転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……ふーむ」
「……?」
この日はシャーレにアリスとムツキという珍しい組み合わせで当番をしている姿があった。だが、仕事もそこそこにムツキはアリスの顔をじっと覗き込む。
「あの、アリスがどうかしましたか?」
「いやさー、カヨコっちから聞いたんだけどさー、アリスちゃんってケイちゃんと一緒にいるんだって?」
「はい!アリスとケイは一緒です!」
「……どこまで知りましたか?」
アリスの方は便利屋68とその構成員の存在についてモルフォから教えてもらってはいるが、ムツキの方は残念ながら機会がなく、アリスとケイの二人とは面識がなかった。アトラ・ハシースの箱舟を攻略する際にカヨコは名も無き神々の王女に関する事実を知ったものの、さすがにそこまで詳しいことは他のメンバーには伝えてはいないのだろう。ムツキの聞き方から察するに、アリス達があの場でどんなことをしたのかといったことについては伝えられていないようにも見える。
「うわお、本当に変わるんだ。というか凄いシームレスにいくんだねー」
アリスが発言した直後、ケイが即座に表に出て少し警戒した様子でムツキに質問する。てっきり人格を入れ替えるのならば何かしらアクションなどをするのではないかと予想していただけに何の予兆もなしに人格が入れ替わるとは思っていなかったのだろう、少し驚きながらも、アリスとは違い少しツンツンしている様子のケイを見て何かを思い付いたのか面白そうに笑みを浮かべる。
「な、なんですかその顔は」
「ねえねえ、ちょっとこれ付けてみてよ」
そう言いながらムツキが荷物から取り出したのは、なんと眼鏡であった。それを見て困惑するケイだったが、笑顔のムツキの圧に負けて渋々とそれをかけた途端、ムツキが写真を撮り始める。
「ちょっ何撮ってるんですか!?」
「えー?こんな可愛い恰好、写真に収めないのが失礼じゃない?」
「やめてくださいよ……そもそも眼鏡って……アリスはともかく私に似合うわけないじゃないですか」
「アリスちゃんは似合うって思うんだ……」
「当然です、アリスですから」
体が一緒ならケイも似合うということでは?と思わず首を傾げてしまうムツキ。しかし、ここは実際に見てもらった方が早いだろうと今撮影したばかりの眼鏡をかけたケイの写真を見せる。
「じゃーん、ほら可愛いでしょ!」
「はい!ケイに凄く似合ってます!」
『ちょっ、アリス!……いやまぁ、案外悪くないのは認めますが……』
そこには眼鏡をかけていい感じにケイが写っている写真があった。その写真を見ると案外悪くないのかもしれないと一瞬思うも、それはアリスの体なのだから当然だろうと納得する。それはそれとして、写真を残されるのは何だか恥ずかしいというのがケイの本音だったようだ。
「ねえねえ、先生も似合うって思うでしょ!」
「うん、そうだね。凄く似合ってるよ、ケイ」
「アリスはどうですか?」
「アリスも似合ってるよ!ムツキもそう思うでしょ?」
「もちろん!」
その場にいて書類仕事をしていた先生が顔を上げてぐっとサムズアップを見せる。ムツキから見せられた写真を目にして嬉しそうな顔を浮かべると、ケイは少し顔を赤くしながら視線を逸らす。
「先生までそういうことを……はあ、誰にでもそういうこと言ってるとその内刺されても知りませんよ?」
「はは……気を付けるよ」
「全く……はぁ。今日はもう仕事もないので帰らせてもらいます。途中のゲームがあるんです」
「へえー、どんなの?」
もうこんな話なんかしていられないと切り上げ、帰ろうとするケイ。そんなケイにムツキが新たに興味を持った様子で声をかける。
「どんなのって……知ったとしてもできませんよ。この場に本体がないんですから」
「それなら大丈夫です!アリスがちゃんとゲーム機を入れておきましたから!」
『はい!?ちょっとアリス、いつの間に!?』
ゲームについて興味を持たれること自体は嬉しいものの、この場に本体が無ければプレイすることはできない。そうケイが言った矢先にアリスが荷物の中にちゃんとそのゲーム機を入れていたと言ってしまう。良いことを聞いたとニヤニヤするムツキを前に、ケイはアリスの中で諦めたように溜息を吐き、肩を竦めるのだった。
