転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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ゲーム開発部と海腹川背

 

夢の中でアヤメと出会うというアクシデントこそあったものの、そちらについては一応は落ち着くこととなった。彼女の意向もあり、既に知っている、そしてある意味自分の前例となっているセイアとの情報共有に関してはしょうがないと割り切ってもらったものの、それ以外の人物に対しては伝えないでほしいことをアヤメは要求していた。

 

それに関し、アヤメ自身起きようと思えば起きること自体はできることや体の方は問題ない事から、モルフォとセイアはアヤメの発言を信じることにした。それに、目覚めたくないと思っているのなら気が済むまで寝かせてあげたほうがいい、とセイアもアヤメの発言を肯定する意見を出していたのもあり、モルフォもそれを受け入れることにしていた。

 

「……ふう……」

 

そんなある日のこと。ゲーム開発部はSFCに繋がれたテレビ画面をじっと見ていた。画面の中を縦横無尽に動き回る一人の少女。ロープを伸ばし、壁や天井に引っかけて動き回るその少女が一つのドアの中へと入っていく。直後、画面にスタッフロールが流れ始めたのを確認し、ユズがSFCのコントローラーを一旦床に置いて溜息を吐く。その周りでは彼女のプレイしていたゲームを見て、五人は驚きの表情を浮かべていた。

 

「うわ、すっご……」

「さすがユズちゃん……」

「いや……こういうのもできるんだねこのゲーム……」

 

既にこのゲームに挑戦した時に指先を酷使しすぎたのだろう、指先が疲れている様子を見せるモモイとミドリ。モルフォも思わず苦笑しており、ケイはユズよりもデフォルトできつい操作を要求し続けるゲームに対して軽く引き始めており、アリスはユズのスーパープレイに目を輝かせていた。

 

「いやしかし、なんですかこのゲーム……難易度がえげつなくありませんか?」

「そうなんだよね……挙動が本当にこう、ね……」

「でもユズのプレイは凄いです!」

 

ゲーム開発部がプレイに熱中していたゲーム。それは、海腹川背というSFCで発売されたゲームだ。このゲームは、海腹川背という主人公の女の子を操作し、釣り用のルアーを取り付けたゴムロープを投げ、天井や壁に引っかけてゴールとなるドアを目指すアクションゲームだ。このゲームには多くのステージがあり、分岐などもあるが、基本的には真エンディングなどの概念はなく、どんな形であれスタッフロールさえ見ることができればこのゲームはクリアということになっている。

 

「モルフォ……このゲーム、楽しいね」

「ユズならきっと楽しんでくれるだろうなって思ってたけど、思った以上に楽しんでくれていて嬉しいよ」

「えへへ……これ、スタイリッシュでいいね」

 

モモイやミドリが必死に頑張ったが限界を迎えてギブアップし、ケイとアリスも音を上げ始めた中、ユズだけが黙々とテクニックの習得に時間を費やしていた。その結果、彼女は異次元の動きを習得してしまっていた。

 

「うーむむむ……でもなんかユズが凄く簡単そうにやってるのを見ると、なんかできそうな気もするんだよね……」

「でも実際はね……」

「とりあえず簡単な奴から覚えてみようか」

 

ユズが習得したテクニックを駆使して無事、エンディングに到達する。このゲームではユズがクリアしてみせたようにシンプルにステージをクリアしまくって引き当てる最終ステージもあるが、最終ステージは複数存在する。というのも、このゲームではステージ中にドアが二つあったりする、等の条件でステージが分岐するのだが、最終ステージの一つが出現する条件の一つに、ゲームをプレイしている時間が合計30分を超えてしまう、というものがある。この時間を過ぎると、次のステージが強制的にこのラストステージとなり、これをクリアした時点でエンディングが流れ、ゲームクリアとなるのだ。つまり、ユズはこの時間制限で強制的に訪れるラストステージを見ることなくクリアに成功したということで、ある意味真の意味でこの海腹川背をクリアしたといえるだろう。

 

「えーと、まずはルアーを伸ばして……」

「これ、釣竿じゃないんだよね……」

「私も最初勘違いしてたんだよねこれ……」

 

