転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「な、なんで風紀委員長が……!?」
「大丈夫かい?」
「え、ええ……でも、あれ?他の風紀委員会達は……」
アルに引き続き、他の便利屋も意識を取り戻し始める。そしてこの場にヒナ以外の風紀委員会がいないことに気付く。ヒナは便利屋を一瞥すると、逃げるように促す。
「あなた達、すぐにここから逃げなさい。カイザーが来て囲まれるのはあなた達としても不本意なはず―――」
「うへっ、これどういう状況?」
「「「『ホシノ先輩!?』」」」
そんな状況だった。桃色の髪に黄と青のオッドアイの小さな少女が現れたのは。
「!小鳥遊ホシノ……?まだ、アビドスにいたのね……」
「風紀委員長ちゃん、おじさんのこと知ってるんだ?でもまぁ、今はどうでもいいかなぁ。皆、カイザーがぞろぞろこっちに来てるんだけど何やったの?」
「こいつらが柴関ラーメンを吹っ飛ばした。大将はアヤネが近くのシェルターに移動させてる」
「そしたら、風紀委員会が来て便利屋の身柄を引き渡せと来て……そしたらカイザーPMCが近づいてきていて……!ホシノ先輩が来たならもうここにいる理由もないわ!さっさと逃げ―――」
ホシノと呼ばれた少女に後輩達が説明を始める。と、そこに店長をシェルターまで案内し終えてきたアヤネが駆けつけてきて合流してくる。その様子を見ながら、意識を取り戻した便利屋達は囁き合う。
(この状況どうする?)
(……さすがに風紀委員長がいる状況でカイザーとの繋がりはばらしたくないかな……逃げるならとりあえずそれに便乗させてもらって……)
「通報通り、カイザーの所有する土地で戦闘行為を行っているゲヘナ生、アビドス生、そしてミレニアム生を発見」
「……参ったなぁ。これでもカイザーを見て話をすぐに打ち切ったつもりだったんだけどねぇ……随分準備が早いじゃない」
だが、タイミングの悪いことに、カイザーの軍勢のオートマタたちが取り囲んでしまう。ホシノもやられたなぁと顔だけは笑いつつも、目は一切笑ってない様子で盾とショットガンを手に取り始める。
「戦闘を起こしたゲヘナの生徒五名、アビドスの生徒五名、ミレニアムの生徒四名を取り押さえる。怪我をしたくなければ抵抗せず投降したまえ」
「……え!?私達被害者なんだけど!?」
「はあ!?なんで私達が捕まえられるわけ!?」
「……やられたね」
「カヨコ……?やられたって」
指揮官と思われるオートマタの声が響く。そして部下たちを手で制する。ここで投降するなら痛い目には遭わせない。というパフォーマンスなのだろう。だが、その言葉を聞いた便利屋とモルフォたちの表情に驚きが浮かぶ。そんな中、カヨコと呼ばれたパーカーの少女は苦虫を噛み潰したような表情になっていた。
「私達との関係を打ち切ったんだよ。通報したって言ってたでしょ、誰かがこれを通報してカイザーにどうにかしろって言ったんだよ。そうすれば、カイザーは大手を振って市民から要請があったから制圧することができる。他の学園が何か言ってきても義務を果たしただけの一点でまかり通るから」
「……」
「そして、ゲヘナ、アビドス、ミレニアムの生徒を捕まえてしまえば、それぞれの学園とも交渉ができる……カイザーは元々アビドスを狙ってたみたいだし、ここで全生徒を捕まえてしまえばやりたい放題。ミレニアムの生徒を捕まえればミレニアムに技術交渉なりなんなりできる。ゲヘナは……万魔殿だったら勝手にしろとか言いそうだけど……まあ、それはそれで他の学園に対して政治的にアピールのしようがあるからね。腐ることはない」
カイザーが狙っている目的。何となく予想がついていたヒナとホシノを除く、全員の表情が厳しくなる。その中で特にやばいと思っていたのは、通報した張本人であるモルフォだった。冷や汗をダラダラと流しながら、モルフォはカヨコに質問する。
「あの……カイザーPMCって民間警備会社ですよね?善良な所じゃないんです……?」
「馬鹿言わないでよ、カイザーなんて真っ黒の化身だから」
「……」
その場にいた全員の視線がモルフォへと向けられる。そしてモルフォは、頭を抱えてしまう。
「ごめんなさいー!通報したの私ですー!!」
「は!?なんでそんなことしたの!?」
「だってネル先輩からここの土地持ってるのカイザーだって聞いて、しかも民間警備会社とかいうから大人たちがちゃんと自治してんだーとか思ったんですー!こんな真っ黒な所なんて全然知らなかったんです!!本当に申し訳ない!!」
