転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……大丈夫です。盗聴器の類は存在しません」
ゲーム開発部のために用意された部屋。休息などはこの部屋で行うこととなっている。その部屋の中に持ってきた千年の守護者を転がして調べてもらったケイが安全であることを報告する。
「うう、なんか変な事になってきたなぁ」
「明太郎が怪しいみたいな話だったのに、いつの間にか怪盗になってきちゃったし。これどうするの?警備だけでいいの?一応セミナーから頼まれてる依頼もあるし……」
「……少なくとも今ある展示品を見た限り、盗品を扱っているわけではありませんからね。さすがにミレニアムに警備を依頼してきた以上、尻尾が出ないように心掛けているということでしょう。そうなった場合は大人しく警備をすることになりそうですね」
「……もしくは、その尻尾を隠しているかもしれないけどね」
ソファに座り、はぁと溜息を吐きながらモルフォはコピーしてもらった予告状の文面を見ていた。その左右にケイとミドリが座り、一緒に文章を見ていく。
「やっぱり、モルフォちゃんも引っかかってるの?」
「まあね。確かにあれは剣だったけど……そもそも、時計の言い回しだってあんなに難解にしていたんだよ?そこで狙ってるものについてはあんなストレートな絵画だって指定する?」
「……やはり、そう思いますか」
「うん。もし本当にそうならさ、前半までの全部すっ飛ばして最後の何が狙われてるのかだけ解読して、後は時間一杯まで守ればいい。多少手間暇はかかるけど、そうすればいいんだから」
「身も蓋もない!?」
思わずモモイがツッコむが、実際問題その通りだろう。前半が難解でも、最後だけ解読して何を狙うかわかればそれだけで十分なら、後はどうとでもなるはずだ。
「慈愛の怪盗がこれまでも同じように予告を出してちゃんと盗んでいるのなら、ぱっと考えて出てくるようなものはミスリードの可能性が高い」
「じゃ、じゃあ何が狙いなの?」
「発想を逆転させるんだよモモイ」
「逆……転……?」
しかし、それでは予告状の意味がない。慈愛の怪盗からしてみれば予告状を解読できないならそれは無様と相手を嘲笑するものだが、前半なんて無駄、最後だけ解読すればいいとされればそれはあまり好ましく思っていないはずだ。あくまで全体を解読して初めて意味が繋がるような内容に仕上げている可能性が高い。
「ちゃんと予告状という形でヒントを出しているということは、これを解読させようとしているということ。つまり、何をどう難しくしてこういう形にしたか考えるんだよ」
「逆に……モルフォはいつもそう考えてるんですか?」
「推理ゲーで詰まった時ぐらいだよ」
いつのまにかモルフォの背後に回り、背もたれに両腕をかける形でくつろいでいるトキにそう答えながら、逆に考えることを提案する。
「逆ってどう考えればいいの?」
「つまり、慈愛の怪盗は何を盗もうとしているのか。それを盗むために必要な手順が何なのか、そしてそれが成立するのがどの時間なのか。そうやって考えていこう」
手を上げて質問するモモイに先生がそう付け加える。確かにそれならわかりやすい。ゲーム開発部全員でソファにぎゅうぎゅう詰めになるように座り、モルフォの両肩にトキは腕を回すように寄りかかり、全員で考え始める。
「じゃあまず本当の狙いが何なのかだけど……」
「わかんない!一旦なし!」
「いやそれでいいの?」
「まあ、わからないところは一旦置いといて分かるところから埋めるってテストでもよくやるし……」
「……じゃあそういうことでいいよお姉ちゃん……」
1日に22回、向き合う2人の旅人。正確な2人。計り知れない20。そして半歩。月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側。一度も授与されたことの無い、贅沢であるが不遇な剣のもとへ伺います。最後の文章である、「一度も授与されたことの無い、贅沢であるが不遇な剣のもとへ伺います」の文面は狙われている美術品である、という点だけ確定するに留めておく。続けて考えるべき部分は「月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側」。それより前は時間の部分であり、ここは解読済みだ。
