転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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カイザーコーポレーションと私募ファンド

総会会場。そこは、既に先生達が予想しているよりも状況は悪くなっていた。というのも、そこには一体のスーツに身を包んだオートマタがいた。彼の名はプレジデント。カイザーコーポレーションを統べる長であり、この総会の会場には彼の私兵であるカイザーの戦士たちが銃を手に静かに佇んでいた。

 

「う、うう……」

 

恐怖で縮こまったように静かになるのは私募ファンドの面々だ。彼らもまた、ヘルメット団や傭兵などを雇い、警備としてここに置いてはいた。しかし、カイザーに呆気なく蹴散らされてしまい、彼らは矛を一瞬で失ったことでカイザーの言いなりになっていた。

 

「ど、どうしてこんなことに……」

「どうして、か」

 

そして、その様子を見て縮こまっていたのはネフティスの幹部である執事も同様だ。とはいえ、この様子を見ていたスオウは、はぁと呆れたような表情を執事に向けることしかできない。

 

「全員が抜け駆けを考えていた。ただそれだけの事だろう」

「あなたこそ、私達を裏切った癖に……」

「裏切っていない。ハイランダーの所属だからこそ、ネフティスにはいい顔をしていた。だが私は最初からカイザーに属していた。それだけだ」

「そういうことだ。全ては我々の手の内ということだよ、ネフティス」

 

執事が恨めしそうにスオウを睨むも、スオウの表情は変わらない。むしろ、プレジデントがネフティスを嘲笑うかのように言葉を返す。

 

「さて、これで君達は我がカイザーコーポレーションの配下となったわけだが」

 

ちらと、契約書を悲しそうな表情で見つめる私募ファンドの面々を見る。既にプレジデントはこの総会の真の意味を理解していた。これは砂漠横断鉄道の権利を巡る、そうみせかけておいて実際はシェマタの権利を巡る総会。だが、それだけならば存在を忘れていた契約書の存在を公表する必要性は皆無だったのだ。今日の正午を過ぎればそれだけでアビドス生徒会は権利を消失するのだから。だが、敢えてそれを明らかとしたことで、シェマタの存在を一番知られたくないカイザーに、これは砂漠横断鉄道を巡る一件だと誤認させようとしたのだ。

 

しかし、カイザーはシェマタを知っており、それを手に入れるためネフティスと私募ファンドを制圧。そして私募ファンドの各企業と契約を交わし、彼らをカイザーの子会社として吸収。それにより私募ファンドの代表権限はカイザーコーポレーショントップのプレジデントのものとなり、私募ファンド=カイザーという図式が成り立ったことでプレジデントは堂々と総会に出席することが可能となってしまった。

 

「さて、残り二時間か。何、まだまだ始まるまで時間はあるのだからゆっくりするがいい……一応君達にはいてもらわなくては困るからな」

 

静かに縮こまり、プレジデントを敬うかのように頭を下げる私募ファンドの面々。既にカイザーに負けてしまった彼らは、この場をどうにか凌ぐように、そしてカイザーのおこぼれを得られるように立ち回る必要があった。

 

(……ホシノ先輩、皆……)

 

そんな中、執事に連れられて会場入りしていたノノミは、何もすることもできない自分の姿に悔しさを覚え、拳を強く握る。しかし、愛用のミニガンも取り上げられてしまった今、この数相手では彼女一人でこの状況を打開することもできない。

 

「……何?アビドスと便利屋68?」

「!!」

「……便利屋68……成程、ゲヘナか」

 

そんな中、一人の兵士が通信を聞き、それをプレジデントへ伝える。どうやら、ジェネラル達はホシノ達四人と交戦を開始したようだ。だが、その中に便利屋68がいることを聞き、納得したように頷く。

 

「確かにシェマタの事を聞けばゲヘナは黙ってはいまい。この人選は意外ではあるが……構わん、潰してしまえ。アビドスがここに辿り着かなければ、それだけで我々の勝利だからな」

(なんで、便利屋68の皆さんが……!?)

