転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
ミレニアムバスターによって叩きつけられたミライ。完全に意識を失った彼女が連行され、一時は騒がせつつも、表向きはなんかミレニアム生が祭の雰囲気に当てられて弾けた結果鎮圧された、その程度の出来事にされて騒動はほとんどが未然に防がれた。しかし、モルフォ達、今回の一件に関わった主だった面々はセイアも含めてセミナー室に赴いていた。
「……皆、お疲れ様。おかげで危機は未然に防がれたわ」
「そういえば……ビッグシスターアルゴリズムっていうのは何なんですか?ミライはそれを狙ってたみたいですが」
「!?何故彼女がその存在を……?」
そんな中、ミライの口にしていた言葉が気になり口にするモルフォ。だがその名を聞いたリオは驚いたような表情を浮かべてしまう。ビッグシスターアルゴリズムとはそれほどの代物ということか。
「おいリオ、それは一体なんだ」
「……秘密裏に作ってはいたけど、事実上封印されていたアルゴリズムよ」
「……内容は聞かねえでおいてやる。なんであいつ、そんなものを欲しがってんだ?」
どうせ聞いても絶対やばい内容しか出てこないだろうと察したネルがビッグシスターアルゴリズムの詳細については問わず、ミライはどうしてそんなものを欲しがったのか。いや、そもそも。
「……私達は聞いたことないんだけど……そんなものをミライせ……ミライはどうやって知ったんですか?」
「わからないわ……知っている人なんて私と……百歩譲ってヒマリぐらいのはず。一回も世に出したこともなければ使用したこともない。あれがある場所だってデータセンターの奥、図面上には存在しない区域。常識的に考えて、ミライがビッグシスターアルゴリズムを知ることはまずありえないのよ」
「……ミライ先輩の裏に何かがいる、ということですか」
ユウカの指摘にリオは普通ならばありえないと首を横に振る。ノアが考えられる可能性を指摘するが、そこは今の意識を失ったまま連行されているミライが目を覚ましてからということになるだろう。
「ビッグシスターアルゴリズムは処分するわ。どうせ使うことはないし、残しておくだけミライのように新たな火種を産む結果になりかねない」
「……疑似科学部の事を考えると、やっぱりお金目的じゃない?」
ミライの目的について、チヒロが疑似科学部のやってきた詐欺商法の数々を踏まえて挙げていく。ヘルメット団を雇ったのも、そのための投資といったところか。
「ふーむ、ミレニアムEXPOで暗躍していたその全てが私達の意識を逸らすためのカモフラージュ。本命はこのプログラムで売って金稼ぎを、か……ふぅ。金を稼ぐこと自体は否定はしないが、もうちょっと自分達の力でやってもらいたいものだね」
そして関係なさそうなミレニアムEXPOの騒動も陽動であると推測できた。そのために巻き込まれた人たちはご愁傷様といったところか。ウタハの発言に皆同意するように頷くと、
「ふう……色々問題はありましたが、ひとまずこれで解決ですね。後はセミナーの方でどうにかできる範囲だと思いますので、皆さんはミレニアムEXPOの方に戻ってください」
「ま、そうなるか……つってもやること変わんねえ気はするが」
「元々問題が起こった時の対処要員ですから私達。モルフォ、一緒に回りませんか?」
「あはは……セイアさんがいるから今日はね」
「トキ、あなたはネルと一緒に残ってもらうわ。別件で頼みたいことがあるの」
「むぅ、わかりました」
ユウカの言葉を聞き、リオに言われて残ったネルとトキ以外の面々が皆セミナー室をぞろぞろと出ていく。モルフォもセイアを見る。
「じゃあセイアさん、改めてミレニアムEXPOを見て回りますか」
「そうだね。色々と騒がしかったが、まあこういうのも悪くはないものさ。それに……」
「?」
「……いや、今はまだ言っておくのはやめておこう。後で二人きりになった時に言わせてもらうよ」
「そうですか?わかりました」
そして何か言いたそうにしているセイアを連れて、モルフォは出ていくのだった、
★
「……私は何の活躍もしていないじゃないか!!」
「協力してくれたじゃないですか。最後とか……」
「……別に私がいなくても君達でどうにかしていたんじゃないかい?」
