転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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戦神(セト)

 

「……」

 

砂嵐が車体にぶつかる音が響く。全員が無言でいる中、各々銃の手入れをしたり休んだりしながら生徒会の谷に到着するのを待っていた生徒達。だが、そんな中でネルとの殴り合いの怪我が完全に治ってるか確認していたホシノの視線がふとユメへと向けられる。

 

「……」

 

ユメはライフルの調整をしていた。だが、バッテリーを見てあることに気付く。

 

(……もう、バッテリーがほとんどない……)

 

ユメが使用していたライフルはレールガンの性質を持っている。それ故に電力は事実上弾丸の一つともいえるのだ。だが、そのバッテリーが使えないとくれば、この銃は置物になると言っていい。

 

「……」

 

ユメは自分の盾を見る。それはこの世界でホシノが使っているものと同じものであり、この世界の自分からホシノへと託された……いや、遺したものなのだろう。

 

(……地下生活者……か。私の世界でも、地下生活者のせいであんなことになったのかな……)

 

ライフルをぎゅっと握りしめながら、ユメは悲しそうな表情を見せる。と、ふと上げた顔がホシノのこちらを見る視線とぶつかる。

 

「あ……」

「……ど、どうしたのホシノちゃん?何か気になる?」

「……いえ。ただ…………ユメ先輩は最後まで来る気なんですか?」

「え?当たり前じゃん?」

「いや、当たり前って言われても……」

 

ホシノは不安そうにユメを見ていた。それは、セトという未知の敵を相手にしたこの戦いにユメを参戦させてもいいのかという疑問であった。ユメが持つ装備の性能は確かに心配していない。だがいくらこの世界のホシノが知るユメと比べて戦闘慣れしているとはいえ彼女を戦いに巻き込んでいいのかと今更ながらに思ってしまったのだろう。

 

「……危険ですよ」

「……うん、わかってる。セトって、あんなやばい奴なんだって一目でわかるもん……でもね、だからこそなの。この世界でも別の化け物が出てきちゃった……きっと、私のいた世界も地下生活者があの化け物を呼んだんだ。そして私達は……負けた。化け物は倒したけど……生き残ったのは、私とシロコちゃんとノノミちゃん……そして、スオウに怪我をさせられて学校に残っていたモルフォちゃんだけだった」

「っ……」

「……待ってる間にね、誰かがいなくなるって……凄い怖いんだ。モルフォちゃん、凄く泣きそうで、辛そうで……もし私もそうなったら、きっと耐えられない。そうなるぐらいなら役に立たなくても私も一緒に行きたいの」

「「「「……」」」」

 

ユメの言葉にシロコ達も黙ったままユメを見る。それはアトラ・ハシースの箱舟でシロコ*テラーからも断片的に聞いた話だ。

 

「……あの時はさ……何も知らなかった。元々私が砂漠横断鉄道の契約をした事を完全に忘れていたのが全ての原因だったけど……でも、今にして思えば不自然だったんだ。二年前、私がネフティスと契約した時は誰もシェマタの事なんて知らなかったのに、それが二年後になって、急に私募ファンドとネフティスが動き出して……しかもタイミングよく先生が爆発に巻き込まれて重篤になって……総会でカイザーを裏切ってシェマタを独占しようとしたスオウを追いかけて生徒会の谷に向かったら、そこであの竜みたいな化け物に襲われて……」

「……」

「その化け物ってなんなんですか?セトとは違いそうな感じがするんですけど」

 

ユメの話を聞き、先生も複雑そうな表情を見せる。向こうの世界で似たよなことが起こったとしても、決定的だったのはやはりプレナパテスが地下生活者に始末されたということだったようだ。こちらでは最初の爆発を防いでくれたアロナとプラナ、その後はRABBIT小隊のおかげで難を逃れたが、プレナパテスのいた世界ではプラナだけでは最初の爆発を受け止めきれなかったのだろう。と、その化け物の情報についてセリカが問いかける。

 

「えっと……黒くてでかい?なんか……禍々しい感じ?」

「んだよそりゃ」

「……というよりもセトの見た目もまだ見てないと思うのだけれど……」

「でも、あれは雷も使ってないしこんな砂嵐にもならなかったから全然別物だってのはわかるよ」

 

ネルとヒナが続けざまに聞くも、その能力から別物だと判断するユメ。これは実際にそれを見たユメにしかわからないのだろう。

 