川背が投げているのは、実は釣竿ではなくただのゴムロープ。ルアーが付いているので勘違いしやすいが、彼女の手元を見てもらえばちゃんと釣竿ではないことがわかるのだが、モルフォも最初は釣り竿を投げていると勘違いしていたのだ。そんなこんなで、序盤のステージの方ではステージが始まる前にアクションのお手本をやってくれるムービーを見ながら最初の面に入る。一番最初のステージに入る前に見れるお手本は、投げたルアーを壁に突き刺し、ゴムロープを巻くことで自分をルアーの方に引き寄せて崖を越えるという基礎中の基礎となる操作だ。

 

「確かユズがやってたのだと……あれ?」

 

ステージの中には、ベルトコンベアや自動ドア、針が刺さらない地形に川背が針で動かす地形や、彼女が引き寄せる、上に乗る等で動かす床など、様々なギミックがある。ステージが進めば進むほど、こういったギミックに苦しめられるだけでなく、床を歩き、床の端や壁に当たると反転するだけの金魚やアジ、天井や壁に張り付く貝、そしてドングリを放ち川背を気絶させるドジョウなど様々な敵が存在する。後半になれば群れになって襲い掛かるトビウオや空中に飛び上がり川背を襲うホタテ、墨を吐いて川背を気絶させてくるタコ敵も存在し、それだけでなくボスとして巨大なオタマジャクシやカニ、イシダイ等も存在する。そういった、多種多様なギミックや敵をゴムロープを駆使したラバーリングアクションを駆使して攻略していくことになるのだ。

 

「えーと、こうして……」

 

ユズから変わり、現在コントローラーを握っているモモイが挑戦しているのは、ユズやモルフォがやっていた、天井や壁に針を刺して、そこを起点に飛び、さらに次の針を天井に突き刺して乗り継いでいくという、振り子と呼ばれるルアーを起点に自分の体を振って勢いを付ける技と、飛んでは天井にルアーを掛け直し、横に移動していく天井渡りというテクニックを用いた移動方法だ。なお、この二つに関しては中盤以降では必須技能となっているため、序盤から習得のために腕を磨いておく必要がある。だが、

 

「む、難しい……!」

「ビョンビョンするせいで全然うまく速度が乗らないんだよね……」

「十字キーの動かし方は理論上はわかるのですが、ちょっとしたずれなどで一気に減速してジャンプがうまくできなかったりするのも厄介ですね……」

「よ、よし後はここから……えっと」

 

三回ほど落下し、ゲーム開始時点で10個あった残機を減らしながらどうにかして振り子からの天井乗り継ぎ、天井渡りというテクニックを成功させるモモイ。今モモイがやってるのは、この振り子テクニックを用いることでショートカットを行えるステージの攻略であり、そのショートカットの仕上げとして、高い壁に張り付き、登ることになる。

 

「うー、あんま刺さらな……あっ下がっちゃった」

「ここも癖が凄いですね……」

「ちゃんと針を越えたのを確認してから離すしかないでしょうね」

 

垂直上りとよばれるテクニックだ。これは上下運動を利用して垂直の壁をルアーだけで上っていくというシンプルな技だが、ゴムロープの挙動のせいで中々難しい。上下運動の結果、ルアーより上の所まで上がってからルアーを離し、上の壁に掛け直すだけというシンプルな話だが、これもまた失敗も多く、上がっては下がって、さらには針を刺せずにそのまま落下死となり、残機を残り半分にしながらもどうにか垂直上りに成功する。

 

「や、やった!できたよモルフォ!ユズ!!」

「うん……凄いよモモイ!」

「最初と比べてかなり上達してるじゃん」

「ふふん、どんなもんだい!」

「じゃあ次は私が……あれ?ここ天井に針が刺さらない……モルフォちゃんがやってたときは刺さってたと思うけど……」

 

モモイが一通り成功して満足したところで、今度はミドリが変わる。だが、ある程度やっていく中でミドリが首を傾げてしまう。それは、モルフォがなんてことはないように針を天井に刺していた場所だった。しかし、ミドリの場合、何回やってもその針が刺さらないのである。厳密には飛距離が足りないというべきか。

