転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……いくよ、戦闘開始!!」
『『戦術サポート、開始します!』』
先生の声に呼応するようにアロナとプラナが声を上げる。直後、シッテムの箱から空中に無数のホログラム上のディスプレイが出現し、様々な情報を表示していく。
(……凄い……これがシッテムの箱に眠っていた更なる力……!)
直後、セトの雷が降り注ぐ。だが、更なる機能を解放したシッテムの箱から行使される指示は、雷の脅威などものともしない。先生がシッテムの箱を動かすと、それに呼応するようにシッテムの箱の恩恵を強く受ける生徒達が跳躍し雷を回避していく。
「……凄い……!」
「なにこれ……体に力が満ちてくる!?」
雷の合間を駆け抜けていくアルとミヤコ。そのまま二人は弾丸をセトの体へと撃ち込んでいく。本来のセトの体は腕のリングなどの一部を除けば青白い雷で構成されている。それ故、不定の実体を持つ側面もあり、ともすれば通常の弾丸など雷で即座に燃え尽きてもおかしくないものであった。だが、二人の放った弾丸は雷に焼き尽くされることなくその身を貫通し、雷を揺らめかせる。
「攻撃が……通じている?」
「凄いです……アル様……うっ」
「おっとっと、まだ無理しちゃ駄目だよ?……まあ、こんな状況でそうは言ってられないけど」
アルとミヤコが放った弾丸が自身を貫いたことでセトの注意は先生の指揮の力を色濃く受ける十人へと向けられる。その注意を掻い潜るようにカヨコはハルカに肩を貸すムツキと共に一旦距離を取ろうとする。
「二人とも下がって!ルートはこっちで誘導するから!」
「RABBIT1は……大丈夫そうだな……」
「凄い……」
先生が戦闘の指揮を執っている間にモエがミサキとミユを誘導する。他の生徒達もモエが誘導、アヤネがドローンを使って最前線に弾薬などを運んだり、またセトが戦闘に集中してくれたおかげで後方に生まれた安全地帯で手当てなどを行っていく。
「……?アヤネちゃん、なんか……」
「……ん、普段より手が早い?」
「そういえば先程の誘導も……」
シッテムの箱がもたらす恩恵は戦闘以外の方向にも活かされていた。後方から誘導、手当、輸送など様々な形でサポートを行うアヤネとモエだったが、その手際も判断の速さも普段以上だ。
「……先生……」
アスナ、カリン、アカネがモモイ、ミドリ、ユズに肩を貸しながら下がる。その中でユズが先生を見る。その手に握られていたシッテムの箱とそこから表示されるディスプレイの数々、この生徒会の谷の地形と思われるマップを表記する画面にはセトと思われる巨大な敵対勢力の赤いシンボルと、その周囲に展開されるシッテムの箱の恩恵を受けていた十人の生徒達を示す青いシンボル。そして、それ以外の生徒達を示す黄色い点の数々。
「あいたた……ミドリ、大丈夫……?」
「う、うん……でも、うう。折角モルフォちゃんも頑張ってたのに私達……」
「今は我慢だ……私達だって、これで終わりじゃない」
「ええ、今は機を伺いましょう。それに、リーダー達なら……」
「そうそう!今は邪魔にならないようにしないと!」
そしてゲーム開発部とC&Cも離脱する。アビ・エシュフを駆り、稲妻を掻い潜り駆けながら両腕のガトリングを連射し、雷の手を散らすトキ。ケイは移動に集中する中、アリスはタイミングを見計らうと、
『今です!スーパーノヴァ、ルミナスノヴァ、同時発射です!!』
搭載された二丁のレールガンからエネルギー弾を放ち、セトの雷の消えた右手に命中させる。右腕のリングの表面が削れたのを見て、ケイは口元に笑みを浮かべる。
「効いている……!」
『スーパーノヴァとルミナスノヴァの出力も上がってます!!』
先程、大きな一撃で纏めて薙ぎ払えたのに、今度はそうはいかない。言葉こそ発さなくてもセトは苛立ちを見せ始めるかのように線状の雷を複雑な軌道で放ち始める。だが、