 

雷帝の事も把握しているのだろう、プレジデントはゲヘナの生徒である便利屋がアビドスに協力している理由をすぐに理解する。だが、ノノミはどういう経緯で便利屋がホシノ達と行動しているのかがわからず、困惑の色が浮かび上がる。

 

「さて、折角だ。外にいる君達の兵も使わせてもらおうではないか。今やカイザーの雇った兵隊だろう?」

「!それは……」

「信頼を回復するいいチャンスだと思うが?」

「「「……」」」

 

プレジデントの言葉に私募ファンドたちは顔を見合わせる。そして、それぞれスマホなどを取り出し、通信を取ろうとする。ここでカイザーに同調し、アビドスを足止めすれば少しは配慮してやると暗に言われたことでプレジデントに媚びを売り始めたのだ。

 

「くくく……さて、アビドス。果たしてこの会場に来れるかな?」

 

慌ただしく動き出す私募ファンド。しかし、その手が固まる。

 

「……何!?シャーレが現れた!?」

「!」

 

一人が零した言葉に、私募ファンドの中に小さくない動揺が走る。プレジデントも少しだけ表情を険しくし、ノノミの顔色が少し明るくなる。

 

(先生……無事だったんですね……!)

「……」

 

私募ファンドがプレジデントの顔色を窺う。だがプレジデントは、一瞬険しくしていた表情を元に戻すと、静かに座ったまま、無言を貫きながら窓の外を見る。ジェネラル達は手練れ、以前はシャーレでの戦闘で後れを取ったものの、あれは対峙していたのが一年生とはいえ精鋭ぞろいのSRTであり、さらに先生がいたからだ。だが今回はその先生もいない。いくら取り巻きもいるとはいえホシノが実力者であろうと、ジェネラルがそう簡単に負けるはずが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、こんなもんだよね」

「う、ぐぅぅ……」

 

場所は変わり、総会会場の旧庁舎も近くに見え始めた場所。そこにはジェネラル達が倒れ伏している光景があった。それを成し遂げたホシノ達四人は、一仕事終えたといった様子で旧庁舎の方を見上げる。

 

「……ってか本当に強いわね彼女……前より強くない?」

「というよりあれが本来の力なのかもね。別の人が盾役をやってたらホシノがフリーになってたわけで。そう思うとぞっとするよ」

「ん……ホシノ先輩は凄く強い」

「よく喧嘩売ろうとしてたわねあなた……こりゃヒナと同じぐらいにはやばいわよ」

「だろうね……」

 

簡単に捻り潰されていたジェネラルだが、そうなってしまった最大の原因は、やはりタンクを止め機動力を解禁したホシノの無茶苦茶な殲滅力もあるだろう。とはいえ、ホシノにばかり目がいってしまうがシロコの稼いだスコアもかなりのものだった。

 

「でもシロコちゃんも前より強くなってるねー、こりゃおじさんが抜かれる日もそう遠くないのかも」

「ん、的確に一人一人潰していくのは大事。それに乱戦ならどの順番で敵を仕留めていくかも考えていけば効率はもっと上がる」

「うへぇ、シロコちゃんが脳筋になっちゃったよぉ」

 

ちゃんと厄介な敵からどんどん順繰り良く仕留めていく、効率を重視した戦い方でホシノに負けない活躍をしたと言えるだろう。カヨコとアルは途中から二人の補佐に入っていたようなものだったが、二人にも被弾したような様子は一切ない。

 

「でも、アルちゃん達も無事そうでよかったよ」

「まあ、ハルカに囮をやってもらって別動隊を分けて一気に仕掛ける、みたいなこともちょくちょくやるからね。四人揃えば当然それが一番だけど、ハルカやホシノが前線に立たなくても別に戦えないわけじゃない」

「これぐらい、便利屋68としては当然の事よ……って!あれは!?」

 

まだまだ余裕が見える二人、しかしカイザーを攻撃したということはここに長居するわけにもいかないと移動しようとしたその時。遠くの方から車両が走る音や多くの人達が走ってくる音が聞こえてくる。

 

「まさか、バレた?」

「んー……なーんか嫌な予感がするなぁ。多分これ、ヘルメット団とかブラックマーケットの傭兵とかだとは思うんだろうけど……こいつら潰したことがバレるのはさすがに速すぎるし」

「……もしかしたらカイザーは私募ファンドを取り押さえたのかもね。だからこいつらは実質カイザーの……いや、私募ファンドの媚び売りってところか……藪蛇だったかな」

「ええ!?これからどうするのよ!旧庁舎に突っ込む!?」

「……!」

 

慌てながらアルがカヨコとホシノに次の行動をどうするか聞く。カヨコが考え込んでいると、ホシノが人の足音を耳にしてショットガンをそちらへ向ける。遅れてシロコもアサルトライフルを路地裏へ向けるのだが、

