実はここはアビドスの土地なのか?とも考えてしまう。
「ふふ……丁度白黒つけたいと思っていたところよ。真のアウトローの力を見せてあげるわ……!?」
そんなミレニアム生達が困惑と疑問に包まれる中、因縁があるらしい便利屋とアビドスの生徒達のにらみ合いが続く。そして遂に、戦闘が始まろうとしたその瞬間。
「!?」
どこかから飛んできた砲撃が、便利屋に襲い掛かる。それは正確な動きで便利屋達を吹き飛ばし、煙が晴れるとそこには倒れ意識を失った便利屋達の姿があった。
「え!?今度はどこが来たの!?」
「ここまで入り乱れてくるとトリニティが来たとか言われても信じちゃうよ……」
『兵力の所属、確認できました!ゲヘナの風紀委員会!一個中隊の規模です!』
アビドスのオペレーターの声が響く。おそらく、ミレニアムの四人のために敢えて伝えているのだろう。そして、風紀委員という言葉を聞いたアビドス生の表情が強張っていく。ただでさえ状況が混沌としているのにこれ以上滅茶苦茶にしないでくれ。そう言わんばかりにモモイが声を張り上げるのだった。
「もうどういう状況なのかわけわかんないよー!!」
本編が始まるとどうなる?
知らんのか 遊び相手が増える