「……なんかその禍々しい化け物ってやつの方が気になるわね」

「……今回、セトと一緒に来るっていう保証は?」

「……多分ないと思う。というより……来たら絶対無理だよ。セトと一緒にあれの相手なんて……無理。絶対勝てない。大体あれを倒したのだって……二人が……殺されて……竜みたいな仮面をつけたような姿に変身しちゃったホ……いや、なんでもない」

 

アルとカヨコの言葉に黙り込むユメ。だがその声を聞き、先生は万が一を考えて持ってきていた黒いショットガンを取り出す。ユメの視線が、先生の持つ黒いショットガンに向けられ、

 

「あ……」

「……」

 

呟きが漏れる。だが、その呟きで一部の面々は察したようだ。その化け物を倒したのは、向こうで反転したホシノだったのだろうと。

 

「先生、それ持ってきていたんだ」

「うん、さすがにこうなるとは思わなかったけど……セトとの戦いでは使うことになるかもしれないでしょ?だからホシノには持っておいてほしいんだ」

「オッケー、わかったよ」

「……」

 

胸の前で手を握りしめるユメ。あの銃をホシノが持つ姿に、安堵する気持ちと同時に、胸のざわめきを覚える。と、

 

「……?止まった?」

「まさか、もう着いたの?」

「そういうわけではなさそうですが……」

「おい、何があった?」

 

ミヤコとサキが先んじてトラックから降りる。そこにあったのは、一つの駅。他の面々も降りてくるとそこにあったのは、

 

「ここは、大オアシス駅?」

「ここから先は通路が塞がっているんです」

「あ、そうだ。ここから生徒会の谷に行くには……」

「ちょっと、ユメ先輩!」

「あ、おい!」

「何があるんですか?この寂れた駅に……」

 

大オアシス駅と呼ばれる場所であった。だが、そこに降りたユメがさっさと駅の中に入っていってしまう。慌ててその後をホシノが追いかけ、遅れてカリンとアカネが何事かと追いかけていく。そして駅の中に入ったユメは、そこにある大オアシス駅を管理する巨大な装置に駆け寄る。

 

「え?何々?なんか凄い機械があるけど」

「あれは、ネフティスの……でも、なんでこんな駅に?」

「……わかった!きっと隠し通路か何かあるんだよ!」

「隠し通路って……」

「……でも、そうでもないと先へは進めなさそうだね」

 

ゲーム開発部も砂嵐の中を突っ切ったせいでさすがに疲労の色が隠せないトキと、疲れから引っ込んで表に出てきたアリスに肩を貸しながら駅の中へと入ってくる。

 

「えーと、えーと……あれこれ、どうやって動かすんだっけ?」

「え、わからないんですか!?」

「だって私達が来た時既に動いてたんだもん……多分スオウが生徒会の谷に続く線路を出していたと思うんだけど……」

「ねえこの人役に立つのか立たないのかわかんないんだけど!」

「ひぃん!?」

「社長、さすがにそこまで言うのは……」

「え、えっとどうにかならないんですか……?」

 

キーボードを前に睨めっこをするユメ。しかし自信満々にキーボードを動かそうとして全くできない彼女にアヤネが唖然となってしまう。その様子を見て思わず白目を剥きながら声を上げるアルをカヨコが制してる横でおずおずと言った様子でハルカが手を上げて聞くも、ユメは肩を竦めてしまう。

 

「えっと、確か……」

「あれ?操作できるのー?」

「あ、はい。一応ネフティスのものみたいですし……アヤネちゃん、カヨコさん、手伝ってもらえますか?」

「はい!」

「うん、生徒会の谷に続く道を探せばいいんだね」

「そういうことなら私も手伝うよ。こういうの調べるのも得意なんだよね~」

 

だが、ノノミがキーボードを操作し始める。アヤネ、カヨコ、モエの三人も手伝っていたがやがて、ある項目を探り当てる。しかし、そこにはロックがかかっていた。

 

「!この路線は……でも、ロックが」

「……そうだ。ロックを外すにはゴールドカードが……でも、カードは……」

「あ、そうだった。これこれ!」

 

それを解除するにはゴールドカードが必要だった。だが、ここでユメがゴールドカードを取り出すと、それを読み込みロックを解除する。すると、駅の奥の壁が動き、そこに新たな路線とそこへ向かって走る車両が出現する。

 

「これは……!」

「生徒会の谷に続く路線だよ。この車両を使えば、生徒会の谷に……」

「……ふぅ。ではアビ・エシュフを積み込みますか。どうやら後ろの方に貨物車両もあるみたいですし」

「倉庫ですね!ここにケイとトキのアビ・エシュフを積み込みます!」

(……ここからは途中で分岐路を挟んで一直線、か)

 

