転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
C&CとポケットモンスターSV(対戦)
エリドゥに爆発音や銃撃音が響き渡る。その中から飛び出してきたのは、ネルであった。だが、その表情は楽しそうにしていながらも、余裕の無さが現れていた。
(―――追い込まれたか)
まだまだ負けてはいない。むしろここからだとすら思ってはいる。それはそれとして、C&Cはほぼ壊滅しているという事実に関してはネルも受け入れざるを得ないだろう。壁を蹴って走り、アサルトライフルとガトリングの弾幕を避け、移動先を予測して放たれたスナイパーライフルとグレネードの攻撃を寸前のところで回避しながら、冷静に状況を見る。
(まさか、ここまでやるとはな……!)
元々この手合わせはハンデ戦の意味合いもある。C&C側は一発の被弾で即アウトという特殊ルールだ。だが、ユズが山なりに放った榴弾でカリンを遮蔽物から追い出し、その隙を突いたミドリの狙撃でカリンを撃破されて以降、流れは大きく変わってしまった。一人ずつ、着実に潰していく戦術で真っ先にアカネが落とされ、アスナも普段ならば被弾覚悟で強引に突破する局面であってもこの特殊ルールでは致命傷という状況に追い込まれて脱落。トキは粘ったものの数の暴力を前にしてはそこまで持たず、モルフォがネルを食い止めている間に四人は既にやられてしまっていた。
「後はネル先輩だけ……!」
「勝てる、勝てる……!?」
勝利に王手がかかった状態。一気にゲーム開発部の面々の士気が上がっていく。他のメンバーがいた時ならともかく、一人だけという状態となればネルもさすがにモルフォ一人に構っていられない。他の四人の攻撃を回避するために距離を取りながらの攻撃に転じるしかない。
「ちぃっ!」
だが、その消極的にならざるを得なくなった攻撃は、今のゲーム開発部にとってはカモでしかない。ネルが距離を離せば離す程にモルフォが詰めていく。当然ネルも距離を取ろうとするが、それを予測して四人が攻撃を当てようとしてくる。ならばとモルフォを崩そうとするが、そうすればモルフォもネルをその場に食い止めるために全力を出し、さらに自分とシールドでネルの視界を封じつつ後ろから仲間の攻撃を通させるなど、嫌らしい手も加えてくる。
「うおっ!?」
モモイのばらまいた弾丸の一発が、偶然にもネルの腕を掠めた。これは当たった扱いにはならないものの、条件が条件なのもあり、ネルも思わず冷や汗を浮かべる。だが、同時に獰猛な笑みが浮かび上がる。
「いいねぇ……あたしを落としてみろよ!!後輩達!!」
そして雄叫びを上げるかのように声を張り上げ、ネルは一層両脚に力を込めてモルフォのシールドに向かって蹴りを叩き込むのだった。
★
「がああああああああ!!!」
「リーダーが悔しそうです。面白いですね」
「ま、まあリーダー、落ち着いてください」
数分後。悔しそうに声を張り上げるネルがそこにはいた。その様子を見てさらに煽るトキと、ネルを宥めようとするアカネ。アスナは相変わらず笑っており、カリンも呆れた様子でそれを見ていた。しかしすぐに喜び抱き合うゲーム開発部の方を見る。
「……正直、いつかは来ると思ってたが……遂に来てしまったか」
「そうだねー、でも案外こんなものじゃない?あの子達も凄く強くなったよね」
「確かに」
カリンの呟きを聞いたアスナも嬉しそうに言う。ゲーム開発部とC&Cの繋がりもアビドスの一件がきっかけだが、アリスが加わり、部活同士として初めて手合わせをした時と比べて彼女達は大きく成長したのは間違いない。カリン達とて、後輩達に追いつかれるのもどうにも癪だな……と思う部分もあり、当時よりは実力が上がっているのだが、彼女達はそれに追いつき追い越してみせたのだから。
「では次はアビ・エシュフを使っても問題ないですね」
「……それをありにしたら向こうも使ってこないか……?」
現在、アビ・エシュフはトキとケイの二人が使用できる武装となっている。が、使う度にどちらかに逐一調整をするというわけにもいかないことや、先日の虚妄のサンクトゥムの件もあり、それぞれのアビ・エシュフが建造されるに至っていた。そのため、トキがこれを持ち出せば当然ケイもそれを使用することを容認するわけで。
「そうなると洒落にならないだろうな……」
「……あー、くそ!負けだ負けだ!畜生!!」
憤慨して悔しがっていたネルも、やっと少し落ち着いてきたのか、そう声を張り上げる。その声に喜び合っていたゲーム開発部も負けを認めたネルの方を見る。
「まあ、これでやっと、あたしらも本気でやれるってわけだ……良い事じゃねえか」
そして、今度は面白そうに笑みを浮かべる。そう、ここまでは結局のところ、ただのハンデ戦で勝っただけなのだ。万全のネル達に勝ったというわけでは決してない。
「う、それって……」
「次からは条件は五分だね!」