自販機で購入した飲み物のストローを咬みながら休憩スペースで愚痴るセイアの姿がそこにはあった。他のゲーム開発部の面々がブースに戻り、セイアと二人きりになったモルフォはそんなセイアを見て苦笑する。
「でもセイアさんがいたおかげで頭数は足りた部分はありますし……そもそもトリニティのお偉いさんが見ていて問題なしと判断しているって事の証明にもなりますからセイアさんはいてくれただけでも仕事をしてくれていたと言えるんじゃないです?」
「しかしね……それは極端な所私がいなくても別の誰かでもいいってことじゃないかい?それこそミカがいたとするならあの犯人をあそこになんか出さないだろう。その前に一撃KOさ」
「まあ、それは……」
事件を解決したのはいいものの、その後になって冷静になったセイアは今回の一件、別に自分がいなくても問題なかったのではないかと考えてしまっていたようだ。ではなぜ自分が関わることを許されたのかといえば、それは単純にティーパーティーのセイアが疑惑を持ったままであるなら事情を伝えて把握してもらいその上で黙ってもらった方が都合がいい、ぐらいのものでしかない。
よくよく考えてみれば今回荒事に関して対応していたのはほとんどネルとトキであり、セイアはモルフォと問題ごとに当たってるように見えて、万が一があっても他の生徒達と一緒に当たればどうにかなる所にしか放り込まれていない。気遣いと言われればそれまでだが、セイアが求めているのはそういうものではないのだ。
「別に危険なことに自ら首を突っ込みたいというわけではないさ。ただ……良くも悪くもスリルというものは充実感を与えてくれるものだよ。こんなことを言ったらナギサは怒るだろうがね」
「それあの時の事言ってます……?やめてくださいよ、またクズノハさんに会いに行くとか言い出すのは」
「それもそれで面白そうだが安心したまえ。儀式を使わなければ会いに行けない、なんて手段は取る気はないとも」
「それを真に受けると毎回アツコをちらつかせないといけないとかいう恐ろしい事になりますからね」
モルフォとの話で少しだけ機嫌が治ったようだ。不満げな表情に笑みが浮かぶ中、モルフォのスマホに着信が入る。
「はい、もしもし……え?危険な展示品の回収?はい……はい、わかりました」
それはリオからの指示。ミレニアムEXPOに展示する展示品の中で危険な技術が使われている、といったものを回収してほしいという内容であった。無論、ミレニアムからすればそんなに大したことの無いものが多かったりするのだが、今はトリニティの生徒達もいる。そんな状況でこれはさすがに展示できないだろうというものを秘密裏に回収してほしいと頼まれたのだ。
無論、差し止めるだけならセミナーから指示を出せば一発なのだろうが、そうなると組織が動くせいで余計に問題が大きくなる可能性もある。それはリオとしても望むところではないのだろう。と、
「……どうやら、まだ終わらないようだね?」
「せ、セイアさん……一応真面目な話なんですが」
ふと、ニヤニヤとこちらを見てくるセイアに気付く。不完全燃焼気味のセイアからすればこんな美味しそうな内容、当然食いつかないわけがないのだろう。
「……ええ、まあ、はい。その、セイアさんも……あ、はい」
ダメ元でリオにセイアを同行させることの是非を問うと、意外や意外、リオからの回答は危険のない範囲内で許可をするというものであった。だが、セイアが既にミレニアムEXPOの裏側を把握してしまっていることを考えると、万が一ここでセイアの介入を拒否してばらされたりトリニティとミレニアムの関係に影響が及んだり、みたいなことを考えたのかもしれない。
「わかりました。セイアさん、一緒に行きましょうか」
「ふっ……そうこなくてはね」
そしてモルフォの言葉にセイアは待ってましたと言わんばかりに席から立ちあがるのだった。
★
「モルフォ、あっちの方に行けばばれないんじゃないのかい?」
「わかりました」
それから少しした後。ドローンが飛び回り警備をしている薄暗い通路の中を二つのダンボール箱が動いていた。実際は、ダンボールを被ったモルフォとセイアだ。
「……ふふ、いいじゃないか。このバレるかバレないかのスリルもね」
冷や汗を流しながら、セイアはダンボールの中で笑みを浮かべる。ドローンたちは優秀だ。奴らの視界に入った状態でダンボールを動かしてしまえば、それだけでバレてしまうことだろう。だからこそ、この潜入調査が楽しくてしょうがない。尤も、やろうとしている内容自体は真面目な任務なのだが。