束の間の休息と水分補給を行っていたトキがアリスと共にアビ・エシュフを積み込む。そして皆が乗り込んだところでユメがカードを引き抜き列車に乗り込む。

 

「よし、皆先に……」

「すみませんユメさん」

「え?どうしたのノノミちゃ―――」

「えっと……そろそろカード返してくれないでしょうか……?」

「あっごめんね!?これノノミちゃんのだったよね!?」

 

そして乗り込もうとしたユメはここで漸く、このカードの持ち主がノノミだと思い出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この先に、クズノハが?」

 

百鬼夜行の自治区の中に存在する雪山。そこにワームホールが開かれ、シロコ*テラー、セイア、ナグサが現れる。雪山の寒い気候が肌を刺すが、今はそれどころではない。

 

「うん、この先に黄昏の寺院がある。そこに行けばクズノハに……だけど。本当に会えるかどうかはわからないよ」

「わかっているとも。だが……行かなければならない。そう、私は導かれている気がするんだ」

「誰に……?」

「……私の勘なのか、それともクズノハ本人なのか。それとも……彼女が夢で呼びかけているのか……」

 

雪を踏みしめながら、百花繚乱で貰ってきた防寒具を羽織り、歩き始めるセイアとシロコ*テラー。セイアの言葉に首を傾げながらも、二人の前を先導するように前に出るナグサ。

 

「……?」

 

ふと、セイアが立ち止まり天を見上げる。シロコ*テラーとナグサも立ち止まってセイアを見る。

 

「いや、何かが振られる音が聞こえてきたんだ」

「……音?」

「ああ……なんだろうな、この音は……何か、小さな箱のようなものが地面を転がる音が聞こえるんだ」

「……それって、賽のこと?」

 

セイアの言葉に、ナグサがサイコロのことではないかと指摘する。ダイスの音、おそらくそれは関係があるはずだと確信しながら、セイアは再び歩き始める。

 

「……しかし、悪いねナグサ。急に手伝ってもらっちゃって」

「突然来た時は驚いたけど……でも、予想以上に大事になってるみたいだしね。それに、クズノハに会う必要があるって言われたら……協力しないわけにはいかない。そのモルフォって子、ユカリにとって大事な友達だから」

「そうなのかい?」

「うん、ユカリを助けてくれたゲーム開発部の子達の中でも特にユカリと仲良くしてくれた子だからね。ユカリがいなかったら私達は今頃……」

(……ミレニアムは勿論だけど、トリニティと百鬼夜行も……皆がモルフォを助けるために……)

(……アヤメの事を知り合いのように呼んでたなセイア……何があったんだろう。今は聞けるような感じじゃないけど……)

 

羽織の下の右腕を時折見ながら、ナグサは歩き続ける。彼女の言葉を聞いてシロコ*テラーの口元が緩み始めていたが、やがて周囲の景色が少しずつだが変わり始める。

 

「……ここは?」

「……雰囲気が変わってきた」

「二人ともわかるんだ。私は……この右腕がちょっと疼くからわかるぐらいなんだけど」

 

日も暮れ始め、少しずつ薄暗くなっていく空。それが、徐々に明るさを取り戻す。だが、その明るさと色合いは、セイアには見覚えがあった。

 

「……あそこだ。私がクズノハと会った、あの場所……あそこで見た空だ。じゃあ、やっぱり……」

 

少しずつ三人の歩みが早くなっていく。その中でナグサやシロコ*テラーも、セイアが言っていたように導かれているような感覚を段々感じ始めていた。自分達は何か、大いなる力によって導かれているのではないか、と。そして、

 

「……ほう。ようやくここに辿り着いたようじゃな」

 

巨大な鳥居と、その奥にある建物。そこに座っていたクズノハは、三人の姿を見て待ちくたびれたというかのように口元に笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あら?砂嵐が消えてるわね」

「ん、生徒会の谷に向かえば向かう程砂嵐が弱くなってた」

「……まるで、台風の目みたいです」

「……感じちゃうねぇ、なんかおぞましい気配ってやつ」

「……うん。私にもわかるよホシノちゃん。なんていうか、本能がこう、ぞわっとしてくる感じ……」

 

生徒会の谷へ向かう列車が、生徒会の谷を目前にして止められる。列車から降りてきた生徒達はセト達に気付かれないように少しずつ進んでいく。彼女達を襲う砂嵐は消えており、夜の暗さに空の分厚い雲もあり、本来ならば手元さえ見えない程の真っ暗闇のはずだ。先生も、ヘイローの光でようやく個人の識別ができる、といったところだろう。だが、夜の雲に覆われた地上とは思えない程、生徒会の谷へと続く道は明るく照らされていた。

