転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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対策委員会と風紀委員会

ゲヘナの風紀委員会。ゲヘナで暴れる問題児たちを取り締まる治安維持組織である。だが、ゲヘナの風紀委員会に限らず、基本的に治安維持組織が自らの学区を超えて活動することはほぼありえない。だが、その風紀委員たちはその垣根を飛び越え、便利屋とアビドス生、そしてミレニアム生の前に現れていた。

 

「……な、なんで風紀委員がここに……!?」

「あれは……チナツ?」

 

当然、アビドスの生徒達としても風紀委員の参戦は明らかに予想外だった。その場にいた面々が視線を向けると、銀色のツインテールをした褐色肌の少女や、男性がチナツと呼んだ桃色の髪に眼鏡をかけた少女が風紀委員達を引き連れてこちらに近づいている光景が目に入る。

 

「ねえこれやばくない?完全に抗争だけど……」

「ていうかゲヘナってこういうの許されるの……?確かにC&Cも結構滅茶苦茶やってるけど……」

 

モモイとミドリも不安そうに話す。先ほどの砲撃だってそうだ。狙いは便利屋だったようだが、一歩間違えれば自分達の方に命中していたことだって考えられるのだ。便利屋を攻撃してくれたことはともかく、さすがにこれには文句を言いたい部分はある。

 

「……ゲヘナの風紀委員会って……便利屋を捕まえに来たってこと!?」

『まだわかりませんが……しかし、私達に友好的とは判断しかねます』

「確かに。砲撃範囲内には私達も、それにミレニアムの生徒だっていた。こっちを狙ったわけではないけど……」

「……ゲヘナの風紀委員会は他校の公認武力集団や、便利屋のような部活とは性質が異なります。一歩間違えれば政治的な紛争の火種になるかもしれません……アヤネちゃん、ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

『はい……普段なら、ここまで連絡が取れないことはないはずなのに……』

 

アビドスの生徒達も、風紀委員会の行動に対して警戒はしているものの、中々動けないようだ。そんな中、ベージュの髪の少女がアヤネと呼んだオペレーターの少女に先輩を呼ぶのだが、そちらは芳しくないようだ。

 

「この状況……私達はどうすればいいのでしょうか?」

「じゃあ、このまま便利屋を風紀委員会に引き渡しちゃう?」

「それは……」

 

ここまで口を閉じていた先生が、アビドスの生徒達にそう提案する。実際の所、風紀委員会の目的が便利屋であるなら、それを引き渡してゲヘナに帰ってもらえばここでの問題は終わりにはできるだろう。だがそれは、本来ここを管理するはずの自分達では解決できない問題を他校に解決してもらうということになってしまう。それは、ここを管理すべき学園のプライドとしては許されない。黙っていた狼の耳の少女がアサルトライフルを構え直す。

 

「他に選択肢はない。風紀委員会を阻止する」

「シロコちゃん……!?」

『……その通りです。風紀委員会が私達の自治区で既に戦術的行動をしたということは、政治的紛争が生じるということ……便利屋の皆さんが問題を起こしたことは事実だと思いますが、だからといって他の学園の風紀委員会が私達の許可もなく、こんな暴挙を敢行してもいいわけがありません』

「その通りだわ!これは私達の学校の権利を無視するような真似よ!便利屋を罰するのは私達!柴関ラーメンを壊した代償を払ってもらわないと!」

 

そしてアビドスの生徒達は風紀委員の行動を咎めることを決断する。その様子を見つつ、まさかこいつらここで一戦交えるつもりかと、モルフォはシールドを握る手の力を強くする。

 

「ネル先輩はここカイザーの土地って言ってたけど……もうよくわかんないな……アビドス側の認識が引っかかる」

「……え?それってどういう……」

「……アビドスの生徒達、臨戦態勢に突入しました。ミレニアムの生徒達は依然そのままです」

 

モルフォとユズが話を進めている間にも風紀委員達はアビドスが戦闘準備に入ったのを見て戦闘準備を取り始める、しかし、そこでチナツが待ったをかける。

 

「……待ってください。アビドス側に民間人がいます。あれは……え!?シャーレの先生?」

「……シャーレ?なんか聞いたことあるような、なんだっけ」

「それって確か前ニュースになってた……ほら、サンクトゥムタワーの奴で」

「あ、それそれ」

 

チナツはアビドスの生徒達に交じっている男性に覚えがあるようだ。そしてその名は、モルフォたちも過去にニュースで見たシャーレの人間だった。それに気付いたチナツが交戦を止めるように進言しようとするのだが、時すでに遅く、戦闘の火蓋が切られ、銀髪のツインテールの少女も戦線へと切り込んでいく。が、

 

「うわー!?」

「ドンパチ始まっちゃったけどどうしようお姉ちゃん!?」

「モルフォ達はこっちに!」

 

流れ弾を受けることになるモルフォたちにとってはたまったものではない。先生に手招きされる中、モルフォは便利屋達を一瞥すると、怪我をしないように三人に便利屋を運ぶように指示し、シールドを待機状態に戻す。店を吹っ飛ばした張本人たちとはいえ、ここに寝たままにしておくのはさすがに気が引けた。

