転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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橘姉妹と7並べ

 

「……ふぅ、間に合った」

 

スマホの時間を確認しながらほっと胸を撫で下ろすモルフォ。今日は最近ゲーム開発部で少しハマっている作品の聖地巡礼をしたくて遠出していたのだが、その用事も終わり帰ろうとしたところで不良達の抗争に巻き込まれてしまったのだ。正直今すぐにでも帰りたかったため、うまい感じに近くにあったヴァルキューレの派出所にいたヴァルキューレの生徒達に彼女達のノルマ稼ぎも兼ねて押し付けたのはいいものの、予想外に時間を食う結果となっていた。そのため、慌てて駅に滑り込み時間ギリギリで鉄道に乗り込んだのだ。

 

「さーてと……とりあえず座れるところは……うーん、人あんまいないな」

 

車両の中は真昼間という時間帯もあってかガラガラとなっており、人はほとんどいない。こんな場所でも走ってくれるのだからこの車両の車掌には頭が上がらないものだ。

 

「……ん?」

 

とりあえず座れる場所を探そうと奥の車両の方へと移動してみる。すると、

 

「あれー?ゲーム開発部の人じゃーん」

「おー、ひさしぶりー」

「?あなた達は……ノゾミとヒカリ?乗ってたんだ」

 

左右に二席ずつ分かれ、通路が中央に存在するタイプの車両。そこでモルフォはなんとノゾミとヒカリの姿を発見する。二人は無人の車両を完全に占拠しており、向かい合わせた四つの客席の、二つの客席の間にある手すりを上げて寝転がれるようにした状態で二人して寝そべってくつろいでいた。

 

「確かモルフォって言ったっけ?なんでここに?」

「んー、聖地巡礼」

「一人で?」

「皆予定が合わなくてね。まあ下見も兼ねて?」

 

まさかのモルフォと再会するとは思わなかったようだが、モルフォの話を聞いて二人は成程と頷く。そういえばここら辺に何かのゲームの聖地があったはずだ。今も根強いファンが多く、本来はゲーム開発部全員で行けないかと話をしていたのだが、実際に予定を組んでみるとモルフォ以外空いている人がいなかったのだ。折角なら全員で行きたいが、とはいえ実際に行って何か問題があったりとかしてもまずいということで今回は下見も兼ねて軽く見て回ることにしたのだ。

 

「ふーん、大変だねぇ」

「まあ、私は困ったりとかはしていないしね。楽しみは次に取っておくよ。良いお店とかも見つかったし」

「へー、教えてよ」

「うん、いいよ。えーと、こういうところなんだけど……」

 

ノゾミにそう言われ、スマホで取った写真を見せる。美味しそうなナポリタンが出てくる店で、実際に出ていた料理やその店の外観、看板などを見て、へぇと感心したような声を漏らすノゾミ。ヒカリも反対側からひょっこりと顔を出してスマホを覗き込んでくる。

 

「へー、結構いい雰囲気じゃん?」

「昔っぽーい」

「まあ、レトロな感じはあるよね」

 

いつの間にかノゾミが起き上がり、その隣にヒカリが座る。そしてモルフォに反対側に座るように促し、座ったモルフォと画像を見て感想を言い合う。と、ここでモルフォは何故二人がここにいるのかという疑問を今更だが抱く。

 

「そういえば、二人は何の用でここに?」

「えー?仕事終わり?」

「この後帰るだけー」

「パヒャヒャ、始発からは結構大変だったよ」

「始発って言うと……そりゃ大変だ」

「そうそうー、あの子とかいたらまだ弄り甲斐とかあって楽しいんだけどねぇ」

 

ちょっとだけつまらなさそうに肩を竦めながら言うノゾミ。その様子を見て、もしやハイランダーとは社畜の集まりでは?ヴァルキューレも言ってみれば警察官だし、やっぱりここも社畜の集まりではないだろうかとモルフォはつい考えてしまう。

 

(……今更だけど高校生って凄いなぁ)

