転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「来た……来た……!!」
激しい音が至る所から鳴り響く店。無数の筐体が置かれるその施設の中でコユキは食い入るように目の前の筐体にのめり込んでいた。大人やガラがちょっと悪そうな女子達、そして中にはサングラスなどを付けて正体がばれないようにしている少女なども見える中、目の前の無数の釘が打ち込まれた筐体の中に存在する液晶画面に映るアニメ映像には二人の少女がゴリアテと呼ばれるパワードスーツを改造したような機体に乗る二人の少女が激情に駆られ怒号を上げる様子が映っていた。そう、これこそパチンコ、謂わばギャンブルの一つである。
「やっと、やっとここまで来たんです……さあ、今度こそ、今度こそ当たって……あっ」
液晶の中ではアニメ映像をバックにスロットが回っていた。リーチがかかり、外れる。それを何回か繰り返していたのだが。目の前で数字は揃わず、対戦相手と思われる少女がこちらの少女が乗る機体を両断して爆発させてしまう。
「……なんですかこのクソ台はぁ!!」
「お客さーん、台パンは困りますよぉ……あんまり酷いと学園の方に連絡させていただきますよ?」
「それめっちゃ面倒なことになるのでやめてくれませんか!?この通り!!」
コユキは思わず台パンをしてしまう。が、客が台パンをするのを待っていたかのように店員と完全武装したオートマタ達が現れる。それを見て慌ててそれだけは勘弁をと頭を下げる。
「……まあ、ちゃんと客として楽しんでくださるのならこちらからは何も―――」
「何がパチンコだ!こんなもの、こんなものおおおお!!」
「お前、何やってんだ!?」
「折角のバイト代を何に使ってるんだよ!?これ自治区に持ち帰るものだろ!?」
「だって、だって凄く楽しいんだもん!!こうバーって頭が……」
「先輩に怒られるぞ!?っていうかこの前怒られただろ!!」
「こらー!!ガキ共何をしているー!!」
と、その奥から白いローブのようなものに身を包んだ数人の少女達が騒がしい店内でも聞こえる程の声量で騒ぎ始める。それを聞いて店員たちがそっちの方に向かってしまう。
「あれは……制服白いし
「トリニティとは違うんじゃない?」
「じゃあ何カス?ゲヘカス?ミレカス?」
「さあ……よーし、もう一枚追加しちゃおっかなぁ!」
その様子を見ていたのか、コユキの背後に座っている四人のヴァルキューレの少女がケラケラと笑いながらパチンコに興じながら他愛ない話をし合っていた。
「あっはっはっは、昼間っからやるパチって楽しいよね」
「楽しいけどすっかりみすぼらしくなっちゃったねぇ」
「ドロップアウトした時点で今更今更、エリート部隊からヴァルキューレに天下りだぞこっちは」
「パチカスやってるヴァルキューレは……まあいいか?なんか古巣の一年生頑張ってるみたいだけどどう思うよ?」
「まあ……応援はするよ?私は戻らないけど」
「私もー、だってこれ楽しいからね」
「……」
その様子を見ていたコユキは、もう軍資金がないのもあるが騒ぐ連中に巻き込まれるのも面倒なだけだと結論付けるとそのまま店を後にする。
「あーあ、ボロ負けしちゃいましたよぉ、今日のは外れですね……あーあ、お金さえあればもうちょっと……」
ぶつくさと呟きながら道を歩いていく。すっからかんになった財布の中を見ると、もう数百円しか残っていない。こんなチャチな金ではパチンコはおろか遊ぶことすらままならない。いっそどっかから抜いてやろうかとも考えるが。
(でもそれで先輩達怒らせても後が面倒ですからねぇ……って、ん?)
