転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「モルフォさん!先日ぶりですわ!」
「あはは、また会えてよかったよ、ユカリ」
百鬼夜行の一件の後、百花繚乱の面々もシャーレの部員として登録されていた。そして数日前にモルフォがシャーレに訪れた際に偶然当番だったユカリと再会。その日は別件で来ていたため、一緒に遊んだりするのはまた後日、ということになっていた。
「それにしても、なんかイメージが違うね」
「そ、そうでしょうか?」
D.U.地区にあるカフェで合流し、モーニングセットを食べているユカリは百花繚乱の羽織を着ておらず、普段その下に着ている百鬼夜行の制服のままであった。一枚ないだけで印象が変わってしまうあたり、やはり普段の格好の印象はどうしても強くなってしまうのかもしれない。
「……違和感が凄いでしょうか?」
「いや、そんなことないよ。私はどっちもいいと思うけど……」
「そうですか?ならよかったですの!」
「あはは……それとごめんね。他の皆も呼べたらよかったんだけど」
「仕方ありませんわ。皆さん忙しいのでしたら強制するわけにもいきませんし」
他の皆も連れてこれたらよかったのだが、それぞれバイトなり用事なりが重なってしまい、残念ながらどうしても今日空いているのはモルフォだけという状態。とはいえ、ユカリは特に気にしていない様子であった。
「それに……皆さんといるのも楽しいですが、モルフォさんと是非ご一緒したかったのも事実ですし」
「そう?ならいいんだけど……どこか行きたいところってある?」
「どこか……では、この前言ってた……」
周りに聞かれないように小声でモルフォの耳元に囁くユカリ。彼女が言っているのは、モルフォの持つ力にあった。その力の事は、百花繚乱の面々には明かされている。というのも、花鳥風月部について調べるにあたり、クズノハに会えれば何かわかるのではないかと陰陽部が持っているクズノハについての情報を教えてもらおうとした際に、先生ならば他校のクズノハと会った人物を知っていると教えられたのだ。モルフォ、セイアから許可を貰い、二人がクズノハと会った時の状況を伝えると共に、モルフォが持つ特異能力については百花繚乱の面々に共有されていた。それを聞いたことや、シャーレの当番に訪れた際にゲーム開発部が置いていった新作ゲームの体験版に触ったことでユカリもゲームやアニメと色々と興味が湧いていたのだろう。わくわくした様子でモルフォを見つめるユカリの手を引いて、モルフォはシャーレへと向かうのだった。
★
「これが、別の世界のアニメなのですね……!」
ユカリはモルフォにあるアニメを見せられていた。そのアニメの名前は、イナズマイレブン。先日会った時、なんか青春っぽい話もあったりするのかというユカリの言葉を聞いてぱっと思いついたのがこの作品であった。おそらく青春という言葉が出てきたのはレンゲの影響なのかもしれない。
「……そういえばユカリってサッカーやったことある?」
「いえ!ですが名前とか……後は大雑把なルールなら知ってますわ!」
よかったと安堵する。さすがにサッカーも知らない人にこれを見せるのは憚られるからだ。イナズマイレブンとは、超次元サッカーアニメであり、主人公である円堂守の物語だ。雷門中の部員僅か七人という弱小サッカー部の主将を務める円堂と、試合すらできない環境ということもあり、全員好きなことをして、だらだらと日々を過ごすという自堕落な生活を送る部員たち。円堂とマネージャーの木野秋以外すっかり熱が冷めている中、円堂はある出会いをする。
「む、むむ……」
食い入るようにアニメを難しい顔をしながら見るユカリ。練習しない部員達を見た円堂は皆いつかやる気を出してくれるさと期待を口にしながら、河川敷で小学生たちとサッカーの練習をしていた。そこで不良に絡まれるも、そこを凄いキック力で助けたのは豪炎寺修也であった。雷門の転校生と知り、すぐにサッカー部に勧誘するも、豪炎寺はサッカーはもうやめたと冷たく言い放つ。そんな中、円堂は帝国学園と呼ばれる、全国大会フットボールフロンティアで40年間優勝し続ける最強チームとの練習試合を受けることになってしまう。試合に負ければサッカー部が廃部になってしまうという条件の中、円堂は試合をするための部員をかき集めることになる。
