転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
ゲーム開発部と勘解由小路ユカリ
「……燈籠祭?」
「うん、シロコ先輩も一緒に来ない?いい気分転換になると思うんだ」
先日、ウミカに誘われた百鬼夜行の祭り、燈籠祭。百鬼夜行のお祭りと言うと色々あった桜花祭以来である。あの時は祭り自体は確かに楽しんではいたものの、事件に巻き込まれてしまっていたため、改めて何の問題やいざこざもない大きな祭りを楽しみに行くのも面白いのではないかとモルフォ達は考えていた。それに今回は、先日起こった紅い空の一件が解決したことを受けて開催するという一面もあるのだ、空気を読む人も増えているかもしれない。
「……百鬼夜行……この世界の私を知ってる人っているの?」
「うーん……晄輪大祭で一緒に競技に出た人とかはいるかもしれないけど……」
「晄輪大祭……?」
「?キヴォトス中の学園が集まる晄輪大祭で、エデン条約の調印式の後に行われたイベントなんだけど……」
「……調印式、か……」
そう呟き、苦々しくも悲しい表情を浮かべてしまうシロコ*テラー。と、その視線がモルフォに向けられる。
「こっちの世界だとモルフォはミレニアムの生徒だったけど……調印式に行って事件に巻き込まれたの?」
「え?まあ……でもピンピンしてますし」
「……そう。ならいいんだけど……」
調印式で何かがあったのだろうか。とはいえ、モルフォ自身あの時の話を好んでしたいわけではない。ヘイローを破壊する爆弾をぶち込まれました、なんて話は普通はするようなことではないのだ。
「まあ話はおいといて。シロコさんのことを知っている人は……あ、シズコさん達なら覚えてるかな?ロスト・パラダイス・リゾートで一緒にカイザーを叩いてたから。とはいえ祭りで忙しいだろうから会う機会はそうないだろうけど……」
「……そっか」
考え込むシロコ*テラー。そして数分ぐらい黙り込んでいたが、祭りに興味があったのか、それともこのモルフォの誘いを断っていいのかと考えたか、
「集団が居づらいなら、途中で一人で散策する、みたいな感じにしてもらってもいいからさ。折角のお祭りだし、行ってみてもいいんじゃない?」
「……わかった。ありがとうモルフォ」
「気にしないでよ。まあ、なんだかんだで私もやりたがっていることだからさ」
やがて考えをまとめたのか、シロコ*テラーは頷くのだった。
★
「というわけでウミカに誘われて来ました、百鬼夜行」
「賑わってるねー」
「……百鬼夜行……」
数日後。ゲーム開発部はシロコ*テラーを伴って百鬼夜行を訪れていた。祭りは今日ではないのだが、折角ならゲーム作りの参考にもなるかもしれないと考えた、祭りが始まる前の準備の所から見ようということで少し早めに来たのだ。
「えっと、来た事あるんですか?」
「ん、一応……あの時はコラボライブだったからちょっと特殊だったけど」
祭りを見て、シロコ*テラーの心を少しでも癒せればと思って同行させたのだが、祭りの準備も進める風景を見て、少し楽しそうに表情を緩ませていた。
「そ、そうですか……」
「……ん、邪魔になるなら私はどこかに……」
「い、いえいえ!?そんなことありませんよ!ねぇ、お姉ちゃん!」
「そうそう!むしろ、今は私達も祭りの準備に圧倒されてるってだけで……」
「はい!アリス達は今日を楽しみにしていました!勿論、シロコさんと一緒に祭りに行くこともです!今回は目いっぱい楽しみましょう!」
「そうだよ、シロコ先輩。あんまり遠慮しないでいいからね」
シロコ*テラーが緊張や遠慮をしないようにとゲーム開発部全員で声をかける。四人が左右、後ろからモルフォに抱き着くような状態でシロコ*テラーを見て五人で笑いかけると、その光景が面白かったのか、それとも楽しかったのかクスリと笑う。
「ふふ、仲がいいんだね」
「勿論!私達はずっと友達だからね!よーし!まずは腹ごなしだ!」
「腹ごしらえね。百夜堂は……いや、折角だし別の所に行こうか」