ふと脇にあった駄菓子屋を見ると、小銭の形状をしたチョコの詰め合わせが売っているのが眼に入る。それを見て少し考え込んでいたコユキだったが、ふと妙案を思い付いたのかその詰め合わせを手に取るのだった。
★
「……で、これ買ってきたのはなんで?」
「いやぁ……これ使ってギャンブルできないかなと」
「そもそも現実でギャンブルなんてしなければいいのに……パチなんて」
「別に節度持ってパチンカスになる分にはいいんじゃないのー?」
「パチンカスが節度なんて守れるわけないでしょ」
パチンコで軍資金分の消失という健康的な敗北を喫したコユキが駆け込んできたのはゲーム開発部の部室であった。大量の小銭型チョコを持ち込んできたコユキから何をしていたのかを聞いていたケイが呆れた様子でコユキを見る。
「ゲーム開発部にはお菓子もいっぱいありますしー?お金の代わりにお菓子を賭けてギャンブルすれば殆ど金も使わずに遊び放題じゃないですか!」
「修学旅行かな?まあそれはそれでいいけど、それやるなら改めて皆で賭ける用のお菓子用意した方がいいかもね。今あるの元からあるお菓子ばっかりだし」
「後お菓子勝手に漁るの止めてくれません?」
「ごふっ」
勝手にゲーム開発部がお菓子を保管しているスペースからお菓子を漁り始めたせいでケイから頭を叩かれるコユキ。コユキは痛みに顔を顰めるもののスペースから限定フレーバーのお菓子を取り出す。
「あっ、それ私が買い置きしてたやつ!」
「モモイ……個人で食べたいなら個別で保管しておきなって」
「そうだよお姉ちゃん。ユズちゃんを見なよ、ちゃんとロッカーにしまい込んでるんだから」
「はい!ユズのロッカーはユズの部屋です!」
「それはそれでまた話が別のような……!?」
それがモモイの秘蔵の品だったと判明しコユキの手からお菓子を奪い返す。モルフォはやれやれと肩を竦めながらもアリスに皆で分けられるように数が多めのビスケットやらスナック菓子、チョコやらを取り出してもらう。モモイが別の所にお菓子をしまい込む中、モルフォは何かいいものがないかと考えながら使えそうなものを探し始める。
「えーと……サイコロはあるか。じゃあ……ヨットとかやるかぁ」
「ヨット?」
「ヨットって……そんなのここにはありませんよ?」
「というか海まで……」
「あー、違う違う。ヨットって言ってもそういう意味じゃないんだ」
ヨットと言うのは五個のサイコロを使うポーカーのようなゲームである。内容は単純でプレイヤーはサイコロで出た目で役を作っていきその得点を競うというものである。また、役名には様々な種類があり、その合計点を競うといったものになっている。
手番となったプレイヤーはサイコロを三回振ることができる。振った後はキープするサイコロを選択し、次はキープしていないサイコロを振る。二回目以降はキープするサイコロの中から振り直すダイスを抜き出すこともできる。それをダイスが触れなくなるまで行い、出た目を合わせて役を一つ作るのだ。ただし、この選ぶ役というのが大事であり、役の種類も多岐に渡る。
他にあるのはチョイス、フォーダイス、フルハウス、S.ストレート、B.ストレート、ヨット。この六つは出た目の合計がそのまま得点になる。チョイスは出た目に関係なく五つの目の合計点になり、フォーダイスは四つのダイスが同じ目であればそれを含めた五個のダイスの合計点。フルハウスは同じ数値が二つと三つの合計。S.ストレートはサイコロ四つが連続していればよく、対してB.ストレートはサイコロ五個全ての目が連続している必要がある。ただしS.ストレートは点数が15点で固定となり、B.ストレートは30点で確定となる。そしてヨットはサイコロ五個が全てが同じ目である必要があり、これは50点で固定となる。
これを12ターン繰り返し、自分の役を埋めていくのだが、もし三回振って役が揃わなかった場合、どれかの役を0点として埋める必要がある。また、一度埋めた役はそのゲーム中は書き直すことができないのでどの役を埋めるのかも大事な戦略になってくるのだ。
ちなみに、ヨットという名前はヨットの上でこのゲームを行っていたのが由来であると言われている。
「なんか難しそうですねぇ」
「案外そうでもないよ?サイコロを三回振って役を一つ埋めるのを繰り返すってだけだからね。ただ12ターンとか長すぎるから……半分の6ターンぐらいに今回はしておこうか」
「ですねぇ、やるだけやってみますか」
早速とコユキが一番手としてサイコロを投げていく。最初の目は1が三つ、後は5と6。
「こういう時は……1を三つキープしておいて……で、残りを投げると……おや、2が二個出ましたね。これはフルハウスでは?」
「確かにフルハウスだけど、これだと合計点数7になるんだよね」
「……あ、そうなっちゃうんだ」
「つまり一番高いのは6が三個と5が二個の28点になるってこと?」
「……一番低いじゃないですか!!」
