転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「モルフォちゃん、大丈夫!?」
「……ごめんね、セリカちゃん、アヤネちゃん……ノノミ先輩が一人で学校を出て行っちゃったから気になってついていったら……スオウに」
「……懐に潜り込まれたんだね」
夜も遅い時間。生徒会室に現れたボロボロの制服を着たモルフォにセリカとアヤネが駆け寄る。彼女の体を見ると怪我が見えた。
「ど、どうしよう!すぐに手当てしないと……ホシノちゃん、えっと救急箱は」
「これです!」
「あ、ありがと!」
モルフォの怪我を見て慌てるユメにホシノが救急箱を渡す。ユメとアヤネがモルフォの怪我を手当するのだが、
「っ痛……」
「……腕を痛めてるね……動かない方がいいかも」
「大丈夫?モルフォちゃん……」
「うん……動かさなきゃそこまで痛くない……かな」
右腕に触れた瞬間、モルフォがその痛みに顔を顰める。二人から手当てを受けるモルフォをセリカが心配そうに見つめる中、その様子を見ていたシロコがぽつりと呟く。
「……酷くなってた右腕、やっと治ってきたのに……」
シロコの言葉にホシノが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。エデン条約の調印式。ゲヘナとトリニティの結ぶ条約自体はアビドスとしては全く関係ないが、なんか凄そうだし折角だし見に行ってみようと誘ったモルフォに同意する形でアヤネとセリカもトリニティに遊びに行ったのだ。それにトリニティには過去にライブをしに行った時にできた知り合いなどもいるし、ついでに会いに行くのもいいだろうと。その時は一年生達は仲が良くて羨ましいねぇ、なんて笑っていたものだ。
(……ヘイローを破壊する爆弾。あれのせいで……)
だが、調印式の日、三人は巡航ミサイルの直撃を受けてしまう。さらに最悪なことに、その衝撃で吹き飛んだ杭のようなものが不運にもアヤネの腹部に突き刺さったことで、アヤネは大怪我を負ってしまう。セリカも瓦礫に潰されてしまうという危機的状況に見舞われる中、モルフォは遠くに吹き飛ばされ全身を強打する程度で済んだものの二人とはぐれてしまう。散り散りになってしまったモルフォが先生のいる古聖堂の方に単独で向かう中、アヤネとセリカは偶然通りがかったセナによって救出されたことで難を逃れることができていた。
幸いにも先生、ヒナと合流したモルフォだったが、アリウススクワッドと交戦。彼女達がボロボロのヒナを仕留めるべく繰り出したヘイローを破壊する爆弾を庇って喰らったことで、右腕がずたずたの状態に変えられてしまったのだ。
「……」
「……ホシノ先輩?」
「え?あ、うん……調印式のこと、思い出して」
「ん……皆、大変だったね」
そのダメージで意識を失ったモルフォが目を覚ました時、アヤネ、セリカ、そして爆発の余波で吹き飛んで頭を打ち、出血と共に意識を失った先生と一緒に入院していた。手術の末にアヤネは一命を取り止め、モルフォも腕を切断するといった事態はならずに済んだのは不幸中の幸いであった。
今回襲撃した相手がアリウス分校であることを、巡航ミサイルの直撃で大怪我を負い、なんとか回復したナギサに伝えられたホシノとユメは、彼女から三人の治療費、リハビリ費用をトリニティが全て負担することと、三人を傷つけ巻き込んでしまった件も踏まえアリウス分校は必ず討ち滅ぼすことを約束していた。
前者はともかく後半の提案は二人としても正直思うところがあった。しかし、それを止める権利は残念ながら二人にはない。それができるのは先生だけだったのだが、その先生が目を覚ました時には既にトリニティは戻れないところまで突き進んでいた。
「……まだ、やってるのかな。ゲヘナの風紀委員長も銃を残して……戦ってたアリウスの使ってたっていうサブマシンガンと凄い血だまりだけ残して行方不明になってて。トリニティもゲヘナとシャーレに力を借りないでアリウスを押し返すのが限界だったのに」
「……さあね。でも、もう止まれないんじゃない?聞いた話だと……療養中って言われてたトリニティのお偉いさん、ずっと寝ていたけどアリウスから受けた怪我が悪化して死んでしまったって話だったから……」