「慈愛の怪盗が狙っている美術品。それを収められた場所がこの「月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側」。そして、それを盗める状況になるのが即ち、5時27分から7時38分程……」
「逆から考えるってことは美術品、それがある場所だからそこを記す必要がある、そしてそれを盗めるタイミングがこの時間だからそれを書いておく必要が……いや、この時間じゃないと盗めない?」
「……あっ、わかった!」
ポン、と手を叩き、ミドリが声を上げる。
「初日はパーティ、二日目は美術品の展示、そして最終日はオークション……パーティは時間が夜の八時から十時だから予告の時間と合わない。美術品の展示は一日中行うから、別にこの時間だって指定しなくてもいい。だけど、オークションは……五時から八時……!」
「オークションの日だけタイミングが一致してる!?」
すべての条件を満たす日。それは最終日。そして、その日に行われるイベントはオークションだ。となれば、
「「月の届かない場所、止まった舞とアンティキティラの裏側」……これを満たす場所がオークション会場ってこと?」
「時間帯だけで言うなら月自体まだ出ていない。それなら月が届かない、なんて言い回しはしないし、満たせない。つまり、月が届かないというのは別の比喩になる」
「……屋内。月の光が届かない場所という意味では窓すらない室内と考えれば辻褄が合わないでしょうか」
トキの言葉に、確かにと頷くゲーム開発部。月の届かない場所は、時間ではなく場所を示している。であれば、月が差し込む時間帯ではなく、月が差し込めない場所と考えるのが自然だろう。そして、月が差し込む隙間すらない、隔離された場所となると。
「一度、屋敷全体を確認した方がいいでしょう。慈愛の怪盗に備えた情報収集という名目であれば自由に動けますし、該当する場所を炙り出せるはずです。ただ……地上では全ての部屋、廊下に窓があるので、月の届かない場所は存在しないと思います」
「じゃあ地下室です!こういう時は隠し部屋があるものです!!」
「地下室……確かに地下室なら光は届かない。じゃあ「止まった舞とアンティキティラの裏側」は?」
場所は地下室。そこがオークション会場なのだろう。では、残るワード。止まった舞とアンティキティラの裏側とは何なのか。
「そもそもアンティキティラって何?」
「昔の時代に存在していたっていう天体運行を計算するために作られた手回し式の太陽系儀……って言われてる」
アンティキティラの歯車から元ネタを調べたことはあったなぁと思いながらも、この世界で同じわけがないのでスマホで調べていく。歴史的なあれこれはこのキヴォトスに合わせた形に変わっているようだが、アンティキティラ島の機械や、その機能的な問題などに関してはあまり変わりないようだ。
「太陽系儀?その裏側って……でも、そんなものはどこにもないよね?」
「―――いや。アンティキティラは最古の複雑な科学計算機だよ。そして、慈愛の怪盗は地下室を月の届かぬ場所と例えている。太陽系儀を使うってことは」
「!……暦の計算もできる。だから、あれ自体が時計と……?」
「ユズちゃん……まさか、あの壁掛け時計?いやでも……」
「それだけだと弱いよね?だって他にも……」
「いや、多分壁掛け時計で合ってる可能性は高いよ。よく思い返してみて。この屋敷に、アナログ時計がある場所を」
スマホをホワイトボード代わりにして情報を纏めていく。わかりやすくまとめられていくそれを全員が覗き込んで見続けていく中、モルフォはアナログ時計として壁掛け時計を指し示す。
「この屋敷にアナログ時計があるのはここだけ。指定した時間をアナログ時計が指し示す。それに呼応し、アンティキティラの裏側に怪盗は潜り込み、美術品を盗み出す……ここまでいえば、止まった舞が何のことか、分かるよね?モモイ」
