転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……く……」
思い切り地面に体を打ち付けたのだろう、顔を顰めながら慈愛の怪盗が体を起こそうとする。だが、自身の腹部にモルフォの背中が乗っかっていることに気付く。
「!あなたは……何故」
「……何故、か。なんでかな……慈愛の怪盗ならわかるんじゃない?」
爆発によって吹き飛ばされた二人は屋敷の窓から外へと投げ出されていた。モルフォはゆっくりと体を起こし、痺れを振り払うかのように軽く左腕を振ってから慈愛の怪盗を見る。
「ふふ……私を助ける見返りに、今回のターゲットを見逃せ。そう言いたいのですか?」
「いや?でもまあ半分はそうなのかな」
「?」
慈愛の怪盗も立ち上がり、近くの木に背を預けながら足を見る。足、というより足首の痛みは深刻なようであり、今の爆発のせいで余計に酷くなってしまったようだ。それでも、ここに長居するわけにはいかない。一旦退くかのようにモルフォに背を向けたその時だった。
「……私達は、銅田明太郎を怪しんでる」
「……」
モルフォの言葉に慈愛の怪盗は足を止める。聞く価値があると判断したのだろう。
「あいつは私達に、剣の描かれた絵画を見せて、これが狙われている絵画だと言ってきた。そのくせ、こちらが予告状を解読した時はオークション会場や王冠については一切情報を明かしてくれなかった。おそらくあなたの本当の狙いを、明太郎は何か知っている。逆に私達には何も知らせないで偽物の情報で動かそうとしている」
「ふふ……私とこんなことを話していいのですか。依頼人に不義理では?」
「先に不義理働いてるのはどっちさ。平気で味方を撃って怪我させてくる奴に芸術も何もあるか」
「確かに」
モルフォの話に口角を上げていく慈愛の怪盗。と、二人の耳に人が走ってくる音が聞こえてくる。外に飛び出した慈愛の怪盗を捕まえようと明太郎が追手を寄越してきたのだろう。
「どうやら、密談はこれまでになりそうですね」
「あっ」
「ふふ、それでは次に出会える日を楽しみにしていますよ、ゲーム開発部……特にあなたとは、良き話し相手になりそうです」
その音を聞き、慈愛の怪盗が闇の中へと消えていく。その様子を見届けた後にモルフォは、いかにもダメージを負っています、という素振りを見せるかのように木にもたれかかるように座り込み、目を閉じて気絶したフリをするのだった。
★
「……成程、そんなことが」
「だから慈愛の怪盗を逃がしたんだね」
その後、部屋に戻ったゲーム開発部は、事の顛末を聞いていた。モルフォが気絶していた様子を見たゲーム開発部の慌てようは予想以上に凄まじく、慈愛の怪盗を一旦逃がすために明太郎達に演技をする必要があったとはいえ、あれはさすがに間違えたかとモルフォは頭に手を当てる。
「それより、なんなのあの人達!私達ごと攻撃なんて……しかも、モルフォを吹き飛ばして……!」
「やっぱり明太郎は黒です、今すぐ捕まえましょう」
「落ち着いて、皆。こういう状況だからこそ、慈愛の怪盗が送った予告状を紐解こう。とにかく、最終日のオークションの開催場所を見つけないとね」
憤るモルフォ以外のゲーム開発部とトキを落ち着かせて話題を切り替えていく。先生の言葉に頷き、今後の行動についてまとめていく。
「まずは、最初に示した絵画を別の場所へ運びましょう。表向きのアピールとしてはこのように動いておけば明太郎は誤魔化せるはずです」
「場所についてですが、一つ知る方法があります」
「ケイ、本当に!?」
カモフラージュとなる行動を決め、どうやって情報を集めるのか。それに対し、ケイがある案を提示する。
「監視カメラのシステムをハッキングして映像を引き抜きます」
「えっ、それは……」