「……その話なら聞きました。百合園セイアさん、でしたっけ……彼女に致命傷を与えたのも同じティーパーティーの人で、しかもナギサさんに対してクーデターを起こそうとしたせいで投獄されていたと……その人も、退学させられてトリニティを追放されたそうですし……後はミレニアムの方でもセミナーの会長さんが失踪したとか……」
「あっちもこっちもいなくなって……ほんとどうなっちゃうのよこの世界……」
ヒナを失ったゲヘナや、アリウスに纏わる大混乱に陥るトリニティもだが、それからのアビドスは大変であった。一年生達が大怪我を負ったことやモルフォの腕のリハビリや銃の新調をするためにミレニアムに依頼をしたり、アヤネと共に定期的に通院して怪我の具合を確かめたり。それからある程度経った時期であった。契約した本人であるユメ自身も忘れていた砂漠横断鉄道に関する一件が起こったのは。
「……これで大丈夫だね」
「ありがとう……アヤネちゃん、ユメ先輩」
「モルフォちゃんは残った方がいいね。総会には私達で行こう」
「ユメ先輩、大丈夫なんですか?総会会場は私募ファンドが雇った傭兵達が……」
「うん……でも、動かないと。先生がいつ目を覚ますかわらからないし……それに、生徒会長の私が出席しないといけないから。だったら、早く動いて遅れないようにしないと」
シャーレが爆破され、先生は病院に搬送。重篤な状態に陥ってしまい、一日二日で回復する見込みはない。そのため、ノノミを欠いたアビドスの生徒達はたった六人でシャーレのサポートを受けられないままに総会へ行くことになってしまったのだ。だが、まだ終わっていない。ノノミは攫われ、モルフォは負傷して動けなくなってしまったが、まだ打てる手はある。ホシノもシロコもいるし、セリカとアヤネだってあの地獄から生き残ってきたのだ。自分達が力を合わせればきっと、どうにかなる。ユメは希望を胸に、皆で総会の会場へ向かうために準備を進めるのだった。
―――そして。
生徒会の谷と呼ばれる僻地。そこには、巨大な炎の球体があった。その中からはプラズマのようなエネルギーが時折放出されていたが、やがてそれが収まると、炎が消える。その中にあったのは粉々に砕けた、列車砲シェマタだったもの。あまりの高熱にドロドロと融けている部分も多く、見るも無残な姿になったそれは、列車砲が暴走して熔解を引き起こした証拠でもあった。
「……ごめんなさい、ユメ先輩」
炎が消え、その中から現れたのは、座り込んだホシノであった。だが、彼女の纏っている服装は、普段の彼女とは異なる黒を基調とした、どこか鎧のようにも見える服装となっており、ユメからは確認できないがそのヘイローも黒く染まっていた。顔には仮面のようなものが割れて砕けたような痕が確認でき、背中からは赤い炎の羽が見える。だが、既に彼女の左腕や左脚は列車砲の爆発に巻き込まれた影響なのか消失しており、腹部にも何かで引っかかれたり貫かれたりしたような傷跡が見える。出血も止まらず、顔色が悪くなっていくホシノにユメは慌てて駆け寄ろうとする。だがホシノは首を横に振る。
「もう、私……駄目みたいです」
「ダメじゃない!まだ、まだ……」
「……わかりますよ。自分でも、もう長くないって……でも、この力はそのままにはできません……今のまま眠ったら……私は……この力できっと全てを壊してしまうから……アヤネちゃんとセリカちゃんは守れなかったけど、モルフォちゃん、シロコちゃん、ノノミちゃん……そして、ユメ先輩は守れたから……」
朦朧となってくる意識の中、ホシノはだらんとぶら下がった右腕を揺らしながら、唯一動かせる右足で変色し変わり果てた黒いショットガンをユメの方に転がす。
「やめて、やめてよ……まだ、まだ……」
「……歌が、聞こえる……ああ、そうか。そういうことだったんですね、ユメ先輩が言ってたのって……でも、わかるでしょう?もう、自分で自分を終わらせることもできないんです……私のせいで、誰かを……世界を殺したく……ないんです。どうか……お願いします……」