アスナがニコニコと笑いながら告げる。C&Cに課せられていたオワタ式縛りプレイは解除。当然弾もゴム弾ではなく通常弾へと戻されることになる。それ以外にもアカネも爆弾を遠慮なく使用することが可能になるなど、武装面でもアビ・エシュフを担ぎ出さない以外は完全解禁だ。そうなれば当然、これまで通りにはいかなくなることは明らかであり、ゲーム開発部は冷や汗を流しながら互いに顔を見合わせ合う。
「え、えっとぉ……そもそも私達がこんなことやってるのってアリスに何かあったらっていうのが主だったはずではぁ……」
「でもまた何かに巻き込まれた時に自衛できないとなると困るのでは?」
「ふぐっ」
そうなれば自分達はどれだけ疲れるかもわからない。モモイが何とかここで終わりにしようとするも、トキの鋭い指摘に黙らされてしまう。
「……まあ、別に今すぐにとは言わねえよ。ここで叩き潰して折角の気分を台無しにするのもあれだしな……」
「ではネル先輩をさらにぼこぼこにするために一戦しましょう」
「おい」
「!ゲームですか!ゲームでの勝負ならアリスは大歓迎です!!」
『そういうことしていると次にしっぺ返しが来ますよ……?』
そして、半ばお決まりの流れでゲームをして遊ぶことになるのだった。
★
その後、C&Cの部室に移動した十人。そこでネルとモルフォがswitchを操作していた。彼女達のプレイしていたゲームの名前は、ポケットモンスターSV。所謂九世代と言われるシリーズであり、スカーレットとバイオレットの2バージョンが出ている。話としては、パルデアに存在する
「……今度は負けねえ……」
「恰好いいのとか可愛いのも沢山いるねー」
「わかります。そして見た目に違わずえげつないことをしてくるポケモンも……」
今回行われるのはシングルバトルと呼ばれる互いにポケモンを一体ずつ出し合う、三対三の勝負である。最初に手持ち六体をお互いに選び、さらにそこから相手の手持ちなどを見て三体を選出するというものになっている。
この時、選出されるポケモンたちは、他のポケモンと同じ持ち物を持たせることができない。それだけではなく、手持ちに加えるポケモンも、二体以上同じポケモンを参加させることができなくなっている。それに加え、レベル50ではないポケモンは全てレベル50に統一されるというものになっている。所謂、オフィシャルルール1と呼ばれるものだ。今回の対戦ではこれを用いていた。
「……とりあえずこいつだろ……?後は……」
「ねえねえ部長、これとか強いんじゃない?」
「んあ?なんかいまいち強そうに見えねえけど……まあ、いいか……」
今回使うデータは、モルフォが元々用意していたもので、既に対戦用のポケモンがそれぞれ用意されている。SVでは対戦用のポケモンを作るハードルはかなり低くなっており、過去作で存在していた努力値を上げる道具である栄養ドリンクを最大の252まで上げられないという制限もなくなっているだけでなく、銀の王冠という、ポケモンの持つ個体値を定める要素を補正してくれるアイテムも手に入りやすくなっている。
「うーん……この子強かったよね?どう?」
「あられ戦術はどうですか?」
「あられは……今作だと雪に変わっててスリップダメージがなくなっちゃったんだよね。それを狙うなら砂嵐になるけど……」
「そうなんですか……」
「……なんでこの子だけ何人もいるの?」
「……あー、そういう?ねえモルフォ、どれかいれない?」
「そうしようっか、でも誰がいいかなぁ」
努力値と個体値だけではなく、ポケモンのレベルについても上げやすくなっている。かつてふしぎなアメしかポケモンのレベルを人為的に上げる手段がなかった時期とは異なり、けいけんアメと呼ばれるふしぎなアメの下位互換のようなアイテムが多数登場している。それだけではなく、これらのアイテムが手に入りやすくなっており、SVに存在するテラレイドバトルと呼ばれるコンテンツを周回するというのを始めとして様々な手段で荒稼ぎすることが可能となっている。
「……部長、このカイリューっていうポケモンだけ何体もいるけど……やっぱり強いんじゃ」
「つってもドラゴンはこいつって決めてるし……絶対強いだろこいつ。みろよこの攻撃力」
「……えっと、一応ここにいるポケモンって全部強いんですよね?」
「あ、それは大丈夫です。ちゃんと強いポケモンだけを揃えているので」
さすがにフライゴンとかみたいに対戦までいくとちょっと使いどころが……となるポケモンは早々いないはずだと考えながら、モルフォは皆からこれがいいんじゃないか、みたいなポケモンを手持ちに突っ込んでいく。そんなこんなでお互いに選んだポケモンたちによって選抜された手持ちを公開し合うことになる。
「……これは……」
「あのなんか愛嬌あるドラゴンを選んだのかお前ら……」
ゲーム開発部が選んだ手持ちはマスカーニャ、カイリュー、バシャーモ、ドオー、ヒスイダイケンキ、ママンボウ。対してネルを筆頭にC&Cが揃えたのはガブリアス、アカツキガチグマ、ハバタクカミ、テツノブジン、パオジアン、オーロンゲという選出。
(なんやこの厨パァ!!)
