転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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夢が残した足跡(ゆめが見る未来)
爆発と蠢く影


 

「……?」

 

真昼時。雲一つない青空の下、休日を謳歌するように部屋でゲームをしていたモルフォ。部屋には彼女以外の人物はおらず、同居人のシロコ*テラーもこの日は外に外出していた。

 

「……ギブド狩りももうすぐ終わりそうか」

 

一人だけならばと普段やらないような作業をやっていたモルフォ。彼女がやっていたのはゼルダの伝説ティアーズオブキングダム。このゲームでは魔物の素材を色々な用途に使えるのだが、その中でも有益な素材としてギブドというアンデッド型の魔物がいる。この魔物はあるタイミングであれば無限湧きする場所が存在しており、そこにトラップを構築、定期的にリンクが素材を回収し、ギブドを倒すのは自作のトラップに任せるという半自動稼ぎを行っていた。

 

「この骨がいいんだよね……まあ、さすがに最後までやるとしたら余るだろうし、カンストするまで稼ぐ必要性は正直ないだろうけど」

 

道具の最大所持数である999個までギブドの骨を集めるモルフォ。ここまで集める意味があるのかと言われると、そんな意味はない。半分、いや四分の一もあれば余程雑に使用するということもなければプレイ中は最後まで持つ。だがこういうのは、稼ぐのが楽しいのだ。その後素材が余るかどうかについては完全に別問題である。

 

「……?」

 

と、その時だった。インターホンが鳴らされた音にモルフォはプレイを中断する。とはいえ、自作トラップを用いた半放置プレイだったので別に席を外すこと自体は問題ない。むしろ稼ぎの時間を稼げるので別の用事自体は割とどんとこいだ。だが、

 

「……誰だこの人?」

 

カメラで見ると、そこには金色の髪に黒い眼帯を付けた謎の少女が立っていた。黒を基調としたどこかの制服を着たその少女は、最初のインターホンで反応がなかったからか、さらにもう一度、今度は二回連続でインターホンを鳴らす。

 

「……部屋までくるなんて。しかもミレニアム以外の生徒なんて珍しいな……」

 

何か、大事な用事があるのだろうか。わざわざ自分の下にわかってきたということならそれだけのものなのだろうと考え、扉を開ける。

 

「どちら様ですか?」

「……その前に確認したい。お前が夢見モルフォだな?」

「そうですが、何の用ですか?」

 

扉を開けてモルフォの姿を見たその人物は、冷酷な瞳をモルフォに向ける。知らない人物を相手に警戒心こそ浮かんだものの、ひとまずはそれを内心に閉じ込めて対応する。

 

(何だろう、この違和感は)

 

だが、目の前の少女を観察すればするほど、モルフォは嫌な違和感を感じていた。その真意がどこにも見えない。表情や目などから意図を探ろうにも、何も見えないのだ。ひとまずそれを探るためにも話をしようとしたその時だった。その少女は一冊の資料を取り出してモルフォに見せてくる。

 

「……?」

 

これを読め、ということなのだろうか。モルフォが目を通し始めたその時。

 

「!?」

 

突然モルフォの口元に布を当てられる。次の瞬間、モルフォは刺激臭と共に意識が一瞬途絶え掛けると共にドゴォ!!という鈍い打撃音が起こる。布が口元から離れるが、朦朧とするモルフォの意識は止まらない。

 

「これ、は……」

 

反射的に拳を勢いよく突き出す。消えゆく意識の中、ぼやけてくる視界の中モルフォが見たのは、壁に叩きつけられ、苦しそうに腹部を両手で押さえて蹲り、ゴホゴホと咳をする少女の姿。だが少女は痛みに顔を顰めながら立ち上がると、力が完全に入らないモルフォの体を持ち上げると寮を出て行く。そして、

 

「……ふん、手間をかけさせてくれたな」

 

完全に意識が消える直前、モルフォは大爆発によって吹き飛ぶ自分の部屋があった場所を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?寮が爆破された?」

「ええ、昨日そんなことがあったようですよ」

 

翌日。ゲーム開発部の部室でゲームをしていたモモイ達は、遊びに来たコユキからそんな話を聞かされていた。

 

「寮ってモルフォちゃんの部屋があったよね?色々あったと思うけど大丈夫かなぁ」

「詳しい被害は調べているようなんですけどねぇ。修理大変そうですね」

「なんで爆破されたんですか?」

「さあ?まあ誰かが爆弾でもうっかり起爆しちゃったんじゃないです?」

「もしくは喧嘩したとか」

 

