転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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ファイナルソードは確かにクソゲーだけどクソゲーとわかった上で遊ぶとちゃんと遊べてそこそこ面白いゲームです


清澄アキラとファイナルソードパロディ

「……」

 

す―――っ、と深呼吸をする少女。どこかの学園に存在する、彼女だけが知っており、彼女だけが入ることのできるその部屋の中で、行儀よく座り、たどたどしくも繊細で優雅に指を動かし、彼女が挑んでいたのは一つのゲーム。その名も―――

 

「なんですか!?このクソゲーは!!?チュートリアルがチュートリアルになっていない!ありとあらゆるパターンで即死ギミックに即死攻撃が飛んでくる!対策装備を手に入れたところでそれが必要な場面はとっくに終わってる!しかも……しかも誤字脱字があまりにもひどすぎる!?推敲してもらったんですかこれは!?何なんですかこの植物人間って……文脈的に草食系って言いたいんですか!?」

 

初代テイルズ・サガ・クロニクル。このキヴォトスにおいて言わずと知れた、クソゲーランキング堂々一位を取った力作である。それをプレイした少女、清澄アキラはそのあまりのゲーム性に思わず声を張り上げてしまっていた。

 

「こ、ここ、こんなものがゲームであってたまりますか……!こんなものが、ゲーム……!?芸術などと……製作者の熱意以外何も感じないじゃありませんか!!」

 

だが、そのあまりのクソゲーっぷりに彼女は怒りを織り交ぜた表情を浮かべていた。

 

「く……そもそも調べてみればクソゲーランキング一位に堂々と躍り出るある意味優等生……そりゃあ薄々予感はしていましたよ。それでも……それでも……いえ、このゲームから何を学んだと……?」

 

それでも彼女がこのクソゲーに挑まんとしたのは、先日、慈愛の怪盗として対峙したゲーム開発部の発言にある。畑違いではあるものの、ゲームもまた人々が熱意や技術、時間を込めて作り上げ、多くの人々を楽しませ、魅了する娯楽だ。そういう意味では確かに芸術と同義。故に、真の芸術の価値を理解する者と自らを豪語するアキラはアリスが勧めたテイルズ・サガ・クロニクルをプレイしていたのだ。

 

(……待ってください。これを面白いというレビューが少しだけど、ある……?)

 

案の定、配信ページを見るとその評価はボロカスだ。だが、その中には数こそ少ないもののちゃんと高評価をしているまさかのレビューがあったのだ。

 

『パーフェクトピッチャーみたいにハードを破壊しないしちゃんとエンディングまでプレイできる』

『酷いレベルで一周回ってバランスが取れている。一位を取るほどではないと思う』

『クソゲーランキングで一位を取るほどで名前だけは知っていましたが、リスナーたちからもお勧めもされたので折角の機会にプレイさせてもらいました。クソゲーではあるけどクソのポイントが最後まで飽きさせずにいろんな方面から来るので作業感がないのは素直に高評価。世の中には虚無のようなゲームなんて大量にあるし、中には体調すら崩して寝込むようなものもあるけど、このゲームはちゃんと達成感と楽しさを感じさせてくれました。ちゃんとこういうクソゲーもあるんだと思わせてくれた嬉しい作品でした、ありがとうございます』

『遊べるクソゲー。ゲームにすらなってない汚物の群れと比べたら天地の差がある』

『剣の砦何かよりずっと熱意も意気込みも努力も感じる』

「……なんでこんなに高評価でレビューも……いえ皆、割とけなしていません?少なくともクソゲーなのは満場一致じゃないですか!?」

 

だがそれも、クソゲー界隈では思った以上に遊べるしこれ実は良作なのでは?という感覚が麻痺しているものばかりだ。それも、比較対象がざっと読んだだけでも間違っていないかと言うべきレベルだ。もうちゃんとゲームとして世の中に出てきてくれたことにありがとうというレベルである。しかし、

 

(……ゲームとは楽しみ、人を魅了するもの。それを……このレビューを書いていた僅かな者達は、このクソゲーの楽しさを、魅力を、真の価値を理解しているということ……?私が理解できないものを、ゲームという分野における真の芸術を理解しているとでも……!?)