相手の手持ち次第ではパワーも抑えつつ……なんて考えていたが、ネル達が選んだポケモンたちを見てその考えはモルフォも一瞬で吹き飛んだ。どいつもこいつも強いポケモンばかり揃えられていて、思わず表情が引き攣ってしまう。
「で、こっから三体選ぶんだろ?……何選べばいいんだ?」
「強い奴を選べばいいんじゃないか?」
「でもどれも強そうだしな……」
「これ、どれ警戒した方がいい?」
「えーと……一番警戒しないといけないのはこれかな……正直どれも重いんだけど……もしこれが初手で出てくると仮定したら、こっちもこいつが使えるから……」
「モルフォちゃんが入れた奴だね」
「じゃあこの二体はいれて、残りは……」
「うーん……こいつ?」
お互いに手持ちを見せ合ったうえでどれを選ぶか話し合う。ゲーム開発部がモルフォを筆頭に手持ちを選び終えると、ネル達も手持ちを選択していく。そして対戦が始まり、お互いにポケモンを繰り出していく。
「……む」
「んあ?あの猫っぽい奴か……確かくさだったような……こりゃ悪くねえな」
モルフォが繰り出したのはマスカーニャと呼ばれる、猫をモチーフとした、黒い仮面をつけたようなポケモンだ。二足歩行し、上半身を黄緑色の体毛で、下半身を黒い体毛で覆ったそのポケモンは性能だけでなくビジュアルも相まって人気が高い。
対してネルが繰り出したのはガブリアスと呼ばれる、鮫と竜を掛け合わせたようなイカついポケモンだ。その荒々しくも格好いい姿もまた、人気が高い。
「結構可愛いポケモンですね」
「まあ、モルフォが気に入るのもわかる一体ですね」
「つまりモルフォは猫が好きだと?」
「モルフォちゃんは緑と猫が好きってことでいいんだ」
「いやぁくさタイプが好きな部分がでかい気が……私ジュカインとかゴリランダーも大体好きだし……」
少しほど悩んでいたがとりあえずこれを撃つかとモルフォが技を選択する。そしてネルは特に迷うことなく技を選び、お互いのポケモンが動き始める。まず、マスカーニャがどくびしと呼ばれる、毒のまきびしをばら撒く技を使う。マスカーニャの特性、へんげんじざいによってタイプがどくタイプに変化する。一方ガブリアスはつるぎのまいと呼ばれる技を使い、攻撃力を二段階アップさせてしまう。
「うわ、積んでる!」
「これでこいつを止められる奴はもういねえぜ?」
「ネル先輩が成長しています。経験が活きてますね」
「うるせぇ!」
「ど、どうしましょうかモルフォ!」
「ん?ああ……まあ、どうにかするしかないんじゃない?」
慌てるゲーム開発部と、狙い通りと余裕そうなネル。ゲーム開発部の慌てようや、ガブリアスが強くなったことはわかっているのかC&Cの方にも安心した雰囲気が流れていたが、モルフォ自身はすでに役割は果たしているしとあまり深刻そうには捉えていなかった。そして、
「……トリプルアクセル?って、いやちょっと待っ」
マスカーニャがガブリアスの上を取り、トリプルアクセルというこおりタイプの技を喰らわせる。この技は最大三回まで相手に攻撃を当てる技であり、じめん・ドラゴンタイプのガブリアスからすれば四倍弱点、さらにガブリアスが持っている、HP最大の時にそれを越えるダメージを受けてもHPが1残るきあいのタスキすらも貫通してガブリアスを倒してしまう。
「はあああああ!?」
「い、一撃で……」
「こんな技を隠し持っていたんですね……これ、変に積まずに攻撃するべきだったのでは?」
ざわつくネルと、これは勝っただろうなんて思ってたらまさかの番狂わせに驚くアカネ達。マスカーニャの方もまた、接触する攻撃をした相手に定数ダメージを与えるさめはだというガブリアスの特性によって二回ほど傷ついており、きあいのタスキが潰されるという痛み分けのような状態を迎えているものの、どちらの損失がでかいかなど火を見るより明らかだ。
(元々ロンゲ読みではあったんだけど……まあいいか)
「ねえねえ部長どうするのー?」
「くそっ……だったら、こいつだ!おらっ、ガチグマ!!」