「は、廃部……」
複雑そうな表情で呟くユカリ。廃部と聞いて百花繚乱の事を思い出したのかもしれない。サッカーは11人いなければ試合すらすることができない、なのに部員は僅か7人で、しかも円堂以外はやる気もない。こんな絶望的な状況で大丈夫なのかと思わず不安そうな表情を浮かべるユカリだったが、円堂の熱意に突き動かされ、幼馴染で陸上部に所属する風丸一郎太の助っ人をきっかけに三人がサッカー部に加入。さらに円堂の必死な姿に感化された、染岡竜吾や壁山塀吾郎を始めとした初期からいる六人の部員達もやる気を出し、全員で一丸となって帝国学園との試合に向けて猛特訓をすることになる。
「おお……皆さんが一つに……!これでその帝国?学園にも勝つのですね!」
「あはは……そううまくいけばいいんだけど」
「え?」
そして遂に迎えた試合当日。装甲車かと見間違うほどのとんでもない車両に乗って現れた、キャプテンの鬼道有人率いる帝国イレブン。試合に負けた学校を破壊する、といった黒い噂が存在する帝国学園との練習試合。雷門が調子よく攻めることができていたのも最初だけ。まるで観察するかのように少しだけ自由に動かせた後、もう用はないと言わんばかりに帝国は雷門を蹂躙する。
「な……な……」
唖然となるユカリ。ただのプレーで傷つくだけならばともかく、途中からわざとボールをぶつけられる形でぼこぼこにされている。シュートにいたってはそれを受け止めた円堂諸共ゴールに入れられる始末であり、悪辣さだけではない、単純な実力差だけでも雷門と帝国ではあまりに大きな差があった。前半が終了した時点で、点数は10対0。とても雷門が勝てるビジョンが見えない大差だ。
「あの、ここから勝てるんでしょうか……」
完全に息も絶え絶えの雷門に対し、息一つ乱していない帝国。体力面でも大きく差を付けられる中、後半戦が始まる。
『デスゾーン……開始。そして奴を引きずり出せ!!』
『『『デスゾーン!!』』』
帝国からのキックオフ。鬼道の発言と共に三人の選手が回転しながら宙に飛び出し、三角形を構築していく。禍々しいエネルギーがボールに集まっていき、三人が同時にボールを蹴り出す。帝国の必殺シュート、デスゾーンが円堂諸共ゴールへと突き刺さる。
「な……今のって……えっと」
「これが超次元サッカーだよ」
「ちょ、超次元ですか……」
超次元サッカーとは、単純にテクニックが凄いとか、そういう意味ではない。この作品では、必殺技を使ってシュートをしたり、ドリブルをしたりするのだ。デスゾーンもまた、その必殺シュートの一つである。デスゾーンがきっかけになったかのように帝国は目的である豪炎寺を引きずり出すために先程とは一変、必殺技を使って雷門を嬲りながら点数を重ねていく。
サイクロン、百裂ショット、キラースライド、ジャッジスルー。必殺技の嵐によって一人、また一人と倒れていく雷門イレブン。フィールドプレイヤーを次々と叩き潰した鬼道は、試合を影ながら見ていた豪炎寺に出てこいと言い、遂に最後の一人、円堂を潰すかのようにボールをぶつけていく。僅かに、円堂の必殺技発動の気配を見せるものの、ゴールを守ることはできず、遂に得点差は19対0に。そして助っ人として入ってきたメンバーの一人、目金が敵前逃亡をしてしまう。もうここまでか、そう思われ、帝国学園が嘲笑い、試合を見学していた雷門中の生徒達も諦めムードに陥る。だが、円堂だけは諦めなかった。
『まだ……終わってねえぞ……!』
『『!!』』
再び立ち上がる円堂。しかし、円堂が立ち上がった程度で何かが変わるわけでもない。その後も嬲られ続ける円堂だったが、彼の様子を見て、豪炎寺は逃亡した目金が脱ぎ捨てたユニフォームを見る。彼の我儘によって彼が手に入れた10番のエースストライカーのユニフォームを見る。そして、
『夕香……今回だけお兄ちゃんを許してくれないか』
そう呟き、ユニフォームを手にしたのと同時、帝国は20点目を手に入れてしまう。そして雷門メンバー達も心が折れかけていく中、遂にユニフォームを着た豪炎寺がフィールドに現れる。