そのまま、五人で一つになったような状態で移動を始めるゲーム開発部。とはいえ姿勢の都合もあってかなり歩きづらいのか、少ししてから分離していき、モルフォやミドリは苦笑を浮かべているが。その様子をシロコ*テラーは懐かしそうに、だが寂しそうに見つめる。だがやがて、
「……もうモルフォには居場所があるのに。いつまでもいていいのかな……」
「?何か言った?」
「!ううん、なんでもない……なんでもないよ……」
ぽつりと言葉が勝手に出てきてしまう。幸い、モルフォには聞かれずに済んだことにほっとしつつ、誤魔化すように彼女達から距離を取って歩き始めるのだった。
★
「それにしても人が多いねぇ」
「資材を運んでいる人とか凄いねえ」
「でも、皆楽しそうです!」
組み立て途中の屋台、屋台などを組み立てる資材や食材を調理するために必要なガスボンベなどを運搬する大人達を横目に歩いていく。
「あれ、もう店やってるところもない?」
「確かに……ただ、今は前夜祭ってわけでもないだろうけど……」
「多分、祭りが始まる前からいる人とか、仕事中に食事したい人とかをターゲットにしてるんじゃない?」
「成程!アリス理解しました!タイミングですね!差し込みは大事です!」
『格ゲーとは話が違いますよ……』
道中で早めにやっていた焼きそば屋で買った焼きそばを休憩スペースを見つけて食べていると。そこにひょっとこを始めとするお面をつけた少女達が駆けつけてくる。
(魑魅一座……)
彼女達の正体が魑魅一座であることに気付いたモルフォが一瞬目を細める。その仕草に気付いたシロコ*テラーも警戒したように魑魅一座に意識を向ける。とはいえ、彼女達の手にはちゃんと購入したと思われる焼きそばが握られており、お面をずらして口元だけ外に出して食べ始めているあたり、ここへはただの食事で来ていたようだ。
「美味しいね、この焼きそば」
「はい!今まで食べた焼きそばとは何かが違う気がして美味しいです!」
『なら代わってくれません?』
「今日はまだやってる店が少ないけど、祭りが近づけば他の屋台もやるんだよね、楽しみ!」
「お姉ちゃん、一応始まる前に来てるのは資料集めもあるんだよ?」
「わかってるわかってる!でも楽しむのも大事だよ!」
焼きそばの美味しさに舌鼓を打つモモイとミドリを見ながらもモルフォとユズは静かに食事を楽しんでいく。そんな中、アリスの視線が少し離れたところで無言で食事をしているシロコ*テラーに向けられる。
「あの、シロコさん!」
「……どうしたの?」
「皆で一緒に食べませんか?一人よりも皆で食べた方がご飯は美味しいです!」
「……ありがとう。だけど……あなた達はゲーム開発部、でしょ?」
それを見たアリスがシロコ*テラーを誘う。折角一緒に来たのだからと。しかし、シロコ*テラーはどこか遠慮した様子を見せる。
「ですが、今日はアリス達は一緒に来ています!なら、今はシロコさんもゲーム開発部……アリスの仲間です!」
「……仲間……私も……?」
「はい!それでは一緒に―――」
だが、アリスの言葉にシロコ*テラーが揺れ始める。そんなシロコ*テラーを見てここがチャンスだと思ったのか彼女の手を握って他の皆の所へ連れて行こうとした、その時だった。
「これ、いつものと違うじゃないか!」
「ふざけんな!どこの店だ!」
突然魑魅一座が騒ぎ始める。その言葉に固まってしまったアリスや、若干呆れたようなシロコ*テラーがそちらの方を見ると、魑魅一座はそれぞれ銃を取り出し始める。
「えっ、何々!?」
「まさか暴れる気!?」
「よし!何が燈籠祭だ!私達魑魅一座が滅茶苦茶にしてやるぞ!」
「「「おお―――!!」」」
そして、祭りを滅茶苦茶にすると宣言して暴れ始めようとした、その時だった。
「そこまでですわ!!」
「!?誰だ!!」
凛とした少女の声が響く。今度は何だとモルフォ達が声の主を見ると、そこには深紫色の長髪の少女が立っていた。白い和服や袴のような制服の上から水色の羽織を纏った彼女は、魑魅一座の前に立ちはだかると、ボルトアクション式のライフルを掲げる。
