転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「こ、この!こっち来ないでよ!あーもうなんでまたこのアバン……えっと、なんかよくわかんないのと戦うわけ!?」
「コハル!」
「モルフォ!?」
コハルを含めた数人の正義実現委員会の生徒達が頑張って応戦するも、成果は芳しくない。このアバンギャルド君は展示品だったのもあり武器を何も持っていないのは不幸中の幸いだがこのままでは。だが、コハル達の前に立ちはだかったモルフォはアバンギャルド君が振り下ろした腕をシールドで受け止める。その質量に腕が震えるも、すぐに流すようにして地面へと落とす。
「コハル!他の子達もこいつの首元を狙って!」
「わ、わかったわ!」
「「は、はい!!」」
そのままコハルに指示を出し、彼女が狙ったのと同時に他の正義実現委員会の少女達も首を撃つ。それによって徐々に首に傷がついてきたところで、慌ただしく走ってくる音が聞こえてくる。
「こっちだよ、こっちー!」
「はぁ、はぁ!モルフォ!これを使ってくれー!!」
そこにはアスナに腕を引っ張られ、息を切らしながら走ってくるウタハの姿があった。ウタハはモルフォに向かってやたら大きなサイズの鉄球のようなものを放り投げる。それを見たモルフォは、
「そぉい!!」
それをハンマーで打ち出し、アバンギャルド君の頭部に激突。直後、アバンギャルド君は突然動きを止めて機能を停止させる。
「ふう、アバンギャルド君にぶつければ特殊な電磁波で一気に頭の中をショートさせられる対策アイテムを用意しておいてよかったよ」
「工事……完了です」
「こんな工事聞いたことないんだけど……ゲーム開発部って工事までやるの?」
「……この人、ゲーム開発部の……?ああ、納得……」
正義実現委員会の子達が軽く引き、コハルが呆れている中、必死に走ってきたウタハ。しかし、その腕は先程まで鉄球のようなものを持っていた影響かぷるぷると震えてしまっている。
「……モルフォ、やっぱり君は強いんだな……」
「いやあ……ネル先輩とかには全然勝ててませんしまだまだですよ。これまでだって強い人に勝った時は大体装備とか状況もありますし」
セイアも軽く表情を引き攣らせながらモルフォに声をかける中、ホログラムと共に現れたユウカとウタハは何かを話しながらアバンギャルド君を見ていたが、ウタハはアバンギャルド君によじ登って頭を開くと、その中からSDカードを取り出す。
「何をやってるんですか……これ。またエンジニア部が変なプログラムをしたとかではないんですか?」
「これに関しては無実だよ……チーちゃんの名前にかけてもいいよ。あ、これチーちゃんに渡しといてくれないかい?暴走の原因がわかるかもしれない」
「はあ……わかりました」
アスナらと一緒に駆け付けていた制服姿のカリンにそれを持たせる。暴走なんてまたエンジニア部が何かやったのかとは思いつつも、ウタハがそれを否定したことでカリンもそれを信じることにする。
「……ん?あれは何だい?」
「……チップですね。ウタハ先輩!」
と、セイアが止まったアバンギャルド君に何かが仕込まれているのに気付く。そのチップについてウタハに報告すると、ウタハもそれを回収する。
「む……これは。ああ、ありがとう。いやこんなところについているとは……気付いてくれてありがとう。危うく見逃すところだったよ。しかしこれではアバンギャルド君は展示できないな。仕方ない、一旦部室に戻して……代わりに人を駄目にするベッドでも置いておくか」
「……明らかに機械でも何でもないがいいのかい?」
「むしろ機械じゃなければ大丈夫だろう。休憩所替わりに解放でもしておけばそれっぽくはなるんじゃないかな?」
とりあえずアバンギャルド君はまた動かれる心配があるので、ここは部室に戻しておくしかない。その間、ここは寂しくなるが、暴走させられる心配のないものならまぁあのベッドでもいいかと考えるウタハにセイアは思わず聞き返してしまっていた。
「……しかし、エンジニア部は無関係か」
「……何か気になります?」
「まあ、私達の関係ないところがどうなってるかは気にはなるが……」
チップについてはウタハに任せておけばどうにかなるだろう。そこからリオ達に情報が行けば何か進展があるかもしれない、と。