「……うんうん、大丈夫だよ。知らなかったのなら仕方ない」
「……悪い大人にあなたも騙されていたんだね……頼る相手はちゃんと選ばないとねぇ……」
全力で頭を下げるモルフォだったが、彼女の話を聞いた対策委員会はむしろ同情するような視線を向けていた。カイザーの後ろめたい話もほとんど知らず、知ろうともせずに過ごしてきたのだろう。
「そうだよ!悪いのはモルフォじゃなくて店を吹っ飛ばしたこいつらじゃん!」
「あははは、そこは事実だから何も言い返せないね」
「ムツキ、笑っていられる場面じゃないけど……ごめん、さすがにこうなるとは思わなかった」
それに、今回の問題はそもそも便利屋にあるのだとモモイが指差す。さすがにこれは予想外だとカヨコから謝罪を受けるものの、今謝罪を受けたところで状況が好転するわけではない。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい私があんなことをしたから……」
「……正直言いたいことは色々あるけども。今はこの状況、どうすれば……」
「……この数を全て相手にするのは厳しい。ここを突破しつつ、学校に戻ろう。少なくともあそこはアビドスの自治区のはずだろうし、そこまでいけばカイザーも手は出せないはずだ。便利屋とモルフォ達もそれでいい?」
「へ?いいの?私達は……」
「君達も、私の生徒だからね。生徒を守るために頑張るのも大人の役目だから。それに、お店の人にちゃんと謝らないとね」
ここまで黙っていた先生がそう言うと、便利屋に笑いかける。その表情に一瞬唖然となっていた便利屋達だったが、次第に納得したようで頷く。次に先生はヒナの方を見る。
「ヒナは……」
「今回の件は部下の不始末。責任は取らせてもらうわ……迷惑をかけてごめんなさい」
短く、そう伝えたヒナに先生も頷く。そして今度はモルフォたちを見る。
「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」
「先生……いや、それはむしろ私が言うことで……」
「モルフォはモルフォにできることをやっただけだよ。君は悪くないんだ。だけど……カイザーにとってはそうじゃない。だから、君達を守るために、私も頑張るよ」
「先生……」
そう、モルフォたちに話しかけた後にタブレットを取り出すと、その場にいる面々を確認する。
「それじゃあ皆、私が指揮を執るよ。皆、いいね?」
「とりあえずこの場を何とかしてくれるなら……!」
「ユズ、大丈夫?」
「う、うん……!」
人見知りが激しく、モルフォに隠れるようにしていたユズも戦わなければ生き残れないと悟ったのだろう。意を決したようにグレネードランチャーを握る。モモイとミドリも納得したように頷くと、その場にいた生徒達はカイザーの軍勢を見る。無抵抗のまま捕らえられるならそれに越したことはない、ということなのだろう。とはいえ、距離があったからか先生達の話は聞こえてないようだ。
「話は終わったか。投降の準備はできたか!」
「これが私達の答えだよ!シロコ、セリカ、モモイ!先手を!」
「何!?」
先生の声に従うように狼の耳の少女、シロコと猫耳ツインテールの少女、セリカ。そしてモモイがアサルトライフルの弾をばらまく。生徒達からの先制攻撃を受け、驚くカイザー達。しかしすぐに立て直そうとするのだが、銃撃が止んだその一瞬にシールドを展開させたモルフォとホシノがショットガンを片手にヒナと共に敵に突っ込んでいく。
「アルとミドリは抜けようとしている敵を対処!ノノミとムツキは三人がカバーできないポイントを攻撃!カヨコとハルカとユズは他がリロードに入ったところをサポートして!アヤネはドローンで援護を!」
先生の指示通りに、素早く動き始める生徒達。アルとミドリがスナイパーライフルで確実に敵を仕留める中、ベージュの髪の少女、ノノミと白髪の少女、ムツキがミニガンとマシンガンで確実に薙ぎ払っていき、前衛組を突入させるために弾をばら撒いたシロコ達もタイミングを遅らせる形でそれに便乗する形で弾幕を張っていく。次第に弾が尽きたところで入れ替わるようにハルカ、カヨコ、ユズがカバーに入り、それぞれショットガン、ハンドガン、グレネードを撃ち込んで敵を近づけさせないように立ち回る。
(……うわ強いなこの二人!?ネル先輩と同じぐらいやばい!)