 

やってみれば意外と何とでもなるのかもしれないし、実際に何とかしてみせているのだから彼女達も大したものである。

 

「ねえねえ、なんか面白いものないのー?」

「面白いもの……」

 

何か入れていたかなと首を傾げる。今回は皆の聖地巡礼のための下見に来ただけなのであまりアナログゲームなどは持ち込んではいない。それでも何かしらないものかと荷物を漁っていたが、ここであるものを入れていたことに気付く。

 

「このトランプぐらい?」

 

そう言いながら荷物から取り出したのは、下見の記念に買ってきたゲームのキャラがプリントされたトランプだった。一枚一枚に別のキャラが書かれている力の入れようであり、それなりにしっかりとしたグッズに仕上がっている。当然、トランプとして使用することもできるため、これ一つあればそれだけで無限の遊び方ができるといってもいい。

 

「おっ、いいねぇ。今スタミナ使い切っちゃってさあ暇してたんだよ」

「次やるの大体三時間ぐらい後ー」

「それもログインしてちょっと弄って終わりだけどねー」

 

前回、皆で遊んだ時を思い出したのだろう、トランプで何をしようというのか期待した目でモルフォを見つめる二人。ババ抜き、ポーカー、神経衰弱とやれる遊びは幾らでもある。そういったラインナップを思い浮かべつつ、今回トランプで遊ぶなら何がいいかと考えていると、ふと浮かび上がるものがあった。あれとか面白いんじゃないかとポンと手を叩いたモルフォは、その遊びを提案する。

 

「じゃあ7並べとか?」

「7並べ?私強いよ~」

「ヒカリもー」

 

7並べ。これもトランプの代表的な遊び方の一つであり、場に7のカードを並べていき、それと階段になる数字の、スートが共通するカードを並べていく。そしてカードが出せなくなれば五回パスをし、六回目にパスをした人は脱落することになり、脱落した人は所持しているカードを全て場に出す。そして場にカードが出たら、それと隣接するカードも出せるようになるのだ。

 

「って思ったけど机とかないから無理か……」

「あ、それなら大丈夫ー」

「実はさ、この先に机がついてる客車があるんだよねー」

「どうせ誰もいないし使っちゃおっか!」

 

しかしこのゲームにはカードを置くことができるスペースが必要なのだ。だが、ここにそんな便利な机はない。が、ここ以外の車両にはちゃんとそれがあるようだ。とはいえ、いかにもグリーン車のような金を払った人が使うような場所のようにも思えるが、そこはハイランダー特権で使ってもいいことになったらしい。二人からすれば誰も使ってないんだから別にトランプぐらいいいだろという感覚なのかもしれないが。

 

「よーし、まずは7を並べるんだっけ?」

「そうそう、四つのスートを出して……今は7があるから、同じスートの6か8を横に並べて出す感じ。で、6を出したら同じスートの5を……って感じで」

「ジョーカーはー?」

「うーん、一応入れるルールもあった気がするけど……」

 

7並べではジョーカーを入れるルールもある。この場合、ジョーカーは好きな数字の代わりに使用でき、仮に5を出したいときに6が手札にも場にもない時、ジョーカーと5を同時に出すことができるのだ。その後、6を出す人はそこにあるジョーカーを入れ替える形で手札に加えなければならず、最後までジョーカーを抱える人が出てくる都合上、その人はジョーカーを手放さない限り脱落した人以外で最下位になることが確定してしまうのだ。しかし、その分戦略性が高くなるため、入れてみるのもまた一興ではある。

 

(というかジョーカーがあれば数字を堰き止める、みたいなことも少なくなるしありか?)