★
「これが今、アリス達がやっているゲームです!」
「ふんふん……ゼルダの伝説?」
先生に許可をもらって場所を移し、ゲームボーイカラーを手渡されるムツキ。ゲーム機と聞いてかなり大きな画面がついている大きめのものを想像していたのか、思った以上に小さいものが出てきて少しだけ驚いている。このゲームに入っていたカセットの名前は、「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章」。このゲームは2バージョン商法を行っており、対となるバージョンに時空の章が存在している。
今作ではバージョン違いの要素がかなり色濃く出ており、主なゲームシステムや登場人物、アイテム等共通する部分もあるものの、マップやダンジョンに始まり、物語も全く異なった内容となっている。それだけでなく、ゲーム中に登場するあいことばを用いることで二種類のバージョンを繋げ、様々な恩恵を受けたりストーリーの変化を見ることができる。
「はい!他にもいろんな作品があって、今アリスはこれをやっています!」
「他にもあるんだ?」
ふしぎの木の実に登場するリンクは神々のトライフォースに登場するリンクと同一人物ではないかという説があり、一時期は公式設定として扱われている時期もあった。しかし現在はふしぎの木の実は神々のトライフォースよりも後の時代の出来事として再設定されており、それによってリンクも同一人物ではなく別人ということになっている。
「是非、ムツキさんもやってみてください!」
「お、それじゃあ遠慮なくやらせてもらおっかな?」
早速ゲームを起動し、セーブデータを新規で作成する。このセーブデータでは主人公のリンクの名前を入力していく。ここで入力した名前はそのまま主人公の名前となるので、ここでムツキはゼルダと入力していく。
「あ」
「?どうしたの?」
「いえ……ここで入力した名前が主人公の名前になるんですがその……デフォルトネームはゼルダじゃないんです」
「え、そうなの!?でもゼルダの伝説だよね?」
「ゼルダの伝説ですが主人公はリンクなんです……」
『たまにありますよねこういうタイトルにいかにも主人公っぽい名前が入っていても実は主人公の名前とは別というパターンが……』
だが、ゼルダとはゼルダの伝説シリーズに登場する女性の名前であり、実際に主人公を務めることが多い少年はリンクという名前である。とはいえ、殆どの作品でリンクが主人公となるのにその名がタイトルに付いたのはリンクの冒険という一作のみ。対してゼルダが主人公を務めたのは知恵のかりものという作品が唯一となっている。
「じゃあ名前はこっちで……」
そう言われてみると、ゼルダというのは確かに女の名前だ。それよりは主人公が少年ならばリンクの方が適切だろうと判断し、ムツキは名前をリンクに戻してストーリーを開始する。オープニングで少年、リンクはトライフォースから試練を与えられ、ホロドラムと呼ばれる地へと転移してしまう。そこでリンクは倒れていたが旅芸人の一座の踊り子ディンと出会い、彼女達に救われる。意識を取り戻したリンクはディンと共に踊るのだが、そこに現れた謎の声の主、闇の将軍ゴルゴンによってディンの正体が大地の巫女だと暴かれると、竜巻で彼女を攫ってしまう。その影響で四季が乱れ、大地の恵みが奪われたホロドラムとディンを救うため、リンクは冒険に出ることになるのだ。
「……で、どうすればいいの?」
「まずは剣を取りにいきます!海岸の方に洞窟があるのでそこに行って剣を取り、それからマカ様に会いに行くんです!」
「へー……あ、本当だ。丸腰じゃいけないや」
ディンを救うための準備をするため、ある意味拠点となるホロンの村を散策する。だが、その中で大木の姿をしたキャラ、マカの下へ向かうための門が閉じており、それを開けるためには勇者の資格を示さなければならないと言われる。そのために剣を手に入れるため、海岸の方にある洞窟へと向かうのだが、この時のリンクは丸腰の状態。そのため、敵を避けていかなければならない。敵を倒すことができないせいもあって少し動きにくく、何発か攻撃を被弾しながらもどうにか洞窟の奥へ辿り着いたリンクはそこで最初の剣となるウッドソードを入手する。
