転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……ん?これって……」
中古ゲーム屋。掘り出し物がないかと思い中身を見ていたモルフォの目に興味深いものが飛び込んでくる。
「キヴォトス……鉄道……!?」
キヴォトス鉄道。桃太郎電鉄のキヴォトス版とも言うべきものだった。
「この場合、どうなるんだ……?キヴォ鉄?トス鉄?キボ鉄?」
桃太郎電鉄とは、日本全国(作品によってはアメリカ等)を電車で巡るスゴロクのようなゲームである。鉄道網を中心に日本全国の交通網を網羅しており、それがスゴロクのマスとなっている。プレイヤーはそれぞれ社長となって電車に乗り込み、日本中を鉄道で回って物件を買い集め、一ターン一ヶ月の内容を最初に設定した年数分、即ち年数×12ターン行い、最終的にその資産を一番集めたプレイヤーが勝利するという内容になっている。
「……ハードは……よし、問題なし。これは買おう。部室にはまだ置いてない……!」
元々桃太郎電鉄自体はモルフォも皆でやりたいと思っていたゲームではあった。しかし、この世界でそれをやるには致命的な問題があったのだ。それは単純に、モルフォしか日本の地理を知らないということだ。別にそれぐらいならば教えるのでもいいのだが、モルフォ的にはゲーム性だけでなく、「ここにはあれがあるよね」みたいなそういう共感や、「ああ、ここあれの産地だったなぁ……」みたいなプレイヤー達が全員言われてみれば知っているな……となる、日本を巡るゲームだからこそのあの雰囲気も味わいたいという妙なこだわりがあったせいで候補からは外していたのだ。
しかし、キヴォトス版となれば話は別だ。キヴォトスの地理ならば皆で楽しめることだろう。と、ゲームソフトを手にして気付く。
(プレミア……いやたっかいな!?)
何か尋常じゃない額がつけられていた。その額、一万。このゲームがプレミアな理由は何かあるのか、というかそういえばこの手のゲームはこれまで見たことがないなとも考えてスマホで調べてみると。
(……ああ、これ同人ゲームなのね……実際に作ろうとしたのはいいけど、体験版をあげたら怒られて……それで色々フィクション的な要素を織り込んだりしてぐちゃぐちゃにしちゃったと……)
このゲームの壮絶な裏事情に触れることになる。このキヴォトス鉄道は、数年前、とあるハイランダーの生徒が路線図をスゴロクにしよう!という思い付きの元、独学で色々学び、その熱意を叩きつけるようにして作り出したものだったようだ。そしてある程度形になったところで体験版をアップロードしたのはいいのだが、その中にあまり公にしてはいけない路線図なども詳細に盛り込んだりしたことで上層部に怒られ差し止められてしまったらしい。そこから他の学園の事もあんまり書くな、問題になると言われて色々差し替えたりしたということが当時の開発者のブログで怨嗟の声と共に綴られていた。
(……まあ、キヴォトスだからなぁ……)
一学園の中をぐるぐるするだけならそことの交渉次第で文句も言われなかったものを、とぼやきながらソフトを見る。こういった背景もあり、残念ながらこのゲームは完成しても全く流通しなかった。もしもこれをひっそりと同人イベントなどで売りさばく程度ならお目溢しをもらえたかもしれないというのに、何を思ったかその学生は、ここまで弄ればヨシ!と言わんばかりに大宣伝をした上で売り出し始めたのだ。そのせいで当然上層部に潰されてしまい、販売も差し止め。しかし、ほんの僅かにだが流通したソフトは今もプレミアがかけられており、オークションなどに出されようものなら一瞬で落札されるという状態になっていた。
「……一万ならむしろ安いのでは?」
懐に問題はない。一応皆に割り勘で買わないかとメッセージを送ると、殆どノータイムで許可が貰えたのもあり、モルフォはその至高の一品を購入でき、満面の笑みを浮かべるのだった。
★
「モルフォ!やろう!早く!!」
「う、うん……」
戦利品を手に部室に入った瞬間、興奮した様子でユズがモルフォに駆け寄ってくる。モルフォに抱き着き、はぁはぁと息を荒げながらモルフォの顔を見るユズに、思わずモルフォも驚いてしまう。
「ゆ、ユズちゃん!落ち着いて!!気持ちはわかるけど!」
「だって、あの幻の怪作、キヴォトス鉄道だよ!?学生が一人で、様々な苦難にも負けず世に送り出したゲーム……!!」
「……あー、そっか……ユズには刺さるね……」
「とりあえずユズ、そのままだとモルフォが部屋の中に入れませんよ……」
ユズも名前や背景は知っていたのだろう。それだけにモモイの言うように関心は強かったようだ。モルフォは抱き着くユズを持ち上げながら部屋の中へと入っていき、呆れるケイの傍に座らせる。
「どんなゲームなんですか!?ユズやモルフォがここまで興味を持つゲーム、アリス気になります!」
「しかし流通数が少ないとはいえ、ネットに出た瞬間に買い取られるとは……目を光らせている人達がそんなに多いのでしょうか」
「さあ?まあ偶然見つけられたのは運が良かったよ」
桃鉄に感謝しながら、モルフォはゲームを起動していく。本来桃太郎電鉄では司会を務める桃太郎とアシスタント兼ね進行役を務める夜叉姫、その他イベントなどで登場する各種キャラクターが彩るのだが、このゲームでは司会と進行役を務めているのはハイランダーの制服を着た少女達となっている。
「進行役の人の服装、ヒカリとノゾミが着ているのと一緒ですね」
「あ、本当だ!司会の人はなんかもっとカッチリしてるね?もしかしてハイランダーの生徒会みたいな所の制服なのかな?」
「……なんかもう潰された理由の一端を目の当たりにしている気がする……!」
「テイルズ・サガ・クロニクルは怒られるゲームじゃなくてよかった……」
(別の意味で怒られるゲームでしたが……!?)