たまらず、ネルは二番手としてガチグマを投入する。通常のガチグマは灰色とこげ茶色の二色の体毛で全身を覆われた大きな熊で、額に満月のような模様が浮かび上がっているポケモンなのだが、今回繰り出されたのはアカツキと呼ばれる特殊個体である。アカツキは何と二足歩行するポケモンであり、左目に傷跡がついて潰れているのか目を閉じたような姿となっている。さらに額の満月の模様は赤く染まっており、さながら歴戦の老兵のような雰囲気すら醸し出している。
「ガチグマアカツキか……」
「こいつ凄い強そうだったんだよね……どう?耐えれそう?」
さめはだのせいで体力は四分の三程度まで減っている。その状態でも、どくタイプになっているおかげで先制技であるかくとうタイプの技、しんくうはは余裕で耐えられるが、それ以外は耐えられないだろう。
(とんぼか?いや……戻ってもなぁ。それなら……)
モルフォがユズやミドリに技を見せながら、二人の判断も受けてコマンドを入力する。すると、相手トレーナーがアップになり、画面が震えて手にしたボールに光が集まっていく。それをガチグマへと放り投げると、無数の結晶が生えて砕け、そこから特徴的な王冠を被り、全身が白を基調とした鉱物的な質感に覆われていく。
「これがテラスタル……」
「これでガチグマはノーマルタイプになり、ノーマルタイプの技の威力が上がる、でしたっけ」
「タイプは変わってないが、その場合はさらに技が強くなるんだったか?」
「そうですね、一致テラスタルはもっと倍率にボーナスがかかります」
これが、SVの目玉要素であるテラスタルだ。テラスタルは一回のバトルで一回だけ使用でき、テラスタルを行ったポケモンは該当するタイプに変更される。それにより、くさタイプのポケモンがほのおタイプのわざを受けるためにみずタイプになることもできるし、くさタイプのポケモンがくさタイプのテラスタルをすることで普段よりもくさタイプのわざを強く撃つこともできるようになるのだ。
「おらっ、これでどうだ!」
「マスカーニャがやられましたか……」
「うわぁ……これ絶対強いよ」
マスカーニャがやどりぎのタネをガチグマに打ち込むも、返しのだいちのちからで葬られてしまう。そして残る手持ちを見ていく。
「これを出すのは?」
「テラスタルしないと即死しますよ。いやテラスタルしても太刀打ちできるとは思えませんが」
「だいちのちからって特殊だよね?これは?」
「耐えるかなぁ……いやまあそういう用で入れたけど、アカツキガチグマって普通に無法だし……ワンチャン通るなら賭けてもいいんだけどさ……」
「でも三体目の事考えたらどのみちこれしか」
「アリスはこの子に賭けるべきだと思います!」
「……まあ、やられたらその時はその時ですよ。どの道、勝ち筋は細そうですし」
「それもそっか……よし、こいつに決めた!いけ、ママンボウ!」
会議の結果、繰り出されたのは桃色のマンボウのようなポケモン、ママンボウであった。一見かなり弱そうに見えるポケモンだが、こんなポケモン一匹にガチグマが止まるわけがないと、ネルはガチグマの最大の必殺技ブラッドムーンを放つ。その激しい攻撃に晒されたママンボウは瞬く間にギリギリまで削れていく。
「……いやまて耐えるのかよ」
「……もしかしてこのポケモン、ガチグマと同じチョッキ持ちなのでは?」
(……あっぶな……)
このママンボウはどちらかいうと物理受けを見ている側面が強い。チョッキを持たせておけばワンチャン特殊型も狩れるかなとは思ったものの、ガチグマ相手に耐えられるかまでは正直わからなかったのだ。
「ま、これに耐えたってことは耐久よりってことじゃねえの?どうせ大した火力は……」
「……あっ、ミラーコート……」
そしてその賭けに勝ったことで、ママンボウは唯一の勝ち筋であるミラーコートを放つ。その技名を見たトキが何かを察したように呟いた直後、ガチグマのHPが一瞬にして全て刈り取られてしまう。
「……火力もあるじゃないか」
「守ってよし撃ってよしって普通に何でもござれでは……?」
「この技、直前に受けた特殊技のダメージを倍返しする技なんで……」