 

と、ここまで考えてジョーカーを入れた方がいいのでは……とモルフォは考え始める。というのも、このゲームの必勝法として、数字を堰き止めて相手にパスを強要させて脱落させるという畜生なプレイングが必要になる。当然そんなことをすれば友情破壊ゲームになるのは間違いない。別にゲーム開発部の皆でやる分には別にそれでもいいかとなるが、折角ノゾミ達とやるのならばそこらへんは可能な限り排除し、早上がりで勝つ方向で舵を切りたい。

 

「よし、じゃあジョーカー入れてやろうか。ついでにパスも回数無制限にしちゃうか」

「おっ、相手を蹴落とすんじゃなくて早く上がった方が勝ちってこと?」

「そういうこと。カードを出せないまま脱落ってなってもつまらないじゃない?」

「りょーかーい」

 

モルフォの言葉に頷く二人。楽しくやれるならばなんでもいいといったところだろう。二人からも了承を貰ったことで机の上に四枚の7を置いて、手札を三等分する。そしてじゃんけんで誰から始めるかを決め、一番となったモルフォが手札を見る。

 

「じゃあまずは……ジョーカーとハートの5を一緒に出そうか」

 

トランプの枚数はジョーカーを入れて53枚。そこから7を抜いた49枚を振り分けるため、二人が16、一人が17枚となる。モルフォが17枚あった手札からいきなり二枚を繰り出していく。

 

「おっ、いきなりジョーカーを出しちゃう?でもそうだなぁ……じゃあ私がそのジョーカーもらっちゃお」

 

二番手のノゾミがジョーカーとハートの6を交換する。続けてヒカリがスペードの8を埋めて丁度順番が一周する。それから数周し、誰もパスすることなく、途中でノゾミがジョーカーをスペードのQの代わりに埋め込んでからは回収されることもなくそのまま放置されるという変化さえ除けば全員順調に進んでいた。

 

「……うーん、誰かがハートの8を持っているんじゃないこれ?全然出てないけど?」

 

場にはハートの2から7。スペードは4からKまで出揃っており、その中でスペードのQだけがジョーカーとなって抜けている。ダイヤはA以外は全部揃っており、クローバーは6からQまでが出ているという状態だ。

 

「次はモルフォの番ー」

「そろそろジョーカーを引き取りたいけど持ってないんだよなぁ……ここはハートのAを埋めようか……」

 

モルフォがハートの左側、段々数字が小さくなっていく方の階段を完全に埋める。続くノゾミの番。手札と睨めっこしていたノゾミは溜息を吐くと、手札に抱えていたスペードの3を手に持つ。

 

「しょうがないなぁ、これを出しちゃおうっと」

「おー、助かるー」

「じゃあ私はここで……」

 

そしてノゾミがスペードの3を出した直後、ヒカリもそれに繋げる形でスペードの2をくっつける。そしてモルフォは手札に握っていたダイヤの1を出す。それによって場には13枚全てのダイヤのカードが置かれることとなる。そして再びノゾミの番が来るのだが。

 

「……あっ、まだクローバーのKが出せるじゃーん」

 

手札を見て、まだ出せるカードに気付いてクローバーのKを置く。これでクローバーは右側が完全に埋まることになる。そして困ったのはヒカリだ。むむむと悩んでいたが、こうなったら仕方ないと渋々手札からスペードのQを取り出すとそれをジョーカーと入れ替える。

 

「あれ?それヒカリが持ってたんだ」

「むー、手札が減らなーい」

「ここは……これを出すしかないか」

「お、モルフォがクローバーの5持ってたんだー?」

 

これまで堰き止められていたが、遂に限界が来たのかモルフォもクローバーの5を出して左側の通路を開通させる。これでモルフォの手札は残り三枚。ノゾミが四枚、ヒカリがジョーカーを含む五枚。そして場にはスペードのAさえ除けばハートの8とクローバーの4が出なければ次が出ないという中々に苦しい状態となっている。

 

「むぐぐ……パスするしかないじゃん!」

「じゃあヒカリはジョーカーとクローバーの3を出すー」

 

遂にノゾミが出せるカードがなくなり、パスを宣言。だがヒカリはジョーカーを持っていたため、それを組み合わせることで一気に手札を二枚減らすことに成功する。

 