「ここは……ヒナ、ネル!」
「おうよ!」
「ええ!」
「ホシノとユメは守りを!攻撃のチャンスを伺って!」
「了解だよ!」
「は、はい!」
冷静に画面を見ながら先生は素早く指示を出す。セトの攻撃がどんどん苛烈になっていくも、その合間を今まで以上の動きでヒナとネルが掻い潜っていく。そしてセトの両腕の雷をそれぞれマシンガンと二丁のサブマシンガンの連射で完全に消し飛ばす。
「今だ、ホシノ!ユメ!」
「喰らえ!!」
「……今です。ASMR……もってけフルチャージッ!!」
「ふ、ファイア!」
ホシノが黒いショットガンから放った弾丸が、セトの左腕のリングを完全に粉砕する。そしてユメが握り、ユメと半透明の手を重ね合わせたモルフォは、ユメのサポートをしながらライフルから限界まで圧縮された最大火力の一撃を放つ。それは、シッテムの箱の恩恵と合わせ、一筋の閃光となってリングを一撃で貫通、粉砕する。
「……消耗がほとんどない。これなら……」
黒いショットガンで弾を撃ったホシノは前回体験した消耗や負担が殆どなくなっていることに気付く。依然として装填数という問題は立ちはだかるものの、取り回しは大きく改善していたことに不敵な笑みを浮かべながら雷を盾で弾く。その近くではユメが冷や汗を流しながら盾で雷を受け止めている。だが、その目元には涙が滲んでいた。
(シロコちゃんも、モルフォちゃんも生きてた……こんな大変な時なのに、凄く安心する……)
すぐ傍でモルフォがチャージを続けるライフルを見る。ライフルは消耗した電力を即座にセトから発せられた雷によって補給し、常にフルパワーでの攻撃を可能とする。攻撃のタイミングを伺っていき、先生の指示に合わせてホシノとモルフォがセトを狙う。
「アル!セトの頭を!」
「ええ!」
両腕のリングが破壊されたことで手の形状をしていた雷が完全に霧散する。セトは両手を破壊されたことで追い詰められたのか焦り、怒り狂ったように雷を放出する。その攻撃を生徒達に回避させ続け、先生はアルにセトの頭を狙い撃たせる。セトの頭部に弾丸が突き刺さり、セトの体が一瞬仰け反って雷の勢いが止まる。
「オラオラオラァ!!」
「そこ!!」
そこにネルとヒナが筆頭に、トキとスーパーノヴァをガトリングモードに変更したケイが一気に弾丸をセトの胴体に叩き込んでいく。少しずつ傷ついていく体を守るようにセトが電気のバリアを張ろうとするのだが、
「ユメ!」
「は、はい!」
「いきます!」
「!今だ!」
再びモルフォがフルパワーで攻撃し、それがバリアを貫いて破壊する。そこにホシノがさらにもう一発弾丸を叩き込み、セトの胴体に大きなひびが入っていく。
「ホシノ先輩!弾を!」
弾を撃ち尽くしたホシノはアヤネがドローンで運んできた弾を即座に込めながらセトの動きにすぐに対応できるように睨みつける。胴体を大きく傷つけられたセトは雷を落としながら浮き上がる。その様子を見ながら、先生は一旦皆に回避行動を指示しながら険しい表情でシッテムの箱と戦闘の様子を交互に見ていく。
(このまま……最後まで攻撃を食らわずに勝つ……)
この戦闘が始まってから誰もセトの攻撃を受けていないのは幸運と言える。何せセトの攻撃は電撃だ。いかに頑丈な肉体を持つ生徒達でも、先程の攻撃を耐えれたのは偶然が重なりモルフォがダイスで介入したおかげだ。しかし、いくらシッテムの箱の恩恵を受けていても次に攻撃を食らえば先程死にかけたユメのようになりかねないのだ。
「……セトはもう追い込まれている。次の攻勢で決めよう。皆、準備はいいかい?」
先生が視線を後ろに向ける。一旦雷から逃れるように退避していた面々だったが、先生の言葉にそれぞれ銃を構えて無言で頷く。
「来る!!」
セトは再び雷のバリアを張る。だがそれだけではない、雷を次々と落としていき激しく攻撃を仕掛けてくる。それに対し、再びモルフォがバリアを貫き、残る面々が攻撃をしようとした、その時だった。
