転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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ゲーム開発部と予告状(前編)

騒がしいゲームセンター。格ゲーに勤しむモモイは真剣な表情を浮かべていた。今日は久しぶりに波に乗っており、なんと今日だけで四連勝しているという状態だ。この一戦で勝てば五連勝。丁度いい区切りとなる。だからこそ、全身全霊でモモイは打ち込んでいた。しかし、五戦目の相手は中々に手強い。これまでの相手と比べて一回りはレベルが上だ。

 

「ぐぐぐ……この……!」

 

すっかり相手のペースだ。こちらは何とか耐えているという有様。このままジリ貧になっていけば勝ち目は薄いだろう。だが。

 

「あっ、そこだ!!」

 

相手のコンボが崩れた。そこに即座に差し込み、こちらからコンボを叩き込む。そしてコンボの締めにここまでため込んだ全てのゲージを吐き出し、一気に相手の体力バーを削り切る。

 

「よっし!!五連勝!!」

 

ぐっと力強く拳を握りしめ、勝利の喜びを露わとする。このまま波に乗っていけるところまでと思ったが、空腹を感じてしまう。丁度いいし何か食べにいこうと席を立ち、移動しようとしたその時だった。

 

「―――失礼ですが、ゲーム開発部の方でしょうか?」

「え?」

 

ブルドッグのような顔つきの男性がモモイに声をかける。突然の声かけにモモイが少し驚いたような表情を浮かべながら男性の顔を見る。

 

「えっと、た、確かにゲーム開発部ですけどぉ……何か御用で……?」

「やっぱり!ゲーム開発部の生徒が時折ここのゲームセンターで遊んでいると聞いていたので足を運んだ甲斐がありました!」

「そ、そうですか……?えっと、それならわざわざこうして足を運ばなくても普通に連絡をくれれば……」

「いえいえ、ちょっと大事な話がしたかったので。何せ、一年生だけで構成されているにも関わらず、あのC&Cに肩を並べる秘密組織と……」

「……ん?」

 

何か風向きがおかしくなっていない?モモイがそう考えたその瞬間だった。モモイの手に男性は名刺を握らせる。

 

「えっ、あの!?これは!?」

「私はこういう者でして……皆さんに屋敷の掃除を依頼したいのです。報酬についてもこのようになっておりますので、是非とも」

「ど、銅田明太郎さん……?ぜ、是非ともって……!?」

 

続いて見せられた契約書を見て、モモイの顔が引き攣る。屋敷の掃除のアルバイトにしては随分と高額だ。そんなに屋敷がデカいのだろうか。いや、そもそもの話だ。掃除をやらせるならそれこそメイド部にやらせるべきではないだろうか。何故、自分達に。

 

「あの、なんでC&Cじゃなくて私達に―――」

「それでは、よろしくお願いしますね!もし契約を破棄したりしたら契約書に書かれている通りになりますので注意してくださいね!」

「えええええ!?」

 

しかし、モモイが追及する前に明太郎は他の客たちに紛れて姿を消してしまう。プルプルと震えながら名刺と契約書を握っていたモモイだったが、

 

「どうしてこうなるのー!」

 

頭を抱えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で?この依頼を無理矢理受けさせられたと?」

「違うの!最初は受ける気なかったの!でもいきなり押し付けられたし断る暇すらもらえなかったの!」

「いやまぁお姉ちゃんが悪くないってことはわかるよ……」

「災難だったね……」

「クエストですね!いつ出発しますか!」

「アリス、そういう問題じゃありませんよ」

 

ゲーム開発部の部室。そこでは頭を抱えるモモイと準備を進めるアリス、そして契約書と名刺を見て難しい顔をするモルフォ達の姿があった。

 

「違約金がエラいことになってるけど……これはまかり通る奴なの?」

「わかんない……こんな契約とかしたことないし……」

「内容に釣り合わない報酬……アリス知ってます。これは騙して悪いが……という奴だと」

「アリスちゃん、さっきノリノリで準備していなかった……?」

「はい!こういう時は悪意諸共叩き潰して依頼人がひっくり返るのが常識です!」

「まあ、利用してくるなら致し方なしでしょう」

「いや本当に潰しちゃ駄目だよ!?もしかしたら本当にただの掃除の依頼かもしれないじゃん!?なんかこう……機密とかいっぱいあるからこういう値段になってるだけで!」

 