司会進行がハイランダーの制服の少女達なことを除けば大体流れは桃鉄と一緒だ。そんな様子を見て、まさかこれ、他のイベントのキャラもどこかの制服のキャラなのかと考えてしまう。
「……プレイヤー四人か。うーん、どうする?」
「モルフォちゃんが見つけてきたわけだしモルフォちゃんは確定でいいと思うけど……ユズちゃんも確定でいいかな?」
「え、いいの?ミドリ」
「うん、だってユズちゃんの食いつき凄かったし……だったら最初はいいかなって」
「!アリス思いつきました!アリスとケイでチームを組みます!そしてモモイとミドリでチームを組めば問題ありません!」
「あー、確かに?今回はスゴロクだし……ミニゲームとかある?」
「いや、なかったはずだけど……」
「では、私はアリスと一緒のチームでいいでしょう」
「はい!アリスとケイは一緒の社長です!」
そんなこんなで、モルフォ、ユズ、モモイ&ミドリ、アリス&ケイの組み合わせでそれぞれプレイヤーネームを登録していく。その結果、夢見社長、花岡社長、才羽社長、天童社長という四人組ができあがるのだが。
「……で、次はターン数か。あれ?月単位なの?」
「一週間で一ターンで一ヶ月で四ターンだね」
「で、年数が三年まで?」
なんで?と思ったがすぐにこれはキヴォトスの事情が関わっていたのだろうと納得する。おそらくだが、これを作った生徒はあくまで学生社長をイメージしていたのだろうと。学園を卒業するまでの最大三年、それがタイムリミットになっているからこそ、桃鉄とは異なり年ではなく月でターンを分けているのだろうと。
「まあ、とりあえずどんな感じか見てみたいし半年でやってみようか」
「それでいいと思う。ふふ、楽しみだね」
半年、そのため合計は24ターン。桃鉄ならば二年コースといったところか。三年、五年まで見てやりたいところだが、最初はお試しも兼ねているため、こんな感じでいいだろう。そう思いながらスタート地点のD.U.地区からモルフォ達は駒を進める……前に最初の目的地がランダムで決定される。
「えーと、目的地は……ゲヘナ?」
「おー、こういう感じか」
このゲームでは、目的地となる駅に向かうことがプレイヤーの当面の目的となる。目的地に向かう途中で所持金を増やすマスに止まったり、旅をサポートしてくれるカードを購入したり、駅に停まって物件を購入したりするのだ。最初の目的地がゲヘナとなったことで六人は思わず顔を見合わせる。
「……このゲーム、特産品の工場とか、そういうの買うんだよね?ゲヘナって何があるの?」
「……温泉?」
「食堂とか……」
「これ作られたの数年前だよね……?多分なくない……?」
ゲヘナというと知っているのは温泉開発部やら美食研究会やら。しかし、これが数年前に作られたことを考えると、メグやハルナもまだ高校生ではないだろう。そんなゲヘナには何があるというのか。期待半分不安半分といった様子で足を進め始める。
「あっ、カードを手に入れました!これは……サイコロが増えるカードです!」
「急行カード……サイコロが二個に増えるカードかぁ」
そんな中、アリスがカードを入手する。カードにはサイコロを増やして移動力を上げる急行系カード、ワープしたり、サイコロを増やす以外の方法で移動をサポートしてくれる移動系カード、物件に関する効果を発揮する物件カード、その他の色々なプラスの効果を発揮する便利系カード、お金に関するお金系カード、そして持っているだけでデメリットを発揮したり、他のプレイヤーを妨害したりするお邪魔系カードなどに分かれている。これらをうまく使うこともゲームを有利に進めるコツとなる。
「やった!ミドリ、また6だよ!これで目的地に到着だ!」
「一番乗りだ!って、おお?なんか凄い祝福されてる!」
そして、目的地にモモイ達が一番最初に辿り着く。すると、モモイ達が歓迎されるムービーが挟まり、一気に大量のお金が入る。そして次の目的地としてトリニティが選ばれると、モモイ達がゴールした時点で一番距離が離れているプレイヤーであるユズに貧乏神の怪異が憑りついてしまう。
「貧乏神の怪異って……」
