転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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夢見モルフォと調月リオ

「……あ。アビドスの対策委員会、正式に認められたんだ」

 

ゲーム開発部にて、SNSを確認していたモルフォ。あの後、アビドスはどうなったのかを調べてみると、ちゃんと認可が下りたようで、対策委員会は生徒会の役割と権限を引き継ぐ組織となっていた。とはいえ、生徒会長の座は未だに空白となっているようで、アビドスの唯一の三年生であるホシノがその座に座るのか、後輩に継がせるのかはまだわからないようだった。

 

「見てよモルフォ、あのラーメン屋さん、屋台始めたんだって」

「へー、ちょっと心配してたからほっとしたよ。いきなり店を爆破されてあの店長さん大丈夫かなって思ってたから……」

 

モモイから見せられた画面には、屋台を引く柴関ラーメンの店長の姿があった。状況が目まぐるしく動いていたせいもあって中々モルフォたちが気にかける余裕もなかったが、あの後ちゃんと再起できたようだ。ちなみに先生から聞いた話だが、ちゃんと便利屋達は店長に謝罪し、どこから用意したのか新しく店舗を用意するための資金も提供してくれたらしい。

 

「今度、食べに行ってみてもいいかもね……色々あったし」

「うん……いいかも……あんまり外に出たくなくなったけど……これなら……」

「さすがにもう便利屋に爆破なんてされんでしょう……」

 

だよねぇ、と頷き合いながら、また今度、新しいラーメン屋に行ってみようと話し合う四人。と、ここでミドリがもう一つ、忘れていたことを思い出す。

 

「そういえばさ、カイザーコーポレーションってどうなったんだろ?」

「先生が言うには結構大変な事になってたよ」

「どんな感じ?」

「えーとね……」

 

カイザーコーポレーションはシャーレから連邦生徒会に提供されたカイザーの不正の証拠を公開されたことで大変な目に遭っていた。カイザーコーポレーションは大企業だが、当然キヴォトスには他の企業も大勢存在しており、学園に至っては規模こそ様々とはいえ、モルフォたちでも把握しきれない程の数がある。そして、それらの中でカイザーに対し好感を持つ企業は、カイザーの系列企業もしくはカイザーが友好的に接している企業以外にない。

 

そういった面々が、連邦生徒会の今回のアクションに便乗する形でカイザーを口々に非難したり、自分達の握っている不正の証拠を明らかにしたりしたのだ。トリニティといった学園はゲヘナ、ミレニアム、アビドスに倣う形でシャーレに情報を提供し、あくまでシャーレから発信された情報として用いられたり。企業はカイザーの悪事を暴くと同時に自分達はカイザーとは違いクリーンな企業だとアピールしたり。様々な思惑はあれど、そのいずれもがカイザーに大打撃を与えるために団結していた。

 

それを受けてカイザーコーポレーションは部下の解雇、関連企業の切り捨てによるしっぽ切りを行い、自分達は潔白だと言い張っているらしい。とはいえ、それがまかり通るわけもなく、現在進行形で大炎上中とのことだった。現場レベルならまだまともかと思いきやそんなこともない連中ならそらそうよとモルフォも今回の一件ですっかりカイザーに対する印象と好感度は振り切っている。

 

「―――って感じ。SNSとか凄いね」

「うわぁ、燃えまくってるね」

「うーん、もっと燃えろって思ったの人生で初めてだよ」

 

シャーレの部員になっていて、今回の事件の当事者になっていたモルフォは、先生から今回の顛末について色々なことを教えてもらっていた。カイザーの処遇についてもそうだ。そして、カイザーが関連することとしてはもう一つ。

 

「アビドスの借金問題は結局解決してなかったんだっけ?」

「そうそう、借金と土地自体はちゃんとした取引らしいからなかったことにできなかったんだって。ただ、借金の利子は以前からめっちゃ下がったとは言ってたよ」

 

おそらくは下がってしまったカイザーのブランドを回復させるため、打たざるを得なかった戦略の一つなのだろう。とはいえ、カイザー自体はアビドスの借金問題は返せても返せなくてもどうでもいいというスタンスだったことを考えれば、利子を下げてイメージ回復に繋がるならいくらでも利子を減らしてやろうという狙いがあったのかもしれない。当然、そんなもので効力が見込めるわけではなく、アビドスの生徒達にしかメリットのない行動となっていたが。

 

「あ、そろそろ時間か……」

「本当じゃん、モルフォも大変だね。会長に呼ばれるなんて」

「まあ私が蒔いた種だからね」

 

そして、一通りこれらの件が落ち着いてきた頃だった。モルフォはリオに呼ばれていた。おそらくは今回の一件についての話なのだろう。セミナーの会長も動かざるを得ない大事になった以上は仕方のないことだと考えていたため、モルフォもその場から立ち上がる。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「のんびり待ってるねー」

 

そして、モルフォはゲーム開発部を後にしてリオの下へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたにここまで来てもらった理由は一つ。百合園セイアとの繋がりについて、知っていることを説明してほしいの」

 