「先にこちらを攻撃して裏切ってきたのは明太郎の方です。今までは怪しいとはいえ証拠を掴むまではギリギリ不誠実な依頼者で済んでいました。ですがこうなった以上話は別です。何を躊躇する必要がありますか?」
「それは……まあ……」
「では問題ありませんね。ハッキングで映像を手に入れれば、多分オークション会場と思われる場所もわかることでしょう」
一瞬、先生もあまりやばい方法はと思いかけたものの、今回に関しては明太郎側に黒い部分が多すぎる。で、あればこのハッキングも致し方ないことだ。それに、これで明太郎が白と分かれば、その時は憂いなく全力で慈愛の怪盗に対応できる。やって無駄なことではないだろう。
「では、そのように」
そして朝。早朝の間にケイは素早くハッキングを行いデータを抜いており、先生がケイが引き抜いたデータを調べていた。そして昼頃に手が空いていたモルフォを呼び、一旦屋敷の外に出て他の人達の声が聞こえないようになっている状態で調べた結果について聞かされていた。
「……壁掛け時計の裏から続く通路に、オークション会場が……やっぱり本当にあったんですね」
「うん。スペースから見てほぼ間違いないと思う。月の光も届かない、アンティキティラ……すなわち壁掛け時計の裏側にある地下空間……場所は間違いなく一致している」
「……そうか。そんな場所じゃないと盗品は扱えない。表で見せつけて、嗅ぎつけられたら大事だから。じゃあ、「一度も授与されたことの無い、贅沢であるが不遇な剣」っていうのは……盗品であるが故に曰く付きのレッテルを貼られている品ってこと?」
「でも、王冠は剣じゃないよね?」
「最初に明太郎に剣の絵画を見せられたせいですっかり刷り込まれていました。ですが剣も結局比喩なんですよ。剣とは文字通りに振って、敵を斬る、そういう剣じゃないんです。剣とは武勲、そういう権威を示しているんだと思います」
『ふふ……その通り。やはりあなたは素晴らしいお方のようです』
「「!!」」
遂に明らかとなったオークション会場。そして、隠されたオークション会場が実在していることが明らかとなったことで、最後の文面、「一度も授与されたことの無い贅沢であるが不遇な剣」という言葉の意味も遂に理解する。だがそれより、モルフォの服から聞こえてきた言葉に、二人の身が固まる。モルフォが服を見ると、そこには小さな機械が取り付けられていた。
「これは……通信機。そうか、あの時に」
『ふふ、本日はこのような形で申し訳ありません。ですが……一つ確認させていただこうかと』
「……」
それは、慈愛の怪盗の声だった。昨日、屋敷の外に飛び出した時に通信機を取り付けられたのだろう。しかし、慈愛の怪盗は謎を完全に解読してみせたモルフォに何を確認しようというのか。
『ゲーム開発部の皆さん。手を引きなさい。明太郎は悪しき者……あのような美術品の真の価値も理解できない者の下に、王冠はあってはいけないのです』
「……盗んだ美術品はどうなるの?」
『勿論、私の手元に。今の時代では、芸術品の真の価値を理解する者は私しかいない……私の予告状を解読してみせたあなた達ならばいずれはその境地に辿り着くかもしれませんが』
義賊でも何でもないなこれは……と内心呆れるモルフォ。これでは窃盗となんら変わりはない。これでは理由をつけているだけでただの盗人ではないか。
(いや七囚人なんだから犯罪者だったわ……)
よくよく考えなくても収容されているし怪盗と言われているのだから確かに犯罪者である。
「真の価値、か……まあ、確かに受け取り方は人それぞれではあるけども」
『ふふ、その通り。どうやらあなたは他よりは話せる人のようですね』
「まあ、ゲームだって芸術だし……」
『……ふむ?確かにそうとも言えるのかもしれませんね』
(……あー、確かに……?)
