転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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アビドス高等学校とデジモンセイバーズ(前編)

アビドス高校の廊下を歩く二つの影があった。一つは先生。そしてもう一つはシロコ*テラー。彼女も心境の変化もあり、この世界の対策委員会の面々と出会う意思をやっと固めたのだ。尤も、彼女がその意思を固めるに至ったのは、自分の背中を押してくれたモルフォらの影響もあるのだろうが。

 

「シロコ、大丈夫?」

「……この世界で生きていくなら、いずれは避けられないから。それに……少しは動き出してみようと思えた」

「大丈夫だよ。モルフォも手伝ってくれたんでしょ?」

「……うん」

 

そして二人は普段対策委員会が主に集まっている教室の前に立つ。先生が扉をノックすると、部屋の中からアヤネの声が聞こえてくる。

 

「皆、入るよ」

 

そう言い、扉を開いて先生が入ってくる。先生の顔を見て、対策委員会の五人は笑顔を浮かべる。

 

「先生、いらっしゃい」

「先生が来てくれたということは……」

「うん。シロコ」

 

先生が部屋に入り、その後ろからシロコ*テラーが入ってくる。複雑な表情を浮かべ、遠慮がちに入ってくる彼女を見た五人。又聞きで彼女が無事であることは耳にしているものの、実際にその姿を見たことで安心した様子を見せる。

 

「待ってたよ~、シロコちゃん。大丈夫そう?」

「ん……皆、今まで……ごめんね」

「気にしないでください~、シロコちゃんの方も、色々あったのでしょうし……」

 

そんなシロコ*テラーを見て、ホシノとノノミが気遣うように声をかける。遅れてアヤネとセリカも心配そうにシロコ*テラーを見ている中、シロコだけがどう反応したものかと困ったような様子を見せる。

 

「……」

 

シロコ*テラーが部屋の中を見渡す。五人だけの対策委員会。自分のいた世界とは違い、そこにはユメとモルフォの姿はない。この世界のモルフォはミレニアムの生徒であり、ゲーム開発部のメンバーとして日夜励んでいる。二人いないだけでこんなにも部屋が広く見えるものか。

 

「……えっと、もう一人のシロコちゃん。その……もう一人のモルフォちゃんはまだ、見つかってないんです」

「ん……知ってる。でも、大丈夫。モルフォはきっといつか、戻ってくれるって信じてるから……もし、何かあったら……その時は私が取り戻しにいく」

「……そっかぁ。もしその時が来たらおじさん達も手伝うよぉ」

 

そんなシロコ*テラーの様子に気付いたのか、ノノミ達が声をかける。もう一人のモルフォの事を伝えるも、シロコ*テラーも予想はしていたのだろう、既に折り合いがついた様子で、静かな決意と共に頷く。

 

「……それで、これからどうするの?」

「ん。モルフォから面白いアニメもらってきた」

「……あ、あー、そういう?」

「モルフォちゃんの選んだアニメは面白いんですがその……結構心に来るんですよね……」

「そうよねぇ……結構カロリーが凄いっていうか」

「興味はあるんですけどね……」

 

シロコ*テラーが一つの袋を取り出す。その中にはBDが入っており、そこにはアニメが入っているのだろう。それを見て、興味と不安が半々になる対策委員会の面々。

 

「ちなみにシロコちゃんはそれが何か知ってるの?」

「ん、モルフォと一緒に見た。これは面白かった」

「そっかぁ、なら安心かなぁ」

「それで、どんなアニメなんですか?」

「デジモンセイバーズ」

「「「「「デジモンセイバーズ?」」」」」

 

デジモンセイバーズ。それはデジモンシリーズのアニメシリーズ五作目である。主人公の大門大はデジタルモンスターことデジモンと呼ばれる不思議な生命体のアグモンと出会ったことをきっかけとし、デジモン達の起こす騒動を解決するため、そしてデジモン達との充実した喧嘩をするために戦いにその身を投じることになるのだ。

 

「……うへ、これは……」

「ふ、不良……?」

 

その大とアグモンの出会いは強烈だ。人間とデジモンの無用な衝突を避けるべく結成された特別対策チーム、D(Digital)A(Accident)T(Tactics)S(Squad)の施設から脱走した、爬虫類のような姿をしたアグモンと、丁度不良と喧嘩を終えたばかりの少年、大が衝突。夕方まで殴り合ったことで互いを認め、アグモンは大をアニキと認め、大もまたアグモンを舎弟にする。