(……残ったカードはハートの8、J、そしてクローバーの4……)

(どうしようかなぁ、今あるのはハートの9、Q、Kで後はクローバーの2……こっちはまあいいか)

(よーし、これでハートの10とスペードのAだけー)

 

再びモルフォの番が来る。残ったカードの中から、ハートの8に一瞬手を伸ばしかけるも、まずはこっちかとクローバーの4に手をかける。

 

「じゃあジョーカーとクローバーの4を交換するしかないか」

「じゃ、クローバーの2を出しちゃうかな」

「私はクローバーのAを出すー」

「……後は……ハートの8を出すしか……」

 

クローバーも埋まり、モルフォは遂に手札に抱えたまま堰き止めていたハートの8を出すことになる。それを見て、待ってましたと言わんばかりにノゾミがハートの9を手に取る。

 

「パヒャヒャ、やっぱり持ってたのモルフォだったね!よーし、ハートの9を出しちゃうよー!」

「……むー?」

 

そしてノゾミが切り拓かれたハートの左側のカードを繋げていく。だが、ハートの9を見てヒカリは首を傾げてしまう。今の彼女の手にはハートの10とスペードのAがあるのだ。ここでヒカリが悩んでいたのはモルフォのジョーカー以外の最後の手札である。

 

「どうしようかなー」

 

ハートの10を出さず、スペードを埋めた場合。もしモルフォが持っているのがハートのQかKならモルフォはジョーカーを処理できない。そうなればノゾミも止められるし、ヒカリの勝利は確実となる。だがもしモルフォの手札にあるのがハートのJだったら。

 

(そうなったらヒカリの負ーけー……)

 

その場合はモルフォが一抜けすることになる。だが、問題はそれだけではない。モルフォがハートの10のある場所を埋めるということは、ヒカリもそこにカードを置いてジョーカーを引き取らなければいけなくなるというわけで。そうなると、ヒカリの勝ち目自体がなくなってしまうことにようやく気付く。

 

「じゃあこれを出すー」

 

そう言い、ヒカリがハートの10を出す。これで次の番で上がることは確定だ。後はモルフォの手札次第。二人がじっと見ていたが、モルフォはジョーカーを場に立てた状態で置いて、その隣に最後の手札を出す。そのカードは、

 

「うげ、ハートのJ……?というか間じゃなくてもいいの?」

「使い方としては問題ない……はず。というか間だけだとジョーカーにしては結構不便だし」

「……まあ、確かに?」

 

ハートのJ。ジョーカーをQに見立てて並べて置かれたことでモルフォは無事に上がることに成功する。同時にそのプレイングは、二人がこれまで思い込んでいたジョーカーは数字と数字の間に挟むしかないという使い方を改めることにもなる。確かに、端にも一緒に置ければ次の自分の番になった時にそのジョーカー越しに展開だってできるはずだ。どうして気付かなかったのかと少しだけ呆れたようにうんうんと頷いていたが、ここでノゾミが気付いてしまう。

 

「……これ、私の負け?」

 

モルフォが手札を全て出したことで、ノゾミは必然的にヒカリが何を持っているのか理解する。それによって彼女がスペードのAを持っている事を悟ったノゾミは敗北を突きつけられることになってしまう。

 

「そうだねー、ヒカリはスペードのAを出してゴール」

「むぐぐ……!も、もう一回!今回はジョーカーの使い方とかちょっと甘かったのが原因だし!次はもっとうまくやれるはずだから!!」

「いいよ、最初はチュートリアルともよく言うからね」

「パヒャヒャ、そういうことだよ!でも、もう一位は取れないかもね?」

 

だが、このまま負けたままではいられない。確かに負けたのは事実だが、ジョーカーについての使い方が甘かったのも事実。だが二回目となればその心配もない。リベンジを誓うノゾミの姿を楽しそうに見ながら、モルフォとヒカリも楽しそうに笑う。そしてモルフォは目的地へ到着するまで二人とトランプでの遊びに興じるのだった。

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