「妖怪的な?百鬼夜行っぽい何かかなぁ……なんかボロボロの和服着てるし……」
おそらくはこれがこのゲームにおけるボンビーなのだろう。ボンビーは一度憑りつくと、憑りつかれたプレイヤーはターン終了毎にボンビーからお金を奪われたり、無理矢理物件を売却させられるなどの意地悪行為を受けてしまう。それを回避するには、移動中に他のプレイヤーとすれ違うことでこのボンビーを押し付ける必要があるのだ。また、ボンビーが憑りついている状態でターンを終えると、たまにボンビーはキングボンビー等の更なる形態に変化し更なる大災害をもたらすことになる。
「うわぁ……厄介なの押しつけられちゃった……」
「……アリス、次はカードを使って逃げましょう。ユズには悪いですが見捨てるべきです」
「わかりました!ここでユズと差をつけます!」
「あ、アリスちゃん……!?」
ユズを全力でボンビーの人柱にしようとするアリスとケイに思わずユズが絶句している中、モモイ達は目的に到着したことで手に入れた大金を元手に物件を購入し始めていた。しかし、その物件のラインナップを見て、その表情が固まってしまう。
「……なんで?」
「工房、工場……いやこれミレニアムと間違えてない?」
「……ゲヘナのラインナップじゃありませんよねこれ?しかもこれ工場じゃなくて兵器工場なんですが」
「研究所とか何……?どうしてこうなったの?何の工房?」
ミレニアムとゲヘナを間違って入れてるのではないかとすら思えるほどのハイテクなラインナップに驚いてしまう。一応ゲヘナらしい野蛮そうな名前の物件もちらほらあるし、中には「情報機関本部」なんていうものまである始末だ。製作者はゲヘナの事を何だと思っているのだろうか。
「……このゲーム、怒られて色々差し替えられたからそこらへんぐちゃぐちゃにしちゃったのかな……」
「ああ、そういう……?それでも消されてるんだけどね……」
「やっぱり企画からして無理だったのでは……?」
「……ミドリ、これどうする?とりあえず買えるものは買っちゃっていい気がするんだけど」
「うーん、確か一ヶ月毎に買った物件に応じて収益が入るんだっけ?」
「そうそう、そういう感じだったはず……」
パッケージに入ってた説明書を読みながら確認し合う。ここら辺も変わりはないようだ。
「じゃあとりあえず買える分だけ買っておこうか」
有り金をつぎ込み、買えるだけの物件を購入していく。そしてもモモイ達がターンを終える。モモイ達の次はアリス達の番だ。早速、先程入手したカードを使い、ユズ達から距離を取るように移動を始めてしまう。
「……これだと、所持金が減ってしまいますが……」
「貧乏神を受け取りたくはないのでここは甘んじて受けましょう」
マスには駅、カードマスの他に止まるだけでランダムでお金を受け取るマスや、逆にお金を奪われてしまうマスもある。しかし、アリス達の後ろには貧乏神を連れたユズがいる。それから逃げつつ目的地に向かうにはデメリットしか生まないマスであっても今は押し通るしかない。
「私はまだサイコロ一回分は余裕はあるけど……まあ目的地に近づいていこうか……」
「……あれ?今一番遠いの私達じゃ」
「うわ、意外と持ってかれる……アリスちゃん達に早く止まってもらえば……」
「いや、今は困るんだけど!?」
ワイワイと騒ぎな
ワイワイと騒ぎながら目的地へ向かう四組。道中でカードを補給したり物件を買ったりしながら先を進んでいき、遂に目的地が目の前に来たのはいいのだが、ここでアリス達はある落とし穴に躓いてしまう。
「……あ、あれ?マスピッタリになりません!」
「い、一オーバー……!?」
「そういえばさっきは偶然止まったから気にしてなかったけど、このゲームってピッタリに止まらないと到着判定貰えないんだよね……」
「お金をもらって、そのまま物件購入に繋げるためではあるんだろうけど……」
それは、目的地ピッタリに止まらないと報酬を受け取れないという仕様だ。そのせいでアリス達は周囲をグルグルすることとなり、それでも止まれない、というもたもたしたターンを送っている間に他の皆も集まってくる。そうなれば当然貧乏神の押し付け合いも始まっていく。そして目的地に一番最初に止まったのは、