 

「あー、そこは……ルアーを上に出した後にジャンプしてみて」

「え?こんな感じ……?あっ、刺さった!」

 

それは、延長掛けと呼ばれるテクニックだ。やり方は簡単でルアーを出した後にジャンプすることで、普通にルアーを出しただけでは届かない場所にルアーを届かせるというテクニックだ。上、横、そして斜めと三つの延長掛けが存在し、これを覚えておくだけで天井渡り、振り上がり等と組み合わせて一気にショートカットができるようになる有益テクニックだ。

 

「これはやり方さえわかれば簡単だからいいけど……でも操作がうまくても敵が結構容赦ない……」

「無限湧きする上にランダム性もありますからね……おまけに上に行こうと四苦八苦しているところにも容赦なく魚介類を召喚してくるので本当にちょっとしたミスでどんどん残機が減っていくのは理不尽ではないでしょうか……」

「そ、そうかな……敵が湧いて脅威になる前に突破しちゃえば……」

「ユズ、あなたは上手すぎるからそんなことが言えるんです。初心者が突破できる難易度じゃないですよ」

「まあ、アクションがうまい人向けなところはあるからね……だからこその30分で最終面が出てくるシステムなんだろうけど」

 

と、操作方法だけでも大変なのだが、このゲームの難易度を上げる更なる要素として、敵がランダムで湧いてくるということが挙げられる。川背の付近にいる床などに、敵が湧いてくるのだが、その位置や出てくる敵の種類によっては攻略途中に被弾して残機を失うといった事態も多発するのだ。これを回避するにはユズが言うように途中で躓かない、ということしかないのだが、ゲーム自体の難易度の高さも相まってそれは中々に難しい。

 

「とはいえ、変に冒険して難しい分岐に進もうとさえしなければ難易度は高いとはいえ順当な難易度のルートには進められるんだけどね」

「まあ……ユズがどんどん行ったステージとモルフォがクリアしたステージでは難易度が違うなというのはわかりますが」

「……モルフォ、ここって登れないのでしょうか?」

「あー、ハイジャンプっていう手はあるけど」

 

ミドリもとりあえず延長掛けとそれから派生するテクニックができたので満足し、アリスに交代する。だがアリスは通常のジャンプでは越えられない壁に躓いてしまう。垂直上りをすれば越えられはするのだが、わざわざそれを頑張ってするほどの高さというわけでもないため、他に手がないか気になったのだろう。そこでモルフォがハイジャンプと言って提示したのは、無重力ジャンプというテクニックだ。

 

「おお!ちょっと失敗しましたが、成功すると凄くジャンプできます!」

 

このテクニックでは、高い所にルアーを掛け、ロープを巻き取って川背をルアーへ引き寄せる動きにジャンプを合わせることで普段よりも高いジャンプをするという技である。これも、ロープを巻き取り始めた手が止まったところでジャンプというタイミングさえ合わせればできるため、難易度もそこまで高くない技と言えるだろう。

 

「とはいえ、ここら辺は言われてみればできそうなものばかりですね……多分、もっとおかしな技とかあるんでしょうけど」

「そりゃあ沢山あるでしょ」

 

ケイの言葉にうんうんと頷くモルフォ。このゲームにはロケットジャンプを始めとする、あくまでクリアする上では必要ではないものの、タイムアタックなどをするのであれば必須となるテクニックも存在する。魚を用いて川背が移動する際の加速を得る方法もあり、その時に利用する魚によってドジョウ加速やらヤマメ加速やらと称される魚加速。さらには掛けた魚を落としてその重力加速を利用し横に飛び出す魚落とし加速など、成功できれば見栄えがいい技も多いのだが。

 

「じゃあ次はケイの番だね」

「わ、私ですか……まあ、クリアするだけならばまだ敷居は低そうですが」

 

そして。周りがどんどんテクニックができるようになり、上手になっていく様子を見ていたケイは少し感覚が麻痺し始めていたようで、これならいけるのでは?と思い始めていた。とはいえ、皆のプレイを見て、どうやればいいかはわかっていたため、後は手がそのやり方に馴染めば意外とスムーズに進められる場面も多くなってくる。が、そうもいかない状況がやってくる。