モモイ、ミドリ、コユキ、アリスの四人がゲームをプレイし、ユズとケイがそれを見ている。寮が爆破されたことは気の毒だが、まあその程度はそこまで大きな問題ではない。もしモルフォの部屋が巻き込まれていたら寮が修復するまでは家には帰れないのはかわいそうだ、ぐらいしかこの件について思うことはない。

 

「……しかし、モルフォはまだでしょうか?」

「モルフォならもうとっくに来てもおかしくないはずだけど……何かあったら連絡するのに何もないよね。スマホ壊れたとか」

 

だが、それより気になるのは今だにモルフォが部室に姿を現していないことだ。

 

「まあ爆発に巻き込まれたとなったら確かにその可能性はありそうですね……まさか病院に送られたりしませんよね?」

「まさかぁ」

 

ケイとユズの話に、モモイが呑気に言う。二人もそういうことはないだろうし、百歩譲ってそうなったら病院にいるのだから何かしらの形で連絡の一つぐらい寄越すだろうと考える。が、軽く考えていた六人の下に、ユウカが部室の扉を開けてやってくる。

 

「うわっ!?ゆ、ユウカ先輩!?なんでここに!」

「また遊びに来てたのコユキ?って、そこは今はどうでもいいわ。モルフォって来てる?」

「え?モルフォちゃん?」

「まだ来てないけど……」

「……やっぱり」

 

少し表情を険しくしながら部屋に入り、きょろきょろと部屋の中を見渡すユウカ。そしてモルフォの姿がないことを確認し、溜息を吐いてしまう。その様子に六人が顔を見合わせると、

 

「あの、モルフォに何かあったんですか?」

「……昨日、寮の爆破があったことは知ってるかしら?」

「知ってる」

「モルフォの部屋も巻き込まれた……いえ。爆発が起こったのはモルフォの部屋なのよ」

「「「「「「!?」」」」」」

 

ユウカからとんでもない事実が伝えられ、六人は目を見開く。では、モルフォがここにいないのは爆発に巻き込まれて大怪我をしてしまったのかと。

 

「じゃあ入院!?」

「その上で連絡が来ないということは……まさか、まだ起きていない……!?」

「す、すぐに病院に―――」

「……病院だったら、よかったんだけどね」

「……え?」

 

すぐに病院に行こうと準備をし始めるゲーム開発部。だが、それを制止するユウカの表情は浮かない。一体何事なのかとアリス達がユウカの顔を覗き込む。

 

「……確認なのだけど、昨日の昼あたりから今まで、連絡を誰か受け取ってる?」

「い、いえ……」

「……落ち着いて聞いてちょうだい」

 

顔を覗き込まれたユウカは最後の確認をするかのように質問する。そして、ある意味予想していたその返答が届いたことで一度目を閉じて溜息を吐くと、改めてその言葉を口にするのだった。

 

「モルフォは昨日から行方不明になってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

「お邪魔しに来たよ~」

 

アビドス。便利屋68の事務所に対策委員会の五人が訪れていた。だが、そこにいたのは疲弊した様子の四人であった。

 

「あ……よく来てくれたわね。待っていたわよ、あなた達をね」

「……はぁ、今は取り繕わなくてもいよ」

「だ、だけどこういう時こそ毅然とした対応を……っ」

「……って、怪我してるの?」

 

アルが不敵な笑みを浮かべて対応しようとするも、カヨコの呆れた言葉に途端に表情を崩す。しかしすぐに痛みに顔を顰める彼女を見て、セリカが怪我をしていることに気付く。見れば他の三人も同様だ。ガーゼや絆創膏を貼ったりして怪我を治療した痕が確認できた。

 

「まあ、ちょっと仕事でね~、といっても最後にポカやらかして大爆発に巻き込まれちゃっただけなんだけど!」

「だけで済むような話じゃないような……」

「相変わらずだねぇ。でも怪我は大したことなさそうでよかったよ」

「ええ、こっちはまぁ明日には完治するわよ」

「……もしかしてこの怪我で私達呼ばれたの?」

 

とはいえ、怪我そのものは大したことがないようだ。が、この程度で自分達を呼んだのかとシロコが首を傾げていると、そういうわけじゃないとカヨコは首を横に振る。

 

「……ちょっと確かめたいことがあって」

「確かめたいこと……ですか?」

「ええ、昨日の夜の話なんだけど……私達、運び屋を護衛する依頼を受けていたのよ」

「……あっ、ちなみに運んでるものは別に怪しいものじゃないよ。普通の弾薬とか爆弾だからね!」

 