 

仮にこの場にゲーム開発部がいたとしたら、「それその人達の感性がクソゲー愛好家基準になってるだけだよ」と速攻でアキラの勘違いにツッコミを入れてくれていたことだろう。しかし、この場にはゲーム開発部どころか、アキラ以外の人物は誰もいない。入れられるはずもないのだから、その勘違いをアキラが知ることはできない。その結果、アキラは正しいと思い込んでしまった道を、突っ走り続けることになる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うう、まさか私が芸術を理解する中で体調を崩す……!?芸術の価値を理解するために苦痛と苦しみを感じる……?そんな、そんなことになるなんて……」

 

一週間後の休日。アキラはベッドの中で熱を出して呻いていた。頭痛も激しく、ベッドの中から出ることもできない。まさか、ここまでの消耗を強いられるとは。ゲームの魅力と真の価値を理解するため、クソゲーという万人が理解しえない、だが一部の者はその魅力を見出し、楽しむという境地に辿り着くことでこそ全ての芸術を知り、その真の価値を理解する者、慈愛の怪盗であるという暴走思考によって見事クソゲー愛好家を兼業するに至ってしまったアキラは、無理が祟って体調を完全に崩してしまっていた。

 

(いや、あれは紛れもないクソですよね?)

 

ふと、冷静に戻って自分がやってきた様々なクソゲーの数々に思いを馳せる。「パーフェクトピッチャー」「四十肩(仮)」「デッドクリームゾーン」「モルモットと月光の里」「完璧でいず~ほのぼの生活~」「召喚乗騎」。なんだかんだ遊べるのでは?と虚無すぎてプレイを断念したり、意地になってプレイしたり。なんだかんだで濃密な時間であった……と思いきや、あれはないだろうと速攻でバッサリ切り捨てる。

 

(……なんで私はこんなことをしているのでしょうか……?)

 

正気に戻った影響か、自然と頭痛や熱も引いていた。そしてもぞもぞと体を起こすと、

 

「……でも、案外遊べるものはちゃんと遊べるようにはなっていましたね……」

 

そもそも制作者からゲームへの熱意を感じられない、そんな論外なゲームはもうゲームですらないだろう。絵の技術も何もない、下手くそであっても子供が描きたいと思って取り組んで描いたのならそれはちゃんと上手下手関係なく芸術だ。だが絵を描く者がそれを観る者を舐め腐ったような態度で描けばそれは雰囲気として現れるのだ。それはゲームとて同様。クソだが製作者の技術力不足とか色々な要因が重なってるだけで頑張ってはいるんだろうな、というのはちゃんと読み取れるものなのだ。

 

「……ふう……」

 

ゲームを理解するといっても別にこういう意味じゃないんだけど?とゲーム開発部なら言ってくれることだろうが、慈愛の怪盗である彼女が何の理由もなくミレニアムのゲーム開発部に接触することはできない。不用意な接触が原因で自分の正体がばれてはいけないのだ。

 

「……そういえば」

 

クソゲーの中でもかなりお勧めされているゲームがあったことを思い出す。ちゃんとこのゲームを楽しみ、高評価してくれる人も他と比べてそこそこ多かったため、所謂賛否両論寄りのゲームに落ち着いていたのだが、そういったものもあってアキラは一旦避けていたのだ。しかし、身も心も荒み始めていたアキラはここらで口直しにとそのゲームに手を出すことを決定する。

 

「……ファンタジーソード」

 

ファンタジーソード。それはファイナルソードに似たゲームであり、クソゲーである。低品質な画面、フリー素材のアセットをふんだんに使われた上に自作部分も安っぽい3Dアクションゲームである。それだけでなく、攻撃判定や操作があまりよろしくない上に3Dゲームでほぼ必須のはずのロックオン機能も存在しない、話しかける、物を調べるといったコマンドと、フィールドで使えるローリングというアクションのコマンドが同じボタンで使えるせいでよく誤爆する、ドロップが渋すぎるせいで装備、アイテムを買うのにかなり苦労する、フォントも世界観にミスマッチ、文章も誤字脱字に加え、明らかにシナリオライターのミスと思われる部分もあるとクソゲーの役満と言われても仕方のない内容なのかもしれない。だが、

 

「……確かにこれは色々とクソですが、拙い部分が多いという印象が強いですね……」

 

ストーリー自体は病気の母の為に主人公が薬草を取りに行くところから物語は始まる。その後、妖精と出会い、助けを求められたことがきっかけとなり、それから色々あってラスボスであるドラゴンを倒しにいくという、なんやかんやで王道な内容となっている。

 

「……ふぅ―――」

 

最初のボスであるトロール。こいつがとにかく堅い。序盤のレベルとステータスに釣り合わないレベルで堅く、そのトロールを倒すためにレベル上げをする必要があるのだが、そのレベル上げの時間もかなりかかる。他のゲームだったらもうちょっとレベル上げの時間が短くなってもおかしくないはずだが、このゲームにそんな軟弱な仕様はない。とはいえ、これぐらいならまだまだ許容範囲だ。ロックオンできない仕様の方が気になるぐらいで、さっさと倒せるレベルに育ってトロールを倒そうとする。この時は魔法も何もないのでひたすらタイミングよく剣を振ってダメージを受けないように気を付けながら戦うのみ。その結果、そこそこの死闘の末にトロールを撃破して薬草を入手。それを母親の下へと持っていくのだが、残念ながら薬草は効かず。妖精が現れ、彼女を助けてくれれば母を助けてくれることになったため、なんやかんやで長い旅に出ることに。

 

(台詞に違和感が……口調すら統一されていない……!)