何か、まだ道はあるはずだ。そう思いながら周囲を見る。しかしそこには、腕があらぬ方向へと捻じ曲がって倒れ、意識を失ったノノミ。頭部に怪我を負い、血液を流し気絶するも、まだ息が残るシロコ。そして、シェマタを起動しようとしたスオウを追った自分達をスオウ諸共強襲してきた、謎の黒く巨大な化け物の死骸。そして、視界にすら入れたくない、後輩達だったもの。
―――今、ホシノを救えるのは、終わらせられるのは、梔子ユメを除いて、他にいなかった。
「……」
震える手でショットガンを握る。自分の銃は化け物との戦いで吹き飛んでしまった。残っているのはこの盾のみ。呼吸を荒くしながら、ユメはショットガンをホシノに向ける。今のホシノのような特殊な状態ではないが、それでもこの銃の中から感じ取れる熱は、今のホシノを一撃で屠れるだろうという確信を抱かせる。
「……う、あ……」
「……ありがとう、ございます……ユメ先輩……アヤネちゃんと、セリカちゃんと……待っていますね……」
「うああああああああああ!!!」
震える手で銃口を向ける。それを見て、ホシノが感謝の言葉を口にし、微笑んだ直後、生徒会の谷に一発の銃声が響くのだった。
★
「……ユメ先輩……?」
「待って、ユメって……まさか」
ホシノが呟いた言葉に、シロコもその意味に気付いて困惑した表情をその少女、梔子ユメに向ける。ユメは少しだけ悲しそうにホシノ、ノノミ、シロコの顔を見ると、吹き飛ばしたスオウの方へと歩いてくる。
「ゆ、ユメ先輩が、これをやったんですか……?」
「うん、そうだよ」
スオウをユメが仕留めた。その事実に尚のこと信じられないといった様子でホシノが聞く。普段の彼女とは明らかに違うその姿にシロコも困惑を強めている中、ユメはスオウの懐に手を入れると、一枚のカードを取り出す。
「あっ、それ私の……」
「うん、ちょっとだけ貸してね。これ必要だから」
「必要って……何をするつもりなんですか!?」
それはノノミが持っているはずのゴールドカード。それが何故スオウの手にあるのかもわからないが、それを奪ったユメが何をしようというのか。わけがわからず声を上げるホシノ。アル達は勿論、ネル達もこの状況にどう声をかけるべきかタイミングを掴みかねていると。
「皆、大丈夫!?」
先生の声が聞こえてくる。先生の声が聞こえユメの体がビクッ、と震えた直後、屋上に駆けつけてきたアヤネとセリカの姿を見てその瞳が揺れる。
「っ、彼女は……」
「待ってください!彼女が着ている服……アビドスの制服!?なんで……」
『!?ユメさん……!?』
先生達も屋上に出て、ユメを見る。直後、彼女を見て驚いたような声がプラナから零れる。
「え!?ユメって……!?」
『はい……間違いありません。彼女は……私やシロコさん、モルフォさんの世界にいた梔子ユメさん本人です。あの棺……そしてあの銃……やはりモルフォさんは最初からそのつもりで……!!』
色々と気になるワードがプラナの口から聞こえてきたが、ひとまず向こうの世界であった内容については後にする。まずはこのユメが何をしようとしているのか把握することが大事なのだから。
「あの、彼女もアビドスの生徒なのでしょうか?人数は五人では……」
「え、ええ……だけど、ユメ……っていう人がいたのは知ってる。ただ、二年前に」
「……すみません」
ユメの格好を見て、ミヤコがアビドスの生徒なのか確認しようとする。しかしセリカが少し気まずそうに零した言葉にミヤコも申し訳なさそうに俯く。
「……彼女は別時間軸のユメなんだ」
「……成程」
そして先生の零した言葉に、何となく予想はしていたカヨコが頷いていると、ユメは左手に背中に背負っていた一つの盾を持つ。それは、ホシノが持っているものと同じものであり、本来二つとして存在しないはずの盾であった。それは、先生の言葉を無言で証明するものであった。
「ユメ先輩、いつから、ここに……」
「……えーっと……確か調べた感じだと、なんかこっちのキヴォトスで空が赤くなった時があったらしいんだけど。多分私が目を覚ましたのはその後ぐらいかな……起きたら砂漠の中で変な建造物の中にいて……それで、モルフォちゃんの銃と荷物だけ置かれていて……」
「え……それって」
プレナパテスのあの一件。ユメはあの後、この世界に来たのだ。と、するとシロコ*テラーともう一人のモルフォがこの世界に来る際に彼女もこちらに来ていたはずだ。しかし、目を覚ましたという発言から察するに彼女は今まで眠っていたということだろう。とすると彼女が眠っていた理由は―――