「とりあえず、目的地の倉庫に急ぎましょう」
「ああ……よし、今なら行けそうだ」
セイアは今ならドローンの目を盗んでいけそうだと何となく理解し、モルフォを誘導する。そして、ドローンの視界がこちらに向いたところでモルフォとセイアは止まる。これでドローンから見ればただのダンボールにしか見えないことだろう。
(というかこのダンボール、一体何でできているんだ……)
とはいえ、それだけで誤魔化せるのはカメラだけ。センサーなどはそうはいかない。こんなところの警備に回されているぐらいだ、赤外線やらといった代物だって仕込まれているだろう。しかし、このダンボールはそういうセンサー類が相手でも太刀打ちできる特別製なのか、二人はダンボールを被ることでそれを無力化していた。
「……ふぅ。やっとたどり着いたね」
「随分手慣れてますね……こういう潜入とか」
「これでもミネやナギサの目を盗んで……いやなんでもない。これはオフで頼むよ」
「やっぱり慣れてるんですね……」
そしてドローンの目を盗んでいったセイアのアシストもあってやっと目的地の倉庫に辿り着く。そしてモルフォと共に問題の展示品を漁り始める。そして遂に問題の一品を見つける。
「これですね」
「なんだいこれは?」
「えっと、物体を巨大化させる銃ですね」
「……巨大化?」
それは、銃のような形状をしていた。形状はまあいいのだが、問題はその効力だ。物体を巨大化させる、そう聞いてセイアは一瞬聞き間違えたかと首を傾げてしまう。
「……きょ、巨大化か。成程確かに……いや、こういうのをロマンと言うのだろうか?まあ、ロールケーキがホールケーキぐらいの大きさになると考えればナギサは好みそうだが」
「……そんな単純なものじゃないですねこれ。触れ込みはイチゴを数メートルに巨大化させると」
「うん……うん……!?」
当初セイアが考えていた効力も可愛いレベルだ。イチゴ程度のサイズが数メートルとなれば、何倍もの質量とサイズになるのか予想もつかない。
「……も、もしもだがそれが人に向けられたら?」
「……だからこそ、なんでしょうね……いや、こんなの生き物に使ったら何が起こるかわかりませんが……巨大化させるものによっては大変な事になりそうですね。多分……虚妄のサンクトゥムの時にヒマリ先輩がやってたカイテンジャーの巨大化を他の生徒が実用化しようとしたんだと思います」
「……で、実際できるのかい?」
「……見たところまだ実用化には至ってないようですね……多分これで展示して出資者を探そうとしているんじゃないですか?」
「そういうのもありなのかい?」
「まあ、そうですね。とりあえず今日はこんなところでしょうか。セイアさん、また何かあったらよろしくお願いしますね」
「ふっ……ああ、その時はバッチリ任せたまえ」
巨大化装置を回収する。そして倉庫の中にある他の回収品も探しながら、セイアとモルフォはこの日の仕事を終えるのだった。
★
「へぇ~、ここがミレニアムかぁ。こうして来たのは初めてだけど随分と騒がしいんだね」
「ミカは力が強いんだ、あんまり暴れないでくれたまえよ。ここにあるものは皆デリケートなのだから」
「ちょっとセイアちゃんそれどういう意味?」
ミレニアムEXPOは一週間続く。激動の初日が終わった翌日。再びミレニアムに赴いていたセイアの隣にはミカの姿があった。元々、ミカもミレニアムに来たがっていたのだが、諸々の事情や忙しさもあってそれはできなかった。その間にセイアが代表者として行くことになったため、ミカはあくまでトリニティの一生徒として来ていた。
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。ゲーム開発部のブースに行こうじゃないか。ミカ、君にはそれがお似合いだ」
「結構評判良いみたいだし楽しみじゃんね」
また何かがあればセイアにも手伝ってもらうかもしれない。そうは言われたものの、今に至るまでリオやモルフォからそれに関する報告はない。そう何度も問題が起こっても困る、と言われればそれまでではあるが。そんなこともあって一先ずは初日にはできずにいたミレニアムEXPOを楽しむという当初の目的を遂行することにしていた。
(結局昨日はやれず仕舞いだったからな……)