モモイが半ば無理矢理受け取らされた、屋敷の掃除という依頼。別にそれだけならゲーム開発部もこう悩んだりはしない。ただ、あまりにも胡散臭すぎるのだ。それに、屋敷の掃除を依頼する際に依頼人がC&Cを引き合いに出した挙句、ゲーム開発部を秘密組織とまで言ったのだ。そんな相手が依頼するのは本当にただの掃除なのかと疑問が残ってしまう。

 

「まあ、そこは一旦置いといて、服装がメイド服と指定されてることについてはどうするんですか。いやなんでメイド服なら私達に?それこそC&Cでいいじゃないですか」

「う、うーん……壊しちゃまずいものがあるからとか……?ヒビキちゃんに聞いてみる?」

「そんな何着も持ってるかなぁ……」

「……ネル先輩に聞いてみようか。C&Cならスペアとかあるかも」

「って結局受けるのこれ……?ちょっと怪しいし先生に聞いてみた方がよくない?」

「まあ……本当に掃除で終わるなら全然受けてもいいんだけど、ねぇ……とりあえず衣装を借りれないか頼みに行くついでに聞いてみようか」

 

モルフォの言葉に皆も頷き、C&Cの部室へと向かう。しかし部室は鍵がかかって無人となっており、誰もいないようであった。

 

「あれ?ネル先輩達いない?」

「任務か何かかなぁ。どうしよう?」

「……?珍しいですね」

 

これでは衣装すら用意できない。こうなったらユウカに聞いてどうにか工面できないものかと考えていると、なんとトキと会う。

 

「あれ、トキ?」

「任務は?」

「今日はヒマリ先輩の付き添いで調査の護衛をしていました。部長達は別で依頼をやっているので数日はいないのでしょう。それより何故部室に?ゲーム開発部の部室は別ですよね」

「あー、実はちょっと……メイド服を借りようかと……」

「?」

 

思わず首を傾げるトキ。鍵を開けてもらい、C&Cの部室の中で事情を説明したトキは、名刺と契約書を見て、難しそうな表情を浮かべる。

 

「……皆さん、この男……銅田明太郎の依頼は受けない方がいいでしょう」

「え?ど、どういうこと?」

「この男は曰く付きなんです。美術商を営んでおり、コレクターから買い取った品を管理、それをオークションで再び流通させるというセカンダリー事業をしているのですが……」

「……それだけ聞いたら問題はなさそうに見えるけど。美品が壊れたら困るから私達に掃除を頼んだとか?」

「ええ、これだけ聞けばそうでしょう。ですが、実際はその買い取る品に問題があるのです。その買い取った品が、所謂窃盗品も含まれており、それらを用いた違法オークションをしているなどの噂もあり……この掃除というのもそのままの意味と捉えない方がいいでしょう」

「うわあああ」

 

思った以上に真っ黒な相手だった。これにはモモイも悲鳴を上げて頭を抱えてしまう。トキも腕を組んで悩み始める。

 

「とはいえ、これは逆にチャンスではありますね……こうして懐に入る機会を向こうからくれたのですから。しかし……やはり人数が……」

 

一番簡単なのは、ゲーム開発部が受けるこの依頼をそのままC&Cが引継ぎ、ゲーム開発部と偽って乗り込むという方法だ。が、ネル達が不在の今動けるのはトキのみである。そういうわけにはいかない。むむむと考えていたトキはやがて、溜息を吐いて立ち上がると。

 

「……まあ、そうですね。今はひとまず……」

「なんかわかったの?」

 

クローゼットの方に歩いていく。そしてクローゼットを開き、中にある様々なサイズのメイド服を見せるのだった。

 

「皆さんのメイド服を見繕いましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

「すみません先生、こんなことにつき合わせちゃって」

「ああ、気にしないでよ。折角だからね」

 

ミレニアムの廊下を歩く先生とユウカ。先生に差し当たっての用事は既に終わっており、校内を見回るユウカに付き合って歩いていた。途中で出会った生徒達に挨拶をして回ったり、軽く世間話をしたりしていると、

 

「……あら?C&Cの部室に誰かいる?」

「?ネル達じゃないの?」

「ああ、先生は知りませんでしたね。今、ネル先輩達は任務に出ているんです。トキもヒマリ先輩と何かの調査に向かっているようなのでいないと思うんですが……トキ、戻ってきたのかしら?」

 