『……ふっ』
鬼道は、そして監督であり帝国学園の総帥である影山はやっと待っていた人物が来たと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる。去年、フットボールフロンティアで名を馳せたという豪炎寺の参戦により、雷門も僅かながら士気が上がり始める。だが、豪炎寺が加入したとしても帝国は攻め手を緩めない。むしろもっと苛烈になるかの如く、雷門からボールを奪い取ると、デスゾーンを放つ。豪炎寺がブロックに入るかと思われた、その瞬間。
『……よし』
『何!?』
なんと豪炎寺はシュートをスルーし、帝国ゴールへ向かって上がり始める。まさかフォローに入らないのかと鬼道すらも驚く中、円堂は確信する。豪炎寺は円堂がシュートを止めてボールを渡してくれることを信じているのだと。その期待に応えるため、ついに円堂は自身の必殺技であるゴッドハンドに覚醒。掲げた巨大な光の手がデスゾーンを止めてみせる。
『まさか……幻のゴッドハンド!?間違いない……ゴッドハンドだ……!40年の時を経て、伝説のイナズマイレブンの技が蘇ったのか……!!』
『いけぇ、豪炎寺!!』
時を越え復活した伝説の必殺技。それに勢いづくかのように豪炎寺へと渡されたボールを打ち上げた豪炎寺は炎を足に纏いながら回転。オーバーヘッドシュートの要領で帝国ゴールへ向かって自身の代名詞である必殺シュートを放つ。
『ファイアトルネード!!』
ゴールに突き刺さるファイアトルネード。遂に、帝国学園から1点をもぎ取った雷門。それを見た影山はデータ収集は終わったと満足げな表情を浮かべると、試合を棄権。それにより、点数こそ20対1ではあるものの、雷門イレブンの勝利という結果で終わるのだった。豪炎寺が、いや円堂の諦めの悪さによって掴んだ結果により、雷門サッカー部は廃部を奇跡的に免れるのだった。
「か、格好いいですわ……!」
「いいよね、豪炎寺……」
目をキラキラさせながら円堂と豪炎寺の活躍を視聴するユカリ。この一戦がきっかけとなり、紆余曲折あって一時はサッカーから離れていた豪炎寺も正式に加入。もう一人のストライカー、染岡も必殺シュートであるドラゴンクラッシュを入手し、遂にサッカー全国大会、フットボールフロンティア地区予選にエントリーすることになる。その後も40年前のイナズマイレブンが使用していたという必殺技を記した秘伝書から習得したイナズマ落とし、イナズマ1号といった強力な必殺技、そしてイナビカリ修練場という常軌を逸した特訓環境の確保もあり、飛躍的に実力を伸ばしていった雷門イレブンは激戦の末に地区予選決勝、帝国学園とのリベンジマッチに臨むことになる。
「……色々ありましたわね……」
「結構裏で暗躍してるところも多いからね……でも、それを乗り越えて決着をつけるのがいいんだ」
「はい!」
帝国学園との試合までに様々な出来事があった。帝国学園からスパイとして送り込まれた土門飛鳥が相手チームを潰すためバスを爆破するという過激な手段を取ることを知り離反。それに伴い、サッカー部の顧問兼監督であった冬海が消え、新たな監督であり元イナズマイレブンであった響木監督を引き入れたり。帝国学園に到着してもなお、影山は鉄骨落としによって雷門イレブンを抹殺しようとしていた。が、鬼道達が影山を裏切ったことで雷門イレブンはどうにか難を逃れる。遂に影山は尻尾を掴まれ、警察に連行。これで憂いなく、試合が行われる……と、思われたのだが。
「むむむ……気持ちよく試合をさせてくれませんわね……」
「そうなんだよねぇ……」
円堂は満足なパフォーマンスをすることができなかった。その理由は、影山が円堂に告げた事実。鬼道は、フットボールフロンティアで勝ち続けなければならないということを。鬼道は妹と共に施設育ちであり、鬼道財閥に養子に迎えられて今の名字になった。その時、フットボールフロンティアで三年間優勝することを条件に、妹の春奈を鬼道家が引き取るという約束をしたのだ。その春奈こそ、雷門中サッカー部のマネージャーの一人だった。その事実を知ってしまった円堂は、この試合で負けてしまえば二人は引き裂かれたままになってしまうと苦悩してしまい、守備も精彩を欠いてしまう。それでも何とかゴールを割らせずにいたものの、前半終了間際、鬼道達三人はゴッドハンドを破るべく編み出した新必殺技、皇帝ペンギン2号を発動。五匹のペンギンがボールと共に放たれ、ゴッドハンドの各指を破壊し、遂にボールはゴールに突き刺さってしまう。
