転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「うあぁああああ──―!?」
コユキの悲鳴が上がる。その悲鳴に皆がチラとコユキ達のグループを見ると、にこにこと笑うノアに呆れた様子のハレ、そして溜息を吐くケイとは裏腹に、大量のカードをドローさせられるコユキの姿があった。
「あれ何枚引いてるんです?」
「さあ……でも大体コユキが仕掛けてコユキまで流されたんじゃないかな……」
「まあどうせコユキが原因でしょうね……」
モルフォ達の組では時折ドローを投げたりすることもあるが静かなゲームが続いている。だがコユキらのいるグループはそうではなく、度々コユキが他の人を痛い目に遭わせようとして逆に返されるという流れを繰り返していた。
「わ、私の順番が来ない……!」
「残念なことに私の手札がスキップだらけなので」
「ヒビキ!アリス!リバース!リバースだして!!」
「でも使ったら私がスキップの餌食になるし……」
「うわーん!色が合いません!!」
それ以外のグループだと、モモイらのグループでは順番の兼ね合いでトキの次のプレイヤーであるモモイがスキップの連打を受けて順番を飛ばされていた。あまりのスキップの嵐にリバースを要求するも、トキのヘイトが自分に向けられるのを嫌がったヒビキや使用カードの兼ね合いでリバースが出せないアリスの姿もあってか、モモイの受難はまだまだ続くようだ。そしてミドリ達の方は、ミドリ、ユズ、ウタハが順調に手札を減らしていく中、マキがわざとパスをしたりして手札を溜め始めるという明らかに不穏な動きを見せていた。
(……うーん……もう出せるカードがこれしかないわね……)
そんな中、ユウカは手札を見て渋い顔をしていた。ここまで順調に手札を減らしてはいたものの、ここにきて遂に詰まってきたようだ。そこでユウカは、一枚のカードを山札から引いてくる。
(……ドロー2、か……)
自分の手番が来た時、手札に出せるカードがないのであれば山札からカードを一枚引くことができる。その後、手札から一枚のカードを出せるのだ。だが、ここでカードを出せない場合はターンが終わることになる。このルールを利用し、本当は出せるのに出せないフリをしてターンをスキップして手札を溜めているのがマキであった。
(……正直これを出してコタマ先輩がドローカードを持ってたら……多分モルフォもドローカードは持ってるだろうし、コトリも持ってたらまた私に返ってくるのよね……)
正直ドローカードは一枚は保険として持っておきたい。それがユウカの本音だった。ならばここはなにも引けなかったことにしてターンを流してやろうと判断しかけた、その時だった。
「これで上がりですね」
「そんな―――!!」
「えっ、もうノア勝っちゃったの!?速くない!?」
「ユウカ先輩、しれっとドロー2投げるのやめませんか?」
ノアの勝利報告が聞こえて動揺し、うっかり手にしていたドロー2を無意識の内に場に出してしまう。
「いやぁこれはちょっと……他の人の悲鳴は良い音源になるのですが私の悲鳴はあまり需要がないので私もドロー2で流させてもらいますね」
「コトリ……」
「モルフォ?その目はなんですか?あの、まさか」
「ごめんドロー2をだすね……後UNOで」
「そうなると私としても……保険を残しておきたかったんですがね……」
「……って、全員持ってるじゃない!?」
そこから、コタマ、モルフォ、コトリがどんどんドローカードを投入して順番が一周してしまう。こうなるからこのカードは抱えておきたかったのだと。このままでは八枚という大量ドローをすることになる。が、ここでユウカは手札にあるカードが残っていることに気付く。
「ではユウカ、八枚のカードを……」
「……コタマ先輩」
「さあ、どうかし―――」
「このカードをコタマ先輩にお渡ししますね」
「……はい?」
ユウカが大量ドローをさせられると思われた次の瞬間。手札の片方がワイルドドロー4であり、そういえばドロー2にもドロー4を重ねられるということを思い出す。基本的にドロー2はドロー2で返すことが多かったため、ここまで失念していたのだ。だが、それを思い出したとあれば状況は大きく変わる。これによって大量ドローするプレイヤーはユウカではなくコタマへと手番が流れ。