 

「な、何ていうか……」

「番長って……凄いわね……」

(見返してみるとこの時はまだ全然控えめだったんだ……)

 

これにはDATSの実働メンバーである女性、藤枝淑乃と、彼女のパートナーであるつぼみのような姿をしたデジモン、ララモンも呆れる始末だ。その後、コカトリモンと呼ばれる巨大な鶏のようなデジモンが出現し大暴れし始める。大は謎の初老の男性からデジヴァイスicを受け取り、コカトリモンを殴ることでデジソウルを拳に宿し、それを用いてアグモンをジオグレイモンと呼ばれる巨大な恐竜へと進化。ジオグレイモンはコカトリモンを撃破し、デジタマへと戻す。

 

「……ぱ、パワフルね……」

「なんか、さも当然のようにデジソウルって出てきたけどこれって何なの……?」

「……なんかこうオーラみたいなの……なんか使うとデジモンが進化したりパワーアップできる……大だけはデジモンを殴らないとデジソウルを手に入れられないけど……」

「なんで?」

 

その後、紆余曲折あり強いデジモンとの勝負を望み、同時に組織に所属していないままだと処分されてしまうアグモンを守るためにDATSに入隊する大。天才で合理的な思考を持ち、直感で直情的な大とは正反対で当初こそ衝突し合うものの、親交を深めていき、信頼関係を構築していった少年、トーマ・H・ノルシュタインとパンチンググローブを拳に嵌め、二足歩行する青い犬のようなデジモン、ガオモン。そして普段はオペレーターを行っている女性、黒崎美樹と白川恵、そして白黒の兵隊のようなデジモン、ポーンチェスモン。お茶係の亀のようなデジモン、カメモン。そして白い管狐のようなデジモン、クダモンと共にいる男性にしてDATSの隊長、薩摩廉太郎と共に様々なデジモンが引き起こす問題を解決していく中、大の家にデジモンの反応が現れる。それを受けて隊員たちが向かった先で見たものはなんと、デジタマであった。

 

「……なんていうか不思議な生態をしていますね……デジモンって」

 

アヤネが呟く。デジモンセイバーズではデジモンは倒されるとデジタマとなって生まれ変わる。人間界に現れたデジモン達はデジタマに戻すことでデジタルワールドに送還する。そうすることで人々にデジモンの脅威を知らせないように水面下で解決しつつ、DATSは平和を守っていったのだ。

 

「……鳥?」

 

大門家には、大の他に妹の知香と母の小百合が住んでいる。そして、現在は行方不明となっている父の英がいる。現れたデジタマは、なんと知香のデジソウルに反応して孵化。幼年期のプワモンを経て成長期の桃色の鳥型デジモン、ピヨモンへと進化。だが、知香はピヨモンのパートナーとなってDATSに所属しなければならず、それが無理ならピヨモンを倒してデジタルワールドに送還するしかない。大は苦悩の末に、知香と仲良く過ごしているピヨモンの覚悟を確かめるため、自ら一騎打ちを挑む。知香を守りたければ強さを示せという大に挑みかかるピヨモン。しかし、その勝負の中で黒いフクロウのようなデジモン、ファルコモンが出現しファルコモンとの戦いが始まってしまう。さらにそこに現れたのは、なんと究極体デジモンであるメルクリモン。

 

「って、ちょっと実力差が……」

 

究極体であるメルクリモンを前に、成熟期であるジオグレイモン、そしてララモンが進化したサンフラウモン、ガオモンが進化したガオガモンはあっという間に蹴散らされてしまう。全滅は免れない絶体絶命の状況の中、なんと知香を守るためにピヨモンがメルクリモンに挑みかかり、一瞬でデジタマへと戻されてしまう。デジタマとなったピヨモンを確保したメルクリモンはもう用はないと言わんばかりにファルコモンと共にデジタルワールドへと戻ってしまう。

 

「……さらっと流してたけど究極体って何?」

「ん……デジモンのレベルらしい。成熟期の次が完全体でその次が究極体になってるから……成熟期だと勝ち目はない」

「レベル1つは完全に空いてるってことじゃないですか……」

 