「……」
モモトークの方にネルから連絡が入る。データセンターに侵入し、データの流れを追えるようになったとのことだ。一応チップの事をリオに伝えると、
「……しかし、あのようなアクシデントが連続するとなると正直心臓が持つかわからないね」
「割とピンピンしてません?」
「さて、どうだろうね。次の目的地は……む?」
「あ、次に行ってほしい場所が来たようで……はいぃ?」
今度はリオからデータの流れが怪しい場所があると伝えられる。そしてその場所を見て、モルフォは思わず眉を顰めてしまう。
「どうしたんだい?」
「次はゲーム開発部が怪しいから行ってほしいと……ちょっと急ぎますか。洒落にならないんだけど……」
さすがにこの一件にゲーム開発部まで巻き込まれるのは困る。皆の身に何かが起こる前にモルフォはセイアと共にゲーム開発部のブースへと向かう。途中で何人かの倒れた生徒を介抱しているミネの姿をモルフォ達は見つけるのだが、彼女達の頭部にタンコブができているのを見たセイアは無言でモルフォを引っ張ってゲーム開発部のブースへ急がせるのだった。
★
「うおおおおお!このおおおお!」
「落ちろよー!」
「死ねよやー!!」
「このトリニティ自警団のエーぶべっ」
「銃なんぞ使ってんじゃねええええ!!」
「イヤーッ!!イヤーッ!!」
「なぁにこれぇ」
ゲーム開発部のブースに辿り着いたセイアとモルフォ。そこで起こっていたのはとんでもない大乱闘であった。それも、トリニティもミレニアムも関係なくだ。
「あ、あ、あ……モルフォ―――!!」
「どうしたの、モモイ」
「あ、モルフォちゃん!?なんか、なんか凄い事になっちゃった!?」
と、その中であまりの光景に思わず泣きだしていたモモイがモルフォの姿を見つけて飛びついてくる。ミドリもあわあわと涙目になりながらどうにか喧嘩を治めようとしていたがモルフォの姿を見て必死の表情で声を出す。
「……どうなってるんだいこれは?」
「ユズ!何があったの!」
「え!?いや私は何も悪くないよ……?難易度はちゃんとTormentまで分かれてるし……ただ、その……ゲームをやった人たちが突然喧嘩し始めちゃって……」
「……何?」
自分は多分悪くないし訳がわからないといった様子で混乱するユズ。見ればアーケードの筐体の前でケイがしきりに何かを弄っているようであり、ゲーム自体に不具合があったようにも見える。
「……まるでゲームから何か本来ない悪影響を受けているかのように見えるが、どうするんだい?」
「とりあえずデータの問題があるのならケイに調べてもらってるのでまぁ大丈夫でしょう。でもおかしいな、昨日までは問題なかったはずだけど……」
「モルフォちゃん!これどうしよう!!」
「うーん……まあ、やることは一つでしょ……皆、耳塞いで!!」
そう言うと、モルフォはショットガンハンマーを手に取る。幸い、暴徒と化した生徒達は一ヶ所に集まっている。これならばこの銃の特性も最大限に活かせるはずだ。まずゲーム開発部の皆にそう告げて暴徒の中央に降り立つと、
「台パンはご遠慮願いまーす!!」
「「「「「ぎゃあああああ!!!」」」」」
大音量で暴徒たちの耳を攻撃し悶絶させる。即座にモルフォが目で合図を出すと、ミドリとモモイがそれぞれ弾を額に撃ちこんで完全に意識を刈り取ってしまう。中にはミレニアム以外にもトリニティの見知った顔もいたがこの場は敢えてスルーすることにした。
「お、お、おま……」
「うわっ、まだ動いてる!」
「ごふっ」
「わわ、まだ数人立とうとしてる!」
「「「ぐぇっ」」」
「……エグいことするね君達」
確かに暴れてたのは事実、事実なのだが。だからといってここまでされては暴徒となった生徒達に思わず同情の念を抱かずにはいられない。ひとまず生徒達を大人しくした所でモルフォに駆け寄るモモイ達。安心した様子を見せる彼女達を呆れたように見ていたセイアだったが、その視線がゲーム機を前に何かを調べていたケイに移る。
「……どういうことでしょうか。一応聞きますがユズ、コードは弄っていませんよね?」
「弄ってないよ!?それにテストプレイだって昨日皆でやってた時は何とも無かったのに……コユキとかモルフォが呼んだレイとかもやってたけどなんともなかったよね?」