C&Cの部室の前を通った時に聞き覚えのある声が聞こえてくる。ゲーム開発部の声に似ているというのは何となく感じていたが、二人ともモルフォ達がここにいるとは全く考えることができず、誰かがいるのかと首を傾げながら扉をノックして開ける。

 

「ねえ、誰かいる―――!?」

 

そしてそこにいたのは、メイド服に身を包んだゲーム開発部の六人とトキ。それを見ていたユウカは思わず固まってしまい、先生も驚いたような表情を浮かべてしまう。

 

「えっ、ユウカ!?それに先生も!?なんでここに!?」

「えーと、ちょっと偶然ね……それより皆、その恰好は?」

「ああ、今日からC&Cとゲーム開発部は合併しました」

「待ってそんな話聞いてないんだけど!?」

「ええ、冗談ですから」

 

まさかのトキの発言にびっくりするユウカ。思わず聞き返すレベルだったが、冗談だとわかりほっと胸を撫で下ろす。

 

「皆、似合ってるよ。綺麗だね」

「え?そ、そう?」

「えへへ……」

「あ、ありがとうございます……」

「やっぱり、アリス達はメイド服との相性がいいみたいです!」

「まあ、アリスであれば当然のことでしょう。他の皆さんも負けてはいないでしょうが」

 

先生は六人のメイド服姿を見て素直な感想を口にする。それを聞き、モモイ達も嬉しそうな顔をする。ネル達が普段使いしていることもあり、すっかり戦闘服のイメージがついているものの、メイド服自体は可愛い服である。それを偶然とはいえこうして着たといえば、見た目について良い評価をもらいたいという気持ちが少しは出てくるのも当然なのかもしれない。そんな浮かれ始めた五人をおいおいと苦笑しながら見ていたモルフォは、折角ならとあの話を切り出す。

 

「……どうする?先生にあの話する?」

「?何かあったの?」

「あー、実は……」

 

モモイが先生とついでにユウカに契約書と名刺を見せる。それを見たユウカは途端に黙り込んでしまい、先生もその報酬と違約金を見て驚いたような表情を浮かべる。

 

「……それで、皆は受けるつもりなの?メイド服をもう着ちゃってるけど……」

「えーと、そこを悩んでて……」

「メイド服についてはこの場で考えてもどうしようもないからとりあえず着てもらっただけです」

「トキ……」

「凄くお似合いですよ、モルフォ」

 

その後、明太郎についてセミナーが知っている話をユウカから聞いた後、本当にこの依頼を受けるつもりなのかと質問する先生。しかし、ゲーム開発部もかなり怪しんでいて、本当に受けるべきかどうか悩んでいる様子を見て安心したような表情を浮かべる。

 

「でも、ここでこの依頼を断ってゲーム開発部の評判が落ちたり違約金がやばいことになったりしたら……」

「なるわけないでしょ。あなた達カジノで荒稼ぎして金はかなり余裕あるんだから……まあそれはおいといても、そんなこと絶対させないわよ。違約金なんか払わせないし、そもそもこんなもの依頼でもなんでもないわよ!」

「ではどうするんですか?」

「決まってるでしょ!ネル先輩達に代わりに行ってもら……って……」

「……いないね……ネル達……」

「残念ながらもう替え玉作戦は考案済みですので」

 

が、ユウカのフォローも虚しく、C&C替え玉作戦は最初から実行不可能になってしまっていた。とはいえ、この依頼を断ったりするのはセミナーからすれば少々惜しい機会でもある。一体どうしたものかとユウカも頭を抱えていると、

 

「……では、ここは逆に考えるのはいかがでしょう」

「逆」

「その通りです。ゲーム開発部は六人……しかしこういった依頼では五人で動くしかありません。つまり、一人分の枠が空くわけです」

「……トキ。まさかあなた……」

 

トキが突然の提案をする。ゲーム開発部だけでは不安、しかしこの機会を逃したくない。ならばそこに他の戦力を入れればいいのだと。そしてそれは。

 

「そう。私がケイになればいいのです」

「ちょっと何言ってるかわからないですね」

 

トキが六人目のゲーム開発部として潜入する方法であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、よくいらっしゃいました!皆様がミレニアムが誇る秘密部隊、ゲーム開発部の六人なのですね……ところでそちらの方は?生徒ではありませんよね?」