五人を呼んだ理由を説明するため、アルは昨日の仕事について話し始める。途中でムツキやカヨコが補足を入れつつ話を進めていくアル。荷物を運送する人達をヘルメット団やら不良やらの襲撃から護衛するという依頼。別にそこ自体におかしい所はなにもない。

 

「でも、そこで私達は襲われたの」

「ヘルメット団に?」

「そんな可愛いものじゃないわ。しかも襲ってきたのはたった一人だった」

「へぇ、一人でアルちゃん達に挑んだんだ……勇敢だねぇ」

 

そしてその物資を狙って襲われる事自体もまぁおかしいわけではない。ただ異質だったのは、襲撃者が一人しかいなかったことだ。

 

「……でも便利屋68がそう簡単に負けるとは思わないけど」

「いやまぁあいつには負けてないわよ?負けてないんだけどその、ね」

「……荷物が爆発してね。戦う意味がなくなったからそいつはいなくなった」

「うぅ……ごめんなさいごめんなさい」

「は、ハルカは何も悪くないわよ!戦ってる時にたまたまそうなっちゃっただけだから!」

「……何があったか大体予想できた気がするわ」

 

じゃあそのたった一人の襲撃者に負けたのかと言われるとそういうわけでもないらしい。確かに仕事自体は失敗したが、それそのものは便利屋68の自爆のようである。おそらくハルカが荷物を起爆させてしまい大爆発。その大爆発に四人は呑み込まれ、この有様になってしまったようだ。

 

「凄かったよねー、あの爆発。襲ってきた人もめっちゃ驚いて慌てて逃げ出しちゃったし」

「……その時の襲撃者、アビドスの制服を着ていた」

「「「「「?」」」」」

 

このままでは話が脱線すると判断したのだろう、カヨコが前提となる話もそこそこに本題に入る。だが、襲撃者がアビドスの制服を着ていると聞いて五人は困惑したように互いの顔を見合う。

 

「皆、昨日の夜なんかしてた?」

「いえ……」

「何もしてないけど……」

「私も」

「私もですね……」

「うん、五人ではない」

 

当然、誰も心当たりがない。それはカヨコも認めているのだ。だとすれば、該当する人物は二人しかいない。それは並行世界でアビドスの生徒だった二人。

 

「……じゃあ、もう一人のモルフォ?」

 

シロコ*テラーとモルフォだ。だが、シロコ*テラーは必要とあれば別の格好に着替えたりはするとはいえ、普段は黒いドレスを使っている。今回、便利屋68と対峙したとはいえ、荷物の強奪に際して自分の正体がばれないようにアビドスの制服を使ったのかというと疑問が残るし、実際に交戦したシロコからすればもし本当にシロコ*テラーが相手となれば便利屋68が自爆だけの怪我で済むとは思えない。となれば消去法でそれは行方知れずとなっていたもう一人のモルフォであり、着る服が他にないからアビドスの制服のまま襲撃したのではないかという仮説が成り立つ。だが、カヨコは少し難しい表情を浮かべながら腕を組む。

 

「……」

「うへっ、どうしたのカヨコちゃん」

「いや……確かに銃の形状はスナイパーライフルだったし、社長も見ていたからそれは間違いないと思う。だけど……撃ってる人の身長とか体つきは……モルフォじゃなかった」

「えぇ……?」

 

そして返ってきたのは、それを使っているのはモルフォではないという事実であった。であれば、一体誰だというのか。

 

「……アビドスの生徒で、スナイパーライフルを使っていて、でももう一人のモルフォちゃんじゃない……?」

「心当たりは?」

「……いやぁ、ないかなぁ……」

 

当然、後輩達四人に心当たりなどあるわけがない。であればホシノならば何か知ってるのかと聞くのだが、肝心のホシノも首を横に振って肩を竦めてしまう。

 

「当時最初はまだいた同級生とかでも使ってる人はいなかったし……というか転校しちゃったなら銃はともかくなんでアビドスの制服着てるかもわからないんだよねぇ……これが私も知らない元アビドスの生徒とか言われたらお手上げだよ」

「……そっか」

 

カヨコとしてもある程度は予想していたのだろう。それでも何かしらの手掛かりに繋がったらという思いで確認していたのだろう。

 

(だとすると、あれは……いや、でもそんなこと……あり得るはずが)

「でも、その人の正体がわかったらどうするの?」

「どうもしないわよ?別に私達仕事で戦ってただけだし」

「まあよくあることだしねー、ただ知らない人だったからもしかしたら?って感じ」

 

そして襲撃者の正体は誰にも分らず仕舞いであった。と、ここで事務所の壁掛け時計で確認したアヤネが思い出したように口を開く。

 