「そんな、ゴッドハンドが……」
円堂のゴッドハンドは、これまで一度たりとも破られたことのない無敵の必殺技であった。それを、遂に帝国学園は破ってきたのだ。それによって一点という重い失点をしてしまう。対して雷門イレブンは、豪炎寺と染岡の合体必殺技、ドラゴントルネードを叩き込むも帝国キーパー、源田の必殺技、パワーシールドが生み出す衝撃波の壁に阻まれてしまう。
「うう……なんかすっきりしないですわ……」
調子の悪い円堂を心配する面々。DF陣が必死に円堂のフォローに入り帝国の得点を防いでいく中、遂に痺れを切らした豪炎寺が円堂にファイアトルネードを叩き込むという荒療治を敢行する。
「!?」
突然の豪炎寺の行動にざわめく中、豪炎寺はサッカーにかける情熱を全てを込めたボールだと告げると、
『グラウンドの外で何があったのかは関係ない。ホイッスルが鳴ったら試合に集中しろ!』
そう告げる。それを聞いた円堂は、その言葉をきっかけにやっと迷いを吹っ切る。鬼道の事を気にして、自分の好きなものにまで嘘をついていたと。だが、やっと迷いを吹っ切った円堂は、帝国の必殺シュート、ツインブーストを前に拳を振り抜く。
『もう迷わない、堂々と戦って鬼道には最高のプレーで応えるんだ!!』
目にも止まらぬ連続パンチ、爆裂パンチでボールを弾き飛ばして完全復活を果たす円堂。それに勢いづくように、染岡と豪炎寺は遂にドラゴントルネードによってパワーシールドを攻略、同点ゴールを決めてみせる。それからは一進一退、互いに疲労困憊となりながらも激しい試合が繰り広げられる。次の一点を取った方が勝利となる試合、状況が動かせたのは鬼道。例え足が壊れても構わない、チームの為、妹の為という覚悟を以て放った皇帝ペンギン2号。ついに放たれた皇帝ペンギン2号を前に、
『このボールだけは……絶対に、絶対に止めるんだあああ!!』
円堂は絶対に止めるという意思で、両手でのゴッドハンドを発動。ゴッドハンドWという土壇場の奇策によって皇帝ペンギン2号を完全に止めてみせる。円堂が決死の思いで止めたボールをゴール前へと繋ぐ雷門イレブン。そのボールを前に、壁山と豪炎寺が飛び、イナズマ落としのセットアップに入る。源田がパワーシールドを越えるフルパワーシールドで迎え撃つ中、飛んだのは豪炎寺だけではなく、なんと円堂もであった。円堂と豪炎寺、二人が放つ必殺シュート、イナズマ1号がイナズマ落としと合わさり、更なる必殺シュート、イナズマ1号落としがフルパワーシールドへと突き刺さる。それによって決勝点をもぎ取り、遂に雷門は帝国学園に勝利。大歓声の中、遂に雷門中は40年ぶりにフットボールフロンティア本戦、全国大会へと駒を進めることになる。
「ああ……いいですわ……なんていうか、レンゲ先輩が青春って言うのもわかりますわね……ところで、その……なんでペンギンなんでしょうか?」
「可愛いでしょ?」
「あ、はい。それは可愛いのですが……」
「まあ超次元だからね」
「成程、超次元ですわね!」
春奈と鬼道の問題も当事者達が和解する形で解決し、円堂達は本戦へ向けて更なるパワーアップを狙っていく。先代イナズマイレブン達との練習試合を経て炎の風見鶏やクロスドライブを始めとする必殺技を習得していく。そして無事に一回戦を乗り越えた雷門とは裏腹に、地区予選で敗北したものの特別枠として決勝大会に駒を進め、決勝戦で戦うことを誓った帝国学園は世宇子中を相手に10対0で完全敗北。予選決勝で負傷し、控えに回っていた鬼道が交代しようとした時には試合続行が不可能となってしまい、試合を棄権せざるを得なくなってしまう。不完全燃焼のまま、悔しさに震える鬼道だったが、円堂、豪炎寺との対話とサッカーを経て、鬼道は戻ってくる。今度は雷門中の一員として。
「かつての敵が味方に……熱いですわね……!」