ゲームはプレイするものの心を豊かにさせる。そういう意味では、芸術品と通ずるものがあるのだろう。先生は一瞬だけマエストロの事を思い出したがさすがに不謹慎だと速攻で忘れることにする。そんな中、モルフォの言葉に賛同する様子を見せた慈愛の怪盗を前に、モルフォはある提案をする。
「慈愛の怪盗。少なくともその盗品を明太郎の下から解放するという点では手を取り合える」
『ええ、そうですね。ですがその後はどうしますか?私とあなた達で王冠を奪い合うと?』
「―――私達は残念ながら美術の価値は疎い。あなたが美術品の真の価値を知っている人間だ、と言われても残念ながらその全てを理解はしきれない」
『でしょうね……そこは残念なところです。あなた方がかのワイルドハントに通って芸術を学んでいたら話は変わったのかもしれませんが』
「でも私達はゲームを作っているし、多くのゲームをプレイしている。だから、ゲームという一点だけなら、その真の価値を理解できる」
『?何が言いたいのです?』
「―――取引をしよう、慈愛の怪盗」
モルフォの話に耳を傾けてくれた慈愛の怪盗。今ならば取り付けられると確信し、モルフォは慈愛の怪盗に取引を持ち掛けるのだった。
★
「く、暗いね……」
「……この先にオークション会場が」
「ていうかモルフォちゃん、本当に大丈夫なの……?慈愛の怪盗と取引って」
「……慈愛の怪盗の美術へのプライドに賭けるしかない。でも、手応えはあった……はず。ですよね、先生」
「うん、モルフォの言う通りだよ。それに彼女は信頼していいと思うんだ。芸術にかける思いは本物だし、それに彼女も私の生徒だからね」
「せ、先生もそう言うなら……」
「それより、時間的に皆がいなかったとはいえ勝手にこんなこと約束しちゃってごめん」
「あ、いいよいいよ。モルフォが約束してくるなら全然。そこは疑ってないし」
「……疑わないのはいいけど少しは考えてよ」
監視カメラの映像から探り当てた、壁掛け時計の近くにあった仕掛けを作動し、暗い地下通路を慎重に進んでいくゲーム開発部達。段々熱気や大観衆の声が聞こえ、モルフォ達は息を殺して音を立てないように気を付けていく。そして、遂に明かりが見え始めた先に広がっていたのは、巨大なオークション会場だった。
「これは……!」
「早く見せてください!あれを見るためにここに来たんですよ!」
「そうです!早く!時計王の冠を!!」
「……時計王の冠……?」
「……!時計王の冠、それが、王冠の正式な名前……」
時計王の冠。オークション会場に辿り着いたモルフォ達の耳に聞こえてきた声に、モルフォ達は息を呑む。いや、それよりも。
「オークションって明日のはずじゃ……」
「慈愛の怪盗に警戒しているのか。それとも、警戒しているのは私達もなのか……」
「しかし明太郎さん!昨日は慈愛の怪盗が出て大変だったじゃないですか!オークションを開催してもいいんですか?」
「ハッハッハッ、予告状が届いたのですから、当然対策しておりますとも!何せミレニアムでも指折りの秘密組織、ゲーム開発部が屋敷の警備になっているんですからね!彼女達が時間稼ぎをしている間にオークションを終わらせればいいんですよ!勿論怪盗が捕らえられるのなら、それに越したことはないですが……私としては共倒れになろうと一向に構いません!C&Cならばここも嗅ぎつけたかもしれませんが、ゲーム開発部は一年生だけの組織と聞きますからね!経験もない小娘ではここはわかりませんとも!」
「……成程。最初からそのつもりで……」
ステージに立つ明太郎の声に、トキの目が細められていく。そしてアリスと目を合わせると、アリスの目の色が赤く変わる。
「それに……もし慈愛の怪盗が彼女らを破ってここに辿り着いたとしても、それまでの戦闘で消耗しているでしょうしね。そうなれば、後は私の付き人で十分ですよ」
「……ここで取引されている品は、時計王の冠以外にも全て所在が不明になっていた盗品ばかりのようですね」
「ええ―――もが」
『成程、RPGのオークション会場ですね!貴重なアーティファクトが取引されたり、敵の陰謀に繋がる手がかりが見つかる場所です!オークションに参加するにはフラグを立てる必要がありますね!』
トキの呟きに思わず反応して声を上げようとしたモモイの口を全員で抑え込む。アリスもケイが表に出ているからと言わんばかりに遠慮なく声を出していくが、それを聞いているのはケイだけであり、別の作業を行っていたため残念ながらスルーされていた。