 

「む、ボス戦ですか……」

 

ケイが辿り着いたのは巨大なオタマジャクシがボスとして出てくるステージであった。ここにあるドアは最初は封鎖されており、先のステージへ行くことができない。さらにそこではオタマジャクシを攻撃することはできず、川背はオタマジャクシがいなくなるのを待ってから解放されたドアで先のステージに向かうことになるのだ。

 

「耐久だってわかっていればまあやりようはあるよね」

「ええ、別に避けるだけならそこまで難しくは……あっ」

 

ただオタマジャクシを避けるだけならば全然問題はないステージだ。だが、このステージの厄介な所はここではない。むしろ、オタマジャクシ以上の強敵がオタマジャクシが卵を産むことでそこから孵るカエルである。

 

「……よくよく考えなくてもオタマジャクシがカエルって逆じゃないの……?」

「そ、そういうゲームだから……それ言ったらドングリを吐き出すドジョウもだしアジが歩いてるのもあれだし……」

 

子供のオタマジャクシからカエルが生まれるのはどういう理屈なのだろうとミドリが首を傾げてしまう中、ケイはカエルを倒し損ねてしまい、下に広がる水中にカエルを落下させてしまう。カエルは水中に落ちると、今度は水中を縦横無尽に動き回り、定期的に水面から飛び出して川背へと攻撃してくる。カエルに触れても少し気絶するだけで倒される心配はないのだが……

 

「うぐぐ……!」

「倒し損ねたカエルが激突しちゃったね……」

 

問題は、オタマジャクシに触れないようにするために、川背はステージからぶら下がる必要があるということ。つまり、水中にカエルがいれば、水中から川背を狙い撃ちできる格好の状況ができあがるということでもあり、ケイはカエルの飛びつきを避けることもできず被弾してしまう。こんな状況で気絶してしまえば当然ゴムロープは消えてしまい、そのまま川背は落下してしまう。それによって再び最初からになってしまったケイは再度の攻略を求められることになる。

 

「ま、また最初から……!」

「ケイ!今度はカエルを逃さないようにしましょう!」

「まあ、カニと比べれば卵さえ全部潰せばいいから楽だよねこいつは……」

「卵を逃したら一気に面倒臭くなるけどね……」

 

とはいえ、モルフォとそれに同意するユズの言う通り、カエルの処理さえしっかりとしておけばそこまで苦戦することもない。そして、無事にオタマジャクシを突破し、その後も幾つかのステージをクリアしていったのだが、そこに至るまでに色々と時間をかけてしまったようで、あるステージをクリアしたところでステージ28へと辿り着いてしまう。このステージこそ今作における30分ルールで辿り着くステージである。

 

「……残りの残機はたったの三個ですか……心もとないですね」

「でもまあ、ここが最終ステージだし、引き締めていこう」

「ええ、そうですね」

 

モルフォの励ましに笑って頷くとケイは最終ステージに挑むことになる。このステージではトゲのついたリフトが上から下がってくるため、そこにルアーを掛け、そこから天井渡りをすることで右から左側へ移動。その後は下から上へと移動するトゲ付きのリフトにルアーを掛けて上に移動し、後は道なりに移動していくだけというものだ。正直ここまでくると最終ステージにしては言うほど難しい内容ではないなと考えながら、トゲにうっかり刺さってしまい残機を一つ失ってしまう以外は問題なくクリアしてみせるのだった。

 

「……ふぅ、なんとかエンディングですね」

「おめでとうございます、ケイ!凄く上手でした!」

「そ、そうでしょうか?ありがとうございます、アリス」

「この調子なら私もエンディング見れるかも?」

「まあユズちゃんやモルフォちゃんのところには行けないだろうけど、今のステージだったら……?」

 

エンディングまで無事に辿り着いたケイを見て、自分達も行けるのではないかとわいわい騒ぎ始める。折角ならもっとスムーズにいこうともいう話になっていく。そしてもっと多くの技やテクニックを極めようとして、この日は過ぎていくのだった。

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