モモイとミドリの言葉を聞き、コユキが憤慨する。このままフルハウスにするわけにはいかないと先程2の目を出したダイスを振り直す。すると1の目が1つ出たため、1の目4個を得点とし、エースの部分を適当な紙に埋めていく。続けてモルフォがサイコロを投げると、
「……3が四個……フォーダイスは狙えるけどここはトレイで埋めた方がよさそうだね」
「じゃあ次は私の番だね!」
自分の順番が来るまでチョコを頬張っていたモモイがサイコロを放り投げる。
「こ、これは……」
「最終的に6が三個、そして5と3と……シックスにすれば18点、ですがチョイスにすれば26点ですね」
「でもせっかくチョイスを取るならもっと6が欲しくない?」
「けど、これ以上4が出たらフォーダイスになっちゃうよ?」
「あ……確かにユズの言う通りだ。じゃあ……チョイスはいつでも取れるからここはシックスを埋めるのがいいかな?」
モモイはシックスを選択。続けてミドリが振ってデュースの合計6点。ユズは、
「……4が三つと5が二つ……これは欲張らずにフルハウスにした方がいいかな」
「では次はアリスです!」
ここでフルハウスを選択して一気に22点を確保する。そしてアリスが振った目は、なんとS.ストレート。これによりアリスも順調に15点を入手する。
「S.ストレートです!これでアリスは15点ですね!では次はケイの番です!」
「え、ええ……変な目が出ないといいんですが」
そして一巡目最後にサイコロを振るのはケイであった。ケイは良い感じの目が出ることを祈るようにサイコロを三回投げると、
「……あ」
「これって……ヨット?」
全てのサイコロの目が1となる。それにより、ケイは最初のターンからヨットを揃えることに成功する。
「うげー!いきなりですか!?」
「ケイちゃん運良すぎない?」
「実は目押ししていたり」
「モモイ……わざわざそんなことするわけないじゃないですか……そもそもただのサイコロですし」
いきなり最高の役を出したケイだったが、さすがにこんなところでピンポイントでサイコロを転がすようなテクニックはしてこないだろう。というかそんなことやれるわけもないが。冗談めかして言ってくるモモイに呆れた視線を向けながらサイコロをコユキに渡す。
「ぐぬぬ……ならここは私もでかい目を……!って、なんでまた1が四つなんですか!!」
「この場合、もうコユキはエースを選んでるのでまたエースは選べないってことですよね?」
「うん、ここから選べるのはチョイスかフォーダイスのどっちかだね」
「となると……フォーダイスしか選択肢ないじゃないですか……一応残りは5だから9ですか」
その後、モルフォが4のフォーダイスと6を出して22点を確保、モモイはエースの3を確保。ミドリもエースの3となり、ユズはS.ストレートで15点。アリスは4が四つ出たが残りが1だったのでここはフォーを選択し16点を確保する。そしてケイは、
「……ケイちゃん?」
「いや偶然ですよ!?」
「いやいやこれ大分サマ入ってるでしょ!なんですか今度は3のヨットって!!」
「まあこうなると選べるのはトレイになるんだけど……」
なんとまたしても全て同じ目を出していた。三回ダイスを振り直せるので運が良ければヨットが二回出るのはおかしいわけではないのだが、さすがに二ターン連続となると話が変わってくる。たまらず抗議をするコユキに冤罪だと主張するケイ。
「じゃあ次は私の代わりにモルフォが振ってください!それでいいですよね!?」
「いや別に疑ってないから。そもそも三回振って役作るんだからたまによくあることだって。ほらコユキ座った座った」
「ぐぬぬぬ……こうなったら私もどかんとでかい目を……おお!?」
ケイがイカサマをするようなことはないだろうと言い、モルフォはコユキにサイコロを渡す。そして三回振ったコユキはなんとここで全てのサイコロの目を6で統一させることに成功する。
「ここはシックスです!次にヨットを手に入れた時にそっちを手に入れますよにはははは!」
「ここで一気に稼いできたね……うーん、エースの3か」
「私はトレイの9……なんか渋くなってきた?」
「4が四つと5のフォーダイスだね」
「私は5のフォーダイスだけどここはファイブにしておこうかな」
「アリスは……来ました!Bストレートです!これで30点ですね!」
「次は私ですか……S.ストレートですね」
3ターン目はコユキがシックスの30点、モルフォがエースの3点、モモイがトレイの9点、ミドリがフォーダイスの21点、ユズがファイブの20点、アリスがB.ストレートの30点、そしてケイがS.ストレートの15点となる。
続く4ターン目、コユキはフルハウスの24点、モルフォ、モモイがB.ストレートの30点、ミドリがフォーの16点、ユズがフォーダイスの19点、アリスがチョイスの23点、ケイがフォーダイスの23点となる。
「……いや、点数の差がやばくないですか?」
「ケイ、今合計点数103点だもんね……」