「……って、何あれ?」
「うん……?」
だが、ゲーム開発部のブースに向かおうとしたその時。セイアとミカは謎の集団を見る。そこでは何故かヘルメット団がエクササイズをやらされている光景があった。
「……え?ミレニアムってこんな肉体派なことやってるの?」
「いや……私にもわからないね。というかあれは」
「……えっ、なんでハスミちゃん?」
ヘルメット団の中に何故か体操服のハスミの姿もあったのに気付き、ミカが思わず二度見してしまう。ハスミは時折何でこんな奴らと……と言わんばかりにヘルメット団の方を見るのだが、
「集中力が乱れています!!」
「は、はいぃっ!?な、なんかきつさが全然違うんですけど……!?」
その度に彼女達のエクササイズを監修しているスミレによって注意されてしまう。他のヘルメット団たちも顔こそ見えないものの全身をがくがくと震わせており、スミレの被害者なのだろうということが理解できる。理解できるのだが、スミレを知らない二人からすれば珍妙な光景にしか見えない。
「ねえねえ、これ何やってるの?」
「無論、肉体トレーニングです!……む!?」
「え?何?」
スミレに問いかけるミカとセイア。スミレが対応していると、ミカを見る。ミカの体をじっと見ていたスミレだったが、ふとミカの両肩をがっしりと掴む。
「えっ」
「いい体をしていますね。あなたも是非トレーニングに参加しませんか?」
「ええ?いやそういうのはちょっと―――ほ、ほら!セイアちゃん運動不足でしょ?セイアちゃんの方が……」
「は?…………ミカ、私はミネというかかりつけの相手がいるのを忘れてないかな?彼女の判断なしに運動やらトレーニングは行えないよ?」
このままスミレの好きにさせてはいけない。このままでは大変なことになることを本能的に察したミカはたまらずセイアを身代わりにして離脱しようとする。ミカの意図を即座に理解したセイアは一瞬呆気に取られるも即座にミネの名を出して逃れようとする。
「むう、そうでしたか……それは致し方ありませんね」
咄嗟に口に出た理論だが、かかりつけ医がいると言われたスミレは納得して引き下がる。が、そのせいでスミレの矛先が完全にミカに向けられてしまったようだ。
「えっ、セイアちゃん?」
「ミカ……君も書類仕事やらなんやらで体中凝っている事だろう。これも良い機会だと思わないかい?ああ、私は友人に会いに行かなければならないからね、これで……」
「さあ、こちらに!!」
「セイアちゃん!!」
セイアがそそくさと立ち去ろうとする中、スミレがミカの肩を掴み、引きずり始める。ミカはたまらず抵抗しようとするのだが、
「み、ミカ様……!?まさか、ミカ様もこのトレーニングを……!?」
「は、ハスミちゃん……!?」
ハスミがミカの姿を見る。助けを求めるようなその目を前に、ミカも逃げるに逃げれず、
「セイアちゃん!?裏切ったの!?私を裏切ったの!?セイアちゃあああん!!」
悲鳴をあげながら逃げるセイアの背中に呪詛を吐きながらスミレの過激なトレーニングに連れていかれることになる。そしてそれからスミレの激しいトレーニングに付き合わされ、ヘルメット団は勿論、ハスミも息が絶え絶えになり、ミカも大粒の汗を流し苦しそうな表情を浮かべていた、そんな中であった。
「スミレ先輩……その人、ティーパーティーの人なんですが。なんでトレーニングやってるんです?」
「何をしているんですか……」
そこにモルフォとケイが現れる。二人は機材のようなものを持っており、ブースに移動しようとしていたようだ。
「あ、あの子は……」
「あ、あれ……確かモルフォちゃんだっけ……なんでここに……」
「あのヘルメット団は昨日の……スミレ先輩に捕まってしまったようですね。モルフォ、彼女に捕まってしまえばあなたもどうなるかわかりません。さっさと行きましょう」
「だけど……」
モルフォの姿を見つけたハスミとミカが少し驚いたような視線を向ける。しかし、ケイがモルフォのジャケットの裾を引っ張りながら触れないでおこうと進言する。このまま行かれてはまずいと即座に判断したミカが咄嗟に声を張り上げる。
「モルフォちゃん!助けて!!」
「……スミレ先輩、あまり強引にトレーニングをやらせるのは……ミカさん嫌がってるみたいですし、その人ティーパーティの人なので別の用事で来てるかもしれませんよ?」