「っ!?」
「これは……」
セトは攻撃のために落としていた雷を全て自分へと向かわせて新たなバリアを生み出してしまう。
「っ……弾が!」
トキがバリアを破ろうとガトリングを連射するも、バリアは弾丸を通さない。だが、
「……今なら!」
『はい、先生!今ならばセトは全ての力を守りに回しています!』
『この防御を崩せれば!』
「ホシノ、ケイ!バリアを!!」
それは悪手であったことをセトは思い知ることになる。ホシノが一気に装填された全ての弾丸を放ち、ケイがレールガンの最大チャージによる火力を撃ち込む。その威力によってバリアに大きくヒビが入るも全ての弾丸が受け止められてしまう。
「っ!?」
『あのバリアは一旦貫通すれば簡単に砕けるみたいですが……貫通力がなければ無理矢理破壊しなければいけなくなる。だけど、そうなるとここまで硬いなんて!』
「でもまだだ!皆!」
「おおおおお!」
バリアが少しずつ修復されていく。ここで引くわけにはいかないとネル、ヒナ、サキが次々と弾を撃っていく。バリアの修復を食い止める中、アルはあることに気付く。
「あれって……先生!セトのバリアだけど……」
「!先生、バリアのヒビには弱所がある!そこを狙えば!」
「先生……!」
「弱点、それって……確かにあそこなら当てればヒビが広がって」
「うん、アル、カリン、ミドリ、ミユは狙い撃って!」
アルにはシッテムの箱で指示を出し、カリン達三人には言葉で指揮を出してセトのバリアに鋭い弾丸を叩き込む。それはバリアに生じた弱所を的確に貫いていき、遂にバリアが一気に砕け散る。
「今だ、皆!総攻撃!!」
バリアが砕け散り、無防備なセトに向かって残りの面々が総攻撃を開始する。弾のない黒いショットガンを捨て、元の自分のショットガンに持ち替えたホシノを筆頭にシロコ、ノノミ、セリカが。榴弾を打ち上げたユズと大量の爆弾を投擲したアカネに続くようにアスナとモモイが。ムツキも二人に倣って爆弾を投げ込み、カヨコとハルカ、サキがセトに弾丸を叩き込んでいく。そして―――
「!!」
ユメともう一人のモルフォが放った光がセトの胴体を貫通する。そしてセトの胴体が砕け散り、頭部が地面へと落ちていく。その体を構築していた雷鳴は消え失せ、頭部も色を失って砂となって崩れていく。
「……た、倒したの?」
「……おそらく……」
シッテムの箱に表示されたセトの反応が完全に消滅する。それを見届けた先生は、セトを倒したことに安堵しつつもモルフォ達の事を考えて不安そうに空を見上げる生徒達を一度見て、混沌の領域へ向かうためにプラナに次の指示を出そうとする。直後、再び空に混沌の領域の風景が映し出されるのだった。
★
「あ、ありえないぃ……こんな、こんなバカな……!?」
地下生活者は絶句していた。セトの憤怒が、倒されるなど。当然地下生活者もダイスを振り、セトの憤怒をサポートしようとしていたのだ。だが、その度にそのダイスは妨害されていた。
『対抗ロール!クリティカルヒット!』
ある時はモルフォの放ったイカサマダイスによって判定は潰され。
『それは駄目だよ』
ある時は投げたダイスが地面に落ちる前にナグサに撃ち抜かれて破壊されてしまい、ダイスロール自体を不発にされてしまったり。
『ならば、ダイスを複数振れば……あそこにいる全員分の死亡判定を個別にやれば―――』
『ん、無駄』
『そんな小細工は通用しないと思うがね』
『セトの攻撃に対する回避ロール!クリティカル!!』
ならばとセトを呼び出した時のように生徒分のダイスを振ってどうにか持っていこうとすればシロコ*テラーが撃ち抜き、セイアが直感に身を任せて撃ち抜くなどして可能な限り被害を減らし、なおかつセトの攻撃自体にダイスを振らなかったせいで攻撃そのものを失敗判定に持ち込まれたり。
『こんな、こんな暴力が許されてたまるかっ……卑怯にもほどが……!』