 

「……!?ホシノ先輩、あれは……」

「!その銃……なんでここに?しかも……」

 

そこには見覚えのある巨大な銃を持つ少女を含めた、ヘルメットを被った四人組が立っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

弾丸や爆弾が飛び交う戦場。先生が忙しなく指揮を飛ばす中、セリカ達は今も激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「敵がちょっと多すぎるんだけど!?」

「あはは、倒しても倒しても次が来るねー!?」

「笑ってる場合じゃありませんよ!?」

 

私募ファンドが用意した兵は、旧庁舎を中心に東西南北に道を封鎖する形で展開されている。そのため戦力だけならば四分割されてはいるのだが、そのあまりの量に先生達はまるで進行できずにいた。

 

「くっ……こりゃ予想以上だぞ……!?」

「さすがに消耗戦を強いられるのは苦しいですね……本当にこれを素通りしていったんですね先に行った人たちは」

『どうしよう……』

 

立ちはだかる敵を倒しながら、サキとミヤコも思わず毒づく。遠くの遮蔽物からミユも指揮官などを狙撃し仕留めていくのだが、まるで畑から兵士が取れるかの如く戦力がどんどん集まってくる。先生達が現れたのを知って、各地に散っていた戦力が一点へ集まりつつあるのだ。

 

「ハルカ、突っ込んで!セリカ、戻って!」

「お願いですから早く消えてください!!」

「わわ!?」

 

ハルカが敵陣に突っ込んでいく。嫌な予感を感じて慌ててセリカがハルカの後ろの方へと走り出したのと同時、ハルカは滅茶苦茶にショットガンを乱射していく。それによって敵も次々倒れていくが、その奥から走りながら銃弾を撃ち込んできたことでハルカの体に少なくない弾が突き刺さる。

 

「ハルカ!」

「へ、平気です……!」

「そらーっ!!」

「一旦戻って、ハルカ!!」

 

そこに爆弾が次々と投げ込まれる。ムツキが投げ込んだ爆弾がハルカの周囲を吹き飛ばし、その隙を突いてハルカが一旦戻ってくる。しかし、煙を突き抜けて敵兵が生徒達を仕留めようと走り込んできたのを見て、先生は素早く指示を出す。

 

「セリカ、敵が来る!!」

「ええ!」

 

しかし、先生の指示を受けたセリカが素早く敵兵を仕留めていく。

 

「くそっ、やっぱりシャーレはしぶといな……!!」

「人海戦術だ!人の壁でやつらを止めろ!戦車も持ってこい!!」

 

だが、まだまだ敵の勢いは落ちない。そんな猛攻を前に、さすがにRABBIT小隊達の表情も険しくなっていく。だが、先生にはまだ次の一手が用意されていた。

 

「……今だ!アヤネ、モエ!!」

 

ここまで姿を見せていなかったアヤネとモエ。二人は先生の声を合図としてそれぞれアビドスにあった武装ヘリ、雨雲号とシャーレからRABBIT小隊が乗ってきたヘリに乗って戦場に現れる。アビドスにはいつの間にか雨雲号が三機も配備されており、その内の一機にアヤネが乗り、残る二機を遠隔操作で操縦、シャーレのヘリにはモエが乗り込み、機関砲を叩き込んでいく。

 

『爆弾はないけど、これも悪くないね!』

『皆さん、一気にこじ開けます!突破を!!』

 

四機のヘリの放つ弾幕が人々を薙ぎ払っていく。それによってこじ開けられた道を先生達は一気に突き進んでいく。

 

「くそっ、ヘリだと!?」

「落とせ!落とすんだ!!」

「戦車を―――うわっ!?」

 

人でヘリに抗えないのなら、戦車を使えば。そう誰かが呟いた直後、ムツキが投げ込んだ大量の爆薬が戦車を吹き飛ばしてしまう。

 

「くそっ、さっさと落ちろよ―――!!」

「二人とも脱出を!!」

『っ!?』

『―――あっ、これ無理っ!』

 

が、さすがにここまで大人数が固まってる場所にヘリを突っ込ませれば格好の的にしかならないのも事実。ロケットランチャーがや迫撃砲が至る所から発射され、雨雲号達に向かう。だがそれらが命中される前に、先生が脱出を指示したことでアヤネとモエが扉を開けてそれぞれ飛び出してくる。落下してくる二人をサキとミヤコがキャッチし、墜落した四機のヘリの爆発で相手を食い止めながら先生達はそのまま防衛線を突破して駆け抜けていく。