 

「ねえこの状況どうするの……?」

「どうするも何も、ここアビドスの人達が自治しているんだから風紀委員会が悪いで終わりじゃないの?」

「……違うよ。ここアビドスの土地じゃないんだから、ゲヘナだけじゃなくてアビドスも悪いんだよ。というか勝手に自治区宣言してる分アビドスの方がやばい」

「えっと、それって……もしかしてだいぶ悪徳な感じ?」

「……先生がいるのが気になるけど、風紀委員会の矛先がこっち来たらどうしようもなくなるし、土地の管理者に連絡してさっさときてもらおう」

 

ここに来る途中に番号だけは検索していたそこへ電話をかけ、スマホを耳と肩で挟みながらアルを背負うと、先生の下へと向かうことにする。そして電話した先にここで起こっていることを伝え終え、電話が終わると同時に先生の後ろへとたどり着く。スマホをしまい、アルを下ろすと流れ弾が来た時の為にシールドを展開し直す。

 

「な、何……私達が負けただと……!?」

「久しぶり、チナツ」

 

そうしている間にも、なんとアビドスの生徒達はたった三人で風紀委員の部隊を逆に制圧してしまっていた。先生の指示を受けながら戦っていたようだが、まさかこの人数でそれを成し遂げてみせるとは。驚いた様子でモルフォが先生を見ていると、先生が落ち着いたタイミングを見計らってチナツに声をかける。

 

「チナツ」

「先生……こんな形でお目にかかるとは……先生がそこにいらっしゃることを知った瞬間勝ち目はないと判断して後退するべきでした……私達の失策です」

『アビドス対策委員会の奥空アヤネです。所属をお願いします』

「それは……」

 

これ以上の武力衝突は無意味であることを相手に示し、ホログラムを表示させたアヤネが交渉を進める。風紀委員達も銃を向けたままの状態は崩していないものの、またアビドスの生徒達に暴れられたらどうなるかがわかっているのだろう。引き金を引くことができずにいる。そして、黒い髪に赤い眼鏡をかけた少女の要求を前に、こうなってしまえば向こうも交渉に応じざるを得ず、ホログラムによって青い髪の少女が現れる。

 

『それは私から答えさせていただきます』

「アコちゃん……?」

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?』

「アコちゃん、その……」

『イオリ、反省文のテンプレートは私の机の左の引き出しにあります。ご存じですよね?』

 

アコと名乗ったホログラムの少女から気まずそうに視線を逸らす銀髪のツインテールの少女、イオリ。行政官、つまり風紀委員のナンバー2であると名乗ったアコは、アヤネに確認を取り始める。

 

『さて……しかし、驚きました。アビドスには生徒会の面々だけが残っていると聞きましたが、皆さんのことのようですね。五名と聞いていましたが後一人はどちらに?』

『今はおりません。そして私達は生徒会ではなく対策委員会です、行政官』

『奥空さんでしたか。では生徒会の方はいらっしゃらないと?私は生徒会の方と話がしたいのですが』

「アビドスの生徒会はずっと前に解散したの!私達が事実上の代理なのよ!言いたいことがあるなら私達に言いなさいよ!」

「こんなに包囲して銃を向けられたまま「お話をしましょうか~」なんていうのは、お話の態度としてはどうかと思いますけどね?」

『ふふ、それもそうですね、失礼しました。全員、武器を下ろしてください』

 

自らを対策委員会と名乗ったアビドスの生徒達の要求に従う形で、風紀委員達の武器を下ろさせるアコ。本当に武器を下ろしたことが意外だったのか、対策委員会も少し驚いた表情を見せる。

 

『先程までの愚行は、私の方から謝罪させていただきます』

「な……私は命令通りにやったんだけど!?アコちゃん!?」

『命令に、「まずは無差別に発砲せよ」なんて言葉が含まれてましたか?大体、この場にはミレニアムの生徒までいたんですよ?今、ゲヘナとミレニアムで問題が起これば面倒くさいことになります。しかもここ、他の学園自治区の付近なんですよ?』

「うぐ……」

 

アコから説き伏せられ、完全に落ち込んでしまうイオリ。一方モルフォは、風紀委員もここがアビドスの土地ではないことを把握しており、やはりアビドス側がここを自治区と勝手に宣言しているだけなのだと悟る。だが、アビドスの生徒達はわかっていてここを自治区と偽っている、というよりも最初からここが自分達の自治区だと思っているような振る舞いを見せている。その歪さに気付き、モルフォは思わず首を傾げてしまう。

 

『さて、ここに来た目的ですが……私達はあくまで、私達の学園の校則違反をした便利屋を逮捕するためにきました。望ましくない出来事もありましたが……やむを得なかったということでご理解していただけると幸いです。改めて、風紀委員会の活動に、ご協力をお願いできませんか?』

『そうはいきません。他の学校が別の学校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をすること……自治権の観点からして、明確な違反です!便利屋の処遇は私達が決めます!』