「……でね。私、最初は時間が戻ったって思ったんだ。ちょっと一年生達がなんかそういう……死に戻り?みたいな小説か何かの話してたの思い出してね、私もそういう不思議な力があったんだって……そう、思ったんだ。いや、思いたかったな……」
話し始めた最初の方こそ笑みを崩さず、朗らかに語り始めるユメ。しかし、その表情は段々暗いものになっていく。
「……家、なくなってた。砂で埋もれて……何もかも消えてた」
「っ……!」
ユメも目覚めて勘違いをした時は喜んだのだろう。シロコ*テラーから聞いた断片的なもう一つの世界の話。その顛末を踏まえれば、シロコが反転し、モルフォが肉体を失い、残り四人が全員死亡する未来を変えられるチャンスが巡ってきたことに。ここで未来を変えれば、きっとすべてがうまくいく。そう、その時は思ったのだろう。
だが、ユメの家は既に存在していなかった。当然だ、砂嵐と常に付き合うことになるこのアビドス、人のいない建物から砂を撤去することなどできないのだから、先に建物が悲鳴をあげて崩れるのは当然の事。ユメの住んでいた家は、一年、下手をするとそれよりも短い時間で砂の下に埋もれたことだろう。
「……で、でもね。もしかしたらたまたまかもしれないし?だからさ、学校……学校に行けば、なんとかなると思って……でも、ちょっと怖くなって……覗いたの。覗いたら……私とモルフォちゃんがいなかった」
「……それ、は……」
スナイパーのスコープを見ながらそう呟くユメを前に、ノノミの口から掠れた声が零れる。だが、ユメはどこか納得したように話を続ける。
「……そこで、気付いちゃったの。ああ、ここって私がいた世界とは別の場所なんだって……じゃああの時。モルフォちゃんの歌が聞こえて助かった私は、歌がなかったらどうなってたのかなって……それで、ね……」
ユメが懐から一枚の折り畳まれた紙を取り出す。どこかの図書館で当時の新聞か何かを切り抜いてきたのだろう。それを広げると、他の皆から見えないその記事にははっきりと、梔子ユメが死亡したというこの世界の当時の事件が記されていた。
「うん……やっぱり、駄目だった。あはは……やっぱりどうにもならなかったみたい」
「ユメ先輩……もうやめましょう」
ホシノは何となく察してしまったのだろう。これ以上、このことについて話しちゃいけない。彼女の本能がそう告げていた。そんな、ホシノの言葉にユメも察してくれたのだろう。ホシノ達の周りにいる多くの人達を見る。
「……でもね、凄いよね。先生は無事だし……便利屋の皆も一緒に総会まで来てくれてる。それだけじゃない……ミレニアムでモルフォちゃんの銃を新調する時に会った……えっと、ゲーム開発部?の子達もいるし、なんかホシノちゃんに凄いガン飛ばしてたメイドちゃんもいる!……でも金髪の子は見たことないね?多分あの時は会わなかったんだねきっと!」
「え、えっと……?」
いやガンってなんだよ、と一瞬言いかけたが、改めて考えるとホシノと出会った時は初手で喧嘩売ってたことを考えると向こうの自分の方が大分マシだったために何も言えなくなるネル。トキも自分の知らないエピソードを語るユメにたじたじになっている中、今度はユメの視線がRABBIT小隊へと向けられる。
「後は……えっと……学園はよくわからないけど助けに来てくれた子達!!」
「私達そういう扱いなのか……」
「まあSRTとアビドスって本来関わりありませんからね……」
「確かに……」
「先生を助けてそのまま流れでって感じだもんね今回?」
そんなユメだが、さすがに向こうではRABBIT小隊とは面識がなかったようだ。だが、この総会のために駆けつけてくれたこれだけの人を前に、ユメは嬉しそうに笑う。
「本当に……よかった。先生も来なくて、他に誰も来てくれなくて……私達だけで解決しなきゃいけなかった時とは全然違くて……きっと、そうだったんだ」
「?何を言って……」
そして、ユメの表情から笑みが消える。彼女は何も察してなどいなかった。ただ、自分がどうしてそう判断するに至ったのか、それを口にするためにゲーム開発部やC&C、便利屋68、そしてRABBIT小隊を見ていただけだったのだ。