「な、なな、な……」
「ユウカ先輩……」
「……あっ、UNO!」
わなわなと震えるコタマを尻目に、モルフォが遠回しに警告する。それを聞いたユウカが慌てて残り手札一枚になっていることに気付いて「UNO」と宣言する。これは、このゲームのルールの一つで、自分の手札が残り一枚になる時、カードを出した後に「UNO」と宣言する必要があるのだ。もし宣言していないことを他のプレイヤーに指摘されてしまえば山札から二枚のカードをドローさせられてしまうのだ。
だがユウカはコタマにドローを流すことに完全に意識が向けられていたため、宣言していないことについてはモルフォも指摘すること自体はいつでもできたものの、ゲーム開発部以外はまだこのゲームは初めてということもあり、ある程度は温情をかけることにしていた。無論これに気付かなければ容赦なく指摘していただろうが。
「く、うう……どうして、どうして……!」
悔しそうに呟きながらカードを引くコタマ。当然これだけ引ければいくらでも手数は揃うのだが、それを出すのは次のターンからだ。そしてモルフォの順番になる。
「そういえばユウカ先輩、場の色を指定してもらっていいですか」
「あっ、そういえば忘れてたわね……じゃあ黄色で」
「うーん、パスですね」
「黄色……うーむ、これはスキップかリバースが欲しいんですがないんですよね……とりあえず黄色の0を出すしかありません」
ユウカに場の色を指定してもらうも、モルフォとコトリは残念ながら場の色を変えられることなくユウカにターンが回ってしまう。そして自分のターンが無事に来たユウカは、最後に抱えていた黄色の7を場に繰り出す。
「これで、私の勝ちよ!」
「や、やっぱり黄色でしたか……」
「……あの、私の手札を増やすだけ増やして勝ち上がってくのは……」
「まあUNOですから」
手持ちを全て出し切り、ぐっとガッツポーズを見せるユウカ。尤も今回は最初に勝ち抜きした人が出た時点で終了のルールだったため、コタマが持っている手札を吐き出す機会はなかったが、このまま順位を決めるとなればその大量の手札を使って大暴れしていたことだろう。そういう意味では、ここで終わってもらった方がよかったかもしれない。
「あら、ユウカちゃんが勝ったんですね」
「運も味方してくれたわ。それで残りは……」
「勝ったのは私、モモイがいい囮だった……」
「酷い!?」
二人目の勝者としてユウカが決まったところで他の組を見てみると、記号カードの餌食になっていたモモイに隠れれて順調に手札を消費し、最後は同時出しでUNOを宣言せずに上がったヒビキが勝ち上がっていた。残るはミドリ、ユズ、ウタハ、マキの四人だったが、
「そんな、そんな……」
「まあ、それだけ手札をわざと引き込めば当然スキップされるだろうね……」
「マキちゃん……それは露骨すぎるよ……」
こちらではゲームを制したのはユズであった。大量に手札を溜め込み始めたマキがゲームを大きく動かすかとも思われていたが、動かすと碌なことにならないと判断した他の面々によりスキップやリバースを駆使してまともに動かせてもらえず、その間にユズが上がっていた。
「じゃあ決勝戦は……ユウカ先輩、ノア先輩、ヒビキ、ユズってわけだね」
「……ノア先輩とユズはちょっと勝てる気が」
「て、手札の運ってこともあるし……」
「ふふ、そうですよ。まだまだ勝負を諦めるには早いんじゃないですか?」
そして勝者四人によるUNOが始まり、周囲の面々はそれを観戦しながらお菓子を食べたり、うつらうつらと意識を彷徨わせているハレを始めとした者もいた。
「これ、美味しいですねぇ。それにしてもゲーム開発部に駄菓子が大量にあったなんて驚きました」
「あー、ユカリ……百鬼夜行の友達から美味しい駄菓子を教えてもらってね……」
「このレタス次郎ってのうまいよね!」
「ええ、こういうお菓子のも悪くありませんね。モルフォもどうぞ」
「いやゲーム開発部から持ってきたものではあるんだけども……ありがと」