「えっ、そこで私に振るの!?えっと、えっと……時計を止めないと開けられない?」
「あ、そうか……壁掛け時計の裏側にその通路があるのなら……事故とか怖いから、時計は止めてから動かしたいってこと?」
「……成程、そうかもしれないね。よし、まとめていこうか」
先生は皆が解読した情報を纏めていく。時間帯を抜き出し、謎の地下室へ向かうためのカギとなる壁掛け時計。狙われる美術品の正体こそまだわからないため、それも合わせて情報収集を続けることも視野にいれることで、この場は話がまとまるのだった。
★
初日のパーティを終え、警備を行うモルフォ達。慈愛の怪盗が本格的に仕掛けてくるのは三日目だとわかったものの、それ以外に仕掛けてこない可能性はまだ払拭できない。それに、慈愛の怪盗以外にも美術品を狙う者がいて、仕掛けてくる可能性だって考えられたため、こうして警備は通常通り行うこととなっていた。
「……うーん。アンティキティラの裏側、か」
「……裏側には何もありませんね」
「でも、止まった舞っていうのは時間的な意味じゃなくて、時計の近くにある踊り子の像のことを示しているのはわかったね」
そんな中、モルフォとケイ、トキの三人は壁掛け時計を観察していた。この現場を見られて仮に聞かれた時は予告状について考察を進めていたと言えば大体誤魔化せるのである程度は大っぴらにやることにはしていた。
「裏側……何を示しているのでしょうか」
「……狙われた美術品について教えられない、か。ついでにオークション会場の位置も教えられない、か。いくらなんでもこれで警備をやれ、ってのもおかしな話だよね」
しかし、それ以上にモルフォ達の頭痛の種となっていたのは、明太郎がここにきて情報を出し渋ってきたことだ。慈愛の怪盗に美術品を盗まれたとあれば、そっちの方が大事なのだから、そうならないように協力する必要があるはずだ。しかし、ここに来てその情報を伝えないというのはさすがにどうかと思ってしまう。
「まあ、おかげで疑惑は確信に変わりました。明太郎は、違法オークションを開催しようとしています。慈愛の怪盗が求める美術品と、明太郎が違法オークションで取り扱っている美術品……おそらく目玉足り得る一品は同一の存在なのでしょう。そうなると、やはり王冠が剣なのでしょうか……」
「王冠、か。そういえば明太郎が扱っている盗品にそんなものがあるってセミナーが言ってたね。だけど……剣じゃないよね」
淡々と告げるトキの言葉に頷く二人。情報を知られてはいけない、そういう後ろめたい事実が隠されているのだろう。それを聞いて思い出したのは、王冠だった。王冠とは、セミナーが掴んでいた盗品の情報で、今回のオークションでも出品されるかもしれないものであった。しかし、それについて調べる前に予告状の存在が明らかになったことで、まず慈愛の怪盗について対応せざるを得なくなったため、一旦剣とは結び付かない王冠については保留としたのだ。そして、慈愛の怪盗の存在を知れば明太郎も大っぴらに動かなくなる可能性も出てくる。王冠をどこかに移動されるなどの対応を取られては追いようがなくなってしまうと危惧していたのだが。
「ですが、この隠し方は異常です……明太郎は解読もほぼ終わっていて、こちらには一切共有していないということになります。まるで、慈愛の怪盗の真の狙いがわかっているかのような。それを踏まえると……王冠が剣だというのは火を見るより明らかでしょう」
「このまま慈愛の怪盗が出なければ何もなし。出たとしても王冠を守り切れればそれっぽい形でお茶を濁して終わり。逆に奪われたら、私達に警備の責任を全て押し付けて自分はとんずら……」
「……とんでもないことになってきましたね」
「……いっそ明太郎を押さえてしまえば楽なのでは?盗品なんでしょう?そうしてしまえば予告も何もあったもんじゃありません」
「変に追い込んで美術品を紛失させられたり破壊されたりする可能性も考えられそうだけど」
「それは困りますね」
どうにかして明太郎から詳細を知りたい。そのためにどう情報を集めるべきか、考えていたモルフォ達。しかし、そこでに聞こえてきた声は、三人の内誰の声でもない。三人が振り向くと同時に、突然屋敷が停電に陥る。