『自分の事を棚に上げてよく言うじゃないか。モルフォの怪我はお前の仕業だろう?』
暴力禁止を訴えたが最後、ボロクソに言い返された挙句セイアとシロコ*テラーに鉛玉を叩き込まれて吹き飛んだり。そして、遂にセトは倒されてしまい、地下生活者は完全に手駒を失うという結果になったのだ。
「これで終わりだよ、地下生活者」
「お前らぁ……」
「そもそも、ゲームを台無しにすることはいつでもできた。でも、敢えて付き合っていたのはダイスという恩恵をこっちも受けられるから。そうすればセトとの戦いも有利になるからね。だけど……戦いは終わった。もうお前の負けだ、地下生活者!」
「お前らの……お前らのせいで……!そうだ、こうなったら……まだ、まだ可能性が……!」
わなわなと体を震わせながら、地下生活者は地面に落ちた無数のダイスを掴む。セトを呼び出す際に投げた残骸だ。その後、再びダイスを振る際に邪魔になるからとある程度周辺に散らしていたが再びこれを握った目的は。
「これより、このダイスは全て爆弾だ!それも、ヘイローを破壊する爆弾だ!!その可能性を得た!ヒヒヒ、死ねえええええ!小生のキャンペーンを台無しにするような奴らなど、全員死んでしまえええええ!!」
「え?爆弾?そんなのありなの!?」
「まずい!!」
「気を付けてください!喰らえば死にます!!」
瞬間、四人の周辺に展開されていたダイスが次々と爆発し、逃げ道を塞いでくる。さらに地下生活者が滅茶苦茶にダイスを投げてくる。爆発の勢いはあまりに強い上にヘイローを破壊する爆弾と聞けば絶対に受けるわけにはいかない。セイアとモルフォの声が飛ぶ中、シロコ*テラーがミニガンである程度は迎撃するもそれでは不十分。ミニガンをすり抜けたダイスが次々とこちらへ到達してくる。
「可能性の共存……それがありなら!」
モルフォが左手を掲げる。直後、そこに光が集い彼女の愛用しているシールドを形作る。無防備な状態で行われたスオウの襲撃で持ち込めなかったシールドだったが、地下生活者がこの空間にあるものにもしもの結果を反映させたことで、モルフォもこの空間に別の可能性を共存させたのだ。即ち、この空間に自分はシールドを持った状態で連れてこられたという可能性を。
「こんのおおお!」
シールドを展開して爆発を受け止める。だが、いかに強固なシールドと言えど、地下生活者が滅茶苦茶に投げ込んでくる爆弾の量が多すぎる。両手でシールドを持って爆発を埋め止めるも、徐々にシールドにヒビが入っていく。
「っ……」
「ははははは!そうだ、最初からこうすればいいんだ!キャンペーンも何も関係ない……こうやって力づくで全員殺してしまえば―――」
「……こうなったら耐久戦だ。シールドをもう一つ……!!」
「っ、可能性の共存……!モルフォ、百蓮だ!ナグサの銃を使え!」
「え?なんで私の銃を……」
「いいから早く!多分それでいけるはずだ、モルフォ!」
「……そうか、そういうことか……!!ナグサさん、お願いします!!別時間軸の私は百蓮を使っていたらしいんです!」
一心不乱にダイスを投げつけてくる地下生活者。徐々にシールドが持たなくなっていく中、セイアが突然ナグサに声を上げる。理解できないでいるナグサだったが、モルフォはセイアの直感が意味することを理解していた。
『私がこの力で百蓮を使いこなしている可能性』
かつて、もう一人の自分が言っていた言葉。それが本当ならば、その世界の自分という可能性も呼び出すことができると。戸惑いながらも百蓮をナグサから受け取ると、モルフォはダイスを地面に落とす。別時間軸の自分という可能性。それがクリティカルと共に呼び出される。
(正直、百蓮を使いこなしてるとか言われたってどういうもんかさっぱり……だけど、失敗したなら失敗したでこいつと、ダメージを受けなかった可能性と新しいシールドを引き続けてダイスが尽きるまで耐えるよりは役に立つはずだ!)