リオの下に向かったモルフォは、その部屋でリオと二人きりになる。そこでリオから告げられたのは、当初考えていたものとは違い、モルフォの夢の話であった。

 

「……えっと……アビドスの事を聞こうとしてたわけではなく……?」

「それはもう終わったことよ。あなたがもたらした機会によって奴らに大きな打撃を与えることに成功した。集めていた奴らに対する情報も、間にシャーレが入ることでミレニアムにヘイトが向けられないように処理することもできた。それについては感謝するわ。だけどもう終わった話」

「そ、そうですか……それでも、改めてお礼を言わせてください。その節は本当にありがとうございました」

「……別に、当たり前のことをしただけよ。礼を言われるようなことではないわ」

 

モルフォから視線を逸らしながらそう返すリオ。その様子を見ながら今回のリオの用件について考えてみる。そもそもの話、リオはセイアの事をどこで知ったというのだろうか。何せこの事を知っているのは、モルフォ以外に二人だけだったはずなのだから。

 

「あの……セイアさんの事をどうやって知ったんですか?もしかして……」

「ええ、ヒマリから聞いたわ。そしてこの情報は外に出してはいけないと判断した。エデン条約、あなたも知っているでしょう」

「名前ぐらいは。トリニティとゲヘナの間で交わされる条約ですよね?」

「ええ、その通りよ」

 

モルフォの言葉に頷くリオ。ゲヘナとトリニティの仲の悪さは誰しもが知っているところではあるが、その二つが手を取り合うこの条約が連邦生徒会長によって提案されたと明かされた当時はモルフォも少し驚いた記憶がある。

 

「トリニティとゲヘナの間で結ばれる不可侵条約……両学園の中心メンバーによって成立するエデン条約機構、通称ETOを設立し、両学園間で起こった紛争を解決することで全面戦争を防ぐというものよ。連邦生徒会長が行方不明になったことで条約もそのまま立ち消えになると思われたのだけど……トリニティの現ホスト、桐藤ナギサが主導する形で締結が進められているようね」

 

今まで全く気にしていなかったが、連邦生徒会長がいなくなった後もトリニティは精力的に締結へ向けて動いていたようだ。その意思を汲んだゲヘナも動いている、ということだろうか。

 

「そんな中で、あなたと百合園セイアの夢が繋がった。彼女は未来が視える、という話もあるわ。ならばあなたの夢と繋がったという話もあながち嘘ではないのでしょうね」

「……なんていうか、意外です。会長ってオカルトとか、信じるんですね。てっきり非科学的だとか言うものかと」

「……別にそういうわけではないわ。そういう事象が起こっている……今の時代の技術力では解明できないような現象や、それを遥かに超える存在もあるのだから。それに、異能というカテゴリにあなたのそれを括るのならば他にはコユキのような例もあるのだから。それで、どうなのかしら?」

「はい。確かに私の夢とセイアさんの夢は繋がっています」

 

話として聞いてはいたが、本人に確かめて確証を得たかったのだろう。モルフォからはっきりとそのことを聞いたリオは、溜息を吐く。

 

「成程、ね。あなたもわかっていると思うけれど、エデン条約が成立するまで、ゲヘナとトリニティを刺激したくはない……アビドスの一件はゲヘナが仕掛けてきたことだからともかく、ね」

「はい」

「もしあなたの身に何かが起こり、夢を見られなくなった場合。それがセイアの精神に何らかの影響を与える可能性は十分あるわ。その結果、彼女も意識を取り戻すことができなくなり、そのことにトリニティが気付いたら……」

「……」

 

そしてリオから告げられたのは、今のモルフォの体はモルフォだけのものではないかもしれないという可能性。下手に彼女の体に、そして精神に強い影響を及ぼすことでセイアもその被害を受けてしまう可能性があると。

 

「だからここであなたから話を聞かせてもらえないかしら。これは、この学園にとって大事なことよ」

「わかりました」

 

リオの真剣な物言いを改めて受け、モルフォも自分の能力、セイアとの出会いについて語り始める。その話を一通り聞き終えたリオは少しの間考え込んでいたが、やがてある可能性に至ったのか、モルフォに警告するように口を開く。

 

「モルフォ。その能力はどこまでが対象なのかしら」

「……というと?」

「夢に形を与える……その力の対象は兵器にまで及ぶのかしら」

「……え?」

 

それは、かつてヒマリが考えながらも決して口にはしなかった可能性。それをヒマリは、モルフォの性格上問題ないと切って捨てたが、リオからすればそれは不発弾のようにしか見えなかったのだろう。

 

「……そうね。エンジニア部が宇宙戦艦の主砲としてレールガンを作っていたでしょう。あれは人の手では当然振り回せないわ」

「案外キヴォトスを探したらいるのかもしれませんけど……」

「いるのかもしれないけれど、いたら驚異的な身体能力よ。とにかく、常人では振り回せない代物なのは確か。でも別の世界の技術に形を与えるのであれば、理論上はあれよりもずっと高性能かつ、個人携帯も可能な小型のレールガンの創造も可能になるはずよ。並行世界なら、別世界なら。それが頭につくなら基本的にあらゆる技術が存在していることになるのだから」