メルクリモンへのリベンジを誓い、そのことに躍起になる大。そんな中、アクィラモンと呼ばれる巨大な鷲のようなデジモンが出現。虚ろな目をするアクィラモンはなんとメルクリモンによって孵化させられたピヨモンが知香への想いを中途半端に残した状態のままアクィラモンへと進化してしまい、その状態で人間界へと来てしまったのだ。大達はアクィラモンがピヨモンが進化した存在であることを知り、どうにかしようとするも、その想いは実らず、知香を探して暴走するアクィラモンはコンビナートへと侵入し、破壊行為を繰り返してしまう。さらにはアクィラモンの出現はメディアにも露出することとなってしまい、これまで秘密裏に解決していたはずのデジモンの存在が公になってしまう。

 

「……改めて思うと空飛べるデジモン全然いないんだね……」

「そういえばサンフラウモンぐらいだねぇ……」

 

アクィラモンに苦戦する面々を見て、先生が気付く、というのも、空中戦ができるデジモンが、飛行できるサンフラウモンだけなのだ。しかも、サンフラウモンはそこまで機動力がある方ではなく、成長期のはずのファルコモンにすら速度で後れを取っている有様だったのだ。制空権を取られ、コンビナートが吹き飛びかねないという状況の中、大はどうにかアクィラモンを殴りつけ、アグモンをジオグレイモンへと進化させ、ジオグレイモンの必殺技であるメガバーストを喰らわせることに成功する。だが直後、アクィラモンは巨大な翼と体躯を持つ完全体の鳥人型デジモン、ガルダモンへと進化してしまう。

 

「ん……」

 

さらにそこにテレビに映るアクィラモンがピヨモンだと気付き、駆け付けた知香と小百合も戦闘に巻き込まれてしまう。知香を見て頭を痛めながらも破壊を続けるガルダモンを前に、ジオグレイモンも倒れてしまう。それを見て、大は知香の想いもピヨモンも守れなかったことを痛感し、悔しそうに拳を震わせる。

 

『……何が番長だ……何が喧嘩日本一だ……知香の想いも……ピヨモンも……何一つ守ってやれなかった……!俺の拳は結局、何の役にも立ってねえじゃねえか……!』

 

これまで、力をただぶつけ、喧嘩に明け暮れていた大。デジモンとの戦いもただ強敵との戦いを望んでやってきたことだった。だがDATSでの経験、メルクリモンへの敗北。そして、ガルダモンを相手に喫した再度の敗北を前に、新たな変化が起きようとしていた。

 

『強くなりてぇ……もっと強くなりてぇ……もう、誰にも悲しい思いをさせなくてすむような……強い男になりてえええええ!!』

 

瞬間、大の全身からデジソウルが溢れる。直後、ジオグレイモンが体の半分以上を機械化させたサイボーグ型デジモン、完全体のライズグレイモンへ進化。左腕に巨大なリボルバー、さらに機械の翼を装備したライズグレイモンは飛翔してガルダモンの攻撃を受け止めると、必殺のトライデントリボルバーによる三点バーストでガルダモンを撃破する。

 

「……うへぇ、恰好いいねぇ」

「うん、恐竜とサイボーグは凄く絵になるね……!!」

『……こんな悲しい出来事は、もう二度と起こさない……この俺とライズグレイモンがな……』

 

大の心の成長と共に辿り着いた完全体、ライズグレイモン。その格好良さに先生や対策委員会も見惚れる中、大はライズグレイモンと共に新たに決意する。そして、回収されたガルダモンのデジタマからメルクリモンの反応が出たことでガルダモンはメルクリモンが人間界を攻撃するための先兵にしたのではないかという推測が立ち、大達はデジタルワールドへと向かう決意を固める。だが、そこで薩摩からかつて、デジタルワールドへ向かった探検隊の情報を明かされる。その中には、大の父親、英の姿もあったという。探検隊は、デジタルワールドで危機に陥ったものの英のおかげで救われ、人間界に戻ってきたのだという。しかし、英はデジタルワールドに消えたまま、今も行方不明なのだという。

 

「……行方不明、かぁ」

「デジモンの事、最初から知っていたから大のお母さんはアグモンの事を受け入れていたんですね」

「……でも、行方不明のお父さん、か」

 