そして最前線では、三人によって次々とカイザーのオートマタ達がなぎ倒されていた。高い身体能力を活かし、切り込んでいくホシノとヒナの手によって次々とオートマタ達は倒れていく。モルフォも自分にヘイトを集めるように、だが攻撃をシールドで確実に防ぐように立ち回り、隙あらばハンマーを叩き込んで仕留めるといった形で順調にスコアを伸ばしてはいるものの、この二人と比べれば圧倒的に劣ってはいるだろう。だが、
「ミドリ!」
「うん!」
突然モルフォが横に跳ぶ。その意図を把握したミドリが先ほどまでモルフォがいて射線が途切れていたラインに弾を撃つと、それがオートマタの額に命中し、その場で倒れる。
「弾が切れた!ユズちゃんお願い!」
「わかった!」
「ユズ!こっちの集団に!」
「うん!」
ミドリがリロードに入ったタイミングでユズが出てくる。それを確認してすぐにモルフォがまた横に跳ぶと、がら空きとなっている敵の集団が露わとなる。そこに向かって放たれたグレネードランチャーの一撃はオートマタ達を纏めて吹き飛ばす。
「あははは!やるじゃん君達!特にあの子凄いね!」
「モルフォはタンクと司令塔やることが多いからね。割と私とミドリがわちゃわちゃしてる時に前から指示出してくれるんだよね。盾役やってると嫌でも視野が広くなるんだってさ」
「それはゲームの話でしょお姉ちゃん!?」
「ん……そんな話初めて聞いたけど……」
「ホシノ先輩だとあんな風に指示は出せませんからねー戦闘になると私達って大体自分達の判断で動いちゃいますし」
「まあモルフォは撃てないからその分じゃない?って言ってたっけ?」
余裕が出てきたからか、軽口も増える。そんな中でも次々と倒れていくオートマタを前に、カイザーの指揮官は唖然となってしまう。
「これでラストォ!モモイ!!」
「ぐああああ!?」
目の前の最後の一体を仕留めるため、ハンマーを振り上げるモルフォ。オートマタも反撃するように銃を構えた次の瞬間、ハンマーを銃に当てて銃身を逸らしながらその場から離脱。空いた胴体をモモイが攻撃する。
「ぐ……後続部隊!まだ来ないのか!」
「今だ!アビドス高校に撤退!」
やはりカイザーは、この状況を逃すつもりがないようで他にも部隊を寄越しているようだ。各々の戦闘力があり、先生の指揮でまとまって対応できても、数で押されれば弾が尽きる。そうなればジリ貧だ。先生の言葉を受け、セリカとシロコが先導し、ホシノ、ヒナ、モルフォが殿を務める形で撤退を始める。残りわずかとなったオートマタ達が追いかけてくるが、
「ムツキ!奴らにたっぷり喰らわせてやりなさい!」
「りょうかーい!」
「な、なにぃいいい!?」
ムツキが大量の爆弾をカイザーへと投げつける。その爆発に巻き込まれ、煙が晴れた頃にはカイザーの兵達の前には生徒達の姿は見えなくなっていたのだった。
「……理事。奴らを取り逃しました。おそらく学校へ逃げたと思われます」
『問題ない。ここから奴らが動くためには時間がかかるだろうからな。消耗した部隊は一度戻らせて、補給を受けさせろ。後続部隊はそのまま市街地に待機させ、連中を学校から出させんようにしろ……意図せずして得たチャンスだ、逃すわけにはいかん。アビドスを完全に潰し、学校の存在がなくなればアビドスの土地も、その管理問題も何も関係なくなるのだからな』
「了解しました」
指揮官が理事と呼んだ存在から、そのように指示が下る。それを聞いた指揮官は頷くのだった。
★
アビドス高校の教室の一つ。そこまで避難してきた生徒達。窓の外を見ると既に夕日が見えていた。そして、そこに集められた生徒達の反応は。