 

レベルアップの度にくそでかフォントが現れるという笑いどころや、ボス戦を始めとした極一部しかBGMが流れない仕様といい、進めば進むほどにツッコミどころが増えてくる。次の目的地である妖精の住まう森には植物の怪物たちがおり、他の雑魚敵も相まって中々に鬱陶しい。それだけではなく、起き上がりに無敵判定がないせいで起き攻めでハメられるという理不尽な死に方に一瞬発狂しそうになるもそれを呑み込み、森のボスを撃破。それによって妖精の力を借りることができ、遂に母の体調がよくなる。

 

「……台詞が違和感凄くていまいち喜べませんね……」

 

その後、兵士を募集しているという王国へと向かうことになり、主人公が王国へ繋がる橋、ビッグブリッジ(全くビッグじゃない)へと向かうと、橋を強襲してきたマンティコアと呼ばれるボスと戦うことになる。普通に強いマンティコアに負けてしまい、長い時間をかけてレベル上げを行ったことや段々マンティコアの行動パターンに慣れたことで何とか勝利、マンティコアを撃退することに成功する。なお、撃退したといってもこの後別にマンティコアが再登場することはなく、何もないまま雑魚敵に降格してしまう。

 

「……は?」

 

マンティコアを倒し、ビッグブリッジを渡ったと思いきや、そこでドラゴンの攻撃によって橋が破壊され、主人公も巻き込まれて倒れてしまう。そして次の瞬間、謎の洞窟でボスのヒュドラとの戦闘が開始してしまい、訳も分からないままぼこぼこにされてしまう。そして倒されたと思いきや謎の宿で目を開き、夢の中でヒュドラと戦ったことが判明する。

 

「ああ……夢でしたか……」

 

あまりにも唐突すぎたが夢での戦いという負けイベだったようだ。それならばまぁ……いや納得していいのだろうか?と首を傾げながらもヒュドラを倒すために必要な魔法を習得。

 

「全く攻撃が効かないと思ってしまいましたが、成程、弱点は頭だったと……」

 

そして本物のヒュドラとの戦いを開始する。魔法が必要な理由は、ヒュドラの弱点が頭であり、それが高い位置にあるせいで剣が届かないという理由がある。そんなこんなでヒュドラをどうにかして倒し、次の行き先である砂漠のオアシスで落下死するというアクシデントに見舞われたり、口内を攻撃してダウン、それによって口内を攻撃しないとまともにダメージが入らないのに、ダウンした位置次第では全く攻撃できない上にダウンからの復帰が速すぎるせいでまともにダメージが与えられないボス、サンドワームのギミックに苦しめられていく。

 

「ふ、ふふ……一筋縄ではいかないということですか。このクソさは……やり方が見えてくるだけまだまだ楽しいですね。このゲームの事が分かってきた気がしますよ……」

 

レベルを上げまくり、装備を最新の状態に更新し、戦闘を最適化。魔法だけでなくスキルアタックも織り込み、全力でサンドワームを殺しにかかる。そして、遂に王国へと到着。特に手続きとかもなく国王陛下に謁見し、王女を助けるために協力することになってしまう。

 

「……いや、大分ざるでは……?」

 

いくら何でも警戒心が無さすぎる。ヴァルキューレですら流石に止めるレベルである。まあ、もうこういうゲームなのだろうと割り切り、王女が捕まっている地下神殿に。しかしそこには王女ではなく彼女に変装していたハーピィと戦うことになる。魔法を道中で使いすぎたせいでMPが枯渇してしまい、ハーピィとの戦いは長い時間に渡ってしまったものの、強さ自体はサンドワームと比べるとそこまででもない。危なげなく……とまではいかないが順調に倒し、国王に報告に行ったところで国王の正体が悪魔であることが判明。主人公を突き飛ばし、素通しする兵士たちの中を走り抜け、悪魔は本拠へと向かうことになる。

 

「……いや飛んだり魔法で行けばいいのでは?しかも本拠地が近すぎる……!?」

 

何故かフィジカルで、しかも地上を走って帰宅する悪魔を追い、王女を助けるべく主人公は悪魔の本拠地へ向かう。そこであぶよ魔法陣という、「あ」「ぶ」「よ」の三文字のひらがなが刻まれた謎の魔法陣を使って悪魔の下へ向かい、ボス戦が開始。俊敏で派手な動きとモーション、それでいて難しすぎるというわけでもない難易度と、今作屈指の良ボス。素直に楽しめた戦闘にアキラもご満悦になりながら王女を連れ帰ると、彼女の転移魔法によって一旦最初の村へ戻ることに。