トキに差し出された駄菓子を受け取って口の中に放り込みながら、勝負が進むUNO最強王決定戦の様相を見ていく。全員が記号カードを投げ合い、ドローカードが一度放り込まれれば何枚も投げられ、手札が一気に増えればそれを利用して同時出しを駆使するなどして手札を瞬く間に減らしていく。特にノアとユズが頭一つ抜けている部分があり、ヒビキとユウカはうまく立ち回って致命的な被害を回避している、といった様子だ。
「ヒビキも苦しそうだね。まあ相手があの面子では分が悪いのはそうなんだが……」
「はい……これは厳しいゲームになりそうですね……」
「コトリ、眠たいなら寝ていいんだよ?」
「ふふ……こういうのは寝たら負けなんですよ……妖怪MAXを……妖怪MAXをください……」
「……目を覚ましたいならコーヒーとかでもいいんじゃない?ドロドロのエスプレッソに同じぐらいの砂糖をドカッと入れてさ」
「……美味しそう。普段から飲んでるの?」
「あ……コーヒー飲む時は普通にミルクしかいれないです。まあ折角なので」
眠たそうにしながらもヒビキのゲームを何とか見届けようとするコトリの眠気を吹き飛ばすため、インスタントのコーヒーにお湯と大量の砂糖を入れて作る。ある作品に出てくるコーヒーの再現みたいなものなのだが、正直モルフォはまだ飲んだことがなかった。そのため、折角の機会なのでカフェインを求めるコトリに試してもらおうとしたのだ。
「これは……苦みと甘みが……カフェインによる眠気回復効果が凄まじい事になっていますよ……!しかしコーヒーのカフェインによる眠気効果が効果を発揮するのはコーヒーを飲んですぐ仮眠を取って十五分後と……」
「調子が戻ってきたね」
「この調子ならすぐ戻るんじゃない?」
眠気覚ましの効果が出てきたのか、コトリの意識が覚醒し始める。段々解説に勢いが戻ってきたコトリを見て安堵し、彼女の説明にモルフォが耳を傾けながらもゲームの方を見ると、手札の枚数的にユズが一歩リードしている様子が見えた。
「……このままだとユズが上がってしまう気がする……ここはもうドロー4を使うしか」
「……ごめんねヒビキ、ドロー2があるんだ」
「え!?いやでも私もドロー4が……」
「残念、私も持ってます」
「ま、まだもう一枚、ドロー2がある……!」
「……!!」
ヒビキから続く五枚のドローカードによる連続ドロー。その標的となったユズは、冷や汗を流しながら手札を見る。上がりに近づけば今回のようにヒビキから攻撃されると予想して抱えていた防御用のドロー2。しかし、二周目を耐える程の過剰な防御力は今のユズの手札には存在しておらず、結果としてユズはこの局面では痛すぎる16枚ドローをしてしまうことになる。
「こ、これは次が怖いわね……」
「ではこれでUNOですね」
「まずい……」
そしてユズが一気にゴールから遠のいてしまう中、ノアが王手をかける。そして迎えたユズの番。ユズは手札から数枚のカード手に取ってノアの表情を見る。
「……ふふ」
「まさか、ユズはノア先輩の手札を読もうとしている……?」
「で、できるんですか?私なんて全く……」
おそらくそのカードを使ってノアの上がりを阻止しようとしているのだろう。だが、ノアの手の内をまるで読み切れなかったコユキが疑問そうに首を傾げると、彼女と同じグループで対戦していたケイとハレも同意するように頷く。
「難しいでしょうね、あのポーカーフェイスは」
「でもユズなら……ユズならやってくれるはずです!」
おそらくここが勝敗の分かれ目になるであろうタイミング。ユズはノアを見ながらじっと考え込んでいたが、やがて決定したのか、出したのは複数枚のスキップカード。
「……そういえばスキップは複数同時に出した場合はどういう処理になるんでしょうか?」
「えーとね、この場合だと……あれ、どうなるんだっけ」
「お姉ちゃん……えっと、まず一枚目を出したらユウカ先輩がスキップされてノア先輩になると思うんですけど。そこからさらにノア先輩がスキップを使用したものとしてヒビキちゃんが飛ばされてユズちゃんの番になるんです」
「……?そこはスキップを重ねた人数分飛ばすわけじゃないのかい?」
「……言われてみれば?」
そういうルールでやっていたから誰も疑問には思っていなかったが、ウタハに指摘されると確かにそうかもしれないとなるミドリ達。モルフォもそういうローカルルールでずっとやっていたので指摘されるまで気付いていなかった。とはいえ今回はそういうルールでやるということになっているため、このまま押し通すことにする。