「あはは!これでもう逃げる必要はなくなるね!」
「はい!ここから反撃開始です!ではマカ様の下へ向かいましょう!」
マカの下へ向かい、門の前で剣を掲げると門が開き奥へ入れるようになる。そこで、マカと呼ばれる大樹と会う。彼から、大地の四季の力が消えてしまい、世界中で四季が滅茶苦茶になっていることを告げられる。それを解決するためにはゴルゴンを倒し、ディンを助ける必要がある。そのためには八つの理を手に入れる必要があり、リンクは最初のダンジョンであるねっこのダンジョンへ入るために必要なねっこのカギを受け取る。
「これでダンジョンへ行けばいいってこと?」
「……あ、店で盾は買っておきましょう!」
剣を入手して敵を倒したり草を刈るのが楽しくて稼いだルピーを使用し、店で売られている木の盾を購入する。そして装備を整えると、ホロンの村の北にあるねっこのダンジョンへと入っていく。
「どんな感じで進めればいいの?」
「まずは行ける所は全部行って、アイテムを取ります!敵を全滅させるとか、ブロックを押すとか燭台に火を灯すとか宝箱を開けるとかして、鍵とかを手に入れて、次に行けるところを探します!」
「面白そうじゃん」
アリスのアドバイスに従い、敵を全滅させる、トロッコのレバーで進行方向を切り替えるといったギミックを突破しながら探索を進めていくムツキ。そんな中、
「おっと、これはバクダン?」
「はい!これでひび割れた壁を破壊したり倒すのに必要な時は敵を攻撃したりできます!」
「へえ」
バクダンを投げつけて敵を攻撃したりして楽しむムツキ。さらに木の実ぶくろと呼ばれる、燃える木の実であるアチチの実が入ったアイテムも見つけ、行動の幅を広げながら奥へと進んでいく。そして遂にこのダンジョンのボスであるアクオメンタスの下へと辿り着く。
「……あれ?攻撃が刺さらない」
「このボスは角が弱点です!」
アクオメンタスとは緑色の一角竜だ。突進してきたり、角が光ったかと思いきや火の玉を放ち、攻撃したりする。まだまだ操作がおぼつかないことや初期ライフがたったのハート三つ分しかないこともあり、一回一回が重いダメージとなるリンク。しかし、
「よーし!倒した!」
「凄いです!ムツキさん!これで最初の理を手に入れられますね!」
最初の理であるつちのことわりを入手。そしてマカに導かれるように次のダンジョンである蛇のなきがらを目指すことになる。
「で、アリスちゃんはどこまでやってるの?」
「えーと……最後のダンジョンをクリアして、次はラスダンといったところです!」
ここでセーブし、ムツキは最初のセーブデータを選ぶ画面を見て気になっていたことを質問することにする。そこには当然アリスのセーブデータがあったのだが、ムツキが作ったデータが、アクオメンタスを倒したことで入手したハートの器によって体力の最大値が一つ増えたとはいえ依然として四個も残っていたのに対し、アリスのセーブデータは最大値の14に近い12にまで伸びていたのだ。そしてやはり、アリスの方はもう終盤のようである。
「じゃあさ、そっちの方でアリスちゃんのやる姿を見せてもらおうかな」
「いいんですか?」
『まあ仕方ないのでは?彼女は普段から一緒にいるわけでもミレニアムの生徒というわけでもありませんから。アリスと違って大地の章をやっている時間はそこまでありません。むしろ最初のダンジョンだけでもやってもらってよかったのではないでしょうか』
それをムツキの前でやることに少しだけ戸惑うアリス。確かにふしぎの木の実大地の章はストーリーだけで言うのならば序盤と終盤だけでも話の大筋は理解できる。基本的に道中はダンジョンを攻略し、マカから次のダンジョンへの手がかりを伝えられ、サブイベやら未踏の地の探索やらをしながらその次のダンジョンを見つけて攻略するという繰り返し。そのため、本格的にストーリーが動き出すのは終盤なのだ。
「……わかりました!ではリンクの戦いを見ていきましょう!」
ケイの言葉を聞いて納得したアリスは自分のセーブデータを起動する。そこでは既に八つある全てのダンジョンがクリアされており、リンクが所有するアイテムもハイパーパチンコやマジカルブーメラン、パワーアップした剣や盾などが一通り揃っており、ふしぎの木の実に存在するシステムの一つである指輪も存在している。