「やった……!」
「ユズに先を越されたかぁ……」
ユズであった。ユズの下に大量の所持金が入り、貧乏神は誤差ではあったものの一番遠い場所にいたモルフォに憑りつく。そしてユズは早速物件を買い漁っていく。
「えーと……あれこれ、古聖堂買えるのはいいの?」
「なんか協会とか詰所とか色々まずそうなものが!?」
「カタコンベ買っちゃダメでしょこれ……」
「トリニティも弄られてるのかなと思ったら大体そのままなのは一体……うごごご!」
物件が本当にそれを買っていいのか?と言いたくなるようなラインナップであった。スイーツ店やら高級料理店やら、そういった大まかな感じに書かれていたらまだいい方で、中には普通に古聖堂やらカタコンベやら売り出しちゃいけないものまで売られている。開発者は相当ロックな人間だったのかもしれない。
「ミレニアムとかどうなってるのかわからないよこれ……」
「作ってる人は常人には見えない何かが見えていた説、あると思います」
プレイしていて段々怖くなってきたが、一通り遊びきるまでは終わらない。その後も、貧乏神を擦り付け合ったり、途中で誰かがスリに遭って所持金を失うだの、貧乏神がどす黒い何かに変身するというキングボンビー覚醒イベントを引いてしまい、憑りついていたプレイヤーが大惨事になったり。そして、
「アビドスはやっぱり広い……割になんでこんなに学園の駅多いの?」
「多分マップが広くて忠実に再現しようとしたらかなりすっかすかになるからじゃないかな……?」
何故か大量の学園と駅が存在する魔境と化したアビドスがあったり。
「百鬼夜行は連合学園って言うだけあって分校とかでばらけてる感じかな……?」
「そういう感じじゃない?あ、祭り会場とか売ってる」
「普通だ……」
「これで普通なあたり大分麻痺してる気がするけど……何この百花繚乱詰所って」
「治安維持組織の詰所って売っちゃいけないもの売ってる!!」
勝手に学園をばらされた百鬼夜行が広がっていたり、
「ミレニアム……なんかこじんまりしてない?」
「確かに……しかもなんか寂れてるし」
「まあ数年前のミレニアムって今よりは規模小さかったっぽいし……だとしてもここまで?ってのは感じるけど」
何故か規模が小さくなっているミレニアムがあったり。なお、ミレニアムで買える物件は工場を始めとしたハイテク系のものが一通り揃っていたため、そこまで違和感はなかった方だろう。
「……ちなみに明らかに廃墟っぽい所に駅があるんですが、ここ線路通ってませんよね」
「まあ、そこは本来の路線図とは別だからね。廃墟とか、明らかに線路が伸びてない所に……いや違うかこれ。こっからは車で移動になるのか……」
移動は基本的に鉄道を使用するが、水上を通る場合は船、線路を通れない場合は車両を使用するようになる。とはいえ、スゴロクのシステム上は見た目のグラが変わる、以上の意味はない。
「……廃墟にある駅。まあ、駅名は廃墟駅って適当につけられてるのはいいとして……ラインナップは廃工場、遺跡、その他諸々……まあ、まあ……?」
「ここら辺は想像で作られたんでしょうね……さすがに廃墟に入ったことはなさそうですし……」
そして辿り着いた廃墟駅で売られてるラインナップはある意味予想通りでどこか安心するものであった。そして次の目的地として示されたのはD.U.地区。そしてそこに辿り着いたアリスはまずは何を買おうかと思いながら物件一覧を見たその時だった。
「!!見てくださいこれ!!」
「……は?」
「いやこれは……」
「そりゃあ幻になるよこれは……」
「ええ……本当にこんなことやるんだ……」
「このゲームの製作者は何を考えてこれを……」
それを見て皆ざわついてしまう。それもそうだろう、そこに表示されていた物件は、これまで見た物件の中で一番の高額物件であった。だが、これだけは絶対に買ってはいけないだろうというものがそこにはあった。
「サンクトゥムタワーが売っています!!」
プレイ後、ゲーム開発部はこのゲームを封印することに決めた。