「この人はゲーム開発部の顧問なんですよ」

「顧問……ですか」

「短い間ですが、よろしくお願いします。今回は生徒達の仕事ぶりを是非見せてもらおうかと思いまして」

 

そんなこんなで翌日。一日かけてセミナーの方で集めた情報も受け取った上で、メイド服に身を包んだ五人とトキは、先生の付き添いで明太郎の屋敷を訪れていた。明太郎の黒い話……とはいえ疑惑のそれを聞いている以上、シャーレが来たと言えば警戒されることは間違いない。そのため、ゲーム開発部の臨時顧問という名目で先生は訪れていた。しかし、皆の目の前に広がっていたそこは、想像を二回りは越えるほどの豪邸であり、これならば普通に掃除を依頼しに来たのでは?と一瞬だけ期待が持てた。しかし、

 

「依頼はお掃除だと伺っていますが」

「そうですね。実は私は美術商を営んでおりまして。オークションを行ってもいるのです。次のオークションでは貴重な作品も並ぶため、皆さんには参加者の護衛と警備もお願いしたいと思っています」

「……お掃除じゃないの!?」

 

明太郎の言葉に、モモイが絶句する。どこが掃除だというのか。しかし、明太郎は何を言っているのかと首を傾げると、

 

「ええ、その通りですが?C&Cではお掃除とはエージェント活動を指す隠語。であれば、秘密部隊であるゲーム開発部もまた同じなのでは?」

「……」

 

そんなわけあるかい!と声を大にして言いたかったものの、明太郎はどんどん話を続けていってしまう。

 

「事前に詳細を教えて下されば、まだこちらの準備も……」

「その点に関しては失礼いたしました。公衆の面前で込み入った話はとてもできず……限られた期間で話し合いの場を設けるのも難しいと判断し、あのような形を取らせていただきました。ともあれ……屋敷までご足労いただき感謝します。こうして私たちが出会えたのも何かの縁ではありますし……こちらをどうぞ」

「……これは?」

「暗号……?」

 

明太郎が渡した一通の手紙に、ゲーム開発部とトキは疑問の表情を浮かべる。そこには、暗号文のような内容が書かれていた。しかし、その末尾に書かれた送り主の名前を見たトキの目が細められる。

 

「……慈愛の怪盗の予告状」

「慈愛の怪盗……?」

「慈愛の怪盗とは七囚人の一人です」

「その通りです」

 

慈愛の怪盗。その名に首を傾げるユズ。トキの言葉を引き継いだ明太郎は、慈愛の怪盗について説明を始める。

 

「それって、ワカモと同じ……」

「その通りです。彼女の本名はわかりませんが……奴はターゲットにしたものは必ず盗んでいくことで有名です」

「怪盗っていうか犯罪者じゃ……」

「それに変な名前じゃない?慈愛って、何を愛してるの?」

「何となくその対象は彼女の行動から推測はできますが……偏愛と言いますか。歪んだ価値観から生み出される価値観といった方がいいでしょうね。予告状が届いたが最後、どのような警備も無意味で、宝は奪われてしまうのです。無論、この屋敷にもセキュリティはあります、しかし慈愛の怪盗が相手となれば……まあ、予告状があまりに難解なため、盗られるまで何が狙われているのかわからない、というのも大きいのですが」

 

それは手紙ではなく予告状だったようだ。七囚人、その名はモルフォ達も出会ったことこそないものの、キヴォトスでも有名な名前として知っている。そんな怪盗が盗もうとしているものは一体何なのか。それを知るべく、今一度ゲーム開発部はトキが持つ予告状を見る。

 

「……1日に22回、向き合う2人の旅人。正確な2人。計り知れない20。そして半歩。月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側。一度も授与されたことの無い、贅沢であるが不遇な剣のもとへ伺います……?」

「やっぱり暗号じゃないか……」

「ど、どういうこと……?」

「これが慈愛の怪盗の予告状です。まずもって、これを読み解くのが難しく……それにも関わらず、慈愛の怪盗は、堂々と予告状を送り、盗みを成功させたと自らの犯行を流布するのです……」

「私でももっとわかりやすく書くよ……」

『まあ、理解させないことで盗みを成功させやすくするっていう点では確かに合理的ですが……』

 

慈愛の怪盗なりに説明はしているのだろう。だが、それは一体何を意味しているのか。

 