「……今日になって何かしたわけではないと。このゲーム、ぱっと見ではわからないようにコードが書き換えられています。ゲームそのものは破綻しないようにしつつも丁度、ユーザーに不快感や怒りだけを植え付けるような形にね」
「……そ、そんなことできるのかい?」
ケイの発言に困惑するセイア。そこまで見てわかるものなのかと驚く彼女を横目にゲームソフトを引っこ抜いたケイははぁ、と溜息を吐く。
「とりあえず予備のソフトはありますが……」
「仕方ない、一旦オフラインにしよう。ミレニアムのサーバーを経由して筐体同士のランキングの同期とかやってたけど、そこらへんは優先で対応しよう」
「……ところでモルフォ、そちらの方は確かティーパーティーの」
「ティーパーティー……?」
「トリニティのお偉いさんだよミドリ……」
「……なんかお姉ちゃんに指摘されるのちょっと背中ぞわぞわする!」
「なんで!?」
さっきまで滅茶苦茶だったせいで気にする余裕がなかったが、ここでモルフォがセイアと一緒に来ていたことに気付く。とはいえ、トリニティでの一件でゲーム開発部は一方的にセイアの姿を知っている状態だったことや、朝からモルフォが一人駆り出されたのはこれが原因かと理解する。
「……ちょっと今、色々あってね。そのゲームソフト、調べたいんだが……」
「それは……いいんですか?」
「うん、ちょっとこういう異変について調べているんだよ。とりあえずケイ、調べて分かったこととか、全部リオ会長に送ってもらっていい?」
「わかりました。ゲームのコードを送信しておきますが……モルフォ、悪いのですがエンジニア部を呼んでもらえますか?私はデータ通信の方をちょっと作業するので……」
「ヒビキに聞いてみるよ……まあそれとして、こんなことした奴は……とりあえずぶちのめすかぁ」
『「「「「……」」」」』
「いや君達無言で頷くのはやめないか!?」
それとして、こんなことをやってきた犯人に対する同情は一切ない。一瞬修羅が見えた気がして、(これがゲーム開発部か……!)とセイアは思わず戦慄していると。
『モルフォ、聞こえますか』
「どうしたのトキ」
『正体が分かりました。犯人は吾妻ミライです』
「……誰?」
聞こえてきたその名前に思わずモルフォは首を傾げてしまう。スマホの向こう側ではボコボコと誰かが誰かを殴りつけている音が聞こえる。おそらくはネルが手掛かりになりそうな人物を見つけてボコボコにしているのだろう。
『疑似科学部所属。とはいえ廃部ですし、やってる内容も研究は疎かにしてインチキ商売で詐欺ばっかりやってたようです』
「思った以上に救いようがない……よくわかったね?」
『リオ会長も完全に記憶から忘れていたようだったのでノア先輩に聞きました』
トキから聞いた内容を纏めると、フィットネスセンターで怪しいデータの流れを確認したとのこと。そこにトキとネルが向かうと、ヘルメット団がトレーニングマシンに細工をしており、ハスミが犠牲になりかけていたとのこと。その後、どこかへ移動したヘルメット団を追い、今回の主犯と思われる人物と通信を取れるヘルメット団のメンバーを確保したのだ。
『爆弾やら大量の雑兵やらで無理やり逃げようとしましたが、私がいたので問題ありませんでした。部長は私に感謝するべきです』
『いやあたし一人で十分だったんだが!?』
『ネル先輩が強がってますがスルーして大丈夫です』
『強がりじゃねえ!おらっ、もっと知ってること吐きやがれ!!』
『ぐぇっ……ほ、他は知らないって……ミライっていう奴のこと以外はいや、本当に……』
トキの話を聞いたモルフォとセイアが互いに顔を見合わせる。そして、
「トキ、疑似科学部の部室は?」
『えっと……』
『元、だけど場所は教えられるわ』
『周辺の監視カメラとかを見てもミライは元部室の中に他の元部員と一緒にいるようだ。全く、こいつらが変な弄り方したせいで私は夜通し……!』
部室の場所をリオが教えてくれた上に怒り心頭なチヒロの恨みつらみが籠った声が聞こえてくる。犯人がわかっているならチヒロのためにもさっさととっちめてやろうと疑似科学部の部室に向かうことにする。と、ここでモルフォはセイアを見る。
「……ふむ。これ以上は私を巻き込めない、そう言いたいのかな?」