英のことも気になるが、それよりもメルクリモンだ。大達三人は遂にデジタルワールドへと向かう。そこで、彼らを襲ったのは、イクトと名乗る謎の人間の少年とファルコモンであった。

 

「……人間?」

「でも、なんで人間の事を敵視して……」

「……知ってるんでしょ?」

「ん……そりゃ全部見てるし。でもイクトは……」

 

シロコがシロコ*テラーに視線を向けるも、シロコ*テラーは視線をそらしてしまう。単純にネタバレになるから、というのもあるのだろうが、それ以上に彼女はイクトに対して思うところがある、という風にも先生には見えた……というよりそこもあってモルフォからは当初、「見るならシナリオ自体は薄めのデジアド:の方がいいんじゃないかなぁ……」なんて言われていたのだ。とはいえシロコ*テラーがビジュアルを見て一番頭身が高いセイバーズの方に興味が湧いたためにこちらを見ることになったのだが。

 

「……しかもデジヴァイスまで持ってる……?」

「あれ、DATSの装備じゃないの?なんであの子が?」

 

しかもイクトはファルコモンをダチョウのような姿、ペックモンへと進化させ襲い掛かる。さらにゴツモンと呼ばれるデジモンまで出現、喧嘩を仲裁しようとしていた森の主であるジュレイモンと幼年期デジモンのニョキモン達を、DATS諸共岩を落として攻撃し始める。大達はニョキモン達に気付いたことで彼らを守ることにし、ゴツモンの攻撃を退ける。イクト達がいなくなる中、愚かで傲慢だと評した人間たちに助けられたという事実に驚くジュレイモンに大は答える。

 

『いいってことよ。確かにあんたの言う通り、人間はバカばっかりだ。だがな、バカだからこそ熱くなれる。見ず知らずのデジモンを助けることもできる』

『なるほどな』

 

大の言葉に納得したように頷くジュレイモン。彼はニョキモン達を助けてくれた礼にメルクリモンの居城、無限氷壁へと向かう道と、そこにデジタルゲートが存在することを大達に伝え、大達はジュレイモンの導きで無限氷壁へと向かう。しかしその道中は過酷だ。メタルファントモンに襲われ、それぞれ悪夢を見せられてしまう。大はデジモンに連れ去られた妹を助けようとするが、ヌメモンというコミカルなデザインに襲われる。夢だからか本来ない増殖能力を得てしまったデジモンに足止めされ押し潰されるというどこかギャグチックな悪夢に襲われる。

 

「……」

「……?シロコちゃん、どうしました―――」

 

なんというか大らしい。シチュエーションとしては洒落にならないのだが、どこか笑えてもくる大、そして子供の頃のトラウマを思い出す淑乃のシーンが終わる中、シロコ*テラーの表情が浮かなくなる。その様子に嫌な予感を感じつつもノノミが声をかけようとする中、トーマの悪夢が姿を現す。そこにあったのは、病院で泣きだす幼い自分と、ベッドの上で息絶える母の姿。直後、トーマは夏祭りの行われる日の町に立っていた。そこはトーマが幼少期に育った町であり、夏祭りに母と一緒に行こうとしていた日であった。さらに今のトーマは、幼いトーマと共に夏祭りに行こうとする母を見て声をかけ、手を伸ばす。だが、手はすり抜け、言葉も彼女には聞こえない。

 

『どうする?このままでは母親が死んでしまうぞ』

「……」

 

メタルファントモンの幻聴が、トーマを急がせる。険しい表情を見せるシロコ*テラーやノノミ、しかめっ面を浮かべるホシノが見る中、トーマは必死に涙を流し、母を止めようとする。だがその行動も虚しく、現実でデジモン達がパートナーを呼び続ける中、遂に運命を決定づけるトラックが現れてしまう。

 

『止まれ!止まってくれえええ!!』

 

トラックの前に立ち、両手を広げるトーマ。しかし、彼をすり抜けてトラックは走り抜け、何かに衝突してしまう。それと共に慟哭するトーマ。それは、間違いなく、彼のトラウマ。母と過ごした思い出と死別であった。

 

『終わりだ……悲しみの中に心を閉ざし、この悪夢の中を永遠に彷徨うがいい……貴様の記憶、その悲しみ……全てまとめて我が喰らってやろう……』

 