「……1日22回……そう考えれば大体一時間一回のペースになるけど……」

「しかし、二時間合わないということでは……」

「……いや、もしかしたら……?あの、明太郎さん。この屋敷にアナログ時計はありますか?」

「?ええ、ホールの真ん中に大きな壁掛けの時計がありますが……」

「……そういうこと?」

「え、モルフォちゃんわかったの?」

「多分。実際に見てからの方がわかりやすいかな。案内してもらっていいですか?」

 

明太郎にホールに案内されると、そこには確かに大きな壁掛け時計があった。それを見たユズは確信を持ったように頷く。

 

「やっぱり……最初の方は解読できたと思う……!」

「本当ですか?」

「ど、どういうこと!?」

「一日22回に向き合う二人の旅人。これはきっと、アナログ時計の短針と長針のことを言ってるんだと思う」

 

時計の針は午前と午後、それぞれ11回しか重ならない。12時の時だけ二回重なり、残りの20回は違う時刻にそれぞれ重なるのだ。

 

「おお!?さすがはゲーム開発部、驚きの推理力ですね!では、その続きも既に!?」

「半歩。月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側。一度も授与された事の無い、贅沢であるが不遇な剣のもとへ伺います……だよね」

「半歩も時間だと思うけど……」

「あっ、わかった!30分のことじゃない?」

「……この場合の半歩は半付近の時間を示しているのでしょう」

「となると……大体5時27分から7時38分……かなぁ」

「……月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側……」

 

トキだけは明太郎に意識を向けながら予想を続けていく。モルフォも時間についての予想は他の皆に投げてその後の考察を進めるように壁掛けの時計を見る。

 

「まずアンティキティラっていうのが何なのかわからないと。明太郎さん、アンティキティラの裏側について心当たりは?これはおそらく場所の事を指示していると思いますが」

「いえ、何のことか……アンティキティラ……アンティキティラの裏側……!?」

「心当たりが?」

「い、いえ何も!しかしまぁ、本当に突拍子もない話ですよ。ですが……最後の授与された事のない、贅沢であるが不遇な剣であれば一つ心当たりを思い出しました!」

「本当ですか?」

 

モルフォの質問にそう答えると、明太郎は剣について心当たりを口にする。その仕草が、モルフォやケイにはどうしても、誤魔化しているように見えてしまい目を細めるものの、何を狙っているか、それに繋がる大事な情報である剣についての情報を得るために黙っておく。

 

「おそらく明後日から展示される美術品の事でしょう。持ってきてください」

 

近くにいたロボットの警備員に指示を出し、厳重に保管された絵画を持ってくる。そこには主人から剣を渡され騎士になる様子を描かれた叙任式の一幕が描かれていた。

 

「これは叙任式を切り取ったものです。この絵画に描かれた剣は一度も授与されたことの無い剣に当てはまるのではないでしょうか?そういう意味では不遇と言えるかと」

「『……』」

「言われてみれば?」

「こちらの絵画は、丁度オークションに出品予定の貴重な一品です。お求めの方も多いでしょう。皆さんのおかげで何が狙われているかもわかりましたし、皆様にはこちらの絵画を全力で守っていただきたいのです」

「……」

「え?他にも貴重な物はあるんじゃ……?」

「いえいえ!予告状の謎は解けたのですから、後はこれを守っていただければ!はっはっはっ、間抜けな慈愛の怪盗め……まさか奴も、これほど優秀な皆様がいらっしゃるとは、夢にも思わないでしょう!」

 

トキが無言のままモルフォを見つめる。直後、モモイが他にも警戒をした方がいいのではと進言すると、明太郎はその必要はないと高らかに笑いながら口を開く。

 

「そ、そうかな?」

「あ、ありがとうございます」

「お、お役に立てて何よりです……」

「これでクエスト更新ですね!次は絵を守ります!」

 

ゲーム開発部の面々も嬉しそうな反応を各々見せる。その様子を見て、満足気な表情を浮かべ、

 

「ありがとうございます。それでは慈愛の怪盗から宝を守るための警備、お願いしますね。明日から開催するイベントの期間中……初日はゲストを集めてのパーティー、二日目は美術品の展示、そして最終日にオークション。怪盗はこの三日間のどこかで来るでしょう、どうかよろしくお願いしますね」

 

そう伝え、明太郎は準備があるのでと一礼して去っていく。その後ろ姿を見ながら、ミドリは不安そうな表情を浮かべ、

 

(何か引っかかるなぁ)

 

と内心呟くのだった。

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