「使うスキップは、五枚……そして場の色は……赤色」
「それがユズちゃんの選択ってことですね?」
「……はい」
ユズはノアに対して頷く。ユズなりに考えて出した手、ノアの最後の手札の色が一致していればノアの勝ちだ。確率だけで考えるならば四分の一。そしてノアは手札を見てくすりと笑うと、山札に手を伸ばす。
「あれは……!」
「ノアの手札はどうやら赤色ではないようですね」
「首の皮一枚繋がったようだね」
「ノア先輩の手札が赤色ではないとわかったのは大きいですよ」
「その通りです!ここからユズの反撃のターンです!」
引いたカードも場に出せるカードではなかったようでそれを手札に加えてパスする。一気に場の流れを掴んだユズが同時出しで手札を処理していく。そして、ドローカードの大量出しでユウカに手札を押し付け、手札を残り四枚にまで減らすと、最後に四色の同じ数字のカードを同時に出して上がることに成功する。
「勝った……!」
「さすがだね、ユズ」
「はあ、結構良いところまで行ったと思ったんだけど……」
「ふふ、おめでとうございます。楽しいゲームでしたよ」
そしてユズが上がったことでゲームは終了する。勝利したことにユズが安堵し、ノアが微笑みを浮かべ、ユウカとヒビキがゲームの内容を振り返っていると、反省部屋の扉が開き、チヒロが入ってくる。
「やあチーちゃん。盛り上がってるよ」
「コユキがパジャマパーティをやりたいって言ってコタマ達を誘ってたから何が起こるか不安だったけど……思ったより平和そうだね」
「いやいや、なんで皆私が何かやるって思ってるんですか!?私過去に何かやらかしましたか!?」
「いや、あなたやらかししかしてないでしょうが!!」
「ええ!?」
チヒロの言葉にコユキが異議を唱えるも、即座にユウカに黙らせられてしまう。その場にいた全員がコユキに視線を向ける中、コユキは居た堪れなくなったのか別のゲームを取り出す。
「そ、そうです!次はこれをやりましょう!」
「これは……」
「あ、以前改造したやつ」
「ヒビキ……何をしたの?」
それは黒ひげ危機一髪のペロロ版とも言うべき玩具であった。樽の中にペロロ人形を入れ、樽に空いている無数の穴に剣を一本ずつ差し込んでいく。そして外れの穴に剣を差し込まれるとペロロが打ち出されるという寸法だ。それを、一人ずつ剣を刺していき、ペロロを発射した人が負けとなるシンプルなルール。
「じゃあさ、BOOMやろうよ!ちょっとインストールするからさ!」
「こっちはこっちで何をしようとしているんですか……」
(そういえばDOOMチャレンジなんてものもあったなぁ……)
BOOMとはキヴォトスに存在するゲームで、FPSゲームであるDoomをゲーム機以外の様々な媒体に移植しプレイ可能にするという行為をDOOMチャレンジと言う。マキがやろうとしているのは、そのチャレンジのBOOM版ということか。
「……でもシューティングって言ってもこの人数でやれるわけじゃないしなぁ」
「それもそっかー、でもタイムアタックとかなら……でもさすがに人数多すぎるか……ねーねー他はなんかないの?」
「……マキ、あんまり絡んでもモルフォが困るでしょ」
「あ、気にしないでください。慣れてるので」
モルフォにお菓子片手にウザ絡みし始めるマキ。思わずチヒロが窘めようとするも、モルフォは笑って流す。そして持ってきた袋の中を見ていく。
「うーん、インディアンポーカーとかでもいいし、後は……適当なカンケイとかもいいのかな……後はこねこばくはつとか?」
「こねこばくはつ、ですか?」
まだまだ弾は豊富だ。アナログ、デジタル問わずにどのゲームをやるかも含めて楽しく話し合いながらワイワイと騒ぎ始めるモルフォ達。その様子を見届けながら、
「チヒロ先輩は何かやりたいものはありますか?」
「ん?私が決めてもいいの?」
「チヒロ先輩にも楽しんでもらいたいので!最後に来ましたし、何か興味がある奴を言ってみてください」
「そう?それじゃあ……」
モルフォに言われるがまま、次にやるゲームを選ぶのだった。