 

エンジニア部が生み出した産物を元に語るリオ。理論が飛躍しているのでは、とはモルフォも言いにくかった。ゲームとはいえ、本来個人で作れるはずのないものを生み出してしまっているのは事実なのだから。もしそれがゲーム内の武器を作れる、となれば、件のレールガンがどういう性能かはわからないが理論上超えられる武装は確かにあってもおかしくない。何ならブレイザーなんて生み出そうものならどうなるかわかったものではない。そこまで考えたモルフォの下した結論は。

 

「少なくとも、今はできませんし、私個人はするつもりも作るつもりもありません。それに、そこまで能力が強くなるかは私にもわかりません。この能力のせいで誰かが死ぬとか、そういうのは絶対嫌ですし、そのためにこの力は使いません。私はこの能力で皆で楽しく、面白おかしく過ごしたい。それだけですから」

「……わかったわ」

 

モルフォの言葉にリオは納得したように頷く。まだまだこの能力の全容がわからない以上、どれだけの力を発揮するかは未知数だ。それはリオやヒマリでもわからないし、夢の住人であるセイアにも、何ならモルフォ自身にも不明な領域だ。だからこそ、以降は注意していく。最悪の可能性に恐怖を抱き、絶対に至らないようにするというモルフォの判断は、そんなことにはならないと断言されるよりもリオにとっては好ましい回答だった。

 

「私の方でも余裕があれば目をかけておきましょう。話は以上よ」

「わかりました。今日は、ありがとうございました」

「……なんで礼を言われるのかしら。私はあなたの事を警戒するといっているのに」

 

これで話すことは全てだと言い、部屋を出るようにと言われたモルフォから告げられた感謝の言葉に、少し目を見開いて驚くリオ。しかしモルフォはきょとんとした様子を見せる。

 

「だって、私の能力がこんな危険なものを生み出してしまう可能性があるなんて、今まで全く考えていませんでしたから。だからこれから色々気を付けなきゃいけないって思えたのは会長のおかげです」

「……」

「だからもし、ご迷惑でなければこれからも相談とかしてもいいでしょうか?やっぱりこの能力って私にもわかりませんから」

「……構わないわ。あなたの能力が危険な方向に行かないようにする必要があるのだから」

 

そしてモルフォから返された言葉に返答を返すリオの表情は、どこか嬉しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お、終わった……!」

「お疲れ様です、先生」

「……」

 

シャーレのオフィス。出張によって溜まった仕事を必死に処理していた先生は、やっと書類の束が片付いたことに達成感を含んだ歓喜の声を上げる。オフィスには先生だけでなくユウカとアコの姿もあり、アビドスに出張している間、溜まりに溜まりきった書類を全力で処理してやっと終わらせたのだ。

 

ちなみにアコがいる理由は今回の一件に対する風紀委員会からの詫びも兼ねていた。ユウカとバッティングしたのは偶然……というより先生が頼れる書類に強い人物が他はユウカかアヤネぐらいだったというのもあるのだが、結果としてアコはユウカに睨まれ(といってもユウカも今回の件はもう蒸し返す気はないが)ながらの作業となっており、完全に縮こまって言葉も発していなかった。

 

「……それにしても先生、出張している間シャーレの当番に書類仕事をやってもらったりとかはしなかったんですか……?」

「う……私がいないのに生徒達だけを働かせるのも悪いなって思って……」

「出張で行っているんだから先生も仕事しているじゃないですか。幸い、期限が迫ってたりする案件はなかったので何とかなりましたが……アビドスの一件でシャーレの知名度もさらに上がっています。一日あたりの仕事量も以前より増えているようですし、働き方も考えた方がよいかと」

「……面目ない」

 

コーヒーを飲み、ユウカの言葉に肩を竦める。ここは本当にどうにかしないと生徒達や学園の問題を解決するどころじゃないな、と先生もここ数日で痛感したのだろう。先日、間違ってモルフォとスズミを同時に呼んでしまった時や、今回のユウカとアコのように、当番を一人から二人に増やしてもいいかもしれない。そんなことを考えていたが、その思考は過去のある場面へと移っていく。

 

(ゲマトリアの黒服……)

 

ホシノから聞かされた謎の大人。アビドスでの戦いが終わった後、先生は黒服と話をしたのだ。先生にも興味があったという黒服に招かれ、彼との話し合いが行われた。その中で、先生は今後、ホシノ達に手を出さないことを黒服に約束させることに成功したのだ。無論、約束を破る可能性はあるが、黒服は話の中で契約といったものを重要視するようにも見えた。それが演技などでなければ、ひとまずは心配はないだろう。

 

「先生、大丈夫ですか?」

「え?ああ、大丈夫大丈夫……ただ、さすがにちょっと疲れたかな」

「そうですね、今日は早めにお休みになった方がいいかもしれませんね」

 

考え事をしていると魂が抜けているかのようにも見えたのか、ユウカが心配そうに覗き込んでいた。どうやら自分の予想以上に疲労が溜まっていたのかもしれない。今日ぐらいはゆっくり休ませてもらおうと結論付けるのだった。

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