「いい事ばっかりじゃないんだねー、さすがにこれじゃ次は撃てないだろうし」
「ぐぐぐ……でも、でもここまで来たら実質残り一体だろ……!」
完全にしてやられている、一見そう見えるものの、頭数としては決して差が出ているわけではない、ということに気付くネル。既にママンボウは虫の息であるのだ。次はこいつで仕留めてやると最後の一匹、剣のような牙を生やした白い豹のようなポケモン、パオジアンが繰り出される。パオジアンが出た瞬間、その特性であるわざわいのつるぎによって防御が下がってしまう。
(HP残り20ちょいしかないんだよなぁ……ここから引いて特性の再生力で回復しても100……じごくづき、耐えれる……?それよりパオジアンが相手だって考えるなら……)
「モルフォの判断に任せるよ」
「私達より詳しいだろうしね、まあ急所とか当たって裏目ったらその時はその時だよ!」
「オッケー、じゃあこれでいこうか」
皆の判断を受け、モルフォは交代ではなくひやみずを選択。が、パオジアンの攻撃技、じごくづきによって倒されてしまう。しかし、それによってパオジアンの持ち物が攻撃技の威力を1.3倍にする代わりに攻撃毎にHPが十分の一ずつ減っていく持ち物、いのちのたまであることが判明する。そして最後の一体として繰り出されたのは、カイリューであった。
「カイリュー……確かタイプはひこうとドラゴンだったか。勝ったな」
「……しかし、テラスタルが残っていますよ」
「……え?あっ」
四倍弱点ならパオジアンの必殺ウェポンであるつららおとしで一撃だろう。そう高を括って選択したネルだったが、直後のトキの指摘で慌てて戻ろうとする。しかし既に選択してしまったので止まらず、モルフォ達は案の定カイリューをテラスタル。それによって選ばれたタイプは、
「ほのお!?」
なんとほのおタイプのテラスタル。それによってつらら落としが半減されてしまい、さらにマルチスケイルというHPが満タンの時に受けるダメージが半減する特性によってダメージを二割ほどに抑え込む。
「いや、だけどつららおとしって確か怯みが」
「いいえ!カイリューの持ち物はおんみつマント!追加効果は受けません!」
「ぐぎぎ……!!」
「ねーねー、アンコールって何?」
「あっ」
さらに状況は悪化する。ダメージを最小限に抑えたカイリューは、なんとアンコールを使用。これは、三ターンの間、アンコールを使用する直前に使用された技しか使えないように固定してしまう強力な技だ。
「おい……これは……」
「……部長、これ詰み―――」
「ま、まだだ!まだ……!」
次のターン。つららおとしがマルスケのないカイリューに突き刺さり、体力を半分程にまで減らすも、カイリューはピンピンしている。そして、三回の技の使用でパオジアンの体力は残り七割ほどにまで減少。そこに、カイリューの必殺兵器、ほのおタイプにテラスタルしたことでほのおタイプの技となった特殊テラバーストが叩き込まれてパオジアンは倒れてしまうのだった。
「……くっそおおおお!」
「あーあ、負けちゃった」
「それにしても、ブラックホワイトの時よりも大分戦略性が増している気がしますね。特にテラスタルで相性をひっくり返せるのは面白いですね」
負けたショックで声を張り上げるネル。一方、トキはテラスタルが加わったことでより戦略性が増したバトルに関心を寄せていた。
「やっぱり天候とかも残っているんでしょうか?」
「残ってるよ。他にも色々な特性とか持ち物もあるからね」
「次だ!次は負けてたまるか……」
「次はアリスがやりたいです!」
「うん、いいよ。手持ちも入れ替えようか」
「では敗北者のネル先輩は順番待ちをしてください。次は私がやります」
「くそ……なんか強い奴いねえのかよ……」
「であれば、ちょっと気になる子が……レジエレキ、でしたっけ?技が結構面白そうで……」
「私はこのイエッサンっていうのが気になるんだが……」
そして、皆で話をしながら再び手持ちを入れ替えていき、11人は再度のポケモンバトルを始めるのだった。