「魑魅一座……あなた達の狼藉、この百鬼夜行連合学院百花繚乱紛争調停委員会所属勘解由小路ユカリが許しませんわ!」
「待ってなんて言ったのあの子」
「テキスト!テキストボックス持ってきて!」
そこに現れたのは、百鬼夜行に存在する治安維持組織、百花繚乱に所属しているという少女、勘解由小路ユカリだった。この長い文章を一息で言い切ったあたり、この口上を言うのにかなり慣れているのかもしれない。
「……っていうか、百花繚乱って……」
過去にセイアと話をしたことを思い出す。だが、百花繚乱は委員長と副委員長が行方を眩ませてしまい、活動を停止しているはずだ。もしかしたら、トップが戻ってきて活動を再開したのかもしれない。
「はっ、百花繚乱って言ったってたった一人!こっちは十人ぐらい!囲んで殴れば十分勝ち目があるぜ!」
「相手がどれだけいようが、身共は引きませんわ!」
しかし、ユカリがどれほどの実力者かはわからないが、果たして彼女一人でこの数の魑魅一座を相手にできるのだろうか。
「あれ、大丈夫かな……」
「おい!応援来たぞ!」
「っ!さらに増援が!?」
「……厳しいかな」
さらに状況を悪化するように、どこからか魑魅一座が集まってくる。見た感じでユカリの実力を何となく推測していたシロコ*テラーだったが、魑魅一座の頭数が増えていったことを受けて、これでは分が悪いと断言する。
「やっぱり……」
魑魅一座とユカリの戦闘が始まるも、やはり数の暴力にはユカリも分が悪いようだ。それこそ百鬼夜行の治安維持組織である百花繚乱の生徒らしく、相手が数人程度なら軽く捻れるのだろうが。その様子を見て、ここからどう動くべきかとシロコ*テラーが思案していたが、モルフォ達が銃を持って立ち上がる様子に気付く。
「……手を出すつもり?」
「うん。どのみち魑魅一座をこのままにはしておけないから……ね!」
そう言うが否や、モルフォは先陣を切るように魑魅一座に向かって殴りこんでいく。
「!?」
突然乱入してきたミレニアムの生徒に、魑魅一座は勿論だがユカリも驚く。しかし、魑魅一座に攻撃したというところからモルフォが味方であることを瞬時に判断したユカリは、モルフォに当たらないように魑魅一座へ攻撃を仕掛けていく。
「くそっ!なんだあいつ!」
「舐めやがって!撃て!!」
「!気を付けてください!助太刀は感謝しますが、危険なので―――」
「この程度、危機でも何でもないさ!」
「なっ!?」
魑魅一座の数人がミニガンなどをモルフォに向ける。しかし、その銃口が向けられる前には既にその前から姿を消しており、気付けば懐に潜り込まれている。そのまま足払いで魑魅一座を倒す、ショットガンハンマーを叩き込んで吹き飛ばす、時にはシールドバッシュで強引に倒していくなど、着実に魑魅一座の数を減らしていく。
「お、おお……!?」
「援護します!」
「よし、いけいけー!!」
「うわああああ!?」
そしてモルフォがヘイトを集めたことでモモイ達も動きやすくなる。今度は先程とは異なりその場をあまり動かずにシールドを構えることで相手の注意を集めつつ、仲間達が撃ちやすいように立ち回る。魑魅一座の隙を突く形でモモイやケイがアサルトライフルやガトリングによる弾幕を叩き込んでいくと、それによって魑魅一座は大混乱に陥ってしまう。
「そこ!」
ユズの放ったグレネードが爆発し、数人の魑魅一座が吹き飛ぶ。それによってシロコ*テラーの足元に一人が吹き飛ぶのだが、どうやら余波で吹き飛んだだけで意識を失うまではいかなかったようだ。顔を上げてシロコ*テラーの姿に気付くと、
「見てんじゃねえよ!」
「……」
醜態を晒した自分を見られたことに憤ったのか、銃口を向ける。それを面倒くさそうに見ていたシロコ*テラーが出したままだった自分の黒いアサルトライフルで無造作に魑魅一座を狙おうとしたその時。魑魅一座のお面に弾丸が突き刺さり、お面を割ってその下の姿を晒しながら倒れてしまう。