「……私が死んだから、この世界はこんなにうまくいったってことだよ」
「……え……?」
「カヒュッ」
『……!』
そしてユメが零した言葉に、ホシノの目が見開かれ、ノノミの口から掠れた声が漏れる。プラナも絶句する中、その場にいた全員があまりの発言に固まってしまう。
「な、何言って……」
「私が生きていた世界だと先生も重篤で最終的に危篤状態になっちゃったし……でもこの世界だとピンピンしてるでしょ?それに助けに来てくれる人もこんなにたくさんいる……これって、やっぱり私が死んだからだと思っちゃうんだ……だからね。私はあそこで死んで正解……だったんだよ、きっと!」
「……!」
ギリ、とホシノが歯ぎしりをする。体を震わせながら、ユメを険しい表情で見る。しかしユメは申し訳なさそうな表情を浮かべるばかりだ。
「ふざけないでください!!ユメ先輩が死んで……私は……!!」
「……うん、凄い大変だったと思う。ごめんね、ホシノちゃん……きっと凄い苦しんだよね。でもね、今のホシノちゃんはたくさんの友達がいる。こんなにたくさんの人が助けてくれてる。私がいたところとは全然違う。だからね、私はきっと、あそこで死ぬべきだった人なんだよ。そして今もそう。私がこれからやることに、一切後悔はないよ」
「だから!そういうことじゃ……!!」
『……この人は……!』
ユメの言い方に段々思うところが出てきたのか、ネルやモモイの表情が段々険しくなっていく。しかし、ネルが我慢できず声を上げようとしたところでアスナに手で制されてしまう。
「ユメさん!何を……何をするつもりなんですか!?私のカードを使って……!?」
「……シェマタを壊しに行くの。シェマタはね、壊すととんでもない大爆発が起こるの。普通に人が死んじゃうレベルの爆発が」
「なっ……!?ユメ先輩、まさか……!?」
「シェマタ……くそっ、だから作ってそのままだったの……!?なんて不発弾を作ってくれたのあの女……!!」
「ちょ、ちょちょちょっと!?それって……」
「あなた、死ぬつもりですか!?ふざけないでください!!人が死のうとしているところをSRTが黙って見逃すわけが―――」
「皆が、待ってるから。だから、私が死ぬ。そうすれば、皆助かるんだよ」
ユメがシェマタを一人で破壊しに行く。そして、シェマタと引き換えにその命を終わらせるという判断にたまらず声を上げるミヤコ。しかし、その後にユメが口にした言葉に、その場にいた全員が固まってしまう。
『皆……まさか』
それは、死んでしまった後輩達のことなのだろう。ユメは彼女達の下へ逝きたがっているのだろう。だが、シロコ*テラーが生きていること、モルフォもどこかにいることを知らない彼女が死ねば、それは二人にとって新たな傷にしかならない。プラナが今すぐ彼女を止めてほしいと先生に言おうとした、その時だった。ただ一人、飛び出すように駆けだした少女がいた。
「……!?」
先程まで彼女も固まっていたはずだ。それを見ていたからこそ、ユメは完全に油断していた。だが、そこにいたのは、アリスではなくケイ。ケイは拳をきつく握りしめると、
「うあああああああ!!!」
「うぎゃあ!?」
そのまま軽く跳んで勢いよくユメの頭部を殴りつけ、地面に叩きつける。遅れてホシノが飛び出してケイを取り押さえるが、ケイは我慢ならないと言わんばかりに声を張り上げる。
「自分が死ぬのが正しいとか……誰かのために死ぬのが合ってるとか……ふざけたこと言うな!この大馬鹿!!」
「ケイちゃん……」
「け、ケイちゃん!お、おお落ち着いて!!」
「そうだよ!?暴力はいけないって!!」
「そんなに死にたいなら、まずアビドスの人達と、あなたの世界から来たシロコさんとモルフォに詫びを入れてから死になさい!!それすらしないで勝手に死ぬな!!」
「……え……」
息を荒くし、両腕をホシノに取り押さえられながらケイが叫ぶ。だが、その言葉を聞いたユメは、驚いたような表情を浮かべる。
「シロコちゃんとモルフォちゃん……あの後、死ななかったの……?生きて、しかもこの世界に……?そっ、か……」
そして、少しだけ安堵したような表情を浮かべながらユメは意識を手放すのだった。