天災ゲームメイカー、鬼道の加入。そしてイナズマ1号を越える更なる必殺技、イナズマブレイクによって準決勝に駒を進めた雷門は、アメリカジュニアチームの代表候補として活躍するほどの選手である一之瀬一哉が加入、円堂は一之瀬と古くからの友人であった土門と共に新必殺技トライペガサスを習得する。準決勝の相手である木戸川清修は豪炎寺が去年まで通っていた中学であり、影山の策略によって豪炎寺の妹が入院させられ、それによって去年木戸川はフットボールフロンティアの優勝を逃したという過去があり、その事実を知らないスリートップ、武方三兄弟との因縁もあった。さらに、木戸川にはかつて、一之瀬、土門と共にトライペガサスを放っていた西垣がおり、トライペガサスを熟知している彼からの妨害を受けるも、試合中にトライペガサスは炎の不死鳥ザ・フェニックスへと進化。雷門中は決勝戦へと駒を進めることとなり、世宇子中との最終決戦に臨むことになる。しかし、
「円堂が悩んでいますわね……」
「ゴッドハンドが破られたからね……」
円堂は悩んでいた。木戸川との試合では、武方三兄弟の必殺技、トライアングルZを破ることができず、両手でのゴッドハンドも虚しくゴールを割ってしまったのだ。そんな自分に世宇子中のシュートを止められるのかと悩み、円堂は秘伝書に記された最強のキーパー技、マジン・ザ・ハンドの習得を目指すことになる。
「どの必殺技も簡単には習得できませんでしたが、特に苦労してますわね……」
「うん……」
その最中、世宇子中からやってきたアフロディと対決することになる円堂。しかし、彼のシュートに容易く弾き飛ばされてしまい、このままでは世宇子中には勝てないと判明、マジン・ザ・ハンドを習得するため躍起になる円堂を響木は合宿に誘い、その中で円堂は元の調子を取り戻す。そして改めて全員でマジン・ザ・ハンドの習得を目指し、絶対に世宇子中に勝つという思いの下、遂に決勝戦を迎える。だが、その試合会場は空から舞い降りた、世宇子中サッカースタジアムであった。
「そ、空から……なんか凄いことになってますわね」
世宇子中には影山が関わっていた。響木は、試合前に円堂に告げる。影山は、円堂の祖父の死に関わっているかもしれないと。もし憎しみでサッカーをするのならば棄権をすると。だが円堂は、サッカーが好きだからこそ、自分達のサッカーで優勝を目指すという決意を固める。そして、仲間たちと思いを一つにした円堂達だったが―――
『ヘブンズタイム』
開幕早々、アフロディが必殺技を使用する。直後、まるで時の流れが止まったかのような空間をアフロディが悠々と歩いていき、次々と雷門イレブンを抜いていき、竜巻で吹き飛ばす。傍目からは目にも止まらぬ速度で高速移動しているようにしかみえないアフロディは、いとも簡単にゴール前に辿り着き、必殺技のゴッドノウズを放つ。それは、ゴッドハンドを打ち破り、先制点をもぎ取っていく。
「ああ……!」
右手に付けたグローブが焼け焦げる程の威力。だが円堂はまだ大丈夫、次は止めてみせると元気に振る舞い、点を取り返すと意気込む。だが、ここで世宇子は何と全く動かない。敢えて雷門中に攻めさせる。舐められていることを理解しながらも、雷門中はドラゴントルネードを放つ。しかしそれを世宇子中キーパーであるポセイドンはツナミウォールで止めると、なんとボールを相手へと差し出す。ならばと雷門は皇帝ペンギン2号、ザ・フェニックスと必殺技を次々と放つ。ザ・フェニックスに関してはツナミウォールで止めきれないと判断したのかより強力な必殺技、ギガントウォールを使用したものの、雷門が撃てる必殺技は、全て止められてしまう。そればかりか、遊びは終わりだと言わんばかりに世宇子中はリフレクトバスターで追加点をもぎ取ってしまう。
『ディバインアロー!!』
さらに連続の蹴りから放たれる必殺シュート、ディバインアローが雷門ゴールを突き破る。しかも被害はそれだけにとどまらない、世宇子の攻撃によって、雷門中は次々と負傷していき、控えと交代を余儀なくされていく。最終的に控えメンバーを全員失ってしまい、十人で試合をすることになってしまう。
「……酷い……」