「あー、いやそういうわけでは……というか今度は私達から鉄火場に突っ込んでいきますし。さすがにそのミライって人も抵抗はするでしょうし」
「やれやれ……まあ、確かに私はミカやツルギのような強者ではないがね……」
だがセイアは肩を竦めると、モルフォの肩に手を置いて笑う。
「それでもやる時はやるものだよ。それに、このミレニアムEXPOを台無しにされてしまうのは我々トリニティにとっても本意ではないからね。彼女にはお灸を据えてあげなければ」
「……わかりました。皆!ちょっとゲームの事は後!!ゲームを改造した奴を取っ捕まえにいくよ!」
『「「「「!!」」」」』
こう言われればモルフォとしてもセイアを否定する理由もない。だが、万全は期す。後は犯人を捕まえて終わりにするフェーズなのだから、手加減する必要もない。ここからはもう全ブッパである。ゲーム開発部はセイアと共にミライのいる疑似科学部へ向かって走る。
「リオ会長、私達、ゲーム開発部でミライの所に乗り込みます!でもヘルメット団の事を考えると、もしかしたら最後の抵抗をしてくるかもしれません、ここからは先生に伝えても……」
『あー、それなら大丈夫だ。もう先生には伝えてある。何も起こらなけりゃそのまま自然にしてりゃいいけど、もし表でなんかあったら手伝ってくれってな』
『ネル先輩!?いつの間に!?』
相変わらず情報を抜くためにヘルメット団らしき人物を殴りつけているネルの打撃音が聞こえてくるが、それと同時にあっけらかんと言い放ったネルの言葉に通信に参加していたユウカが唖然となる。
『いやよぉ、先生を何も知らないからこその囮にするってーのもまぁ理解はするぞ?先生も話聞けば笑って許してくれるとは思うけどなぁ……使えるもんは全部ちゃんと使った方が効率的だろ?なぁ、リオ』
『…………確かにそうかもしれないわね』
『つーわけだ。お前ら、ヘルメット団が隠れてるからまとめてぶっ潰しとけ!』
『戦力の方は心配ないわ。AMASも出撃させて一人残らず炙り出すから。AMASはぱっと見は展示品が徘徊しているだけにしか見えないでしょうし……ミライの方はゲーム開発部に一任するわ』
「任せてください!アリス!あそこが部室だ!!」
「はい!―――光になれ!!」
疑似科学部の部室の扉が見えてきたところでアリスがスーパーノヴァを撃ちこむ。扉が吹き飛び、数人の悲鳴が上がると共に開いた扉の中にユズがグレネードを撃ち込んで爆破。爆煙に包まれる内部に突入したゲーム開発部はそのまま壁の方まで移動して背後から攻撃されないようにしたうえでアサルトライフルとガトリングレールガンを連射していく。
「うわああ!ど、どうしたら!」
「落ち着きなさい!!煙ってことは向こうも見えないはずです!今の内にこっそり外に出ます!」
「そ、そうか……ぎゃあ!?」
「何が……ぐはっ!?」
「な、なんで外に……がふっ!?」
「え?え?明らかに足音と人数が合ってない……!?」
おかしい、足音は間違いなく人数分聞こえてきたはずだ。中にいた白髪の少女、ミライは困惑する。だが、部室の外ではモルフォ、モモイ、アリス以外の全員が待機しており、外に出てきたヘルメット団は即座にミドリ達に撃たれて意識を刈り取られていく。
「セイアさん凄いですね……一撃でクリーンヒットなんて」
「まあ、これでも勘ってやつがよくてね。ふふ、思ったより人数が出てきてくれたようで私の出番もあったのは僥倖ってやつだね」
「こ、こうなったら!くそっ、結局ビッグシスターアルゴリズムも手に入らないし!皆さん、出番ですよ!!さあミレニアムEXPOを滅茶……苦茶……に……?」
取り残されたミライは無線機を取り出して指示を出す。おそらくは彼女が通じているヘルメット団に指示を出そうというのだろう。しかし、
「は、え……全……滅……?そんな、わ……私の契約した皆さんがぁぁぁぁぁ……ぜ……ぜん……め……めつめつめつ……」
「そこか!」
「ぎゃん!?」
哀れにも通信から聞こえてきたのは外に待機していたであろうヘルメット団が既に全滅していたという悲しき報せであった。おそらくは先生がミレニアムの生徒達を指揮し、AMASと共に制圧してしまったのだろう。さらにミライにも煙越しにセイアの放った弾丸が命中し、悲鳴が上がる。
「さあ大人しくしたまえ。君には牢屋がお似合いだよ」