『……ふむ』

『まさか、ゲヘナ程の大きな学園がこんな暴挙に出るとは思いませんでしたが、ここは譲れません!』

『……成程、この兵力を前にしても怯まないなんて……』

 

話は、平行線。お互いに自分達が便利屋を裁くと主張する中、アコは呆れたような表情を見せる。これだけの自信があるのは、やはり先生という存在故か。アコは一目先生を見てから対策委員会を見ると、これ以上の交渉は無意味と判断する。

 

『仕方ありません。本当は穏便に済ませたかったのですが……ミレニアムの皆さん。今からここで激しい戦闘が行われるので怪我をしないように気を付けてくだ……』

『あ、アコ行政官!大変です!!』

『……どうしたんですか。今は交渉中―――』

『か、カイザーが!カイザーPMCの連中が、風紀委員会を取り囲むように集まってきています!規模は私達以上です!!』

『……は?』

『!?』

 

おそらく、潜伏させていた風紀委員会のメンバー達に指示を出して一気に対策委員会を沈黙させようと考えていたのだろう。だが、その目論見は風紀員会のメンバーからの通信を聞いたことで崩されてしまう。

 

「カイザー……!?なんでカイザーがここに……」

『っ……ここはカイザーコーポレーションの土地……その自治権はカイザーコーポレーションにある……でも、なんで急に動いて……!?』

『!?どういうことですかそれは!?ここがカイザーの土地って―――』

「アコちゃん、どうするんだ!?もし風紀委員会のメンバーが捕まったら面倒くさいことに!」

『仕方ありません、作戦を中止します!総員、ただちに撤収を!』

 

カイザーコーポレーションと事を構えたくないのか、アコは素早く風紀委員会達に撤退の指示を出す。慌ただしく、伏兵たちも含めて撤退し始める風紀委員会だったが、対策委員会からしたらそれよりも重要なことがある。

 

『アコ行政官!答えてください!!ここはアビドスの自治する土地のはずです!カイザーコーポレーションの土地とはどういう―――』

『それどころじゃないんです!あなた達もさっさと離れないと奴らに捕まって何を要求されるかわかったものじゃないですよ!ああもう!便利屋の身柄は仕方ないのでそちらに委託します、奴らに渡さないでください!特に先生は!』

「……なあ、アコちゃん。もしこの状況でミレニアムが捕まったら……私達のせいになるのか?カイザー呼んだのって私達のせいだよな……?」

『…………』

 

次々と風紀委員会の面々が撤退していき、アコ自身も撤退の準備を進める中、イオリから告げられた言葉にアコの動きが止まる。もしこれでミレニアムの生徒が捕まり、カイザーがミレニアムに対し何らかのアクションを起こしたら?そしてその行動にゲヘナの行動の是非が疑われたら?そのことについて、ミレニアムがゲヘナに政治的な行動を起こすことは十二分に考えられた。

 

「行政官……そうなったら、万魔殿だけじゃなくてセミナーからも何を言われるか……」

『……と、とにかく撤退です!少なくともカイザーなんかの思い通りにさせるわけにはいきません!ミレニアムは……そこまで面倒見れません!こっちの人数が多すぎます!!』

「……その言い方はどうかと思うけれど、アコ。随分と勝手なことをしていたようね?」

 

チナツの言葉もあり、アコの難しい表情はさらに歪んでいく。そんな中でもとにかく撤退を指示しようとしていたアコだったが、そこに聞こえてきた一人の少女の声にアコの姿が固まる。

 

「……あ……」

「ひ、ヒナ委員長……!」

 

ヒナ。風紀委員会の目が、その場に現れた長い白髪の少女へと向けられる。見た目こそ小柄だったが、委員長と呼ばれるということはそれだけの実力と人徳がある、ということなのだろう。ヒナの出現に風紀委員達の目は一斉に彼女へと向けられていた。

 

『ど、どうしてこちらに?しゅ、出張は―――』

「さっき帰ってきた。何があったのかも把握している……アコ、他の皆を連れて下がりなさい。処分は追って伝えるわ……特に、無関係なミレニアムの生徒を巻き込みかねないのに砲撃を行った点、あなたの軽率な行動でカイザーを招いた点は覚悟しておきなさい」

『……は、はい……』

 

有無を言わせないといった様子で顔面蒼白となってしまったアコ達を下がらせるヒナ。ことこの状況では言い訳の時間すら惜しい。アコはすごすごと仲間たちを連れて引き下がっていく。

 

「これ、どういう状況なの?」

「さあ……」

『ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナ……外見情報も一致します、間違いなく本人のようです。ですが、何故彼女がここに……』

「……う、うぅん……?えっ」

 

一方、置いてけぼりにされたままの対策委員会とゲーム開発部。そしてここにきてようやく意識を取り戻したアルがモルフォの背中で目を開けると、ヒナの姿を確認する。

 

「なっ、ななななんでええええ!?」

 

そして白目を剥いて絶叫するのだった。

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