「はぁ……どうしてこうなるのよ……!」
「運が悪か……いやこれは私達が言える台詞じゃないな……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「それにあの感じだとカイザーは私達を使い捨てる気満々だったわけだし」
「そ、そうよ!ハルカが悪いわけじゃな……」
「いや悪いに決まってるでしょ!?そこだけは譲らないわよ!!」
「ん、こいつら反省してないからやっぱり今から外で屯してるカイザーに突き出す」
「今はやめて!?そっちの件は本当にごめんなさい!」
カイザーが自分達を切り捨てた事、そしてその発端を作り出したハルカを宥めようとするもセリカとシロコに詰められる便利屋達。カイザーの件はともかく、この場で柴関ラーメンを部下の不始末で吹っ飛ばしたのはどうしようもない事実なのでアルも慌てて謝罪する。
「私がもっと警戒してたらこんなことには……というかアビドス行こうとか提案したの私じゃん!?」
「モルフォは悪くないよ!悪いのあのカイザーとか言う連中じゃん!いきなりこんなことしてきておかしいよ!」
「うん、いくら何でも横暴すぎる……あの騒動を生徒全員がやったとか決めつけるのもおかしいよ」
「大丈夫ですよ~、あなたのことを責める人はいませんから」
「そうだよねぇ……私達もカイザーの悪辣さに気付いていなかったから人の事言えないし。ところで……さ、モルフォちゃんだったかな?」
申し訳なさに崩れ落ちるモルフォを宥めるゲーム開発部とノノミとホシノ。そして、先生と何かを話しているヒナ。そんな中、モルフォを宥めていたホシノがすっと目を細めながら問いかける。
「どこであそこがカイザーの土地だって知ったの?ネル先輩とか言ってたけど」
「連邦生徒会長が失踪して、治安が悪くなってた時期があったじゃないですか。あの時、ミレニアムでも発電施設が止まるとかで結構大事になってて……それが解決したので記念にってことで、普段なら行くことのないアビドスに行って柴関ラーメンを食べようっていう話になったんです。そのことをネル先輩に話したら、カイザーの土地だから変な揉め事起こすなよって釘を刺されたんです。ネル先輩がなんで知ってるかっていうと……それはC&Cだからとしか」
「そっかー……」
「ホシノ先輩、先生!これを……!」
モルフォの言葉にある程度納得した様子を見せるホシノだったが、彼女と先生の視線が書類を抱えて教室に入ってきたアヤネに向けられる。先生はヒナを一目見ると、ヒナは先にそちらの話を優先するようにと無言で合図を出し、先生とホシノがアヤネの下に近づく。
「……アビドスの借金の返済の為にカイザーに土地を売ってしまったのか……」
「全然知りませんでした……ずっと、ここら辺の土地はアビドスのものだと……まさか、既に手放していたとは……」
「……借金?」
先生達の話が聞こえてしまったユズがつい、呟いてしまう。途端に、ヒナと先生達以外のその場にいた全員の視線が彼女に突き刺さる。
「……ひぇ……え、えっと……」
「……ん、少なくとも彼女たちには説明すべき。カイザーとのあれこれに巻き込んじゃったし……」
「まあ……仕方ないわね……」
隠しておきたいことのはずだが、ゲーム開発部の面々がカイザーに巻き込まれてしまった以上、何故アビドスが狙われるのかを話した方がいいだろう。最悪、被害者でしかない彼女たちだけを助けることにも繋がるかもしれないと判断し、シロコとセリカがホシノの顔を見ると、ホシノも肩を竦めて頷いたのを見て、説明を始めるのだった。