「ま、まだああああああ!!」
「っ!?」
が、ここでミライはなんと、限界を越え火事場の馬鹿力でも発揮したのだろう。なんとその痛みに耐えて部屋を飛び出す。ミドリが額へ向かって放った弾丸は奇跡的に滅茶苦茶に振っていた腕に当たって致命傷を回避。意識はそのままにセイアを突き飛ばす。
「うわっ!?」
「!セイアさん!!」
「こ、転んだだけだ!それより!」
「お前、この人トリニティの偉い人なんだけど!!」
「そんなの知ったことじゃありませんよ!今は捕まらないことの方が大事です!ふふふ、大分しょぼいですが、得られたものはまだありますからね―――」
「ああ!あいつのポケットから見えてるのは、今日出しているゲームのカセットです!いつの間に割りを!?」
「―――許さん!!」
セイアに危害を加えるだけでなく、ゲームを割って奪ったと聞いた次の瞬間、モルフォが全力でショットガンハンマーを放り投げる。それは、ミライの腰にクリーンヒットし、ミライの悲鳴と共に数人分の足音が鳴り響く。
「うぎゃあああああ!!」
「ここからなら……」
腰を痛め、両手で抑えながらも走り続けるミライ。しかし、身体へのダメージがでかすぎるせいなのと、火事場の馬鹿力を使った代償で徐々に足は遅くなっていく。そんな中、エンジニア部が出展しているラボに移動していたことにモルフォは気付く。ラボは二階構造になっており、自分達が走っているのは二階側だろうと。遠目で見ると、アバンギャルド君が暴走したことで代わりに置かれた、コトリが最後に使ってた人を駄目にするベッドが置いてあった。それを見たモルフォは、
「今なら……あれができる!かもしれない!」
「モルフォ!君何をする気だい!?……はぁ、はぁ……」
「ユズ!前にグレネード落として!」
「わかった!」
「うわっ!?」
ユズにミライの進路を塞ぐように榴弾を落とさせる。その爆発にミライが思わず立ち止まった、その時だった。ミライの体に飛びついたモルフォは、その体をきつく掴むと、一旦持ち上げる。モルフォに対して後ろの方を向いたままのミライの両脚をホールドし、一気に真下に向かって引っ張る。すると、ミライの首がモルフォの右肩に乗り、両脚が股裂きになるような形で引き延ばされていく。
「いだだだだだだだ!!!」
「コトリ、使わせてもらうよ!瞬発力増強シューズ!!」
一回限りの瞬発力増強によって勢いよく跳躍。直後、シューズに装着されていたブースターが砕け散って破損し、煙を上げ始める。だがモルフォは構わずミライの右足と腰を掴んだまま吹き抜けの空中へと飛び出す。
「うぎゃあああああ!?ななななな何するんですか!?まさか、まさかこのまま一緒に!?」
「!?あれは!?」
「……モルフォちゃん!?」
「な、何をやってるんでしょうか……」
「だが、何かが起こりそうだ……!だが、あの体勢は!?あんなCQC、見たこと……!」
その光景は、当然ミレニアムだけではなくトリニティの生徒達に見られていた。ミレニアムの事情を知る生徒達はまだ、あれがゲーム開発部が追っていた主犯なのだと気付けるが、何も知らないトリニティの生徒からしたら困惑しかない。そんな中、彼女に救護されていたがベッドを運び出したせいで目覚めていたコトリがここが出番だと目を輝かせる。
「……まさか、ここに落ちてくる気ですか!?」
「―――!?あ、あれは!!まさかブレーンバスター!?いやしかし、あんなロックは見たことがありません!!あれはただのブレーンバスターではありません!両足をロックすることで股裂きだけでなく、背骨、首、股の三ヶ所を同時に痛めつけることができる凶悪なプロレス技に昇華されています!!」
「ミレニアムバスター!!!」
そして、人を駄目にするベッドに、モルフォは尻もちをつくように着地する。モルフォ自身への衝撃は人を駄目にするベッドのクッションと衝撃吸収力によって大きく殺されているため彼女自身へのダメージはそこまで大きくはない。しかし、同じように衝撃が殺されたとはいえミライの首はモルフォの肩に乗っており、そこはベッドより当然堅い。そこから来る衝撃は、そして落下の勢いそのままに脚を下へと引くことになったため、首、背中、股、その全てにかかった痛みにミライは、
「ああああああああああ!!!!」
悲鳴をあげ、意識を失ってしまうのだった。