「停電!?」
「モルフォ!」
「皆!」
「皆集まって!」
パーティを訪れていたゲストたちが困惑する中、一人の少女の声が聞こえてくる。
「ある者は、こう言いました―――「価値ある物は、その手に収めてこそだ」と。たとえ人目に触れぬまま……何年、何十年と経過し―――いつしか人々から忘れ去られようとも。」
モルフォ達が警戒したように辺りを見渡していく。だが、聞こえてくるのは声ばかり。
「しかし、それは本当に正しいのでしょうか?美術品とは、広く知られてこそ、その価値を証明できるのでは?」
「まさか……!」
その名乗りを聞いた明太郎が何かに気付いたように震える声を漏らす。どこからか聞こえてくるその声は、続いていく。
「ある者は、私を盗人と蔑み―――そしてまた、ある者は私を咎人と罵る。人は生まれながらにして名を持つわけではありません。呼び名とは、他者から与えられるもの。故に、私は―――その名を受け入れました。そう、我が名は―――」
そして、明かりが復活すると共にホールの二階に現れた少女に、その場にいた全員の視線が集まる。そこには、マスクを付け、白いタキシードのようなスーツに身を包んだ人物が現れる。薄桃色の長髪を揺らめかせ、猫の耳を見せる彼女を見て、モルフォ達の警戒心が強まっていく。
「慈愛の怪盗」
「!」
「トキ!」
慈愛の怪盗を目にした瞬間、トキが地を蹴ってホールの二階へと跳び上がる。慈愛の怪盗は通路の方へとその身を翻し、トキはその後を追いかける。
「その並外れた身のこなし―――美しい」
「私の身体能力を見定めて、どうするつもりですか?」
「ふふっ、純粋な誉め言葉ですよ」
通路の中を走る慈愛の怪盗と、それを追いかけるトキ。余裕たっぷりといった様子で言葉を口にしていく慈愛の怪盗に対し、トキは冷静に受け答えをしていく。
「お礼でも述べるべきでしたか?」
「嗚呼、この美学が通じないだなんて―――私はとても悲しいです」
「そういう話がしたければゲーム開発部とすることをお勧めしますよ―――ああ。そこの曲がり角に注意した方がいいですよ」
「何―――え!?」
そしてトキが突然の忠告をする。それを聞いた慈愛の怪盗が一瞬驚いたような表情を浮かべながら廊下に飛び出した瞬間。弾丸が飛んでくる気配を察知して咄嗟に体を捻る。
「避けられた!?」
「今です!」
「くっ!?」
ミドリのライフルによる素早い弾丸。それを避けた直後、間髪入れずにスーパーノヴァの砲撃が飛んでくる。そのままでは避けられない攻撃。しかし慈愛の怪盗は通路で身体を捻る形で跳んだことを利用し、壁を蹴って跳ぶことで強引にそれを回避する。
「いた!怪盗だ!」
「追い詰めるよ、ユズ!」
「うん……!」
ミドリとアリスの攻撃を避けたところに間髪入れずにモモイとユズが近づきながら攻撃を仕掛けていく。しかし、それを見た慈愛の怪盗は不敵な笑みを浮かべながら起き上がる。直後、モモイとユズが何かを踏んだような音と共に爆発が起こり、二人が吹き飛んでいく。
「「きゃああ!?」」
「お姉ちゃん!?」
「ユズ!?」
「ふふ、足元にも気を配った方がいいですよ?折角のダンスが台無しになってしまいますから」
「っ……!」
「あなたも、ダンスが乱れてしまいましたね―――」
咄嗟にトキが慈愛の怪盗の懐に飛び込もうとした、その時だった。トキの目の前に球体の何かが飛び込んでくると同時に地面が爆発する。それもまた、モモイとユズを仕留めたのと同じ、慈愛の怪盗が用意した罠であった。
「これは、罠……!?」
「ふむ、気付きましたか……!?」
ここで、慈愛の怪盗の表情が初めて歪む。近くに仕掛けていた罠が爆破すると同時に、その爆発の勢いをシールドで受けてこちらへ吹き飛び、懐に潜り込んできたもう一人のメイド、モルフォに気付いたのだ。しかし、この程度ならばと慈愛の怪盗が手榴弾を取り出し、放り投げる。しかしモルフォは慈愛の怪盗を跳び越すように跳んで背後へと降り立つと同時に、放り投げられた手榴弾から小さな爆発と共に煙が上がり、通路を満たしてしまう。
「ふふ」