「む……そうなのですか。しかし……これでは空きが出てきてしまいますね」
「……そういうことなら、今は時間があるので私が付き合いますけど」
「本当ですか!?」
「いいんですかモルフォ!?」
ミカからのSOSを聞き、モルフォが救いの手を差し伸べる。不満げなスミレにモルフォが自分が代わりにやると言い出したのを聞き、ケイが驚きを露わとする。
「まあ、私の担当までまだ30分ぐらいあるし……セイアさんはもうついてそうだけどそれぐらいなら別に」
「……はあ、わかりましたよ」
モルフォが持っている機材を手にしてケイが立ち去る。その後ろをミカが膝を震わせながらセイアに文句の一言でも言いに歩き始める。そして残されたモルフォはジャケットを脱ぎ捨てると、
「やはり引き締まっていますね。私、実はこの機会を先日から待ち望んでいたんですよ……」
「そうは言われても私、体力ある方じゃありませんけどね。ネル先輩とかの方がずっとありますし」
「では体力をつけましょう!さあトレーニングを開始します!!」
その後、三十分ぐらいしてケイが慌ててモルフォを回収しに来るまでモルフォはスミレのトレーニングに付き合わされるのだった。
★
「で、何がどうなってるの?」
そしてゲーム開発部のブースに来たモルフォが見たのは、二つの筐体に横並びで座っているセイアとミカが無言でゲームに興じている姿だった。と、ミカの方の画面にGAME OVERの文字が出現する。
「ああ!また負けた!!」
「ふっ、その程度の腕前ではハイスコアなんて夢のまた夢だよ」
「セイアちゃん!!」
「さっきミカさんがスミレ先輩に捕まったとかで凄いセイアさんのこと恨んでて」
「まあきついからね」
「モルフォも三十分ぐらいやらされてましたけど大丈夫なんですか?」
「んー、まあ短時間なら……?」
そこにケイに助け出され、ジャケットを脱いで慣れた手つきでネクタイを外し、ボタンを一つ外して汗をタオルで拭きながらモルフォがやってくる。モルフォの目の前ではミカがプルプルと震えながらレバーを握っており、その隣ではセイアが涼しい顔をしていた。
「やあモルフォ、待ってい―――」
「あっ、モルフォちゃん!助けてくれてありがとうね!いやぁ大変だったよ……今も膝プルプルでさあ」
と、セイアの方もゲームが終わり、次の人に順番を明け渡したところでモルフォに気付く。しかしセイアがモルフォに駆け寄ろうとする前にミカが近づいていき、モルフォの両手を握る。
「ミカ?」
「セイアちゃん酷いんだよ?私のこと囮にしちゃってさ?もう私だからまだよかったけどこれナギちゃんだったら倒れてたっておかしくないんだから」
「ミカ!あんまり変な事を言わないでくれないか!」
慌ててミカを止めようとするセイア。しかし、ミカは止まらない。モルフォへのセイアの愚痴が止まらない。そんなミカを見ながらモルフォは苦笑しつつ対応する。
「えっと、とりあえず他の人達もいるのでそこらへんは人の耳に入らないようなところで……」
「えー?事実なんだけどなー、我慢しないといけないの?」
「いえ?別に言いたいことはいくらでも言っていいと思いますよ?でもいうなら好きなだけ言える場所で言った方が鬱憤も晴れるんじゃないです?」
「あはは、モルフォちゃんほんと口がうまいねー!」
「ぐぬぬ……」
楽しそうにモルフォの手を握り続けるミカ。その様子を見ながら、ミカの言っていることは事実であったためにセイアは黙ったままプルプルと体を震わせていたが、
「セイアさんもどうでした?ゲーム」
「む?あ、ああ……それは楽しかったとも。凄く満足したよ」
「それはよかったです」
モルフォにそう言われてセイアも満足したように笑みを浮かべる。その様子を見て、モモイ達も手応えを感じたようにぐっとガッツポーズをすると、
「そうだ!そろそろ攻略情報とか出してみる?」
「SNSとかだとそれなりに出てるみたいだしいいんじゃない?」
次の一手を考え始める。元気だなぁ、と思いながらモルフォが並んでいる生徒達の方を見てみると、コユキやマキだけでなく補習授業部やら放課後スイーツ部といった面々も二校の生徒達の中に紛れて並んでいた。予想以上の大盛況である。これがかつて部の存続すら危ぶまれていたゲーム開発部と聞いても誰も信じないだろう。
なお、この後暴走するメカワニをネルやミカが物理的に叩きのめしたりするのだが、それはまた別の話。