「あ、ごめんなさい……まだ動いてたから……」
「……いや、ありがとう。そっか、スナイパーか……」
だが、シロコ*テラーを狙っていた魑魅一座を仕留めたのはミドリであった。自分を襲おうとしていた脅威がやられたことで他はどうなってるのかと視線を動かしていると、殆どの魑魅一座が既にやられており、ユカリが最後の一人にライフル弾を叩き込んでいた。
「お、お、覚えてやがれー!!」
「て、撤退だ!」
「これで終わると思うなよ!!」
見事な捨て台詞を吐きつつ、倒れた仲間達を背負ったりしながら必死に逃げる魑魅一座。モルフォ達は勿論だが、ユカリも追うつもりはないようだ。
「……皆さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。怪我は……なさそうだね」
戦闘が終わったのを見て、モルフォ達に駆け寄るユカリ。モルフォも無傷であることをユカリに伝え、他の面々の様子を見てくる。そちらも魑魅一座から攻撃を受けたりといった様子は見られない。
「しかし、お強いのですね……身共、感服しましたわ!」
「あ、はは……ありがとう」
「あの素早い身のこなし……制服を見るにミレニアムの方のようですがあなた達は……あ、そういえば自己紹介がまだでしたわね。身共は勘解由小路ユカリ。百花繚乱紛争調停委員会に所属するえり~とですわ!!」
「「「エリート!?」」」
百花繚乱のエリート。そんな存在がここにいるとは思わず、モモイ、ミドリ、ユズが目を見開く。彼女達の驚きの視線を受け、ユカリは胸を張って笑みを浮かべるのだった。
★
「成程……皆さんは燈籠祭を見に来ていたのですね。助けてもらった恩もありますし、都合がつけば身共が案内してもいいのですが……」
「あー、色々あるならいいよ。百花繚乱って活動停止してたんでしょ?ユカリがここにいて戦ってたってことは再開して間もないからバタバタしてるんじゃない?」
「……そ、そうですわ!まことに申し訳ないのですが」
「まあ、私達ものんびり見て回るつもりだったし気にしないでよ!」
その後、魑魅一座との戦いに巻き込んでしまったことを謝罪され、モルフォ達はユカリと話をしていた。ユカリも一年生ということもあり、すぐに仲良く話をするほどになっていた。
「それにしてもさっきのユカリ、凄かったよね。あの名乗り!格好良かった!」
「そ、そうですか?ありがとうございますわ!」
(モモイ……一発で完全に聞き取れてなかったことは黙っておこうか……)
モモイ達が痺れたのはやはりユカリが言ってのけた名乗りだろう。ゲームならばあの長い部分をフルボイスですらすら詠唱するだけでそこそこ食えるレベルだ。声優としてもやっていけるかもしれない。
「……そういえば、そちらの方は?」
「!えっと……」
「あ、思い出しましたわ!晄輪大祭でレンゲ先輩と同じ競技に出ていた人ですわ!」
(知らない記憶……)
「でも……こんな雰囲気でしたっけ……?なんか……ナグサ先輩っぽい……?」
シロコ*テラーの事情を本人は知らないため仕方ないのだが。シロコ*テラーとしてもレンゲは勿論、ナグサなんて人物、名前すら聞いたことがない。そのため、答えようもないのだ。仕方ないからもう何も言わずに去ってやろうかとも考えたところで、
「ナグサさん……確か百花繚乱の副委員長だよね?そんなに似てる?」
「あ、はい……何となく、という感じですけれど……儚い?というのでしょうか?そういうところが……ただ、ナグサ先輩が戻ってきたのはつい最近なので、知らないのも無理もありませんわね。ごめんなさい」
「そうなんだ……ごめんね。話についていけてなくて」
「い、いえ!こちらこそすみません!」
モルフォがナグサについて言及したことで、シロコ*テラーも会話を終わらせるとっかかりを手に入れることができて安心する。
「……そうだ、晄輪大祭で思い出しましたわ!モルフォさんといえばあの大立ち回りをやってのけた―――」
「ああ、あれかぁ……まだ覚えてる人いたんだ」