 

「……う」

 

しかし、そこに広がっていたのは壊滅した村である。通常なら凄惨な村という酷い光景なのだが、村でのイベントは碌にないし色々ツッコミどころはこれまでにもあったし他にも色々気になるところがあるせいで全くそんな感情は湧かない。それよりもアキラが眉を顰めたのは、ゴブリンの群れに襲われたことである。ゴブリン一体一体は当然そんな強くもないのだが、最大の問題は起き上がりに無敵がないということ。つまり一度倒されれば数の暴力による連続攻撃でハメられるのだ。なのでちまちまと被弾しないように戦闘を進めていく必要があった。

 

「ふぅ……本当に色々な方法で苦しめてきますね……その苦しめ方にも無駄にバリエーションがあるせいで飽きさせてくれないのがなんとも……まあ、このゲームで今の所一番時間かかってるのおそらくレベル上げなんですが……」

 

次のステージは雪山。しかしここで更なる要素として冷凍属性を持つ敵のオンパレードが襲い掛かってくる。この冷凍属性の攻撃を受けて凍結させられると身動きが取れなくなり、無防備になってしまうのだ。

 

「こ、こいつ……!」

 

主人公が動けなくなるタイプのクソ要素は止めろ、冷凍解除時にダウンした時にぼこぼこ殴ってくるの止めろ、冷凍ハメしてくるのやめろと色々と言いたくなるフィールド。ここに長居なんてしていられるかととにかくクリアを急ぐことしかアキラにはできない。そして必死に雪山を登り、その頂上で聖なる大樹の導きで、主人公は百年に一度生まれる勇者の生まれ変わりという事実が明かされ、ドラゴンと戦うための装備を手に入れるためのダンジョンへと向かうことになる。なお、その時の最後の台詞が、

 

『ここは人間が来るべき場所ではない』

「……なんで!?」

 

というこれまでの流れをぶった切るような台詞だったため、アキラも思わず驚愕の声をあげてしまう。その後、何故か慣性が保存されず、一緒に動く足場と動いてくれないせいで放っておくと落下死してしまう謎の動く床で事故死する一幕こそあったももの、ボスのいる部屋へ辿り着く。しかし、

 

「ま、また凍らせるんですか……!!」

 

またしても冷凍属性の攻撃を放つボスの登場に思わず言葉を失ってしまう。しかも今回はこちらを凍らせてくるボスと物理的に殴ってくる取り巻きという最悪の組み合わせであり、何回かハメ殺しをされてしまう。しかし、それでもアキラは諦めなかった。何となくだが、ここまでくれば話だって終盤のはずだ。ここまできて投げ出したらこれまでの苦労と苦しみと怒りが完全に無駄になってしまうと。

 

(……ここが最終決戦のフィールドですか……)

 

ラストダンジョンは火山。熱い地であることでもう氷漬けにされないという事実が確定し、アキラの心も自然と晴れやかになってくる。それだけ冷凍攻撃がとにかくきつかったのだ。そして遂に対峙するラスボス、ドラゴン。だが、これで最後ならばアイテムを温存する意味もないだろうと、店で買えないMP回復アイテムも総動員し、最強魔法であるメテオで怯ませて攻撃していく。途中、ドラゴンの固有行動であるHP回復やレーザーなどに苦しめられ、高いHPも相まって戦闘時間もかなり長く、シビアな戦いが続いていく。そして、遂にその瞬間が訪れる。

 

「……!」

 

ドラゴンへの最後の一撃。HPが尽きて倒れたドラゴンだったが、逃げ出そうと空へ飛び立つ。しかし、主人公はそのドラゴンへ向かって剣を投げる。ドラゴンに剣が突き刺さると、ドラゴンはそのまま火口へと落下してしまい、完全に死亡。これにより、世界に平和が訪れるのだった。

 

「……えっとまぁ、なんていうかその……悪くはないけどその……」

 

エンディングを迎え、やっと解放されたアキラは心底疲れた様子でベッドの上に身を投げる。なんだかんだで楽しかった。でも苦しかった。とはいえ、古き良き真のクソゲーとは、こういうのを言うのだろうと。そういう意味では、なんだかんだでテイルズ・サガ・クロニクルもこの系譜に近いのではないか。アキラの中にそんな思いが湧き―――

 

「……まあ、それが真実かどうか確かめるためにまた別のゲームを探す必要がありそうですね。ですが暫くは……怪盗業の方に精を出しましょう……」

 

どこか現実逃避をするように、そう呟くのだった。

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