 

「……雲が光ってる……!?」

「あれ全部雷雲ってこと?いやーこんな光ってるの初めてみたんだけど」

「あ、アル様……何かあった時は私が盾に……!」

「……いや、あの雷が落ちるならハルカは受けるより避ける方を選んだほうがいいと思うけど……」

 

その理由は、光源と化した雷雲であった。空から降り注ぐ雷が生み出す青白い光が、地上を満たしていく。

 

「……肌がピリピリします」

「アリスちゃん、大丈夫……?」

「はい、ただ静電気が……」

「……お姉ちゃん。私達、何と戦うのかな」

「わからないけど……でも、このボスを倒せばモルフォを助けられるのなら……」

『……アビ・エシュフはこの状況でも問題なく動くようですね』

 

だからこそ、誰も迷わずに目的地へと向かっていける。生徒会の谷に近づくにすれ、巨大な何かが見え始める。地上は明るいのに、その正体は今だ雷のベールに覆われて謎に包まれている。

 

「……とんでもないことになってきたな」

「ケセドとの交戦で慣れたつもりでしたが、上には上がいるものですね……」

「リーダー、気を付けた方がいいよ」

「ああ、わーってるって。おいトキ、アビ・エシュフは動くのか?」

「はい、活動に支障はありません……必ずモルフォを救い出します」

 

生徒会の谷へ続く道は多少砂が地面を覆ってはいたが地面は硬く、アスファルトなどで塗装されていた。そのため、二人のアビ・エシュフの脚部は砂上戦装備をパージしている。ぐっと拳を握りしめながら、トキは徐々に見え始めた青白いシルエットを見る。

 

「……なんか、行きつくところまで来たって感じだな……私達の発端は先生を助けたところからだぞ?」

「そこからカイザーかと思えば列車砲、かと思えばシロとクロよりもやばそうな相手、ですか」

「いやぁ……破滅が近づいてるのを感じるねぇ……でも、逆に成功すれば?」

「う、うん……何とかなるよね……」

 

そして遂に彼女達は生徒会の谷に辿り着く。その奥地にはうっすらと、巨大な城塞のようなものが見える。だが、その手前にある青白い雷鳴のシルエットから、雷鳴が消えてその下に存在する巨大な怪物の姿を映し出す。

 

「っ……これが、セト……」

 

露わとなったセトの姿に、ヒナが息を呑む。胴体部分は頭部のようなオブジェからは二本の角が伸びている姿をしており、両肩には城壁のような装甲が見える。さらにその上に頭部が見えており、両手首はリングのようなものが見えており、胴体、腕、手が青白い雷で構築されている。一目見るだけでわかるその威圧感に、先生の頬に冷や汗が流れる。

 

『待っていましたよ、先生』

「!!」

 

先生の耳に地下生活者の声が聞こえてくる。地下生活者は、愉快そうな声を隠さず先生に種明かしをしていく。

 

『先生、あなたも疑問に思ったことでしょう。何故カイザーとの戦いでセトの憤怒の介入を行わせなかったか。それは目の前のセトを見ればわかるでしょう……雷だけ飛ばして誰かが倒れるよりも……』

「っ!!皆、構えて!!」

 

地下生活者の種明かしが続く中、セトの憤怒がその目と思われる部分でホシノとユメの姿を捉える。直後、敵意を剥き出しにするかのように雷鳴を轟かせる。

 

「戦闘―――開始!」

『はい、いきましょう先』

 

直後。アロナの声をかき消すかのようにセトの憤怒が放つ膨大な雷鳴が生徒会の谷一帯を包み込む。あまりの轟音と閃光。そして先生の全身に衝撃が響き、無数の人影が宙を舞う。確かに先生の力は凄い。その力でこれまで、多くの敵に打ち勝ち、世界すら救ってきた。だが、

 

『こうしてセトの憤怒の姿を見せた上で全滅させた方がより強く絶望に残りやすい……おっと。もう聞こえてはいませんか』

 

先生でさえこの有様だった。他には地面に転がる生徒達。今の一撃で、生徒達は一瞬にして蹴散らされてしまったのだ。

 

「……う、ぐ……」

『すみま、せん……先生……』

『私達の力でも、セトの憤怒の力は……』

『おや、生きていたのですか。クリティカルの補正を乗せた一撃……普通なら死んでいない方がおかしいのですが……まあ、これも箱の強制介入による抵抗なのでしょう。これは面白い』

 

いや、先生は生きていた。しかし無傷とはいかず、全身に響いた衝撃は確かな痛みをもたらしていた。ふらふらと立ち上がる先生は、倒れた生徒達を見る。

 