「―――アリス!ケイ!」
煙の中、慈愛の怪盗をさらに回り込んでアリス達を背後に捉えるように移動しながらシールドバッシュを仕掛けていく。しかし慈愛の怪盗はそれを華麗な動きで避けていく。モルフォはアリス、そしてケイの名を呼びながら、ショットガンハンマーで床を擦る。直後、足音が鳴りだす。
(もう一人入ってきましたね、そして一人は囮ですか)
さらに、モルフォは今度は慈愛の怪盗の真横を突き抜けていく。煙の中でこちらの位置を予想して的確に動く状況判断能力はさすがだと慈愛の怪盗も賞賛するものの、この程度では。本命であるアリスとケイが来るのを待とうとした慈愛の怪盗だったが、今度は背後からも足音が聞こえてくる。
「トキ!」
「!?」
「モモイ!ミドリ!!」
(ありえない……!?全員この煙に突っ込んでいるのなら、こんなに広くない……!だけど足音は確かに、まさか―――)
「はあああ!!」
「っ!!」
それだけではない、四方八方から足音が次々と聞こえてくる。だが、彼女の視界はありえない現象が起こっていた。煙の中であるまじき密度。なのに、慈愛の怪盗は視線を周囲へと向けると誰もいないのだ。困惑と共に視線を周囲に向けたことで、モルフォの姿をも見失ってしまう。
(一体どこに―――)
「やああああ!!」
「下!?」
だが慈愛の怪盗が気付いたその時には、モルフォは慈愛の怪盗に攻撃を仕掛けていた。ここまで、銃の音声変換機能を使って慈愛の怪盗の攪乱を行っていたモルフォは、一瞬の隙を突いて彼女の視界から消えての攻撃、スライディングによる突撃を行っていた。一瞬遅れて慈愛の怪盗もジャンプするも、その足を挫くことには成功し、慈愛の怪盗は苦しそうに煙の中から前転をするような形で飛び出す形になる。
「く……」
「モルフォにばかり構っていいのですか?慈愛の怪盗の名に違わず慧眼のようですが―――この場には他にも人がいますよ」
「わかっていますとも……!」
そこに煙から出てくるのを待ち構えていたようにトキが攻撃を仕掛ける。多少銃弾を受け苦痛に表情を歪ませながらも、慈愛の怪盗はそのまま前転を続け、トキから逃れると素早く起き上がる。
「……どうやらお嬢さん方は相当な実力をお持ちのようですね。これがゲーム開発部の六人……だからこそ解せません。何故銅田に協力を?」
「……それは、王冠が剣だと?」
「……!ほう……私の美学を理解するとは」
一旦距離を取る慈愛の怪盗を前に、各々装備を手にし相対するゲーム開発部。やはり、慈愛の怪盗は明太郎の黒い噂について知っているのだろう。その上で、盗品を対象としてそれを盗むと言ってのけるということは―――
「まさか、義賊稼業……」
「―――!ふふ……義賊ですか。そう言われたのはおそらく初めてですね」
モルフォの指摘に、慈愛の怪盗も満更でもなさそうな表情を浮かべる。そこに、遅れて駆けつけた先生が質問を投げかける。
「君が慈愛の怪盗だね。どうして美術品を?」
「―――!あなたは……ふふ、シャーレの先生、ですか。ふふ、どうやら皆さんも色々と怪しんでいるみたいですし―――」
「慈愛の怪盗め!この屋敷に忍び込んだが最後、そう簡単には抜け出せんぞ!」
慈愛の怪盗が先生を見て一瞬驚いたような表情を浮かべた直後。明太郎が警備のロボット達を引き連れて現れる。時間をかけすぎたか、そう言うかのように慈愛の怪盗が表情を歪めた直後。なんとロボット達はゲーム開発部諸共慈愛の怪盗へと無差別に攻撃を開始し始める。
「なっ!?」
「なんで私達まで!?」
「っ、こいつら!!」
「全員散開!とにかく距離を―――!!」
さらに間髪入れずに、何発もの手榴弾が投げ込まれる。先生の指示を受けて慌てて逃げ始めるモモイ達。慈愛の怪盗もすぐに逃げようとするのだが、足に走った痛みに一瞬口元が歪められる。モルフォから受けたスライディングのダメージは思ったより大きかったのだ。そして慈愛の怪盗が気付いたその時。目の前にはいくつもの手榴弾が投げ込まれていた。それを見て、覚悟を決めて慈愛の怪盗が両腕をクロスして耐えようとしたその時。その眼前にモルフォが立ちはだかり、大爆発が二人を襲うのだった。