そして、メタルファントモンの力がトーマを蝕んでいく。その中でトーマが思い出したのは、母と過ごしたかけがえのない思い出。それが、トーマの持つデジソウルを刺激したことで、なんとトーマはメタルファントモンの呪縛から解き放たれたのだ。

 

『……大丈夫だよ、母さん。母さんはずっと、僕の思い出の中に生き続けているんだ。悲しい思い出だけじゃなくて、楽しかった思い出と一緒にね……』

 

そして意識を取り戻したトーマは、母との思い出を利用し、心を弄んだメタルファントモンへ怒りを滾らせ、ガオモンを完全体へと進化させる。ガオモンは体の一部を機械化させ、ロケットエンジンを背負った二足歩行を行うサイボーグ型デジモンのマッハガオガモンとなり、仲間達を救う。そしてメタルファントモンを撃破するのだった。

 

「……その、シロコはこれを見て大丈夫だったの?」

「……モルフォはネタバレになるから言わなかったけど、これがあったから別のを見ようって言ってたんだと思う。でも……二回目だから大丈夫」

「そ、それは大丈夫って言いませんよ!?」

「うへぇ……デジソウルって凄いねぇ……まあこれはアニメの話だけどねぇ……」

 

先生が心配したようにシロコ*テラーに声をかける。顔色を悪くしながらもぐっとサムズアップを見せるシロコ*テラーに思わずノノミが声を上げるも、彼女の経験を踏まえるとそう考えるのも無理もないだろう。だが、同時に過去のトラウマをデジソウルの輝きと共に乗り越えたトーマの姿は、創作であっても輝いて見えた。

 

そして話は進み、イクトはユキダルモンと呼ばれるデジモンにこの世界で育てられた人間であることが判明する。しかしそのユキダルモンは既に死亡しているのだという。が、トーマがデジモンは倒されればデジタマに戻る生態故に死亡という概念がないはずだが……と首を捻る一幕もありつつ。

 

(それにしても……ララモンって……ヒマリに声が似てる気がするなぁ……)

 

ララモンが完全体へと進化、植物の竜のようであったサンフラウモンから一転、ライラックの花をモチーフとした妖精型の可憐なデジモン、ライラモンとなる。可愛らしい声音だったララモン、おっとりしており大らかな喋り方をするサンフラウモンとは異なり、凛とした声音を響かせるライラモン。ヒマリの優しい声音とは違うものの、ライラモンの声を聞いて何となく二人の声は似ている気がすると先生は感じていた。まあ、声音が似ている声優がいてもおかしいことではないのかもしれないとぼんやり考えながら、ライラモンが初戦闘を終える所を見届ける。そして、三体全員がパートナーを完全体へと進化させることができるようになった大達は、遂にメルクリモンとの決戦に臨むことになる。

 

「……って、あれ?あのおじさんって大にデジヴァイスくれてその後も色々助言くれた人じゃなかった?」

「なんでデジタルワールドに……?」

 

だが、そこで彼らが合流したのは、なんと大にデジヴァイスを渡した老人だった。しかも彼はメルクリモンと面識があるという。十年ぶりと話す老人を見て、彼はデジタルワールド探検隊の一員であったとトーマは気付く。そして老人はイクトを育てていたのかと問うと、メルクリモンは人間は親子の大切さを教えてくれたと答える。

 

「……?」

 

その問答に先生はどこか引っかかるものを感じていた。それを老人も感じていたようで、何故人間界を攻撃するのかと聞く。が、メルクリモンは先に攻撃してきたのは人間だという。老人は十年前のことは侵略の意思などなかったというも、メルクリモンはそれを嘘と言い切る。

 

「なんかおかしくありません?」

「うん、会話が噛み合ってない……?」

 

メルクリモンは人間はデジモン達を二度と生まれ変わることができないように消し去ったと語ると、老人が聞いたことがない話だと狼狽える。その様子を前にメルクリモンは会話を打ち切って攻撃しようとするも、大はメルクリモンへと拳を振り上げる。彼のデジソウルを感じたメルクリモンが名を問い、大の名を知ったことで彼の父、英の事を思い出す。

 