 

「抜かれた!?」

「くそっ!追えーっ!!」

「悪いけど、追いかけっこは今はなーし!!」

 

爆発から逃れ、追いかけようとする雇われ傭兵達の視線を遮るようにスモークグレネードを何個も放り投げる。それによって視界が完全に防がれた傭兵達は銃を乱射するも、一切の手応えを感じないまま逃がしてしまう。

 

「このまま総会の会場に―――」

 

そして先生達が総会へ一直線に向かおうとした、その時だった。突然別の方向から銃撃戦が始まる音が聞こえてくる。

 

「これは……」

「戦闘!?でも、私達以外に……まさか」

「ホシノ先輩とシロコ先輩!?」

「アル様!?」

「あっ、セリカちゃん!?ハルカちゃんも待って!!」

「私達も向かおう!」

 

ここで戦闘を行う人物は自分達以外にいるとすればホシノ達しかいない。セリカとハルカが戦闘の音がした場所に向かって方向転換し走る。ここは合流を目指すのが先決だと考えて先生達も二人の後を追いかけていく。だがそこにいたのは、

 

「!?あれって……」

「私募ファンドの傭兵と……ハイランダーが戦っている!?」

 

砂漠横断鉄道の権利をネフティスが手に入れるのに合わせてすぐに工事を開始するために現地入りしていたはずのヒカリとノゾミを始めとするハイランダーの面々だった。工事の応援だろうか、五人ほど見ない顔もいたが、

 

「……?」

 

一瞬、彼女達の頭部を先生は二度見してしまう。そこに浮かんでいた見覚えのあるヘイロー。だが、その正体を確認するよりもまずはハイランダーの生徒達だ。

 

「ヒカリ!ノゾミ!大丈夫かい!?」

「あれ!?シャーレの先生!?」

「わー、救援ー」

「た、助けてください!突然私募ファンドの傭兵が……!」

「悪いがハイランダーは見捨てられたのさ。ここで大人しく寝ているんだな!!」

「そうはさせないよ、皆!」

 

傭兵達がハイランダーの生徒達に次々と弾丸を浴びせてくる。ハイランダーの生徒達が慌てて逃げ惑いながらシャーレに助けを求める。その様子を見た先生の言葉を合図として、まずは傭兵達からハイランダーを助けるべく、ミヤコ達が戦闘を開始する。すると、

 

「いたぞ!」

「バカな奴らだ!ハイランダーの奴らごとやっちまえ!」

 

先生達を追いかけて後ろから来ていた傭兵達と挟み撃ちをされてしまう構図になる。二面戦闘を余儀なくされた先生の視線の先に、五つの影が躍り出る。

 

「!君達は……やっぱり!?」

「……ったく、折角の潜入だってのにどんどん大事になりやがって!けどまぁ、これぐらいシンプルな方がわかりやすいってもんだ、そうだろ?」

「ふふ、そうですね。それに先生がいるとは思いませんでした……ご無事で何よりです」

「うんうん、先生なら大丈夫だとは思ってたんだけどね!ぜーんぜんモモトーク読んでくれなかったから心配だったんだよ?」

「一応私達潜入任務中だったんだけどそんなことを……」

「では、もうこんな服は脱ぐということで」

 

そして五人の生徒達がハイランダーの制服を脱ぎ捨てる。そこには、

 

「め、メイド?」

「え!?C&C!?」

「CCC?」

「C&Cです!彼女達はハイランダーの生徒会ではなくミレニアムの特殊部隊……でも、なんでハイランダーに!?」

 

なんと、ネル達C&Cの姿があった。だが、突然正体を現した彼女達の姿にRABBIT小隊らが唖然となる中、ネル達は一気に敵陣に切り込み、次々と敵を薙ぎ倒していく。

 

「オラオラオラオラァ!!」

「先生、こっちは任せてくれ!」

「残りの皆さんの指揮をお願いします!」

「わ、わかった!いくよ皆!」

 

理由はわからないがネル達が合流してくれたことは心強い。これで、私募ファンドの兵隊がいくらいようと、それを真正面からねじ伏せることが可能となったのだから。RABBIT小隊と対策委員会、便利屋の指揮に集中し、先生はこの状況を切り拓きにかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここで、ミレニアムだと?どうなっている……一体どこにそんな伏線が?」