「……どうする?」
「あれらの品は全て、犯罪組織の間で違法に取引されていた美術品です。となれば―――これで、セミナーから依頼された本当の任務の方を行えそうですね」
「……ほ、本当にやるの?」
「勿論」
「警備とか凄い事になるよねきっと……」
「でも、やるしかないよね」
「うん、私が指揮するから、皆頑張ろう」
先生の言葉に頷き、モルフォがケイを見る。そしてケイが天井の方に目を向けると、そこにぶら下がっていた千年の守護者が一瞬目を光らせたかと思うと、突然オークション会場の照明が落ちる。
「な、なんだ!?」
「明かりが!?」
「まさか、慈愛の怪盗が!?」
「ちっ……ゲーム開発部がやられましたか……!ですが!まだこちらには山海経の玄龍門が残っている!出会え出会えー!!全員ステージに上がりなさい!私と美術品を守るのです!!」
「……成程。参加者の中にも警備が潜んでいましたか」
サングラスにスーツを着た少女達が暗闇の中、観客席からステージの方へと飛び出し、明太郎の周りに集まってくる。盗品と明太郎を守ろうという構えだ。
「……ど、どうするの?かなり人数が多いけど……」
「いや、人が集まってるなら都合がいい。そこを叩こう……トキ、爆弾をあそこに投げ込めるかい?」
「わかりました」
「!アリス、チャージを」
「なんだ、光が……うわっ!?」
トキの投げ込んだ爆弾がステージで爆発する。それによって警備が戸惑った直後。一瞬の光と共にアリスがレールガンの一撃をステージへと放つ。そして命中した一撃は、ステージ上で大爆発を引き起こし、警備を纏めて吹き飛ばしていく。
「うわああああ!!」
「な、なんだ!?」
「あ、あそこだー!!」
直後、光が復活し、その場にいた全員の視線がゲーム開発部へと向けられる。
「な、なんで彼女達がここに!?」
「くそ、ばれるなんて!?奴らを捕まえなさい!捕まえ―――うわ!?」
「また明かりが―――」
「ぎゃあああ!?」
「明太郎様!?」
そこで、一瞬だけ照明が復活する。それによって視界が復活したのも束の間、再び照明が消え、暗闇に戻ってしまう。そのせいで警備達も視界が余計に乱されてしまう。そして、一瞬の隙と暗闇によって乱れた警備の隙間を利用し、なんと明太郎の脳天にライフル弾が突き刺さってしまう。暗闇の中でも明太郎が倒れたことがわかってしまった警備達はさらに大混乱。その隙を突くように警備の者達は次々と仕留められていく。
「な、なんであいつら、暗闇でも戦えるんだ!?」
「しかも明滅が激しいのに……くそっ、なんで照明が故障しているんだ!?」
「これがあのゲーム開発部……!?」
暗闇の中でもゲーム開発部が戦える理由は単純だ。先生とケイが合図を出すことで、明かりが強い時は視界を自由にせず、消える寸前のほんのわずかな明かりが弱い時間の中でだけ目を開き、状況を素早く把握して動いているのだ。
「アリス、右の集団!ミドリ、左にフリーな奴がいる!」
「うん、見えた!」
「敵グループを殲滅します!」
「ユズ、ステージの手前にグレネードを!モルフォ、トキ、モモイはそれを利用してステージに上がって!そして一気に制圧を!」
「「「「はい!!」」」」
先生の指揮を受け、混乱が収まらぬ内に、一気に警備をなぎ倒しながら進軍するゲーム開発部。そして、完全に明かりが蘇った時には、ステージ上で伸びている警備の姿。そして我先にと逃げ出し、すっかり無人となったオークション会場の観客席が広がっていた。
「ひ、ひぃい……」
「いや、待って!?明太郎の姿が……」
「あっ、あそこ!」
しかし、そこに明太郎の姿はどこにもない。一体どこかと視線を動かすと、そこには、オークション会場の出入り口から慌てて気絶した明太郎を運ぶ付き人と思われるロボット達の姿があった。
「まずい……逃げられちゃう!」
「いや―――大丈夫だよ」
「え?なんで……」
「!あれを見て!」
慌ててモモイが追いかけようとする。しかし、ユズが何かに気付き通路の奥を指差す。直後、数発の銃弾と共にロボット達が倒れ、通路の奥から慈愛の怪盗の姿が現れる。
「あらあら……本当に治めてしまうなんて」
「慈愛の怪盗!?」
「ふふ、最後は私も手を出させていただきましたが……私も彼に憤っていたからつい手を出してしまったということにしておきましょう」