大達はパートナーを進化させてライズグレイモン、マッハガオガモン、ライラモンの戦力を揃えるも、究極体と完全体三体の差はあまりにも大きく、まるで歯が立たない。一斉攻撃で辛うじてメルクリモンに一矢報いることには成功するも、反撃によって成長期まで戻されてしまう。そこで老人がデジヴァイスを掲げると、なんとカメモンが姿を現す。

 

「で、デジヴァイス!?」

「カメモンって、お茶汲みの……!?」

「しかも進化した!?」

 

そしてカメモンをガワッパモンへと進化させると、柱を破壊することで天井を破壊し、メルクリモンの隙を突いて撤退する。大は戦いの余波で気絶したイクトを抱え、彼を追いかけるファルコモン共々、デジタルゲートへと飛び込む。そして老人ことDATSの局長、湯島は殿を務めデジタルワールドへと残るのだった。

 

「あのおじさん……凄かったねぇ」

「というかメルクリモンってあれどうやって勝つの」

「完全体で駄目ならもう究極体ってのにならないと無理そうですが……」

 

大は湯島を助けるため、そしてイクトは帰るためにデジタルゲートを開こうとするも、デジタルゲートが故障したことでイクトは人間界で暮らさざるを得なくなる。そして、彼がデジタルワールド探検隊の参加メンバー、野口夫妻の息子であり、彼らの目の前でゲートに消えてしまった事が明かされる。イクトを消そうとするゴツモンの企みを乗り越え、遂に両親と再会を果たしたイクトだったが、DATS日本支部の上の存在である国家機密庁の横やりによって両親の前から姿を消すことになり、両親もまたデジタルワールドに関する研究をしていたとして捕らえられてしまう。

 

「……うわぁ、酷い奴ら」

 

折角の感動の再会を潰した彼らの様子を見て、思わずホシノはそう呟いてしまう。だが、ホシノ達から見れば、国家機密庁はデジモンの存在を人々に知らせたくないからこそ高圧的で傲慢な態度と選択を取っているだけで行動だけ見れば一応は日本と人々の平和のためにやっていると言えなくもないため、この後に出てくるある人物を踏まえてみれば相対的にマシになってしまうのだ。

 

「サーベルレオモンって……また新しい敵が出るの!?」

 

デジタルワールドではサーベルレオモンが人間たちを攻撃するべくメルクリモンと手を組もうとしていた。しかし戦えばデジモン達も被害が出ると不干渉を貫くメルクリモンとは道を違えるものの、メルクリモンの配下であるゴツモンはサーベルレオモンに同調、彼から多くのアーマー体デジモンを受け取り、人間界へと攻め込んでくる。大達だけでなく、オペレーターの美樹と恵とポーンチェスモン達も前線に出て迎え撃つ総力戦が始まる。

 

「……完全体は強いけど」

「多勢に無勢、ですね……」

 

アーマー体デジモン一体一体は完全体の前には大したことはない。だがそれが何十体ともなれば話は変わってくる。そんな中、指揮を執るゴツモンは全てのデジタルワールドへの転送装置の破壊と、全ての災いの元凶であるイクトの引き渡しを要求してくる。当然、それを大達は受け入れることはできないものの、国家機密庁長官である羽島はイクトを差し出して人々の安全を守れと言ってのける。

 

「……」

 

その言葉に全員の顔が険しくなる。自分は災いの元であり居場所なんてどこにもないと言い、ゴツモンへと自首しにきたイクトに向かい、大が叫ぶ。

 

『甘ったれるな!!居場所なんて自分で見つけろ!それでもなけりゃ自分で作れ!ヤケになってそんなことしたって、誰も喜ばねぇ!』

 

だが、大の声にもイクトは自分の事なんて誰も必要としていないという。しかし、彼の窮地を救ったのはファルコモンだった。

 

『ファルコモン、なんで!?』

『なんでなんて言わないでよ。僕達友達だろ?』

 

ゴツモンを攻撃し、完全に裏切ってしまったファルコモンは、もう居場所はない、イクトと同じだと言う。イクトのことが大好きだからこそ、居場所なんていらない。イクトと一緒に居られればいい、イクトが人間でも関係ないと言うファルコモンの言葉にイクトは戦う覚悟を決め、ファルコモンをペックモンへと進化させる。だが、イクトの覚悟も虚しく交渉は決裂し、ゴツモンが攻撃を再開すると数の暴力でDATSは徐々に追い込まれていく。が、その光景を見ていた男性が一人。