「うわ、いっぱいあるね?指輪まであるんだ」
「はい!指輪は色々集めたので冒険に役立てることができます!」
指輪は不思議な力を持ったアイテムであり、ミニゲームを始めとする様々な方法で手に入れることが可能である。また、指輪は手に入れた時は未鑑定状態で入手され、それをホロン村にいる指輪鑑定士に見てもらうことでどんな指輪か判明することとなり、そこでようやく効果が分かるのだ。そして鑑定された指輪は指輪の小箱というアイテムの中に収納することで手持ちに入れることができ、そこで手持ちに入れた指輪の中から一個を選んで装備することでその恩恵を得ることができるのだ。
その恩恵は剣でのダメージを増やしたり、リンクが受けるダメージを半分にしたり。他にも爆弾の威力をあげたりと戦闘に役に立つものから、体力を回復させたり、穴やトゲといったギミックのダメージを減少したり無効化するもの、果てにはヒビのある床が崩れなかったり流砂に吸い込まれなくなるなど、多岐に渡る。はたまた変わり種として魔物に変身するものまであったりするのだ。
「……で、今ってどんな話なの?」
「はい!リンクはホロドラム中を巡り、八つ全ての理を手に入れました!それによって本当の力を取り戻したマカ様からマカの実をもらいました!これでゴルゴンの闇の力を祓い、ゴルゴンの城へと向かうことができるようになります!」
「……あ、本当にそういう感じなんだ……途中でもうひとひねりあるのかと」
さすがに最初のダンジョンからラスダンまですっ飛ばしてしまえばストーリーもわからないのではないかとちょっと心配はしていたのだが、思った以上に進展がなかった。とはいえ、このゲームはストーリーよりも探索や戦闘などがメインとなっており、そういった点においてはラストダンジョンを含む九つのダンジョンが存在している上に四季のロッドと呼ばれるアイテムを使うことで四季を入れ替えるという性質上実質マップが四種類存在していることになるのだ。そういった意味では攻略自体がメインであるといえるだろう。
「では、最後のダンジョン、ゴルゴン城へ!」
途中で季節を切り替え、ゴルゴン城が存在すると思われる未探索のエリアへと向かう。春であれば花が咲き、夏であれば蔓が伸びて崖を登れるようになり、秋になれば岩のようなキノコのオブジェが普通のキノコに戻ってどかせるようになり、冬になれば雪が積もってその上を歩き、新たな通路を開拓できるようになる。
「ほー……」
こうして季節を切り替えて進めていく様子は見ていて楽しい。マップそのものは一緒でも、現在の季節によって様々な面を見せてくれる。それに伴う景色と地形の変化を駆使して鮮やかにリンクを動かすアリスの姿にムツキも関心の声を漏らす。
「うわ、いかにも禍々しい」
「ですがマカの実があれば……!」
そして遂にゴルゴンの領域へと足を踏み入れる。周囲の景色が歪むも、マカの実の力でその闇を晴らし、ゴルゴン城へと突入。中には様々な敵がおり、それらを倒してどんどん奥へと踏み入れていく。そして、最奥には巨大な鉄球を振り回す、鎧に身を包んだ闇の将軍ゴルゴンがいた。
「こいつがラスボスってやつ?なんか言葉が妙に小物感あるっていうか」
「剣が刺さりません!?」
「あれー?全然通用しないじゃん、なんかある?」
だが、ゴルゴンの鎧は硬く、剣は勿論だがバクダン、パチンコ、ブーメランと様々な攻撃を繰り返すも全くダメージが入ったような素振りが見えない。そればかりか反撃の鉄球でダメージを受けてしまう。
「まだ、まだ試していない攻撃は……」
『……マグネグローブで鉄球をどうこうというわけではありませんし……やはりまだ試していない攻撃が……そういえば回転斬りは?』
「あ……!効きました!!」
「おっ!」
だが、そこに光明が差し込む。回転斬りの一撃がゴルゴンにダメージを与える。それによって攻撃手段を見つけたアリスは回転斬りを連続で差し込み、ゴルゴンの第一形態を撃破する。しかし、ゴルゴンは次なる一手としてなんと、クリスタルに閉じ込めたディンを呼び出し、それを盾にしてしまう。しかもクリスタルはリンクのいる方角に向かって自動で移動してくるため、迂闊に攻撃できない。