唖然となりながらユカリが呟く。最初の帝国学園との練習試合なんて目じゃない程の蹂躙だ。倒れていく仲間達を前に、これ以上仲間達を傷つけられたくなければ棄権すればいいと言うアフロディ。その言葉に揺れる円堂だったが、仲間達が次々と立ち上がり、円堂を奮い立たせる。試合を諦めない円堂達は、徹底的に雷門を潰そうとする世宇子中を前に未完成の技、マジン・ザ・ハンドに全てを託す。マジン・ザ・ハンドは未完成ながらゴッドハンドより威力はあるのか、なんとディバインアローを弾くという戦果を見せる。だがここで、世宇子中はわざとボールを出して全員が同時にベンチに戻って水分補給を行うという不可思議な現象を見せたことで、世宇子中の強さの秘訣がドーピングアイテム、神のアクアにあることが判明する。
「これって……ドーピング、ってやつですわよね……確か」
「……そう。神の強さの秘訣だよ」
「秘訣って……こんな卑怯な人たちに……むむむ……きっと、勝ってくれますわよね……」
どれだけ打ちのめされても不屈の闘志で立ち上がる雷門中。やっとのことで前半が終わるも、既に全員満身創痍。そんな中、円堂はグローブが焼け焦げてボロボロになっていることに気付き、マジン・ザ・ハンドを始めとした必殺技の数々を編み出してきた祖父の使用していたグローブに取り換えて後半戦に挑む。
『神には通用しない』
ハーフタイムで多少体力を回復したものの、そんなものは誤差だと言わんばかりに再び蹂躙される雷門イレブン。選手たちをなぎ倒し、再びゴール前までボールを運んだアフロディは、円堂の頭部や腹部に次々とボールを叩き込んでいく。だが、それでも円堂は立ち上がる。その姿に、遂にアフロディの表情に焦りが浮かぶ。限界は既に越えているはずなのに、何故立ち上がるのか。その決死の表情と雰囲気に立ち上がる雷門。その姿に、遂にアフロディは怯えを感じてしまう。そんなことはないと言わんばかりに怯えを振り切ると、アフロディは完全にトドメを刺すべくゴッドノウズを放つ。
『神の本気を知るがいい!!』
それを迎え撃とうとした円堂は、左のグローブの中心が焼け焦げていることに偶然気付く。そして、それがマジン・ザ・ハンドの鍵であると。円堂は突然アフロディに背を向け、心臓に右手を当てる。彼の祖父は左手でマジン・ザ・ハンドを出していた。それを右手で出すには、心臓から100%気を伝えるにはこうすればいいのだと。そして振り向くと同時に円堂が手を掲げると共に、巨大な光の魔神が出現。遂に世宇子の必殺シュートを止めてみせる。
「これが、マジン・ザ・ハンド……」
『ファイアトルネード!』
『ツインブースト!』
円堂が止めたボールを叩き込む。その勢いと共に相手の守備を突破した豪炎寺と鬼道はファイアトルネードとツインブーストを合わせた必殺技、ツインブーストFを放ち、遂に一点をもぎ取る。返しのキックオフ、再度突破してきたアフロディがゴッドノウズを放つも、完全にマジン・ザ・ハンドを習得した円堂に止められてしまい、そればかりかツインブーストFはポセイドンのギガントウォールすら突破し、二点、三点と同点に並べられてしまう。そして、最後の一点を取るために円堂達はザ・フェニックスとファイアトルネードによる合体技、ファイナルトルネードを叩き込み四点目。大逆転劇を決め、遂にフットボールフロンティア決勝戦を制するのだった。
「くううう……!これは、凄く面白かったですわ!」
「あはは、気に入ってくれてよかったよ」
死闘の末に優勝を掴み取った雷門中サッカー部。そして全ての黒幕であった影山も逮捕される。そして円堂達は新たな伝説に繋がる栄光を手に入れたのだった。
「今度は是非皆で見たいですわね……まだ続くんですのよね?」
「うん、そうだね」
イナズマイレブンは、まだまだ序盤だ。今、ユカリが見たのはフットボールフロンティア編と称される話だ。これから、宇宙人との戦いが始まる驚異の侵略者編に繋がるが、それを見るのはまだまだ先となるだろう。外を見れば既に夕日が落ちかけている。
「折角だし、晩ご飯も一緒に食べる?」
「是非!」
楽しそうにモルフォに抱き着きながら笑うユカリ。ユカリがじゃれつく姿を苦笑しつつ受け入れながら、モルフォは出発の準備を進めるのだった。