5ターン目が開始された頃には、コユキとモルフォが67点、モモイが60点、ミドリが46点、ユズが76点、アリスが84点。そしてケイが103点と圧倒的なスコアを打ち出してしまっている。これでは到底スコアが追いつかない。
「これもうヨット揃えるの前提じゃないですか!なんかないんですか!?」
「一応あるにはあるかな。エースからシックスまでの点数なんだけど、これが合計63点以上ならボーナスで追加で35点が手に入るんだよ」
「そんなルールもありましたね……おっと?」
だが、ここでボーナスのことを思い出す。そしてコユキが自分の点数を確かめると、現在のコユキのエースからシックスまでの合計点数は34。つまり、後29点を取ることができれば、そこに35点が追加され64点が手に入る。そうすれば総合得点は131点、一気にケイを上回る可能性が見えてくる。
「ならここは……5か4です!いけーっ!!」
コユキがサイコロを振っていく。そして4の目が三つほど並び、フォーの12点を記録する。モルフォは自分の点数ではボーナスを手に入れるのは無理だと判断、最悪チョイスを視野に入れつつ振った結果、ヨットを獲得。ここでモルフォの合計点数は一気に117点となる。
「私もボーナスを狙っていかないと……とりあえずファイブの15点!」
「私は……エースからシックスの合計が25点だからお姉ちゃんみたいに狙えないね……うーん、チョイスは最後に残して……よし、B.ストレートだ!」
「……うん、私もB.ストレートだね」
「アリスは……フォーダイスですね……24点です!」
「……3が三つですか……もうトレイ埋まってるんですよね……今回はフルハウス、次はチョイスをしたかったんですが……駄目ですか……仕方ありません、チョイスで14点です」
「これは……いけるのでは!?」
ここまでそれぞれが稼いだ点数を見てコユキは勝機を見出していた。ここまでの5ターンでコユキが稼いだ点数は79点。モルフォが117点、モモイが75点、ミドリが76点、ユズが106点、アリスが108点、ケイが117点となる。やはりここでコユキはボーナスを手に入れなければ勝ち目がない。
「エース、フォー、シックスが埋まっている以上、ここで5の目を四つ以上揃えなければ勝ち目がありません!まずは一回目!」
最初のサイコロは1、3、3、4、5。
「よし、5が一個!ふふ、幸先がいいですねぇ!」
「これは……いけちゃったりする!?」
「二回目!」
二回目のサイコロは、5、5、1、6。
「5のダイスが三つ!?」
「コユキちゃん、後一個だよ!?」
「後二つのサイコロで触れる回数は一回……!」
「にはは!このギャンブラーコユキ、勝負を決めてやりますよ!そらー!!」
コユキが二つのダイスを放り投げる。先に止まったサイコロが1を出す中、もう一つのサイコロが回り続ける。そして、その目がついに出てくる。出てきた目は―――
「……1!?」
「ファイブの15……いえ、もうラストターンなのでチョイスの17ですね」
「うあぁああああ――なんで――!」
残念ながらボーナスを獲得できず、コユキが絶望に倒れる中、モルフォはチョイスの23点でフィニッシュし合計点数140点。モモイとミドリは最後の最後でヨットを出してそれぞれ125点と126点。ユズはヨット狙いで取り切れずチョイスの18点で合計124点。アリスとケイは既にチョイスとフォーダイスを使用していたため、それぞれファイブの20とシックスの24でそれぞれ128点と141点。それによって僅差ではあったがケイが何とか逃げ切った形となった。
「……しかもこれボーナス手に入れても勝てないじゃないですかやだー!!」
「あそこでヨット素直に選んだほうがよかったのかもね……」
「……食べる?」
敗北に悔し涙を流すコユキにをパイ差し出すモルフォ。モルフォが手に持つパイにそのまま齧りつくコユキを見ながら、アリスがもう一度サイコロを手に取る。
「でもこのゲーム、凄く楽しいです!」
「ええ、ただの運ゲーかと思いましたが……役がどんどん埋まってくると先にどれを選ぶのかも大事な要素になるのはわかりましたね……チョイスを迂闊に選びすぎた気がします」
「今回は半分の6ターンだったから役が余裕あったけど……本来の12ターンだと後半大変そうだね。先を見た作戦も必要になってきそう」
ヨットの感想について語り合うケイとユズ。サイコロ次第の運要素は確かにあるが、役の取捨選択は確かに立派な戦術である。
「でも大体わかったし、次は最後までやろう!マキとかも呼んでさ!」
「あ、それいいかも。もっと皆で大勢でやるのも楽しいよね!」
「二回戦ですか?今度こそ負けませんよ!今回はちょっと運が悪かっただけですので!」
次をやろうとするゲーム開発部を見て即座に復活したコユキも乗っかってくる。そして、他にもマキやコトリとヒビキ、トキなども呼んでもっと大人数でヨットに興じることになるのだった。