「あっ、そろそろですよ」

「そろそろ?」

「あー、実はさ、カイザーがアビドスから撤退し始めたんだよねぇ。それで債権も売り払うことになっちゃって」

「え?そんなことになってたの?なんで?」

「……ウトナピシュティムがなくなったからだね」

 

それは、カイザーがアビドスの債権を手放すという話であった。元々、カイザーがアビドスの土地を手に入れ、アビドスを廃校にすることを目論んでいたのは、全てウトナピシュティムの本船を見つけ、それを手中にすることでキヴォトス征服の足掛かりにするためであった。しかし、先日の一件で肝心のウトナピシュティムの本船は破壊されてしまい、カイザーが探し求めていた兵器は既にアビドスに存在しなくなっていた。その状態で無意味にアビドスに部隊やらを展開するメリットはカイザーになく、既にカイザー自体が過去の失態の数々でかつてと比べて縮小傾向にあるのもあり、アビドス方面の事業などを切り始めたのも自分達を守るための行動なのだろう。

 

「となると、これからはカイザーもいなくなるってことかしら?」

「へー、いいことずくめじゃん」

「借金が消えるわけではありませんけどね……債権を売りに出したということはそれを買ったところが返済相手になるだけですし」

「まあカイザーよりは……?」

「そういうわけだからねぇ、さすがにここでどうこうってわけにはいかないだろうし、私達が学校に戻るよ。先生も来て皆で確認することになってるんだ」

 

対策委員会としてはこの債権の移動先は必ずチェックしなければならない案件だ。ここまで来たのならアル達が許可してくれるならここで確認してもいいのだが、さすがにそういうわけにはいかないだろう。五人が事務所を出ていった後、カヨコは難しい顔をしながら考えていたが。

 

「……気になるな。社長」

「あら、何かしら」

「ちょっと、調べたいことがいくつかあるんだけど。昨日襲ってきた生徒とか、後は……」

 

アルに声をかけながらカヨコはパソコンを開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

混沌。そうとしか言いようがないような謎の空間がそこには広がっていた。生き物の気配すら感じさせないような、そんな異質の空間には、バラバラに壊された額縁のようなものが転がっていた。

 

「……小生のキャンペーンはそろそろ始まりを迎えます」

 

バラバラになった額縁。引きちぎられた絵画を繋ぎ合わせると、それはフランシスだったことがわかるだろう。だが、そんなことはここにいる、黒いローブのような服装を纏った白髪の、そして複数の目を持つ異形な男には関係ない。

 

「今こそ始まるのです。小生の……真のゲマトリア、地下生活者の崇高に至るための道筋が。このキャンペーンを攻略する小生の旅路が……」

 

その男の名は地下生活者。ゲマトリアの一員であった……のだが。

 

「……しかし無様なものです。小生をこのような所に閉じ込めた挙句、生徒に手を噛まれ、先生なる存在に痛い目に遭わされ撤退し、その挙句に滅んだのですから。その末に一度は閉じ込めた小生を解放して再起を図ろう、等と目論むのですから救いようがありませんね、ええ」

 

バラバラの額縁だったものを一瞥し、地下生活者は嗤う。かつて、黒服らによって彼は事実上のゲマトリアの追放を受け、この空間に閉じ込められた。これだけで済んでいたのは、ベアトリーチェのように色彩を呼ぶといった大それたことまではしなかったというのもあるだろう。だが、そんな彼を解き放ってしまったのがフランシスであった。が、解放された地下生活者はフランシスを殺害、残されたデカルコマニーはどこかへ逃げてしまったが、フランシスという人格を殺した以上デカルコマニーに何かができるわけもないだろうと地下生活者は捨て置き、今のキヴォトスがどうなっているかを把握していた。そして遂に、彼の目的を達成するためのキャンペーンが始まろうとしていた。

 

「……さて、此度のキャンペーン、対戦者となるのは先生、あなたです。過去にゲマトリアと対峙し、このキヴォトスに飛来した危機を乗り越えたあなたならば小生の対戦相手としても不足はないでしょう。こちらも準備は整えました」

 

地下生活者が顔を上げる。

 

「今回のキャンペーンで先生、あなたは奇跡を起こすことはできない。何故なら、奇跡という甘い夢を作り出す力は既に小生の手の内にあるのだから。そして、この混沌の領域に辿り着けるものは誰もいません。さあ、頼るものなきあなたはどこまで小生に―――抗えますかな?」

 

嗤う地下生活者。勝利を既に確信する彼が向けた視線。その先には両腕と両脚を縛られた状態で床に転がされた状態で眠るモルフォの姿があった。

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