「ま、まさか王冠を……」
「いや、大丈夫だよ。取引の結果通り、ってことでいいんだよね」
「ええ。皆さんの手だけで明太郎を追い詰め―――時計王の冠だけでなく、明太郎が所有していた全ての盗品を取り戻した場合は、私が一旦手を引く、と」
慈愛の怪盗はどこか愉しそうな声で明太郎の服を掴んで投げ込む。そこにトキが近づき、今度こそ逃さないと縄で手足を縛って動けなくしていく。
「ただし―――私があなた達が最も崇拝するゲームの真の芸術性を理解したと明らかになった時はこの時計王の冠を私がヴァルキューレより貰い受けると」
(ヴァルキューレに返還した後はミレニアムは関わらないっていう意味であって、別にヴァルキューレがあげるわけじゃないんだけど……そこまでザルって思われてるのか……)
「でも慈愛の怪盗もゲームをやってくれるなんて楽しみかも」
「是非、テイルズ・サガ・クロニクルをやってください!アリスはあのゲームにいろんなことを教えてもらいました!」
「ふふ……それではこれで。ゲーム開発部、皆さんの芸術への想いと熱意、しかと見届けさせていただきましょう……」
そして、慈愛の怪盗は姿を消してしまう。そして、銅田明太郎と盗品「時計塔の冠」に纏わる一連の事件は終わりを告げるのだった。
★
「はー、そんなことになってたのかよ。しっかしまぁ、一年だけだってのに、あたしらが出張るような案件までやり遂げるとはな。よくやったじゃねえか」
「ネル先輩が褒めています。明日は大雪です」
「降らねえよ、喧嘩売ってんのか」
「では事実にしてきます。ちょっと雪を降らせてもらえるように頼んできます」
「しなくていいんだよ!」
翌日。各々疲れを癒すようにくつろぐゲーム開発部とトキの下にやってきたネル達は、事の顛末を聞いて感心したような呟きを漏らしていた。
「あはは、すっかり皆も任務が板についてきたねー。どう?来年には皆でコールナンバーを襲名しない?」
「えっ、それは……」
「……私達が卒業する時に引き継がせるのは……確かにありかも」
「ええ!?カリン先輩本気なんですか!?」
アスナが面白そうに部屋にいた千年の守護者を持ち上げて観察したり回してみたりしながら口にした言葉に、思った以上に真剣に考えるカリン。その様子を見て思わずミドリが絶句する様子を見て微笑んでいたアカネが苦笑するモルフォとモモイに目を向ける。
「でも、皆さんも頑張りましたね。任務の後はセミナーが引き継いでいるんですか?」
「はい、ユウカ先輩が後処理の方をやってくれています。その、取り返した盗品って中々の量があったらしく……早いうちにヴァルキューレに全部投げると言ってました」
「面倒くさいよなぁ。こういうの、ぶっ壊したらその時点で駄目なんだろ?」
「そうですよね……爆発させちゃいけないのは確かに私も不満が溜まります」
愚痴をこぼすネルの言葉に、うんうんと頷くアカネ。しかし、彼女は満面の笑みを浮かべるとユズの肩に手を置く。
「!?」
「今度から、壊しちゃいけない任務は皆さんにやってもらいましょうか?」
「そそそ、そんな……私達、ただのゲーム開発部です……!」
「そうです。私達はただのゲーム開発部です」
「何しれっと移籍してんだ……」
「まあ、兼部は自由ですけどね」
慌てた様子でアカネに訂正を求めるユズ。その様子を見つつさりげなく自分をゲーム開発部の部員としてカウントするトキに、ネルは思わず呆れてしまう。
「……まあ……卒業間近になったらちったぁ考えてもいいのかもしれねえな。早く手付けねえとセミナーがどう動くかわかんねえし……お前ら先にこっちに兼部しねえか?」
「「えっ」」
何それ知らないと言わんばかりにモルフォとモモイがネルを見る。続きを二人が聞こうとしたその時、部室のドアが開き、人が一人程入れるぐらいに大きなケースを持ってアリスが笑顔で入ってくる。
「皆さん!ケイの体がバージョンアップです!ウタハ先輩達が防御力を向上させてくれました!今後は内燃機関を用いた飲食の再現に踏み切るそうです!!これもモルフォのおかげです!」
「へー、よかっ……あっ、そういう……?」
エンジニア部、今そんなGストーンサイボーグみたいなことやり出してるの?と一瞬脳に疑問が浮かぶも、楽しそうな表情を浮かべるアリスを見てモルフォは笑いかけるのだった。