 

その様子を混沌の領域から見ていた地下生活者はまたも困惑の声を漏らしていた。地下生活者は既に、もっと先を見据えるために今は大きな介入を取りやめていた。とはいえ何もしないのも癪なので、ダイスの使用感を確かめるようにプレジデントのアイディアロールを成功させ、私募ファンドの雇った傭兵を全て手中に収めた上で先生達と敵対させるぐらいの小細工はしていたが。

 

「しかもSRT!?何故だ……何故彼女達がシャーレに!?くそっ……彼女達の手によって先生が脱出させられたことで先生は生存でき、小生が二回目に爆破したのはRABBIT小隊のメンバーだったと。そして前もってSRTはシャーレにいたと……無理矢理ですがまあまだいいです……だが何故ミレニアムが!?」

 

ぶつぶつと、先生達と合流したネル達を見て、地下生活者は狼狽えていた。彼から見れば、全く導線が見えないからだ。

 

「何故、何故ミレニアムがハイランダーの生徒に扮してこの総会に介入を?ええい、これもダイスの影響が出る前……強制介入の影響が残っていたということですか……!」

「……皆……!」

「黙れ!」

 

モルフォの顔に希望の色が浮かんだのを見て、地下生活者がイラついたように蹴り飛ばす。肩を蹴られたモルフォは構わず地下生活者を見据える。

 

「……そうやって、相手に暴力を訴えるのがこの空間のプレイヤーの姿だって教えてくれるつもり?」

「こ、このガキ……ふん、ええそうですよ!!その通りです!!何せ小生がルールなのですからねぇ!!」

 

モルフォをバカにするように再び蹴り飛ばす地下生活者。そしてその手にダイスを握り直すと、

 

「まあいいでしょう、今は上位互換のダイスがある。既に自由度も既に確かめましたし……そう、ツキは確実にこちらに向いている。今は小生が無理にあれこれする必要もない……アビドスが落ち着くまでは先生のターンです」

 

不敵な笑みを浮かべる。色々と失態を重ねているがこれらはまだリカバリーできる範囲だ。何故なら自分にはダイスがあるのだから。

 

「……」

 

そんな地下生活者を、モルフォは目を細め、冷静に見据える。そして、手の感覚を確かめるように握りしめていた手を開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ミレニアム。修復の進む学生寮を前に憔悴しきったシロコ*テラーの姿があった。

 

「見つからない……モルフォ、どこ……どこに行ったの……?」

 

ミレニアムにも戻らず、必死に怪しい所にワープし続けて探し回っていたシロコ*テラー。しかし、数日にわたる探索も成果を出せず、もしかしたら戻ってきているかもしれないと、藁にも縋る思いで彼女はミレニアムに戻ってきていた。だが、そこには当然モルフォの姿はなかった。

 

「あ、ああ……やだ、やだ……モルフォが、モルフォが死んじゃう……見つけないと、モルフォが死んじゃうかもしれない……!」

 

膝を付き、項垂れる。腕が震え、呼吸が荒くなっていく。脳裏に蘇る、モルフォが肉体を失ったあのきっかけとなった事件。あれが蘇り、シロコ*テラーの震えは全身へと広がっていく。自分の体を両腕で抱きしめてその場に蹲るようになってしまった彼女だったが、

 

「―――ここで、何をしているんだい?」

「……?」

 

聞き覚えのある声が聞こえてくる。その声にシロコ*テラーが振り向くと、そこには何故かセイアの姿があった。

 

「……セイ、ア……?」

「ああ、そうだとも。ここで何をしているのかな?」

「……モルフォが……モルフォがいなくなって……見つからないの……このままじゃ―――」

「……成程。あの直感というのは、そういうことだったか。さあ、行こうじゃないか」

 

セイアもまた、破壊されたミレニアムの寮を見て驚いていたようだったが、シロコ*テラーの話を聞いて納得したように頷く。そして、彼女の肩に手を置くと、

 

「行くって、どこに……」

「―――モルフォを探しに会いに行くのさ。クズノハにね」

「クズ、ノハ……なんで、わかるの?」

「そういう……導きと報せを受け取ったのさ。ふふ、信じてみようじゃないか、私達を繋ぐ夢を」

 

そう言い、笑みを浮かべるのだった。

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