「うおおおおおおお!!」
右手で百蓮を握り、シールドが破壊されると共に百蓮が光を放つ。何か、自分の中の力のようなものが百蓮に向かって流れだしたかのような感覚がモルフォを襲い、百蓮から込めきれなかった分のエネルギーがあふれ出す。やがてそれは形となった……かと思われた直後、大爆発がモルフォ達を襲う。
「勝っ……!?」
地下生活者の勝利を確信した声が途中で止まる。直後、炎がかき消されていき、その下からモルフォの姿が現す。
「な……なんだそれは……知らない、知らないぞ……」
右手とそこに握られた百蓮。だが、モルフォの体には百蓮より二回りほど大きなライフルを握った白い金属の腕が浮遊するように出現する。それだけでない、その腕は左腕にも同じように出現しており、そこから両肩、背中へと伸びた装甲の先には折り畳まれたような赤と黒で彩られた鋼鉄の翼が見えていた。
「な、なんだあれは……」
「モルフォちゃん……?」
「そんなもの、知らないぞおおおおお!!」
当然その光景は、生徒会の谷の方からも確認できる。モルフォが突然展開したその武装に、唖然となる面々。そして地下生活者が放り投げた爆弾の爆風がモルフォ達を襲おうとした直前。背中の鋼鉄の翼が展開し、赤紫の光が左右から噴き出す。直後、その風圧が爆風を纏めて吹き飛ばしていく。
「何あれ……?IS……?それともエクスドライブ……?」
(……百鬼夜行……和……流れた生命力のような何かを百蓮を媒体にし、あふれ出た分を鎧として纏う……ああ、なるほどあの漫画の……どうして並行世界の私は私と違って有事に役立つこんな強そうだったり便利そうな能力を……)
元となる能力はちょっと違うのだろうが、百鬼夜行の自分は、この能力をこのキヴォトスに適応した形で顕現させたようだ。アビドスにいた自分といい、百鬼夜行の自分といい、随分とこういう時に便利そうな能力ばかりとちょっとだけ愚痴りながらも、その能力の詳細をダイスのクリティカルで把握し、一時的に自らのものとしたモルフォは地下生活者を睨みつける。
「……モルフォ、それは……捻じ曲げられた運命を切り裂く翼、か……」
「……まさかこれが、百蓮に秘められた本当の力なの……?す、凄い……」
「まだ、まだ小生は終わってはいない!こんなことが、こんなことが許されていいわけがああ!!ひ、ひぃいいいい!!」
地下生活者が後ずさりながらダイスを投げる。だがダイスは赤紫の光の翼に吹き飛ばされていき、全く見当違いの所で爆発してしまう。可能性の共存によって一時的に得た武器を前に地下生活者は成す術もない。モルフォは鋼鉄の右手を開き、地下生活者へ向けて構えると、
「来るな、来るなあああ!人の話を聞かないのですかぁあああ!!」
「いいや、これで終わりだ地下生活者!」
一気に地下生活者へ向かって飛び出す。そして地下生活者の頭部を光を放つ右手で掴むと、
「うおおおおおおお!!」
全員が、はっきりと見た。地下生活者の頭部を勢いよく地面へと叩きつけるモルフォの一撃を。そして地下生活者の身体がバウンドし、空中に吹き飛んだところでモルフォはライフルを横薙ぎにして地下生活者を吹き飛ばす。地面を転がり、痛みによって苦しみ、悶える地下生活者。だが、
「があああああ!!痛い、痛いいいいい!!こんな、こんなことで……」
「―――もうゲームは終わりだよ。敗者には……然るべき罰ゲームを!」
まだ足掻こうとする。しかし、地下生活者は見た。自分を冷たい目で見下ろす、シロコ*テラー、セイア、ナグサの姿を。そして生徒会の谷からこちらを見上げている先生達もまた、こちらを冷ややかな目で見ているその姿を。完全な孤立無援、全てから敗北者の烙印を押されたのだと地下生活者はここにきてようやく理解する。もう振れるダイスもない、可能性の共存による反撃を試みてもモルフォはすぐにその上を行く。この混沌の領域という最大のアドバンテージすら盗られた自分に、もう勝ち目はないのだと。
「うあああああ!?」
そして地下生活者は崩れ落ちる。虚ろな目で頭をかかえ、ぶつぶつと呟きを漏らし続ける、全てを見透かされ、利用され、絶対に勝てるはずだったゲームに負け、惨めな足掻きすら振り払われた末に、遂に精神が崩壊してしまった彼の姿を見ながら、モルフォはやっと溜息を漏らすのだった。