「当然ですわ!身共もあんな感じになれば、もしかしたらナグサ先輩にも……」
「待って待ってあれとそのナグサさんの関連性がわからない」
晄輪大祭の事を口にしたのがきっかけとなったのか、モルフォがミカを押さえ、ヒナにも一時勝ちかけたあの競技のことをユカリは思い出す。だが、そこからどうナグサに繋がるのかが分からず、モルフォはたまらず説明を求める。
「えっと……あの競技でもそうでしたし、先ほどの身のこなしも見て思ったのですが、もし、あれだけ動ければ身共ももっと強く……同じ一年生ですし……」
「……ユカリは強くなりたいの?」
「……はい。守りたいものを守るために……」
「……」
ユカリの説明を聞いて食いついてきたのはシロコ*テラーだった。シロコ*テラーは少し考えていたが、やがてユカリとモルフォ達を見ると、
「いいんじゃない?彼女に付き合ってあげても」
「シロコさん?」
「いいんですか?」
「い、いえ!そこまでしてもらうわけには……それに皆さんは外部からお客として来ているわけですし―――」
「うーん、まあそうだけどさ。祭りが始まるまでは暇なんだよねこっちも。雰囲気とか見に来たって意味ではもう十分だろうし……それに」
そこで言葉を区切り、モルフォはシロコ*テラーを見る。勝手に巻き込んでしまったことに対し、罰が悪そうに視線を逸らすシロコ*テラーからユカリを見る。
「シロコ先輩がこう言ってるなら、大事にしたいじゃん?」
「モルフォ……」
「モルフォさん……」
「はい!アリスも協力します!ユカリもアリス達のパーティに入り、一緒にレベリングしましょう!」
「れ、れべりんぐ?」
「え、えーと、とにかく鍛えて強くなるってこと!」
「成程……では不束者ですがどうか、よろしくお願いします!」
そして、奇妙な形で出会い、ユカリと共に特訓をする流れになるのだった。
★
「では、いきますわ―――はい!?」
その後、祭りが行われる予定となっている会場から離れた広い場所に来たユカリは、早速と言わんばかりにモルフォ達と摸擬戦を行っていた。移動中に聞いた話によると百花繚乱には継承戦と呼ばれる、一対一で行う決闘が存在している。それに勝つためには今よりも強くなることが急務らしく、モルフォ達もその継承戦に合わせ一対一の形式で手合わせをしていたのだが。
「ふっ―――」
「きゃっ!?」
ユカリが正確に狙った一撃が、モルフォのショットガンの銃身の表面を滑るように受け流される。直後、懐に素早く潜り込んだモルフォに向かってユカリはリロードをする暇もなく、蹴りで対処しようとするのだが、小刻みに足を動かしてユカリの攻撃を避けていく。
(み、見切られている!?)
「モルフォちゃんの方が有利だね」
「モルフォの特徴はスキルの数です!いろんなスキルがモルフォを支えます!まさに最強です!」
「……つまり、手数が多いって事?まあ、小技の引き出しが多いとは思ったけど……」
ユカリの足技を完全に見切って避けていく。しかも今のユカリは弾がない。リロードしなければならないが、ユカリが使用しているのはボルトアクション式のライフル。つまり手動でリロードする必要がある銃種であり、こうして懐に潜り込まれた状態ではそれすらままならない。たまらず、銃を鈍器替わりにモルフォに叩きつけようとするも、それを同じく銃身で受け止め、一瞬鍔迫り合ったかと思うとモルフォは突然銃を手放す。
「えっ!?」
それによって特に力を込めていたユカリの銃が真下へ振り下ろされるのだが、その直前にモルフォは銃のグリップ部分を蹴り上げる。それによって、ユカリの銃身が中心になる形でショットガンハンマーが回転し空へと打ち出されたかと思うと、そのままユカリの銃身に向かって踵落としを叩き込む。
「きゃあっ!?」
あまりの力にユカリの膝がガクンと曲がり、体が前のめりに倒れ込む。そして銃身が地面にめり込んだかと思うと、空から落ちてきた銃がモルフォの手に収まり、発砲する気の一切ない銃口がユカリの額に突きつけられるのだった。