 

『おやおやDATSの皆さん、苦戦しているようですね。助けてあげましょう、この私に感謝してください。イッツ、ショータイム!』

 

その男性があるスイッチを押すと、いきなりデジタルゲートが開かれ、その中にゴツモン達が次々と吸い込まれていく。DATSの面々が何が起こったのかわからず、ゲートに吸い込まれないようにしている中、その男性は不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

「……」

「なんかもう一人のシロコ先輩の顔が凄いことになってますけど……大丈夫なんですか?」

「ん……大丈夫、私の顔は普通」

「ふ、普通ですか……?なんか凄い怒ってましたけど……」

「ん、大丈夫。これは何でもない顔、別にネタバレでもなんでもない」

 

ここまでの話を見終えて、改めて全員がシロコ*テラーの顔を見ると凄い怒りを浮かべていた。間違いなくその怒りが向けられていたのは今最後の方に出てきた謎の人物なのだろう。そしてゴツモン達を退けた謎のデジタルゲート。それを誰が開けたのかとDATSが疑問に思う中、倉田博士が姿を現す。自らをデジモンオタクと言いつつ、デジモンアレルギーなのかアグモンを前にくしゃみをする彼を見て驚く薩摩。デジタルゲートを開けたのはなんと彼であり、英の助手としてデジタルワールド探検隊に同行していたのだそうだ。彼はデジタルワールドで暮らそうとしていた人間であるというイクトを保護しようとするのだが、それを良しとしない大はどこにも居場所がないと言うイクトを自分の家で引き取ると宣言。それを受けて薩摩は国家機密庁を厄介払いすることも含めて大の申し出を承諾し、イクトとファルコモンは大の家で日常を送ることになる。

 

知香に臭いと言われて風呂場に叩きこまれたり、小百合が作った美味しい晩ご飯に舌鼓を打ったり、将棋崩しや枕投げをしたり。まるで本当の兄弟のように遊ぶ四人の姿に先生達もほっこりとする。だが、平和は長くは続かない。朝早くからサーベルレオモンが人間界へと乗り込んできたのだ。

 

「……サーベルレオモンっていきなり来るの!?もうちょっとこう……間に挟んだりしないものなの?」

「それよりもサーベルレオモンとゴツモンの言っていることって……」

「多分、DATSも知らないことだと思いますが……でも、人間達が本当にデジモンを虐殺していたなんて……」

 

サーベルレオモンの下に行けばサーベルレオモンは暴れるのを止めてくれるかもしれない。全部自分が悪いのだと言い、一人で向かおうとするイクト。だが、大は奴らの言うことなど気にするなと一喝、何も悪いことはしていないだろうと言うと、サーベルレオモンのせいで美味しい朝ごはんすら食べずに出撃しなければならないという現実に腹を立てるように宣言する。

 

『古今東西、飯の邪魔をする奴に正義のあった試しがねえんだ!!』

「「ええ……」」

「ん……違いない」

「あ、はは……」

 

理由と啖呵はともかく、サーベルレオモンの下へ向かうDATS。だが、完全体三体だけでは究極体のサーベルレオモンにはまるで歯が立たない。そこにイクトが現れ、サーベルレオモンに人間がデジモンの世界を壊すのはよくないが、その逆も駄目だと説得しようとするもサーベルレオモンは止まらない。だが、その絶望的な戦力差を覆したのは謎の機械的なデジモンだった。そのデジモンの攻撃はサーベルレオモンに致命的な一撃を叩き込んで消える。チャンスとばかりに大が拳を牙にぶつけると、なんとサーベルレオモンの牙がへし折れてしまう。

 

『『ええ!?』』

『『究極体の牙が!?』』

『『折れた!?』』

『アニキ……凄ぇ……!!』

「え、あれ折れるんだ」

「ん……なんか折れちゃった……」

 

その姿に力を振り絞り立ち上がったライズグレイモンのトライデントリボルバーがサーベルレオモンを撃破。だが、そのデジタマは何故か消滅してしまう。イクトは自分を助けてくれた大に涙を浮かべながら彼の言葉に頷いている中、倉田が再び姿を現すのだった。

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