「皆……」

『ですが、生徒達はどうしようもなかったようで……?』

「っ……こ、んにゃろおおおお……!」

 

だが、倒れた生徒達の中から立ち上がる影があった。感電しながらも雷を盾で受け止めダメージの大半を防いだホシノとユメ。雷にその身を焦がし、大火傷をしながらも体を起こすネルとヒナ。咄嗟に背中のレーザーキャノンを最大火力で電撃に打ち込みダメージを軽減したものの、無理をしたことで武装が破壊され、武装が両腕のガトリングだけになったトキと、逆に両腕の装甲と武装を犠牲にして攻撃に耐え、背中に背負った二丁のレールガンだけになったケイとアリス。咄嗟にハルカとサキがそれぞれ庇ったことで耐えることができたアルとミヤコ。後方で控えてたが故に他の面々と比べて最小限のダメージで済んだアヤネとモエ。たった十人だけであった。

 

「サキ……!」

「うぐ……すまない……!」

「くそ……体が痺れて、銃が……」

「アル様……無事ですか……」

「ハルカ……ええ、大丈夫よ!あなたのおかげで助かったわ!ムツキとカヨコは……」

「……アスナ達はグロッキーか……くそ、なんて野郎だ……!」

「ん……動けない……!」

「ホシノ、先輩……」

 

それぞれ、フラフラになりながら立ち上がった十人。しかし、彼女達も満身創痍だ。そして先生は、倒れている皆も含めてまだ死人がいないことに安堵しつつも、同時に先生は限界を感じざるを得なかった。

 

(勝てない……今のままじゃ)

『先生も確かに実感したようですね。今の一撃で誰も死ななかったのは確かに驚嘆に値しますが……それだけです。さて、二発目はどうします?狙うは―――』

「ホシノちゃん、大丈夫……?」

「ええ、なんとか……!?ユメ先輩!!」

「え?」

 

ユメが不安そうにホシノを見る。だが、ホシノは気付く。セトの目がユメへと向けられていることに。直後、セトから放たれた稲妻がユメへと襲い掛かる。先程、先生達がこの場に来るまでに溜め込んだ稲妻を纏めて放出した必殺の一撃とは異なり、個別に狙う確実な電撃。それを咄嗟にユメの前に割って入ったホシノが盾で受け止めるが、身体に痺れが残っているせいかうまく踏ん張れず、電撃の威力によって吹き飛ばされてしまう。

 

「っ!?」

「ホシノちゃん!!」

「危ない、ユメ!!」

 

吹き飛んだホシノにユメの注意が向けられる。直後、先生の焦りの声が響き、他の生徒達も負傷を押してユメのカバーに入ろうとしたその瞬間。

 

「……え?」

 

目の前の光景にホシノの目が見開かれる。閃光と共に体をのけぞるユメ。その腹部からは光が貫通し、バチバチと鳴る稲妻の音に交じって液体のようなものが蒸発したかのような音が響く。そして、セトの放った電撃で腹部を貫通されたユメが崩れ落ち、その場にいた全員が目を見開く。

 

「そん、な―――」

『決まった……!まずは梔子ユメの死……絶望!これが第一のピースとなる……!』

(絶望……!?まさか、地下生活者の本当の目的は、シェマタでもセトでもなくて、ホシノ……!?)

『だが、これでは不十分……イヒヒ、残りだ、残りも一人、また一人と嬲り殺しにしてやる……!さあ、どこまで心が持つ?それとも棚ぼたで他の奴も連鎖して反転するか?イヒヒ、それを賭けるのも面白……』

 

ここにきて漸く、先生も地下生活者の本当の狙いに気付く。地下生活者は、ホシノを追い詰めようとしていた。シェマタも、セトも、そのための舞台装置だったのだ。だが、それに気付いた時はもう遅い。倒れたユメから血の池が広がり始め―――

 

『あなたは死なせない……立ち上がって……ユメ先輩!!』

 

その時だった。何かが転がる音が聞こえてきたかと思った直後、ユメの腹部から青い光が満ち、傷が塞がっていったのは。ユメの全身を、青いオーラが覆っていき、力を失い倒れていた姿から力を取り戻し、ユメは生気に満ちた顔を上げる。そしてはっきりと見た。

 

「……モルフォ、ちゃん……?」

 

ユメの体の中から出現し空に浮かぶ、アビドスの制服を身に纏い腰まで伸びたオレンジ色の髪を揺らし、背中から青い光の蝶の羽を伸ばすもう一人のモルフォの姿を。

 

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