「ま、また攻略方法の探し直しです……!」
「攻撃しちゃダメなら攻撃しないアイテムを使えって事?」
「となると、盾と磁力を操作するマグネグローブと一部の木の実と……あっ、四季のロッドがまだ残ってます!大地の巫女であるディンならば何かあるかもしれません!」
どうにかしてディンをどかせないかと様々な方法を試す中、ディンが大地の巫女であるというところから、四季のロッドをダメ元で使ってみることにする。すると、クリスタルが遠くに吹き飛ばされてしまい、安全に剣を振るうことができるようになる。
「へー、こうすればいいんだ。面白いじゃん!」
「回転斬りで一気に決めます!」
後はこれまでと同じだ。ゴルゴンの第二形態を撃破することに成功……したのだが、ここで床が崩れ、リンクは地下に落下。これまで見下ろし式で上下左右に移動できるマップが左右にしか移動できず、ジャンプなどでのみ上下に移動できる別フィールドに移動する。そこでゴルゴンは額に赤いコアがついたドラゴンに変身し、リンクへと襲い掛かってくる。
「これが最終形態ですね!きっと!」
「へえ、これはわかりやすい?弱点が赤いところかな?」
「しかしパチンコを当てられませんしこれは……あっ、手が落ちてきましたね。そうです!これに乗れば……よし、ジャンプと合わせてダメージを与えられます!」
『ついでに移動速度が上がるサッサの実も併用すると戦いやすいかもしれませんね』
リンク自身の機動力も上げながら、戦いを進めていく。一回だけ体力が尽きても体力を全て回復してくれるクスリを服用しながらも、炎を吐いたり手でリンクを払ったり潰そうとするゴルゴンを追い詰め、遂に撃破する。
「やりました!……む?」
「おっとお?」
だが、ゴルゴンは死に際に、自分の使命はディンを封印することで四季を失った大地から滅びの力をこの身体に集め、ツインローバなる人物に送ることだと明かす。そして、その力は既に滅びの炎としてこの世を覆い尽くしているという。
「ツインローバ?」
「そういえば他の作品ではいましたが、ここだと別人ですよねおそらく……」
高笑いと共に倒れるゴルゴン。そしてディンも解放され、ホロドラムの大地に四季が戻っていく。そして、平和の戻ったホロドラムの大地にリンクとディンが戻ろうとする、その様子をどこかから見ている二つの影があった。
「!?」
「これは……別の空間から誰かが覗いているのでしょうか」
それは、老婆のようでもあった。二人は滅びの炎を手中に収めたかのような事を言い、この炎が闇を照らすとき、我が願いが叶うのだと、まだ物語は終わらないと言わんばかりの様子を見せてエンディングに入る。
「え、これでエンディングなの?一応ハッピーエンドでいいの?」
「えっと、そのはず、なんですが……ん?」
と、そこで突然画面に、あるワードが出てくる。それは、ラブレンヌへのあいことば。
「ラブレンヌって?」
「えーと、モルフォが言っていました!このゲームには、時空の章と呼ばれる別バージョンがあるのですが……そちらの舞台がラブレンヌだったはずです」
『……あの後味の悪い展開といい、まさかこれは……二つのソフトの物語を進めることで初めてハッピーエンドになると……?』
そう。このゲームでは片方をクリアすると、もう片方のバージョンで使用できる合言葉を貰えるのだ。それを入力し、事実上の二周目をそちらで行うことで、このふしぎの木の実というゲームは真のエンディングへと到達できる。つまり、まだアリスはこのゲームを半分しかクリアしていないも同然だったのだ。
「うわー、ちょっと気になってきちゃったんだけど。でももう今日は時間ないしー……んー、また今度進展あったら聞いてもいい?」
「はい!まだ終わってないと知れてアリスも凄くわくわくしています!またムツキさんに教えますね!」
「じゃあ待ってるからねー」
帰ったら時空の章の方を始めなければ。アリスが大地の章をクリアしている頃にはおそらくミドリも時空の章一周目をクリアしている事だろう。そこで交換すれば二人とも楽しめるというわけだ。続きを期待するムツキとも約束しながら、アリスは更なるリンクの物語に思いを馳せるのだった。